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地域の連携とスピーディーな対応で認知症のケアと予防を
<鳥取県倉吉市 医療法人専仁会 信生病院>

信生病院 医師 浦上克哉先生 信生病院 医師 浦上克哉先生

内科、神経内科、外科、整形外科、リハビリテーション科など7つの診療科を持つ信生病院。そこでは、医師や看護師、薬剤師、介護支援専門員などのスタッフが日々情報を共有し、心をひとつにして認知症患者さまとご家族さまの心身のケアを行っています。

医師になった当時は、検査も治療も発展途上

浦上克哉先生が医師になったころは、認知症の分野はまだ発展途上で、今のような有効な治療薬もありませんでした。「認知症という病気の知名度は低く、外来にいらっしゃる患者さまは検査を拒否されるような、かなり症状の進んだ方ばかりでした。そのような患者さまにできることは限られていて、医師として無力感にさいなまれました」と言います。それ以来、30年近く認知症医療に携わってきた浦上先生は、患者さまと向き合うときには、じっくり時間をかけて丁寧に話を聞いています。

初診の患者さまには、浦上先生による問診と神経学的診察、言語療法士による認知機能検査をした後、MRIや尿・血液検査、心電図などの検査を行います。受付から診断まで3~4時間を要しますが、患者さまと向き合い、コミュニケーションを図りながら行うことが大切と考えています。

また、浦上先生は「認知症医療は早期発見、予防が重要」とも考え、啓発のためにテレビ出演や新聞への寄稿、講演なども積極的に行っています。

「まずお伝えするのは、認知症は単なる老化現象ではないということ。もの忘れも『年だから仕方ない』と思っていては、受診につながりません。今は進行を遅らせるための治療法もあること、なるべく早い受診が重要なことなどを知っていただくようにしています」(浦上先生)。

 

地域と連携して、早期発見と予防への取り組みを

認知症を早期発見するために、地域包括支援センター主催で行われている地域の「もの忘れ健診」を、医師としてサポートしている浦上先生。地域の公民館などで健診を行い、ご自身が考案したタッチパネル式コンピューターでスクリーニング検査を行っています。その結果、認知症の疑いのある人には医療機関を紹介したり、情報を提供するなどして早期発見と治療につなげています。

10年ほど前、ある保健師の相談がきっかけで、この健診は始まりました。「なんでここまで放っておいたのと歯がゆく思う患者さまばかりが相談に来る。もっと早期発見への取り組みがしたい」と話す保健師に、浦上先生も共感しました。現在、タッチパネル式コンピューターを使った健診は、鳥取県内の10ほどの市町村で行われ、県外にも広がっていると言います。

同時に、「まだ認知症ではないものの、注意が必要」という軽度認知障害(MCI)の人のために、地域で予防教室も展開しています。もの忘れ健診を受けた約1割の人が参加し、体を動かす運動や、指先を動かす学習療法などの予防法を実践しています。教室は週1回2時間、3カ月という短期間ですが、参加することで認知機能が改善されることも多いという結果が得られています。

 

信頼関係を築いた上で、正しく告知し、前向きに治療

日々の診療のなかで、浦上先生がもっとも気を使うのは、患者さまやご家族さまに告知するときだと言います。

「基本的に、病名はきちんとお伝えしていますが、患者さまやご家族さまの様子を見ながら、慎重にお話を進めています」(浦上先生)。

丁寧に説明しても浦上先生の意図するようには伝わらないこと、患者さまが誤った解釈をしてご家族さまに話されることなどもあり、今でも「とても難しい」と感じています。

以前、風邪をひいてたまたま受診した近所のかかりつけの医院で、医師の不用意な言葉によって認知症であることを知り、患者さまとご家族さまが強いショックを受けてしまったということがあります。「それ以来、伝えるなら患者さまとしっかり信頼関係を作った上で、正しく伝えなければという思いが強くなりました。それを伝えるのが自分の仕事。自分だったら、信頼できない相手から病気を伝えられるのは嫌ですから」(浦上先生)。

薬局長 荒松明実先生 薬局長 荒松明実先生

認知症の人は何もわからないと思われがちですが、それは違うと浦上先生は考えています。きちんと伝え、自分のこととして治療にも積極的にかかわってもらうことが大切なのです。それは薬を処方するときも同じだと、薬局長の荒松明実先生は話します。

「薬を正しく使うことで進行がゆっくりになること、きちんと飲み続けることが必要なことなどを、必ず患者さまとご家族さまにお話しします。何度もご本人に治療のことをお伝えして『これは自分の薬なんだ』という意識を持っていただくことが大切だと思います」(荒松先生)。

