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地域と連携しながら個別ケアと回想法を実践
<宮崎県宮崎市 医療法人ハートピア細見クリニック>

細見クリニック・細見潤院長
細見クリニック 細見潤院長

宮崎市の中心市街地に精神科・心療内科のクリニックと共に開設されたデイケア施設で、高齢者一人ひとりの歴史、生き方、価値観を尊重した個別ケアを実践。地域に開かれた取り組みが高齢者を支える社会を育てつつあります。

精神科医療も認知症ケアも地域に開かれた形で

医療法人ハートピア細見クリニック(精神科・心療内科)の細見潤院長は、2002年9月にクリニックを開設するまで約14年間、宮崎県精神保健福祉センター長を務めていました。職務上、全国の多くの精神科医療の現場を知り、理想の医療のイメージが膨らむ一方で、センター長として診療以外の業務が多く、診療にあたる時間をあまり持てないことに限界を感じたのが、開業を決意した理由でした。

それまで郊外で行われることが多かった精神科医療を街の中心部で、地域に開かれた形で行いたいという思いから選んだのが宮崎市の中心、正面は宮崎市役所という立地。同時に認知症ケアも住み慣れた街のなかで行われるべきだという考えから、重度認知症デイケア施設「かなりあ」が併設されました。

デイケア施設「かなりあ」・小川敬之顧問 デイケア施設「かなりあ」
小川敬之顧問

施設は1階が駐車場、2階がクリニックでデイケア施設は3階。現在、「かなりあ」の顧問である小川敬之氏(九州保健福祉大学作業療法学科教授)に計画段階から協力を仰いで設計された空間には、高齢者が安心して心地よく過ごせるための配慮と工夫が随所に施されています。

まず目を引くのは、昭和の暮らしを彷彿させる足踏みミシンや柱時計、アンティークの電話機など。高齢者の体型にあわせた低めの椅子やゆったりしたソファが並ぶ洋室の奥には和室もあり障子には本物の紙が貼られています。認知症高齢者ケアのベテランで、住環境整備にも詳しい小川顧問の「施設を何か特別なことをする場所ではなく、友だちとお喋りするために出かけ夕方には帰宅するという生活の流れのなかに自然に位置づけたい」という思いが込められた空間です。

 

高齢者の自主性を重んじるノープログラムの個別ケア

デイケア施設「かなりあ」が目指しているのは、利用者が主体的に行動し、スタッフがそれに寄り添う個別ケアです。しかし、その実現は簡単ではありませんでした。利用者の主体的・自発的な行動を待つには忍耐力が必要です。開設当初は、利用者の役に立っているという実感を求めて、スタッフ主導の働きかけをしてしまいがちでした。「この当時のプログラムは利用者よりスタッフの『安心』のためにあったのではないか、と反省しています」と認知症ケア専門士でもある松田ヒトミ事務長は語ります。

デイケア施設「かなりあ」認知症ケア上級専門士・松田ヒトミ事務長 デイケア施設「かなりあ」
認知症ケア上級専門士 松田ヒトミ事務長

現在、「かなりあ」では、最大で4~5人の利用者にスタッフが責任を持って関わる「テーブル担当制」をとり、「ノープログラム」のケアを実践しています。利用者が一斉にひとつの活動を行うことはほとんどなく、仲間とお喋りをしている人、ひとりで編み物や工作をしている人がいれば、協力して料理をつくるグループもあります。適宜、スタッフが何かを始めると、それに興味を持った利用者が自主的に参加するのです。活動には参加せず、奥の部屋で静かに過ごしている人もいます。利用者は自分がしたいこと、得意なことに参加するので焦りを感じることがなく、「混乱」も少なくなっています。「ノープログラム」の個別ケアは、その重要性をスタッフ全員が理解し、強い意志を持って取り組むことではじめて可能となります。

