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地道な啓発活動により町ぐるみで重症化を緩和
<福井県敦賀市 医療法人 敦賀温泉病院>

院長 玉井顯先生 院長 玉井顯先生

福井県南西部の港町、敦賀市。認知症高齢者への積極的な支援および町ぐるみの連携で注目を集めている自治体のひとつです。その中心的役割を担っているのが、開院21年目を迎えた敦賀温泉病院。同院は福井県より「認知症疾患医療センター」として指定されており、理事長の玉井顯先生を中心に、徹底したチーム医療と地道な啓発活動で、「患者さんもご家族も満足する病院」を実現しています。

地域に出て「認知症の実態を知ろう」と開業

認知症治療はもちろんのこと、ご家族への介護指導や総合的なリハビリテーションにも力を入れている敦賀温泉病院は、玉井顯先生の「患者さん、ご家族ともに満足いただくまで診せて頂きたい」という思いから生まれました。

きっかけは、約25年前。大学病院に勤務していた際、北陸の山深い地へ訪問診療に行ったとき、重度認知症患者と、介護に疲れ果てた何人ものご家族に出会ったのです。そして、「病院に行ったら『家で看られない人は病院でも無理』と入院を断られた」、というご家族の力ない言葉が胸に突き刺さりました。

「大学病院にとどまっていては、認知症の実態はみえづらい。自ら地域に根ざした診療をしなければ・・・」という思いが、開院へとつながりました。

現在ベッド数120床、内科・心療内科・精神科・循環器内科・歯科・リハビリテーション科からデイケアまでを有する敦賀温泉病院は、検査技師、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士、介護福祉士、音楽療法士といった多くのスペシャリストが揃った病院として知られ、地元敦賀の人々の健康を支えています。

 

スムーズな受診のための「分業と情報収集」

看護師 松村菜穂美さん 看護師 松村菜穂美さん

同院の特色のひとつに挙げられるのが、徹底したチーム医療。「できる限りすぐに診てあげたい」(玉井先生)との思いから予約不要となっているため、分業方式で「待たせない診療」を実践しているのです。すなわち、検査技師が患者さんの検査データをとっている間に、精神保健福祉士がご家族から話を聞き、書類を作成するという風に、各担当者の連携プレーで診察まで進められます。患者さんと玉井先生が顔を合わせるときには、必要なデータが全て出揃った状態で、じっくりと話が聞ける、診断ができるというわけです。「なかには気がすすまない患者さんをご家族が半ば強引に連れてこられる場合もあるので、お待たせしたくない。いかに診察までスムーズに運べるかが問題」と言うのは、認知症専属の看護師として手腕をふるう、松村菜穂美さん。看護業務はもちろん、様々な情報の集約と整理、病院側と患者さん側の橋渡し役なども担う、スタッフの要です。

同院の「分業と綿密な情報収集」は、「待たせない診療」を実現するばかりか、精神科の病気なのか、認知症なのかといった鑑別診断を厳密に行えるという利点があります。「脳外科的な疾患、神経疾患、前頭側頭葉変性症、老齢期のうつ病・・・何十種類もの似通った疾患をきちんと鑑別することによって、それ相応の医師に紹介できるし、それぞれの症状に合った、的確な薬を処方できます」(玉井先生)。

 

ご家族のストレスケアにも注力

しっかりと診断をつけ、的確な薬を処方した結果、「患者さんが快方に向かうのを肌で感じられ、ご家族にも喜んでもらえるのが、やりがい」とスタッフは口を揃えます。ご家族から「生活支援アンケート」をとり、聞き取りに力を入れ、介護指導などを行うのも、少しでもご家族の負担を減らし、患者さんとともに幸せになってほしいという願いから。

「治療は患者さんご本人へのものですが、ご家族にも同等に向き合い、ストレスケアをしてあげたい」(玉井先生)というのが、同院の共通目的でもあります。

元々デイケアのスタッフをしていたという松村さんは、家族目線を忘れず、ご家族からの相談にはじっくりと耳を傾けるようにしています。「『認知症になって人が変わったようになっていたのに、元の母親に戻った』『何でも相談できる』という生の声が、何より嬉しいですね」(松村さん)。

また、玉井先生が実践していることのひとつに、「ともに町を歩く」という無報酬の取り組みがあります。「外来で話を聞くだけでは、間接的にしかわからない」と、休日や外来終了後、患者さん、ご家族と一緒に町を歩いてみたり、家庭での様子を見せてもらったりしているのです。「BPSD(周辺症状)が具体的にどの程度なのかといった患者さんの抱えている問題が実感できるし、患者さんの症状に対するご家族の理解を深められるのです」(玉井先生)。ともに町を歩くことで、「この地域は団地が多いから迷いやすいのも無理はない」「縁側を持つ家が減り、塀ばかり目立つ」など、町の特徴や変化に気がつくようになったと言います。同時に、高齢者と町づくりをテーマにした全国フォーラムなどにおいて「同じ建物が続く団地のような場所では工夫が必要なのでは」「昔からあるお地蔵さんなどはランドマークになるので残した方がいい」など、自らの実践を通して積極的に問題提起も行っています。

 

スタッフとともに運動会で汗!

