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脳卒中の治療・研究で蓄積したデータを認知症に生かす
<秋田県秋田市 秋田県立脳血管研究センター>

秋田県立脳血管研究センター 神経内科学研究部 部長 長田乾先生 秋田県立脳血管研究センター
神経内科学研究部 部長 長田乾先生

2008年の高齢化率が28.7%、2015年には33.1%に達し全国1位になると推計されている秋田県ですが、1968年から脳卒中の診療と研究に取り組む秋田県立脳血管研究センターが、認知症分野でも全国をリードする治療と研究の取り組みを進めています。

脳卒中を専門とする病院に 「もの忘れ外来」を開設

秋田県立脳血管研究センターは1968年、脳卒中の診療と研究を通して、その予防と治療方法を確立することをめざして設立されました。当時、脳卒中の病態はまだほとんど解明されておらず、検査方法は限られ、有効な治療法もほとんどなかったのです。同センターは、県立病院でありながら積極的に基礎研究に取り組み、がんの早期発見を可能にした画像診断装置「PET」の開発に非常に大きな役割を果たしたことでも知られています。

脳神経疾患、循環器疾患の治療と研究にも取り組む同センターに「もの忘れ外来」が開設されたのは2004年。新患の診察枠は週に6名ですが、実際には10~15人に対応しています。「初診で専門医の問診に加え、臨床心理士による検査、CT、心電図などを行い、その日のうちに診断結果の説明をしています。ほかに再診の患者さんもいますので、これが精一杯の数ですね」と神経内科学研究部長でもある長田乾先生は語ります。

同センターのもの忘れ外来の特徴は、脳卒中の専門病院ならではの画像診断技術です。初診の結果や希望によって後日、MRI、血流SPECT、頸動脈エコーなど、より精度の高い検査・診断を行うことができ、画像診断のデータは同センターの神経放射線科の医師が読影を行っています。

 

評価の高い画像診断技術に加え 丁寧な検査と問診を重視

画像診断を得意とする同センターですが、長田先生が強調するのは問診の大切さ。「どんな症状がいつごろから出始め、どんな風に進んできたのか、時系列で整理することが基本です。孫の名前が出てこないのは言語障害の可能性があるし、モノを無くすのは注意障害かもしれない。すべてを『もの忘れ』の一言で片付けてしまっていては、認知症の原因疾患やその重症度を診断することはできません。画像診断のデータは重要な手がかりとなりますが、あくまで補助診断です。臨床医の経験や『勘』のようなものが役に立つことも多いのです」(長田先生)

丁寧な問診とは、エピソードを聞き取ることだと長田先生は言います。「ご家族から話を聞く際も状況や背景が重要です。『夜に寝てくれないから睡眠薬を出して欲しい』と希望されても、よく聞いてみると昼間にうとうとしているのが原因で、デイサービスを奨めたら昼間の活動性が高まり夜も眠れるようになったということも少なくありません。かかりつけ医の先生方が紹介してくださるときも、できれば単語ではなく文章で、物語として残していただけると専門医にとって有益な判断材料になりますね」(長田先生)

同センターで診断後、紹介状をいただいたかかりつけの先生にお返事をする場合、画像診断結果のデータなどに加えて、問診結果の詳細な記録が返されています。「長年、患者さんを診ていた先生が知らなかったエピソードが含まれていて驚かれることもあります。その驚きを通して、認知症患者からじっくり話を聞くことの重要性を再認識していただきたいという願いも込めています」と長田先生は語ります。

 

家族や地域の状況を知り 支援することも治療の一部

秋田県立脳血管研究センター 神経内科学研究部 研究員 山﨑貴史先生 秋田県立脳血管研究センター
神経内科学研究部 研究員 山﨑貴史先生

「認知症というのは愁訴のない病気なのです」と語るのは、もうひとりの担当医である山﨑貴史先生です。「ほかの病気では、本人が吐き気、頭痛、発熱、胸痛などを感じるものですが、認知症の場合、困っているのは家族で、本人は特に不具合を感じていません。ごく初期の患者さんにみられる『もの忘れが心配』と言うのが唯一の愁訴かもしれませんね。この段階でもの忘れ外来に来た方でも、独居などの場合、症状が進んで『もの忘れが心配』という自覚もなくなってしまい、それきり2度と来ない可能性があります。そうなると治療薬やケアの経過を確認できませんし、介入することすら難しくなります。ですから、初診の際に、認知症の有無や進行度に関わらず、家族や地域の状況まで把握しておくことが大切です。診断して薬を処方すれば専門医の役目は終わり、というわけにはいかないのです」(山﨑先生)

