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「脳の健康手帳」で地域ぐるみの認知症ケアを目指す
<愛知県刈谷市 医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院>

神経内科部長 丹羽央佳先生 神経内科部長 丹羽央佳先生

愛知県刈谷市の中核病院である刈谷豊田総合病院は、2010年10月に「もの忘れ外来」を開設。認知症の通常の治療に加えてアロマテラピーなど代替医療を採り入れたケアに取り組む一方、地域連携パス「脳の健康手帳」を作成、活用し、地域連携の充実にも力を入れています。

「もの忘れ外来」で時間をかけ診察、高齢化のニーズに応える

地域の中核病院として高齢社会のニーズに応えること、そして一般外来よりも時間をかけて認知症の診察と治療にあたること―この二つが、刈谷豊田総合病院神経内科に「もの忘れ外来」が設けられた大きな理由です。

「認知症の治療には、患者さんの家庭環境などが大きく影響します。患者さんの日常の振る舞いや、ご家族との関わり方などをじっくり聞いて診察しようとすると、どうしても時間がかかってしまい、一般外来の中では十分な対応ができません。これまでの診察で抱えていた問題を解決するためには、専門の外来が必要だと考えたのです」。そう語る神経内科医長・菱川望先生は、自らの提案で「もの忘れ外来」を開設。以来、専任担当医として診察、治療にあたっています。

外来受付は原則として週1回で、初診が4人、再診が15~20人ほどです。菱川先生と看護師、専任スタッフのほか、臨床心理士らも随時加わり、それぞれが緊密に連携しながら患者さんと家族に対応しています。

「単に症状を診るだけではなく、患者さんの家庭環境や社会背景を知り、患者さんをできるだけ全体的に把握しておきたい。そのための問診や診察に『時間がかかる』のは当然ですし、『時間をかけたい』という私自身の思いも強くありますね」こうした菱川先生の姿勢はまず問診に表れます。

 

じっくりと時間をかけて患者さんと家族に向き合う

神経内科医長 菱川望先生 神経内科医長 菱川望先生

「もの忘れ外来」での問診は45分間が基本で、医師を中心に看護師、専任スタッフが担当。複数のスタッフで行うことも少なくありません。「医師の私が直接聞くよりは、ワンクッション置いた方がいい場合もありますし、複数で聞くがゆえに問題が見えてくる場合もありますから」(菱川先生)というのがその理由で、状況に応じて診察の際にもできるだけ会話をするよう心がけているとか。

また、患者さんの家族にはかなり思い詰めて来院され「誰かに頼りたい、話したい」という方が多いため、家族との会話にかなりの時間を割くことも。

「結果的にご家族の話を聞く時間が長くなるケースが多いですね。スタッフはみんな聞き上手で、私はずいぶん助けられています」と、菱川先生は温和な表情で対応の様子を語ります。

もちろん、診断や治療法の説明にも気を配っています。患者さん本人に言いにくいからといって「ちょっと外してもらって」と断るとかえって患者さんは気になるもの。別室で検査をしているときに家族と話すなど、患者さんに不信感を与えず自然な流れの中で診察が行えるように工夫されています。

「認知症の治療を支えるのは、医師、薬、患者さん、そしてご家族の四本柱。特にご家族の正しい理解と協力がなければ、治療は良い方向には向かいません」。菱川先生は家族との対話の重要性を強く語るほか、ご家族の努力をねぎらうことも大切だと言います。

「ご家族の心労が多いことは計り知れませんから、『お父さんの笑顔が戻ってきたのは、あなたのおかげよ』と声をかけるなど、できるだけ前向きになってもらえるような言葉を選んでいます。『そんなことをしてはダメ』など、否定的な言い方は避けるようにしています」(菱川先生)。

こうした家族へかける言葉へのこだわりとともに菱川先生の治療を特徴づけているのが、ケアの一助としてアロマテラピーを採り入れていることです。

 

アロマテラピーで認知症ケアに潤いをプラス

「最近、寝付きが良くないんですが・・・」「じゃあこのアロマオイルを使ってみたら」―「もの忘れ外来」の診察室では、他の総合病院ではまず聞くことができない、そんな会話が交わされています。