作業活動で制作した季節感のある貼り絵を施設内に展示している。 作業活動で制作した季節感のある貼り絵を
施設内に展示している。

作業療法士 奥野綾佳さん 作業療法士 奥野綾佳さん
作業療法士 長谷川友香さん 作業療法士 長谷川友香さん
介護福祉士 立花正見さん 介護福祉士 立花正見さん

入院施設とデイケアを有する同院では、医師、看護師を中心として様々な職種の方々が患者さんの日常を支え、様々な活動を通して生活機能回復訓練を行っています。お花見や保育園児との交流など、行事関連に力を注いでいることも、特長のひとつ。

例えば運動会などは「私たちは企画運営だけではなく、患者さんと一緒にチームを組んで、ともに優勝めざして競技するんです」と作業療法士の奥野綾佳さんは話します。玉井先生はもちろん、スタッフ総出で汗をかく一大イベントを楽しみにしている患者さんも多いのだとか。同院の「チーム医療」がこういった活動においても発揮されていると言えます。「認知症の方は昔出来たことが出来なくなっていきますが、楽しい関わりを通して、できる活動を私たちが発見し、維持してあげたい。そのためにいろんな場面を提供していきたい」(奥野さん)。

同じく作業療法士として働く長谷川友香さんが常に心にとどめ、指標としているのが、「楽」の一文字。「ラク、楽しむ。いつも心に持っていたい一文字で、患者さんにも『楽』を感じてほしい。私たちが率先して心から楽しめば、患者さんも楽しんでくださる。楽しい気持ちをできるだけ長く感じてほしい」(長谷川さん)。

介護福祉士の立花正見さんのモットーも、「患者さんが一日でも長く笑顔で過ごせるように力を尽くすこと」。特に配慮しているのが、患者さんのプライドです。「第一線を退き、なくしかけた自信をとり戻してもらいたい。そのためにもたくさんお話をしていただき、患者さんの歴史を知るようにしています」(立花さん)。昔、裁縫で身を立てていたと聞けば、実際に裁縫仕事などをするときに、アドバイスをもらったりしています。



 

地道な啓発活動で軽症での受診が増加

玉井先生は開院当時、地元の知り合いに「この町にはどのくらい認知症の方がいらっしゃるのかな」と聞いたとき、「10人くらいじゃないの」という答えが返ってきて、非常に驚いたと言います。「皆さん、あまりにも認知症のことを知らなすぎる。または、偏見があったのかもしれません」(玉井先生)。

果たしていざ開院すると、重度の患者さんばかり来院されました。「重度にならないと受診するべきではないと考えていたり、治らないと思い込んでいたり・・・。認知症の実態や脳の仕組みなどを啓発していかなければならないと痛感しました」(玉井先生)。脳の病気であることがわかれば、偏見や誤解もなくなり、医療機関への敷居が低くな。その結果、認知症の進行を防ぎ、ご家族の負担を減らすこともできると考えたのです。

診療の合間を縫って、院内での勉強会はもちろん、講演会などを通して、認知症の仕組み、早期発見・早期受診で重症化やBPSD(周辺症状)は防げること、ご家族はいかに接するべきかといったことを、幅広く説いて回るようになりました。かかりつけ医からの紹介が多いため、非認知症専門医にも正確に認知症を理解してもらおうと、医療関係者を対象として3カ月に1度、症例検討会も行うようになりました。

現在も行われているこうした啓発活動は、重度の患者さんの減少および軽度での受診数増加という形で実を結ぶようになりました。

 

認知症が教えてくれる「絆の尊さ」

様々な取り組みや啓発活動、実績により、同院は若狭湾沿岸地域である嶺南地方の「認知症疾患医療センター」として指定されています。

「認知症になっても安心して暮らせる街づくり100人会議」の専門協力員であり、認知症サポーター養成講師を務めるなど、活動の幅をどんどん広げている玉井先生。早くから地域全体で支えていく必要性を説き、敦賀市の「認知症アウトリーチ専門チーム」という、早期発見・早期対応システムの発足にも尽力しました。地域と専門医、福祉が連携を取ることによって、よりよいアプローチをし、重症化を防ぐというこのシステムは、自治体のあるべき姿として注目を集めています。

最近では、認知症の方の自動車運転について関心を広めてもらおうと、公共施設や学校などで、寸劇も始めました。判断力も衰えてくる認知症。車の運転の問題も徐々にクローズアップされてきています。「劇にした方が皆さんわかりやすいと思うし、関心を寄せてくれるようです」という玉井先生。病院スタッフとともに、自ら舞台に立つことも。

「人々の絆がしっかりしていれば、連携プレーによって重症化を防げるし、負担を分けあえる。認知症は、絆の大切さを社会全体に教えてくれているように思うのです」(玉井先生)。

豊かな自然に恵まれた若狭湾沿岸の町から、住民の笑顔が絶えない町づくりは、着実に進められようとしています。

 

 

取材日:2011年8月17日
ながみつクリニックの外観

医療法人 敦賀温泉病院


〒914-0024
福井県敦賀市吉河41-1-5
TEL:0770-23-8210

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