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認知症になっても幸せに過ごせることを目指して
<栃木県下野市 自治医科大学附属病院>

自治医科大学附属病院_医師_藤本健一先生 自治医科大学医学部内科学講座
神経内科学部門 准教授 藤本健一先生

栃木県の地域中核病院でもある自治医科大学附属病院神経内科の物忘れ外来は開設されてからすでに10年以上が経過しています。重視するのは、患者さんとご家族がともに楽しく暮らせる環境づくり。患者さんだけでなくご家族へのケアを行うことで、認知症になっても幸せに過ごせるように努力しています。

全国でも早期に開設された物忘れ外来

栃木県下野市にある自治医科大学附属病院は、へき地医療を改善する目的で設立された病院です。1,130床のベッドと40の診療科目を標榜する総合病院で、1974年の開院以来、栃木県の地域中核病院として、地域医療に重要な役割を果たしてきました。1999年、神経内科に開設された物忘れ外来は、最初のアルツハイマー病治療薬の登場と時をほぼ同じくして誕生し、全国でも先駆けとして注目されました。

現在、同病院の物忘れ外来は、藤本健一先生をはじめとした神経内科に所属する医師3人と検査を担当する心理士1人のスタッフで担当しています。認知症の患者さんは軽度から重度まで幅広く対応していますが、来院する患者さんは比較的早期の方が多いことが特徴です。

同病院の物忘れ外来での診療は、患者さんとご家族の関係を確認することからはじまります。認知症の患者さんは、たいていご家族と一緒に来院しますが、例えばお嫁さんがお姑さんを連れてきた場合、お嫁さんは「物忘れがあります」とは言えないことがあります。そこではじめに、ご家族と患者さんとの関係を尋ね、誰の希望で来院したのかを確認しています。もし、お嫁さんの希望で受診され、お姑さんの前で受診に至った経緯を説明できない雰囲気であれば、患者さんとは別室でお嫁さんに症状を聞くという配慮もしています。

その上で、複数のスクリーニングテストや画像診断を行い、認知症の有無や原因疾患の確定を慎重に行っています。

 

患者さんだけでなくご家族のケアも大切に

藤本先生は、認知症の治療について「患者さんのケアも大切ですが、ご家族に対するケアがとても重要です」と言います。

藤本先生は、認知症に伴う周辺症状が出てきたとき、それに伴う混乱状態を回避できるかどうかは、ご家族の対応次第だと考えています。また、認知症の場合、薬を処方しても、患者さん自ら薬を飲むことができる例はそう多くありません。患者さんが薬を飲んでいるかどうか、薬の効果が出ているのかどうかをご家族に確認してもらう必要があります。

そのため、同病院の物忘れ外来の認知症治療では、患者さんに対して薬を処方し必要なケアをすることに加え、ご家族が患者さんに対してどのような対応をしていけばよいのかを伝えることに重点を置いています。

 

うそでもよいから患者さんが幸せになれる言葉を

同病院の物忘れ外来で行われる、ご家族に対するユニークなケアのひとつに、「うそのつき方講座」があります。藤本先生は「認知症の場合は、ご家族をはじめ周りの人が全て真実を説明する必要はありません。うそでも患者さんが幸せになれる言葉だけを発してあげれば、それでいいのです」と言います。

ご家族が楽しく暮らすためには、デイサービスなど公的なシステムを活用し、患者さんと離れる時間をつくることが不可欠ですが、ご家族の多くは、デイサービスを利用するときには患者さんの同意を得なくてはいけないと考えています。ところが、患者さんの同意を得ようとして、デイサービスに行く度にトラブルが発生することがあります。そこで藤本先生は、うそをうまく利用して、デイサービスの迎えが来たら旅行好きの患者さんなら「旅行のお迎えが来たよ」と言って送り出すことを提案しています。

「こうすると、患者さんはスムーズにデイサービスに行くことが多く、患者さんにとっても、心の平静が得られて望ましいのです」(藤本先生)。

周辺症状で幻覚が出てきたときにも、うそは効果的です。幻覚が出てきたときに必要なのは、幻覚を指摘することではなくて、それに合わせることです。

患者さんが「子どもがそこにいる」と言っていたら、それは悪い人じゃなくて無邪気な子どもが見えていると考えることもできます。患者さんの幻覚を受け入れて、「そうだね」と言葉を合わせてあげると、患者さんはとても落ち着きます。

 

昔の患者さんとは別人格と考えるとうまくいく

ところが、ご家族がうそをつくことはとても難しいことです。藤本先生は「われわれ日本人は道徳教育で、子供の頃からうそをついてはいけないと教わっています。しかも、うそをつく相手は親あるいは配偶者です。ご家族が認知症という状態を受け入れることができないと、うそをつくのに心が痛みます」と言います。

患者さんの子供世代は、認知症と患者さんへの対応について十分説明すると、比較的容易に受け入れることができます。しかし患者さんと長年いっしょに歩んできた配偶者は、受け入れることが難しいようです。

ご家族は昔から患者さんを知っていますので、その延長線上で今の患者さんを見ています。しかし、医療従事者は病気になってからの患者さんを見ますので、昔の患者さんとは別人格の人と考えて見ることができます。藤本先生は、こうした見方の違いを説明し、ご家族に理解してもらうとともに、今までの患者さんとは違う人格と考えて対応することを薦めています。

 

認知症の患者さんを受け入れる社会環境が必要

今、高齢者は、認知症をとても恐れています。昔は夫婦げんかをすると「死んだらばけてやる」と言いましたが、最近は「死なずにぼけてやる」と言うのだそうです。藤本先生は「周りがしっかりしていれば、認知症はそんなに怖い病気ではありません。痛みはないし、患者さんは嫌なことを忘れられます」と言います。

藤本先生は、認知症の恐れから解放されるために、いつ認知症になってもいい社会環境を整えておくことが重要だと考えています。

自治医科大学附属病院の物忘れ外来で行っているひとつの対策が、地域の医療機関とのコミュニケーションの強化です。

例えばレビー小体型認知症では、運動症状を良くしようと思うと幻覚・妄想が悪化し、幻覚・妄想を治療しようとすると運動症状が悪くなるというシーソー現象が起こります。こうした運動症状と幻覚・妄想のバランスを考えて治療することの重要性は、まだ十分に知られているとは言えません。そこで、藤本先生は、認知症の患者さんを地域の医療機関に戻すとき、処方している薬に関するインフォメーションを、効果や副作用を含めてできるだけ詳しく説明し、地域全体でよりよい認知症治療ができるように必要な情報を伝えています。

そして、藤本先生がもうひとつ重視していることが学生教育です。認知症に関する学生の講義にも力を入れ、今まで行われていなかった認知症の臨床講義を取りいれました。藤本先生は、患者さんやご家族との対応を記録したビデオを学生たちに見せ、認知症治療に大切なことは何かを教えるようにしています。

こうした講義を受けた学生たちのなかには、ご家族に認知症の患者さんがいるという者も少なくありません。そんな学生は「ご家族の対応によって患者さんの状態がよくなるということを目の当たりにして、目からうろこが落ちた」とか、「うちの家族の対応はまずかった。もっと患者本人の幸せを考える必要があった」という感想を話しているそうです。

学生たちが地域の診療現場に出ていったとき、認知症の患者さんを支える体制が充実し、認知症を恐れなくてもよい環境ができるのではと、藤本先生は期待しています。

 

 

取材日:2011年9月6日
自治医科大学附属病院外観

自治医科大学附属病院


〒329-0498  
栃木県下野市薬師寺3311-1
TEL:0285-44-2111

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