 実は菱川先生、アーユル・ヴェーダに造詣が深く、「体調不良への西洋的・東洋的対処法」について女性誌にコメントを寄せるなど、その啓発にも力を注いでいます。

アーユル・ヴェーダの古典書の中にも香りを使った治療についての記載がありますが、アーユル・ヴェーダやアロマテラピーなどの代替医療を認知症の治療に生かすことは「もの忘れ外来」を設立した理由の一つでした。総合病院の一般外来で導入するのは難しいけれど、認知症の言わば代替医療の一つとしてなら生かせるのではと考えたからです。

「もちろん薬の代わりにはなりません。でもアロマテラピーが不眠に効果があることはデータで示されていますから、正しく使えば役に立つはずです。また、看護師さんもアロマテラピーを勉強していますし、奥様方にも関心を持っている人が多い。そこで話がはずんで笑顔が増えれば、それも治療にはプラスになりますから」と菱川先生は微笑みながらアロマの効用を説きます。

 

地域ぐるみのケアに向け「脳の健康手帳」を作成

「脳の健康手帳」 「脳の健康手帳」

ある日「もの忘れ外来」に、老人会の仲間が心配して連れて来た患者さんがいました。

「診察すると明らかに認知症で以後通院されていますが、ご家族は一度も当院に来られないのです。『仕事があるから』と・・・」。菱川先生は残念そうに少し顔を曇らせます。この患者さんの場合、ホームヘルパーが自宅での服薬の世話などをされているらしいとのこと。

菱川先生は「もの忘れ外来」での診察、治療に手ごたえを感じながらも、こうした患者さんもいる現状を憂い、「当院を含めた地域の関係者が連携して認知症をケアする仕組みが必要」だと、今後の課題を指摘します。

同院の神経内科部長・丹羽央佳先生は、「刈谷の中核病院である当院が連携の中心になるべき」とし、さらに続けて「連携の充実化を図るためには、専門の医療機関だけではなく、かかりつけ医、ホームヘルパー、ケアマネジャーなど、患者さんに関わる人すべてのレベルアップが必要です」と、連携とレベルアップの重要性を語ります。

そうした地域連携の具体的な取り組みとしてスタートしたのが、菱川先生が企画、作成した「脳の健康手帳」です。

 

ケア施設の拡充と連携の強化がこれからの課題

「脳の健康手帳」は、家族やかかりつけ医、専門医療機関の連絡先、検査の経過などが記されたノート型の地域連携パスです。

菱川先生が日本各地での地域連携の取り組みを調べるうち、沖縄で活用されているパスが同院にも有効だと判断。沖縄認知症研究会に連絡し、アレンジの了解を得た上で、独自の工夫を加えて作成しました。

「患者さんを支える医療・介護関係者が検査の経過などを含めた情報を共有できることが特徴です。患者さんからいろいろ聞き出さなくても、手帳を見るだけでこれまでの経緯がわかります」と、菱川先生はこの手帳の意義を語ります。

一方、地域の医師会の先生らとネットワークを作り、勉強会などにも取り組んでいます。しかし、「まだまだ足りないものが多い」と言う菱川先生が例に挙げるのは『お遊戯よりレベルの高い娯楽・趣味を提供するデイサービス施設。この歳になってお遊戯なんか恥ずかしくてできない』と思う患者さんは少なくありません。もうちょっと知的な娯楽や交流ができる施設が増えて既存の施設と連携すれば、ケアの輪が広がるはずです。一人ひとりが社会的な役割やつながりを感じられるようなものであれば理想的だと思います」(菱川先生)。

さらに丹羽先生は、若年性認知症のケアを課題として示します。 「若年性の患者さんは年齢差がありすぎて、既存のデイサービス施設には馴染めません。プライドが高くて体力があるだけに、若年性の患者さんのケアには留意が必要です」と対応の難しさを指摘します。

さまざまな課題を抱えながらも、「地域連携は『脳の健康手帳』で種をまいたばかり。まだまだこれからです」―そう語る両先生は「もの忘れ外来」を中心とするケアの充実を目指して、患者さんと、家族と、そして地域と真っ直ぐに向き合っています。

 

 

取材日:2011年8月11日

刈谷豊田総合病院の外観

医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院


〒448-8505
愛知県刈谷市住吉町5丁目15番地
TEL:0566-21-2450(代)

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