秋田県では、高齢夫婦が2人で暮らしていて介護者も高齢であることが珍しくありません。認知症のために車の運転ができなくなると、生活が立ち行かなくなる地域も多くあるなど、それぞれの生活に合わせた対策が必要です。「複雑なケースは当センターに所属するソーシャルワーカーに任せますが、私も介護サービスや他の社会資源の活用方法について勉強し、ご家族と一緒に解決策を考えています。そこまで踏み込んでいかないと、治療そのものも成り立ちませんからね。当センターは診断、治療の技術や経験で全国屈指のレベルだと自負していますが、社会資源に関する情報提供や連携に関しても全国に先駆けた取り組みを進めて行きたいですね」と山﨑先生は語ります。

 

すべての医療スタッフが 患者と家族の不安に寄り添う

秋田県立脳血管研究センター 外来看護師長 鎌田千鶴子 外来看護師長 鎌田千鶴子さん
秋田県立脳血管研究センター 医療ソーシャルワーカー 社会福祉士・精神保健福祉士 昆百合子さん 医療ソーシャルワーカー 社会福祉士・
精神保健福祉士 昆百合子さん

秋田県立脳血管研究センター 看護師 小松美喜子さん 看護師 小松美喜子さん

臨床心理士は3名体制で、ひとりの患者さんに30分から1時間をかけて心理検査を行っています。

「もの忘れの自覚がある患者さんもおられますが、『自分はまだ大丈夫!』と思っている方も多く、不用意な言葉をかけると怒らせてしまいます。ご家族も不安を抱えておられます。検査を間違いなく進めることも重要ですが、その意味をきちんと説明し、言葉かけをするなど安心していただくことが第一歩ですね」と、臨床心理士らは語ります。

もの忘れ外来を担当する看護師は現在8名。入院病棟とのローテーションで脳卒中後遺症の患者さんにも多く接しているため、外来に多いアルツハイマー型の患者との違いを意識しながら対応しています。「外来に来られる患者さんは、普段と違う環境にたいへん緊張しておられますね。ストレスが多いと検査にも影響が出ますので、ご家族にも目を離さないようにお願いし、状況を見て別室に案内することもあります」と外来看護師長の鎌田さんは言います。

ソーシャルワーカーの昆さんも、「さまざまな社会福祉サービスがありますが、ご家族がご存じないことも少なくありません。支援する上で、今後の生活を患者さんやご家族と共に考え、まずは不安や悩みを丁寧に聴き取ることが大切だと考えています」と心がけを語ります。

同センターでは、医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどすべてのスタッフが、症状だけでなく家族や地域の状況に気を配る体制が築かれています。看護師の小松さんは、「私の家族が認知症になったら、当センターの医師に診察してもらいたい、と心から思いますよ。ここは、ご家族と治療や介護に協力する専門スタッフとの出会いの場だと思っています」と語ります。

 

心機能などと認知症の関連から 治療方法の開発にも挑戦

同センターの受診者の平均年齢は約75歳です。このような脳卒中の研究機関である特色を活かして、高齢者に多く見られる疾患と認知症の発生・進行の関連についての研究も進めています。

山﨑先生たちの調査によると、心機能の低下などで脳の血流が悪くなることで認知症が進むケースが見られると言います。「高血圧は脳梗塞や心筋梗塞の危険因子ですが、80歳代ともなると血圧が高い人のほうが認知機能の衰えが少ない傾向があります。高血圧の治療も年齢に注意しないと認知症を進めてしまう可能性があるということを、知って欲しいですね」(長田先生)

糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は血管を傷めます。それが脳血流にも影響し認知症を進める危険因子になっていることがわかってきており、総合的なリスク管理のあり方についての研究も進めています。「認知症の発生・進行を誘発する危険因子がわかれば、予防や進行を遅らせる治療も可能になるはずです。認知症は変性疾患だから治らない、非専門医には難しいと考える医師も多いですが、必ずしもそうとは言い切れない。生活習慣病が認知症に関わっているのなら、かかりつけ医の先生方の役割は大きいと思います。血管障害についてのデータが蓄積している当センターの研究機能を生かして、認知症を予防する、進行させないなど危険因子との関連についての研究にも積極的に取り組んでいきたいと考えています」と山﨑先生は決意を語ります。

 

内科以外の医療機関も巻き込んだ ネットワークづくりに取り組む

県下でもっとも大きな認知症専門医療機関である同センターで認知症治療薬を処方している患者さんは現在800人程度ですが、秋田県の認知症患者さんは24,000人にのぼると推定されており、地域の病院や診療所とのネットワークづくりを早急に進める必要があると長田先生は言います。「地域医療では認知症は内科の領域であり、ネットワークも内科に片寄りがちですが、白内障の人が受診する眼科、腰痛を抱える人が通う整形外科など、高齢者が利用する医療機関すべてを巻き込んでいきたいですね」(長田先生)

診察・治療そして研究でも全国をリードする同センターを中心として、秋田県の認知症治療のネットワークを築く取り組みが始まっています。

 

 

取材日:2011年6月14日
秋田県立脳血管研究センターの外観

秋田県立脳血管研究センター

〒010-0874 秋田市千秋久保田町6番10号
TEL : 018-833-0115 

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