『笑顔とこころでつながる認知症医療』サイトドメイン変更のお知らせ 「お気に入り」や「ブックマーク」の変更をお願いします

詳細はこちら

ホーム > 地域から探す【中国】 > 島根県 > 島根県出雲市 医療法人エスポアール出雲クリニック
医療機関を探す

「認知症をタブーにしない」で家族とともに幸せに
<島根県出雲市 医療法人エスポアール出雲クリニック>

エスポアール出雲クリニック  院長 
高橋幸男先生
エスポアール出雲クリニック
院長 高橋幸男先生

出雲大社で知られる出雲市で、「認知症をタブーにしない」を合言葉に、支援活動、啓発活動に取り組んでいるエスポアール出雲クリニック。併設の認知症デイケア「小山のおうち」や小規模多機能型居宅介護施設「おんぼらと」などと一体となり、「認知症になってもいかに幸せに暮らしていくか」を追求した精力的な活動で、2005年に日本認知症ケア学会の奨励賞を受賞するなど、各方面から注目が集まっています。

ご家族の休養のために始めたデイケア

精神科診療所であるエスポアール出雲クリニックを1991年に開設した院長の高橋幸男先生は、もともと地域の精神科医として、特に統合失調症の患者さんを支える活動に力を注いできました。クリニック開設2年後に重度認知症患者さんのデイケア「小山のおうち」を併設したのは、「認知症のお年寄りの介護に疲れ果てているご家族が多いことを痛感し、その慰安のため」と振り返ります。平成21年まで35年連続高齢化率全国1位の島根県(平成22年度は2位、総務省調べ)は、当然ながら認知症の患者さんも多く、「一日患者さんをお預かりすることによって、ご家族に休養をとってもらいたい」(高橋先生)というのがきっかけでした。

いざ開設してみると、「認知症は治らない」「わからなくなっている」というそれまでの認識が一変。患者さんと向き合うたびに、認知症になっても生活がしづらくなっているだけで、患者さんはわかっている、様々な思いをかかえている、接し方ひとつでBPSD(周辺症状)も防げることを実感。「ご本人の気持ちを汲み取ることから始めなければ」と痛感したと言います。精力的に認知症患者の治療やケアを行い、5年前には小規模多機能型居宅介護施設「おんぼらと」も開設。医療の「エスポアール」、デイケアの「小山のおうち」、そして泊まりや訪問サービスまで手がける「おんぼらと」と、認知症のケアに万端の態勢を整え、患者さんとそのご家族の幸せを追求・支援し続けてきました。

 

認知症患者の言葉から見えてくるもの

高橋先生が何より大切にしているのは、認知症患者さんの気持ちを汲み取り、ご家族と共有すること。というのも、家族が認知症になった場合、本人の気持ちを理解していないがゆえに、家庭内で孤立し、居場所がなくなり、不安や焦燥の中でBPSD(周辺症状)が現れ、さらに家族関係が悪化するという不幸なパターンに陥ることがわかってきたからです。患者さんの多くが何もわかっていないどころか、認知症になった自分をつらいと感じ、自信を失っていることすら知らない家族も多いのだと言います。

"認知症"の経過 (画像クリックで拡大)

高橋先生は、どのような経過で認知症になり、BPSD(周辺症状)を引き起こすのか、わかりやすい図を示しながらご家族に理解してもらうことから始めます。

「認知症の初期は言葉が出づらくなり、物忘れが多くなりますが、周りは愛情があるゆえ、言い間違いを訂正したり、指摘したりします。そのうちどうせわかってないだろうからと、温かい言葉がけや普通の会話をしなくなる一方、指摘だけをしてしまうことで、本人は常に叱られていると感じ、不安や焦燥から混乱を生じます。それがBPSD(周辺症状)を引き起こし、家族関係も悪化させているのです」(高橋先生)。

この発生機序がわかれば、おのずと対応も変わってきます。そのため、初診では患者さんの心をときほぐし、「気持ちをお話ししていただける状況をつくるようにしている」と言います。

「ご本人の言葉やつぶやきの中で『息子が怖い顔をする』『いつも叱られて』などの言葉を丁寧に拾っていく。そこから今この家族がどのような状態にあるのか見えてくるのです」(高橋先生)。

「死にたい」とまで思い詰めていた患者さんの息子さんに「いちいち指摘せず、聞き流し、普通の会話を増やして」とアドバイスしたところ、ガラリと状況が変わった例などは数え切れないと言います。

 

物忘れを認め合うことで楽になれる

エスポアール出雲クリニック 重度認知症患者デイケア施設 小山のおうち 看護師 野津美晴さん エスポアール出雲クリニック
重度認知症患者デイケア施設
小山のおうち 看護師 野津美晴さん

「小山のおうち」で18年間看護師として多くの認知症患者さんと接してきた野津美晴さんは、①集団で過ごすこと②主役体験③物忘れを認め合う、をケアの3本柱として挙げています。

