『笑顔とこころでつながる認知症医療』サイトドメイン変更のお知らせ 「お気に入り」や「ブックマーク」の変更をお願いします

詳細はこちら

ホーム > 地域から探す【中国】 > 鳥取県 > 鳥取県鳥取市 鳥取赤十字病院
医療機関を探す

認知症をはじめ多くの神経疾患に対応し地元医療に貢献
<鳥取県鳥取市 鳥取赤十字病院>

医師 太田規世司先生 医師 太田規世司先生

鳥取市の中心街に位置する鳥取赤十字病院は、県内東部で医療の中核を担っている総合病院です。地域医療支援病院として承認されている同病院は、地元のかかりつけ医と連携を取り、紹介された患者さんへの治療を中心に行うほか、救急指定病院や災害時の拠点病院などにも指定されています。

地元の医療機関と連携し、専門性の高い治療や検査に特化

医師 井尻珠美先生 医師 井尻珠美先生

鳥取赤十字病院の神経内科は、脳卒中、頭痛、パーキンソン病など多岐にわたる神経疾患を扱っており、現在は太田規世司先生と井尻珠美先生のお二人で診察を行っています。

太田規世司先生がこの病院に赴任した20年前、認知症で来院する患者さんは毎月数人程度でした。しかし、現在新規の認知症患者さんは毎月30~50人に増えています。特に最近は、比較的軽い段階でかかりつけ医に患者さんが紹介されて、同病院を訪れるケースが増えているそうです。「以前は『物忘れが現れるのは、年だからしょうがない』ととらえられる傾向がありましたが、最近は一般の方も『認知症は病気である』という認識を持つ方が増えているからだと思います」(太田先生)。また「周辺の先生方は、当病院が認知症治療に力を入れていることをご存じのため、患者さんをご紹介してくれるケースが増えていると思います」という井尻先生の言葉から、同病院が認知症治療の中核を担っている様子が伺えます。

同病院の特徴のひとつとして、院内に地域医療連携室が置かれていることが挙げられます。ここでは、地域の病院・診療所、介護施設と連携をはかるための連絡を行っています。また室内では、メディカルソーシャルワーカーや看護師が、主に入院患者さんとご家族を対象に医療や福祉相談などの医療サービスも行っています。ご利用者のプライバシーが守られた環境で、入院中から退院後の家庭での医療や訪問看護、各種サービス利用について無料で相談ができます。

 

新型診断解析システム導入で、より早く正確な診断につなげる

同病院では、かかりつけ医からの紹介による来院が半分以上を占めています。太田先生は「認知症の初期診断は、検査と診察だけで診断できるわけではありません。特に初期の状態は、ご家族や周りの方の情報が不可欠ですので、ご家族との来院をお願いしています」と語ります。

太田先生によると、アルツハイマーの場合は、原則的に患者さん本人が「病気である」という認識が薄いということもあり、ご家族が「病気ではないか」と心配して患者さんを連れてくることが圧倒的に多いということです。またアルツハイマーの場合は、症状が徐々に進行するため、初診時は過去のことを年単位でさかのぼりお話を伺うことにしています。

同病院では、認知症の早期診断にあたって画像検査に力を入れています。SPECT(単光子放射線コンピューター断層撮影)で撮影した患者さんの脳血流画像を3D-SSPというソフトを使用して解析し、脳の異常を発見するのに役立てています。さらに、2008年度以降、脳のMRI画像から海馬の体積の萎縮度を数値化して解析するVSRAD(早期アルツハイマー型認知症診断支援システム)を導入しています。太田先生は、「コンピューターを使用した画像解析は、正直まだ人間の目よりも優れているとは思えないときもありますが、自分が行った所見の裏付けをしてもらうという意味では、非常に価値がある」と考え、最新のシステムなどを駆使することで、より迅速により初期の段階で診断を行う体制をとっています。

ただし、患者さんに病気の状態を伝えるときは、慎重に言葉を選ぶように心がけています。その理由として、井尻先生は「アルツハイマー型認知症と告げられた患者さんが、ショックを受けたり、自暴自棄になったりすることがある」からと言います。そこで、患者さんのプライドを傷つけてしまう可能性のある言葉は、患者さんの目の前では発しないようにし、患者さんには特に問題はないと伝えた後に、ご家族の方だけにあらためてお話しすることもあるそうです。

認知症の治療は、薬物療法が中心ですが、同病院ではあえて「患者さんが希望しない薬は出さない」というスタンスをとっています。これは、認知症治療薬の投薬は、進行を抑制することが目的であり、薬だけでは症状の進行を完全には止めることは不可能だからです。患者さんとご家族にこのことをお話しすると、以前は「治らないなら薬はいりません」と帰られる患者さんもいましたが、最近はほとんどの方が、状況に納得のうえで治療を続けられるようになったそうで、お薬をお願いしますと言われます。

ただし井尻先生は、認知症のために薬を飲む理由を理解できずに患者さんが薬を拒否することもあると話します。また、症状が進行すると、嚥下障害のため薬を拒否する患者さんもいるそうです。その一方で、患者さんやご家族から「薬を飲み始めたら症状が落ち着いた」という声を聞くことも多いそうです。

 