「認知症は、診断して、薬を出して終わりという病気ではありません。薬についても、処方して『飲んでくださいね』と伝えるだけでは不十分。患者さまは、そのときは『はい』と言われますが、時間が経つと忘れてしまわれます。ご家族さまに『ちゃんと口に入れて飲み込むまで見届けてくださいね』とお話しし、飲み忘れがないように伝えています」(荒松先生)。

 

職種間の連携と素早い対応が認知症治療のカギ

主任ケアマネジャー 渡辺京子さん 主任ケアマネジャー 渡辺京子さん

一方で、浦上先生は「職種間の連携を強めることが今後の課題」と指摘します。院内はもちろん、地域、行政、他の医療機関など、多岐にわたる職種間での連携が不可欠だと考えています。その点、当院は病院内にケアマネジャーがいて、医療と生活支援などのサポートがすぐに結びつきやすい環境にあると言います。

「何かあったときには、ケアマネジャーがすぐに対応して、介護スタッフや行政担当者と連絡をとってくれるので助かっています」(浦上先生)。

ケアマネジャーの渡辺京子さんも、認知症患者さまのサポートは病院だけではなく、地域をはじめ多方面の連携が不可欠と考えています。今日もある男性が母親を連れてきて「最近、認知症の症状が進み、母親が食事を取らないので入院させてほしい」と受診されたそうです。検査の結果、認知症状は進んでいないとのことで、浦上先生より、相談に乗ってあげてほしいと言われました。生活状況を確認すると、息子さん自身に病気があることがわかりました。すぐにサポートが必要と考え、包括支援センターへ連絡し、今日のうちに訪問し対応していただくよう手配しました。「医療と介護の連携には、スピードが必要です。そのことが信頼関係に繋がると思っています」(渡辺さん)。

 

病気や患者さまへの理解と、スタッフ間の情報共有も大切

そんな渡辺さんは、「患者さまやご家族さまと信頼を作るためには、自身が認知症の理解をした上で、ご本人の生活歴や家族構成など、ご本人を取り巻く環境を知り、かかわることが大事と思っています。見て、聞いて、触れて、心でかかわることがご本人やご家族さまの安心に繋がるのではないでしょうか」と話します。

以前、介護サービスを拒否し続けていたご夫婦が3カ月間入浴できずにいて、渡辺さんが訪問した当日にデイサービスに連絡し、入浴できたと、周囲を驚かせたことがありました。「ご夫婦の思いを受け止め、気持ちが通じれば、心が動くのだと思います。家に上がることができ、最初に壁に貼ってあるご主人が書いた色紙に目がいきました。『いい言葉ですね』と言うと、ご主人が意味を説明してくださいました。そして説明しているご主人の手を見て『大きな手ですね。私こういう大きな手が大好きなんです。握手してください』と言ったら、照れ笑いして握手してくださったんです。もちろん奥さまとも握手しました。お世辞ではなく、心から出た言葉は通じます。そして、安心感が得られることで笑顔が戻るのでしょうね」(渡辺さん)。

看護師 岩垣美香さん 看護師 岩垣美香さん

その思いは、薬局長の荒松先生も看護師の岩垣美香さんも同じです。それぞれの立場から患者さまの姿を見て、感じたことを他のスタッフと共有する。そして、「いつもと違うな」と思うことがあれば浦上先生や渡辺さんに伝えています。

「いつもと違う行動をされるというのは、例えば、帰りのタクシーを何度も呼んでおられたり、会計も薬も渡し終わっているのに待合室にいらっしゃるというようなことです。声かけをすると、どうすればよいかがわからなくなっておられたということなどが日常的にあります。ほとんどの患者さまが顔見知りであること、声をかけやすい環境であること、患者さまが身近におられること。それが地域に根づいた中小病院の強みだと思います」(荒松先生)。

「認知症患者さまは、先生の前に座ると緊張されて、普段のご自分が出せなくなってしまうこともあります。診察室の外で、ふとリラックスされたときの様子も観察して、気づいたことは伝えるようにしています」(岩垣さん)。

浦上先生を筆頭に、認知症治療にかかわるすべてのスタッフが「顔の見える関係」を大切に、患者さまとご家族さまと向き合っています。

 

 

取材日:2011年7月13日

信生病院の外観

医療法人専仁会 信生病院


〒682-0017
鳥取県倉吉市清谷町1-286
TEL:0858-26-7773
「もの忘れ外来」は毎週水曜日予約制で受付

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