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習ったことをすぐに忘れても、生涯、学び続けよう
<岐阜県岐阜市 平林クリニック>

平林クリニック・平林聡一郎院長 平林クリニック 院長 平林聡一郎先生

岐阜県で最初に開設された、もの忘れ専門デイケアの名称は「分教場二十四の瞳」。
誰もが共通して持つ「学校の思い出」を生かした学習療法が、認知症患者さんのBPSD(周辺症状)の軽減と自信の回復に成果を上げています。

島の分教場をイメージした施設で学習療法を実践

「分教場二十四の瞳」での授業風景 「分教場二十四の瞳」での授業風景

岐阜市の中心部に立地する平林クリニックは、精神科・心療内科のクリニックに、もの忘れ外来、精神科デイケア、もの忘れ専門(認知症)デイケアを併設しています。

もの忘れ専門デイケアでは音楽療法、回想法、五感刺激療法、芸術療法など様々な心理療法に積極的に取り組んでおり、なかでも特に力を入れ、当施設の大きな特徴となっているのは「読み、書き、そろばん」による学習療法です。

このデイケアの名前は「分教場二十四の瞳」。小説「二十四の瞳」に登場する島の分教場をイメージして、黒板、教壇、木製の机と椅子で学校の教室を再現しました。

「認知症の患者さんは最近の出来事を忘れても、昔のこと、子どものころのことはよく覚えておられます。教室は利用者全員が共有できる思い出の場所であり、同時に『今日、覚えたことをすぐに忘れてしまうかも知れないけれど、それでも、生涯、学び続けましょう』というメッセージを込めた空間です」と院長の平林聡一郎医師は語ります。

分教場は当クリニックの開設者である平林幹司氏のアイデア。1985年に現施設の近くでテナントとしてクリニックを開設した当初から、学校を模した「分教場」をつくることをめざし、廃校となったホンモノの小学校を活用する道を模索したこともありました。

「1985年というと精神科医療も認知症ケアも、まだ社会の理解が薄かった時代。最初は集患に苦労したようですが、街なかにクリニックをつくることで地域に開かれた医療・ケアを実現したいという想いが強かったのです。先代理事長は、そもそも認知症が専門で、学習療法が注目されるはるか前から独自に具体的なイメージを持っていたようです」と平林院長。

念願のデイケア併設クリニックが実現したのは、開院から約20年後の2004年4月でした。

 

スタッフが教科を分担して授業 家庭科や工作で活躍する利用者も

平林クリニック・磯貝勝さん 平林クリニック 看護師 磯貝勝さん

分教場は最大20人の「少人数学級」で、利用者が生徒、スタッフがそれぞれ教科を担当する先生です。午前と午後に1時間ずつの授業があり、主に午前中は国語・算数・理科・社会などの座学、午後は身体を動かすレクリエーションを行っています。

理科を担当している看護師の磯貝勝さんは、「1円玉を水に浮かべたり、香草の匂いを確かめたりといった簡単な実験もやっています。五感を刺激するような実験が好評ですね。また、授業に限らず私は『笑い』担当を自認していて、古い映画を見て寅さんの口上を真似たり、いつもネタを探しています。笑いは伝染しますから、みんながドッと笑ってくれた時などは本当に嬉しいですね」と日々の工夫を語ります。

利用者たちは先生(スタッフ)が工夫を凝らした授業を楽しむと同時に、計算問題や漢字の書き取り、書道などには真剣な面持ちで取り組んでいます。「家庭科や工作の授業もあるのですが、ベテラン主婦の女性たちは華麗な包丁さばきを見せてくれますし、男性たちのノコギリやカナヅチの扱いも見事です。自宅では『危ないから』と使わせてもらえないことも多いでしょうが、分教場では安全に配慮して挑戦する機会を設けています」(磯貝さん)

また、利用者が自ら語り、自己表現を行うことで自信回復を図るため、「朝の会」で自己紹介を行うなど主役体験の機会をつくるようにしています。

教室という空間が利用者に適度な緊張感をもたらし、自然に同窓意識や仲間意識が生まれることもあり、分教場ではBPSD(周辺症状)の明らかな改善がみられます。

 

お弁当を持って遠足に 目標は修学旅行の実現

昔の懐かしい思い出を呼び起こす、学校さながらの手洗い場 昔の懐かしい思い出を呼び起こす、
学校さながらの手洗い場

季節のスケジュールも学校風で、5月から1学期がスタートし、お盆期間を夏休みとして2学期は年末まで。冬休みをとって年明けから4月が3学期で、ゴールデンウィークが春休み。学期ごとに始業式、終業式を行い、終業証や通信簿の授与式もあります。

季節ごとの遠足もあり、5kmほど離れた岐阜公園などにお弁当を持って出かけています。岐阜市の隣の各務原市にある航空宇宙科学博物館に行った時には、戦時中にパイロットだった利用者がとても喜び、生き生きとしていました。これまでの遠足の行き先は近隣の公園や施設でしたが、今年(2011年)の春遠足は、少しだけ遠出をして名古屋のビール工場に行くことを計画しています。

遠足以外でも、分教場の先生と生徒はよく外に出かけています。

「桜の季節はお花見に行き、近くの寺社をお参りし、オープンカフェに出かけることもあります。河原でお弁当を食べるだけでも気分が上向きますからね。外出中の笑顔の写真にご家族が驚くことも多いですよ」(磯貝さん)

 

習ったことを忘れてもいい でも治療はあきらめない

学習療法といっても新しいことを覚えられるわけではありません。

とても楽しそうに生き生きとした表情で授業を受けておられたのに、自宅でご家族に『今日は何をした?』と聞かれて、答えられないということも珍しくありません。忘れてしまっても構わない、楽しく学び続けることが大事です。しかし、私たちスタッフはあきらめずに治療に取り組んでいかねばなりません。『楽しければいい』と考えてしまわないよう注意が必要ですね」と平林院長は語ります。

とはいえ、どんなに治療に尽力しても認知症は徐々に進行します。症状が進んだ利用者にあわせて授業を行うと、新しい利用者にとっては簡単すぎるものになるのが教室形式の難しさ。症状が軽い場合、もの忘れ外来への通院を選ばれることも多く、また若年性認知症の場合は精神科デイケアを利用されるケースもあります。

逆に入院など次の段階へ「卒業」していく利用者もいます。「以前、末期癌の患者さんでBPSD(周辺症状)も重くなっていたにも関わらず、『ここに通い続けたい』と希望された利用者があり、スタッフで相談して受け入れることを決めて、最期まで通っていただきました。『ここが好きだ』と感じていただけるのはとても嬉しいことですが、他の利用者をおろそかにはできないので、どの段階で卒業をすすめるかは、とても難しい課題ですね」(平林院長)

今後、取り組んでいきたいのは地域との連携強化です。現在も外出を積極的に行っていますが、認知症患者が学び、遊び、楽しく暮らすことができるということを地域に発信し、地域全体で認知症患者を支える社会をつくるのが目標。「地域の皆さんに信頼していただけるよう、分教場、もの忘れ外来、精神科デイケア、それぞれを今よりさらに進化させて、街のなかでキラリと光るメンタルクリニックにしていきたいと思っています」と平林院長は目標を語っています。

 

 

取材日:2011年5月25日
平林クリニックの外観

平林クリニック

〒500-8345 岐阜県岐阜市菊地町2-41
TEL : 058-274-9600

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