認知症看護のさらなる向上を目指す独自の取り組み

同病院には、認知症専門病棟はありませんが、脳梗塞や、他科の疾患などを抱える認知症患者さんが入院するケースがあります。

看護師 澤真由美さん 看護師 澤真由美さん

看護師の澤真由美さんは「自宅にいたときは問題なく生活できたが、入院すると急激な環境の変化によって認知症の症状が現れる患者さんは比較的多い」と語ります。また、認知症患者さんの場合、忘れてしまって何回も同じことを聞かれることが少なくありませんが、澤さんは、それは病気の症状のためと認識し、「何回も同じ内容を聞かれるのには、何か聞く理由があるからではないか」と考えています。その人が現在何を考えているのか、そして今どんな状況で何に困っているかを自分なりに考えたうえで、対応をすることを心がけています。

そのためには、ご家族から伺う患者さんの入院前の生活状況や生活背景などが、看護に生かせるヒントにつながるのでは、と考えています。自宅と全く同じ生活を病院で継続するのは難しいのが現状ですが、澤さんは、その中で何ができるかを考え、入院前の生活に少しでも近づける環境を作れるようにしたいと思っています。

また、澤さんは、認知症患者さんへの理解をより深めたいという想いから、有志の看護師とともに、病棟内で認知症看護を勉強する研修会を企画したり、認知症看護を広めるための普及活動などを行っています。

 

認知症はご家族の協力が不可欠だが、たまには息抜きも必要

最近は、認知症が早期の段階で発見される患者さんが増える一方、来院したときには、すでに症状が進行している場合も少なくないのが現状です。こうして認知症を抱える患者さんの受診が遅れる理由として、井尻先生は「物忘れを年のせいと考え、病気と認識していない人もまだまだ多いからだと思います。また患者さんを連れて行く姿を周囲の人に見られるのが恥ずかしいという方もいると思います」と語るとともに、認知症治療にはご家族の協力が不可欠だと訴えます。

その理由のひとつとして、お二人の先生は、認知症患者さんの周囲の方が服薬管理を行う必要性を挙げています。太田先生は、「認知症患者さんの場合、薬を飲んだことを忘れて、再び飲んでしまうことがありますが、薬を飲み過ぎると副作用の危険性が高くなります」と、薬の飲み過ぎには飲み忘れよりも注意を払う必要があるとしています。井尻先生は「ご自分で服薬管理できるという患者さんもいますが、薬の飲み過ぎを防ぐためにはできるだけご家族が服薬管理をすることを勧めます」と言い、ご家族が服薬管理をするのが難しい場合も、ヘルパーさんの協力を得ることで飲み過ぎを防ぐことが可能であると考えています。

しかし、ご家族が介護に真剣に向きあうほど、様々な問題に突き当たってしまうことがあります。その例として、太田先生は物取られ妄想を掲げ、最も一生懸命介護している方に矛先が向かうと語ります。そこで太田先生は「介護している方に矛先が向かうものです。だから、あなたが『物を取った』と疑われるのは、あなたが一生懸命介護をしているという証なのですよ」と、ご家族にお話ししています。

また太田先生は、認知症患者さんに対して、家にこもらずなるべく外出することを勧めています。

「ご家族が相手だと、怒ったり甘えたりしがちですが、デイサービスやデイケアを利用すると、ご家族にとって息抜きになるだけでなく、患者さんも他人と接することで良い刺激になると思います」(太田先生)。

 

認知症治療の将来を照らしはじめた「希望の光」

鳥取赤十字病院は、山陰地方有数の設備と環境が整っていますが、それでも太田先生は、同病院だけですべての認知症治療を行うのは難しいと感じています。そこで、この地域では、地域の医療機関が、認知症治療において役割分担をし、同病院では主に専門性の高い検査や診断を担当するという方針をとっています。ただし、同病院がこれらの検査や診断に特化するためには、かかりつけ医をはじめ周囲の医療機関の協力が不可欠であると同時に、日頃から連携を密にすることが大切です。

かかりつけ医が認知症に気づき、次に診断のための設備が整った病院で初期診断あるいは最初の診断をした後は、また地域に戻ってかかりつけ医が治療を行う。症状が進行した場合は、介護施設や認知症病棟がある病院と連携して治療を行うなど、かかりつけ医と総合病院そして介護施設や認知症病棟のある病院が、それぞれの立場から最善のサービスを提供するよう心がけています。

こうした現在の認知症医療の状況について、太田先生は「今は、まだ多くの課題があり、混沌とした状態だと思いますが、少しずつ希望の光が差しているのかなという気がします」と言い、今後の認知症医療に明るい未来が見えつつあると考えています。

 

 

取材日:2011年9月16日
鳥取赤十字病院の外観

鳥取赤十字病院


〒680-8517
鳥取県鳥取市尚徳町117
TEL:0857-24-8111

施設のホームページへ

この記事のURLをメールで送信
医療機関を探す
新着施設から探す
地域から探す
  • 北海道 近畿
  • 東北 中国
  • 関東・信越 四国
  • 東海・北陸 九州・沖縄
カテゴリーから探す
  • 社会が考える認知症予防・治療・戦略
  • 日常診療における創意工夫
  • チーム連携のさらなる充実
  • ふれあいつながる作品展
  • バアちゃんの世界
  • バアちゃんの世界からわかる認知症の症状と対応のヒント
  • 「笑顔とこころ」をつなぐ声
  • お薬(剤形)の選択肢が増えました
  • 患者さんとご家族のための認知症の知識
  • 認知症相談窓口
  • 認知症サポーターキャラバン
  • サイト運営企業の取り組み
  • 医療関係者の皆さまへ
トップページへ