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地域で認知症患者、家族を支える仕組みを創りだす
<北海道砂川市 NPO法人「中空知・地域で認知症を支える会」>

中空知・地域で認知症を支える会・小泉洌代表 代表の小泉洌先生

北海道の中央に位置し旧炭鉱町を抱える中空知地区の高齢化率は3割を超え、認知症患者の数も増加の一途をたどっています。認知症の患者・家族を地域で支えるとともに、認知症を地域の人に深く理解してもらおうと活動するNPO法人が認知症治療、介護関係者から高く評価され、注目されています。

NPO法人「中空知・地域で認知症を支える会」 開業医とケアスタッフを核に、
患者家族、市民も巻き込んで

このNPOは2003年に任意団体の「中空知・地域で痴呆症を支える会」として発足しました。 5年後にNPO法人として認可されました。代表の空知医師会会長で小泉医院の小泉洌院長は「この地域の中核病院である砂川市立病院に認知症診断と治療に熱心な先生方によって"物忘れ外来"が開設されました。それを機に、この地域でも将来的に認知症が問題になることは明らかで、地域ぐるみで会をサポートして発展させようと考えたのです」と、設立の動機を説明します。

現在は「物忘れ専門外来」となっていますが、開設当初から他の医療機関とは違い精神科、脳神経外科、神経内科と画像診断の専門家が連携しており、認知症の画像診断の技術に関しては全国的にみてもトップクラスのレベルを維持しています。

小泉代表が着目したのはこの診断技術の高さです。同外来と地元の開業医が連携して地域における認知症の治療やケアを充実させるとともに、患者さんやご家族だけでなく、一般の人たちにも認知症をもっと知ってもらいたいと考えたからでした。

医師会の仲間に声をかけたのはもちろん、認知症は医師の力だけでは治したり、ケアしたりはできないので、中空知で介護施設などを運営しているケアマネジャーで監事の神部寿郎さん、砂川市地域包括支援センター勤務で監事の高橋聡さんらに話をし、賛同してもらいました。

もともとは任意団体でスタートしたのですが、法人格のほうが一般の人たちからも信用され、地域の医療関係者も相談を持ちかけやすく、行政からの補助も受けやすいために、NPO法人として申請し、認定を受けたのでした。

中空知・地域で認知症を支える会・神部寿郎監事 監事の神部寿郎さん
中空知・地域で認知症を支える会・高橋聡監事 監事の高橋聡さん

 

広がる会員の輪 医療圏を越えて

砂川市立病院の「物忘れ専門外来」は診断レベルの高さで中空知地域だけでなく道北や道南などほぼ全道から患者さんが来院するとともに、会の存在を知った開業医らが次々と会員となり、医療圏の枠を越えて広がっていきました。

活動の主目的は患者さんやご家族はもちろん医療者、介護者をはじめ一般の人にも認知症とは何かを知ってもらい、治療とケアについて理解してもらうことです。

会の活動としては「開業医の認知症に対する知識を向上させることから始めました」と小泉代表。会員になった開業医は多忙な時間をやりくりして日本医師会の2日間の認知症研修を受けるように努力しました。研修を修了した開業医は「認知症相談医」を標榜し、砂川市立病院の「物忘れ専門外来」を受ける患者さんの事前スクリーニングができるようになります。その結果として認知症に関する地域医療全体の水準も上がり、住民も安心できるのです。

介護スタッフの意識改革も会の課題でした。神部さんは「介護士には看護師のようなキャリアアップというシステムがないので、仕事に対する意欲が失われやすい」と介護士の現状を指摘します。介護は誰にでもできるものではなく、経験則だけで患者さんをうまくケアできるものでもありません。専門医からのアドバイスも必要なので、介護士の交流も兼ねて勉強会を開いています。すでに20回近くになり、毎回参加する介護士もおり、顔見知りとなってお互いの経験などの情報交換の場にもなっています。

 

市民への啓発事業 ~認知症をよりよく知るために~ ボランティアの養成

認知症の患者、家族を地域で支えるためには地域の人たちの認知症に対する理解が不可欠です。 高橋さんは「認知症は怖いものだという考え方や、認知症になったらなすすべがないという意識を変革しないと、市民が積極的に認知症をサポートしてくれません」と、啓発の重要性を指摘します。会では専門医やケアマネジャー、患者家族などを招いた市民公開フォーラムを年に1回開いています。

さらに、医療保険や介護保険の枠では提供できないサービスや身近にいる患者さんへのちょっとしたケアを補う上でボランティアの存在が重要になってきます。

会では、認知症サポーター養成講座を企画し、砂川市民約500人が受講。受講生を対象としたアンケートによると、「もっと勉強したい」という回答が多く、5回シリーズのボランティア養成講座を開催しました。年1回の講座でボランティアも増え、「認知症ボランティアぽっけ」という組織もできました。ボランティアに認知症のことをよりよく知ってもらうために専門医を招いて「認知症基礎講座」も開くようになりました。

ボランティアの活躍の場として、デイケアに出てくることができない患者さんの家に行き、話し相手になり、仲良くなって一緒に散歩に行くなど、患者さんの社会性を維持し症状を進行させない効果もあります。医療と介護保険では埋めることのできない隙間をボランティアの方々がフォローすることで認知症の患者さんやご家族を地域で支えることにつながっています。

 

患者さんの家族とも会合を 認知症を介した地域づくりを

砂川市には認知症患者の家族会があります。月に1回例会を開いているのですが、NPO会員も時間の許す限り必ず参加しています。自分と同じ境遇の他の家族の話を聞いて介護の大変さに共感することで癒されるのです。「私たちが共感するよりも家族同士でお互いの苦労を話す方がカウンセリング効果はより大きいのです。家族が心を開ける場をできるだけもてるようにするのも会の役割ではないかと思います」と小泉代表は会のあり方を説明します。

また、家族支援として認知症の治療やケアに関する社会資源にどのようなものがあり、どこにあるのかが一目でわかる認知症社会資源マップも制作しています。

中空知でこれからますます認知症の人が増えるのは必至です。それにともない医療、介護、ボランティアのさらなるレベルアップが求められます。「NPO法人からより公益性が大きく、寄付も受けやすい公益社団法人への移行も考えなければいけません」(小泉代表)。神部さんは「認知症医療の充実が生まれた土地で育ち、最期を迎えることができる地域づくりの基盤となるのではないでしょうか」。高橋さんも「市民が認知症を深く理解して、認知症の人が住みやすい地域こそが、だれにでも住みやすい地域だと思います」と、と指摘しました。

 

 

取材日:2011年4月25日

中空知・地域で認知症を支える会のみなさん

NPO法人 中空知・地域で認知症を支える会

〒073-0162 北海道砂川市西2条北4丁目1番20号

【関連施設】 砂川市立病院

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