「皆でお茶を飲むことから一日をスタートし、一緒にプログラムを楽しみます。ひとりにしないで、積極的に互いに関われるようにしています。また、認知症になって主役を外れ、社会や家庭で蚊帳の外にされている人も多いので、ここではその人が昔していたことや得意なことを主役になってしてもらい、なくした自信を取り戻していただきます。何より大事なのは、互いに物忘れを認め合うこと。『お互いさま、忘れますよね』という楽な関係づくりです。しばらく通ううちに、「午前はどんなことをしました?」と聞いても、「覚えてるくらいならここに来ないよ!」と明るく答えてくれるようになります。それで皆さん『おれも忘れたよ』と笑い合えるんです」(野津さん)。

最近始めたのは、メンバーの『ゆかりの地を訪ねる旅』という企画。「子どものときあの海で遊んだ」などの会話をもとに、ゆかりのある場所へ皆で出掛ける遠足のようなもので、好評を得ています。「なつかしんでくださる人もいれば、いざそこに着いても覚えていない人もいますが、その場へ行って空気を吸い、なんとなくでも昔の雰囲気を感じてもらえれば」と、今後も継続していく予定です。

 

認知症の人と家族の橋渡しの役割

小規模多機能型居宅介護施設 おんぼらと ケアマネジャー 北脇琴美さん 小規模多機能型居宅介護施設 おんぼらと
ケアマネジャー 北脇琴美さん

同院の併設施設である認知症高齢者グループホーム「おちらと」と「おんぼらと」の管理者、ケアマネジャーである北脇琴美さんが心がけているのは、「ゆったりと、一人ひとりと向き合い、その人の思いを受け止めるようにすること」と言います。出雲地方の方言で「おんぼらと」は「ふわふわとやわらかな」をイメージする言葉。そして「おちらと」は、「ゆったり、ゆっくり」の意で使われており、まさにおちらと、おんぼらとの精神で患者さんに向き合っている様子が伺われます。

「認知症の患者さんは、非常にゆたかで魅力的な方々です。そんな皆さんが私たちと変わらない生活ができるようにお手伝いしたい。ただ、この施設がすべてではなく、ご家族といい関係になり、ご自分の家庭で楽しい生活を送れることを目指しているので、私たちの役割は、あくまで家族との橋渡しになることだと肝に銘じています」(北脇さん)。

 

行政や福祉施設との連携、「交流塾」での啓蒙活動に尽力

メディアが認知症について取り上げる機会も増えたためか、かかりたくない、予防したいという思いで専門医の門をたたく人が増加し、早期発見が叫ばれています。ところが高橋先生は「皆さん知識は増えたようですが、認知症に対する悪いイメージは消えていない。本質を理解してくださっているわけではない」と苦言を呈します。高橋先生らは「マイナスイメージを修正し、認知症に対する正しい知識や向き合い方を知ってほしい」と2003年から「交流塾」という取り組みを始めました。

これは、高橋先生をはじめとする同院スタッフが地域のコミュニティセンターなどに出向き、認知症の正しい知識やたどる経過、患者との関わり、「小山のおうち」での実践例や事例などを紹介し、地域の人と交流するという取り組みです。最近では認知症の予防も内容に加わるようになりました。

参加者の多くが差し迫った問題と捉えている高齢の市民の方たち。しかしながら、高橋先生は「一番こういった知識が必要なのは働き盛りの40~50歳代の人たち。親が認知症になってから調べればいいと思わず、今から正しい知識を身につけておかないと、いざ肉親が認知症になったとき、幸せな生活はできにくくなります」と訴えます。

高橋先生は繰り返します。

「認知症という病気が問題なのではなく、認知症を病んでいることによって、どういう生き方をしているのかが問題。励ましているつもりの『しっかりして』という言葉に追い詰められていくのです。我慢し続けるのもストレスがたまりますから、ときには指摘してもいい。ただ、温かい家族の会話だけは絶やさないでほしい。認知症の真実がわかれば、本人もご家族も幸せに暮らしていけます」。

全国の自治体に先駆けて認知症フォーラムを開催するなど、もともと出雲市は精神保健に関して熱心に取り組んできました。そういった土地柄もあり、「行政・福祉・医療関係者との連携は非常によく、そういった方々にも交流塾は支えられている」と高橋先生。

高橋先生の啓蒙活動は、出雲から日本全国へと広がっていくことでしょう。

 

 

取材日:2011年6月30日
エスポアール出雲クリニックの外観

エスポアール出雲クリニック

〒693-0051 島根県出雲市小山町361-2
TEL : 0853-21-9779

施設のホームページへ

 

この記事のURLをメールで送信
医療機関を探す
新着施設から探す
地域から探す
  • 北海道 近畿
  • 東北 中国
  • 関東・信越 四国
  • 東海・北陸 九州・沖縄
カテゴリーから探す
  • 社会が考える認知症予防・治療・戦略
  • 日常診療における創意工夫
  • チーム連携のさらなる充実
  • ふれあいつながる作品展
  • バアちゃんの世界
  • バアちゃんの世界からわかる認知症の症状と対応のヒント
  • 「笑顔とこころ」をつなぐ声
  • お薬(剤形)の選択肢が増えました
  • 患者さんとご家族のための認知症の知識
  • 認知症相談窓口
  • 認知症医療・介護に関わる知識を掲載認知症情報誌
  • 認知症サポーターキャラバン
  • サイト運営企業の取り組み
  • 医療関係者の皆さまへ
トップページへ