「スタッフの責任感も高まり、利用者一人ひとりの背景を知って、この人が楽しめることは何なのかを考えるようになりました。認知症の高齢者のためにデイケアで何ができるのか、今もスタッフ全員で模索中です」と松田事務長は取り組みの成果と意気込みを語ります。

 

回想法の実践にボランティアの協力

「かなりあ」では毎週、回想法のグループワークを行っています。 自分の人生を振り返り整理しようとするのは高齢者の自然な心理であり、回想法は、そんな心の動きに共感的に関わることで認知症患者の精神的・情緒的な安定の向上に繋げようとする技法です。

回想法のグループワークは2009年から行ってきましたが、聞き取りで得られた情報をスタッフが日常支援に生かし切れていないという反省から、2010年、回想法のなかで語られた内容を記録する取り組みを始めました。

聞き書きと内容の編集はNPO主催の聞き書き実践講座を修了したボランティアが担当し、ボランティアと職員が協力して個人史の冊子を作成。話の内容からイメージした表紙をつけ、写真を入れてご本人やご家族に進呈しています。(もちろん事前にご本人、ご家族の同意を得たうえでの取り組みです)

回想法の実践と個人史の作成は、利用者だけでなくスタッフにとっても大きな効果がありました。まず、グループワークに参加しなかったスタッフが、そこで語られた内容を知ることができます。参加していたスタッフも回想法を円滑に進めることに気を取られ、内容を深く心にとめるのが難しいので、まとめられた物語を読むことで再確認することができます。つまりスタッフ全員が、利用者それぞれの歴史を詳しく知り、共有することでケアに生かすことができるのです。なにより重要なのは、スタッフが心から利用者を尊敬すべき人生の先輩として捉えることができるようになったことです。

デイケア施設「かなりあ」作業療法士・甲斐晶子主任 デイケア施設「かなりあ」
作業療法士 甲斐晶子主任

作業療法士の甲斐晶子さんは「私のような若い人間にとって、高齢者の方がどんな想いを持って生きてこられたか理解するのは難しいことです。その方の人生を感じ取る想像力を磨いて、最後まで『自分らしい』人生を送っていただけるよう努力する日々です」と語ります。

ご家族からは「良い記念になる」「まだこんなに覚えていたのですね」という喜びの声が多く寄せられ、また、聞き書きを担当するボランティアも同様に、認知症の高齢者をひとりの人間として尊重する思いを強くしています。

 

自己完結的ではなく地域社会との連携を

「風通しの悪い組織は腐るというのが私の持論。ですから、個別ケアで成功を収めている医療機関にスタッフを研修で送り出したり、実習やボランティアを積極的に受け入れることで、自己満足に陥らない施設づくりを進めていますが、紆余曲折の繰り返しです。松田事務長といつも頭を抱えながら試行錯誤しているんですよ」と細見院長は組織運営について語ります。

利用者が施設外で活動することも積極的にサポートしています。「地域にある社会資源を積極的に使うことは、高齢者にとって地域と繋がる喜びになり、スタッフも勉強になります」(細見院長)。

昔からある喫茶店に利用者とスタッフが連れだって出かけて、普通に飲み物を注文し語り合うのは週1回の恒例行事。また、同喫茶店の厚意で月に1度開催されるイベント、県総合博物館敷地内の農園を借りての野菜づくり活動などには、デイケア利用者だけでなく一般の参加者も多く訪れています。これは認知症の高齢者が社会と触れあうことで、地域全体で高齢者を支える街をつくるための大切な学びの場となっています。

「地域の方たち一人ひとりが認知症を身近な問題として捉えて、地域ケアに参加していく方法をスタッフと共に開発していきたいのです」と語る細見院長。その取り組みは、着実に歩みを進めています。

 

 

取材日:2011年7月8日
ハートピア細見クリニックの外観

医療法人ハートピア 細見クリニック

〒880-0001 宮崎市橘通西1丁目5-3
TEL:0985-35-1100

施設のホームページへ

 

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