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中度から重度の認知症治療で知られる専門病院
<京都府宇治市 医療法人栄仁会 宇治おうばく病院>

精神科医長(認知症担当)樋川 毅先生 精神科医長(認知症担当)
樋川 毅先生

宇治市にある宇治おうばく病院は、認知症病棟を持つ精神科専門病院です。広々とした養生空間で自由度の高い生活を送ってもらうことで患者さんのストレスを軽減。高い専門性と柔軟な組織ネットワークを活かし、生活の質を高める治療を行っています。

長い歴史を持つ認知症の専門病棟

京都府宇治市の北部に位置する黄檗は、東に木幡の山々、西に宇治川を有する洛南の景観地。平安時代には木幡から宇治にかけて多くの貴族が寺院を建立して別荘を営んだ所で、隠元禅師が開創した黄檗山萬福寺があります。この黄檗の地で昭和32年に開院したのが、宇治おうばく病院です。

宇治おうばく病院は、総病床数572床のうち精神科病床が412床を占める精神科専門病院です。精神科病床は救急病棟(53床)・療養病棟(120床)・認知症病棟(60床)から成り、ほかに内科病棟(100床)や介護療養型医療施設(60床)を併設。精神科救急医療、うつ・ストレス疾患、認知症・もの忘れ、精神科身体合併症に対応できる、機能的な医療サービス体制を整えています。なにより特徴的なのは、早くから「もの忘れ外来」を設置し、認知症の専門病棟を持つことで、京都府下でも長い歴史があります。

専門病院であるため、患者さんは中度から重度の人が中心。精神症状や暴力を中心としたBPSD(周辺症状)のために家庭生活、あるいはデイサービスや介護施設での共同生活に支障をきたし、介護者やケアマネジャーを通じて来院されるケースが多いと言います。同じく重度の認知症患者さんを収容する特別養護老人ホームとの違いは、自分で動ける人が多いこと。認知症は重度でもADL(日常生活動作)は比較的保たれており、見守りか半介助で大丈夫な人が大半です。

また、肺炎や糖尿病を内科病棟あるいは身体合併症病棟で治療した後に、認知症病棟に移ってくる患者さんもいます。「心身一如」を重視する宇治おうばく病院では、内科医と精神科医が連携して幅広い疾患に対応していることも特徴です。

精神科の認知症担当医は5人。平成9年からこの病院に勤務し、精神科医長(認知症担当)を務める樋川毅先生は、患者さんのことだけでなく、周囲のことも考えながら治療するバランス感を大切にしていると言います。

「薬物療法を行う場合、向精神薬には眠気やふらつきなどの副作用があるため、患者さん本人の症状と周囲の状況のバランスを考えないとうまくいきません。軽度のうちから薬物療法で進行を遅くしていけばいいのですが、専門病院という性格上、本人やご家族が本当に困ってから来院されるケースがまだまだ多いのが現状です」(樋川先生)。

 

ストレスフリーな空間で症状を安定させる

看護師長 辰巳弥生さん 看護師長 辰巳弥生さん

同院でも、食事や入浴などは集団で行います。しかし、家庭やデイサービス施設と違って空間が広いため、ほかでは止められることも、よほど危険がない限りご本人の好きなように過ごしてもらうという方針がとられています。看護師長を務める辰巳弥生さんはこう語ります。

「自由に過ごしてもらう。それだけで気分が安定して薬を使わなくてよくなる人もいます。もちろん危険を伴う場所や大きな開放空間へ続く扉は施錠していますが、家庭やデイサービス施設などより開放的だと思います。また患者さんの認知症状の程度が中等度から重度なので、話しかければ互いに反応が返ってくるなど、小さな社会が出来上がっていて、社会規範とは合わないかもしれませんが、患者さん同士の心地よい空間になっている気がします。制止しなければならないことはほとんどなく、そのためストレスなく過ごせるのだと思います」。

昼間の活動を積極的に勧めるので、夜は疲れて眠る人が多く、昼夜逆転もほとんどないと言います。また、転倒防止の拘束も殆んどせず、つなぎの着用もしていません。おむつをはずしてしまう人は紙パンツにするなど工夫しています。「放尿や放便も『ダメ!』などと注意することはしません。そう言ってわかるようなら、最初からしないでしょう。怒られれば、意味がわからなくても不快な思いだけは残ります」(辰巳さん)。家庭や施設では制止されたり、怒られたりする患者さんも、ここでは自由なのです。

 

人間同士のつながりを大切にする風土とスタッフ

患者さんが自由を尊重すればするほど、その生活を支えるスタッフの負担は大きくなるはず。しかし、認知症病棟の看護師、介護福祉士にはお年寄りを好きな人が多く、どのスタッフも優しく根気強く接しています。看護師も介護福祉士も基本的な介助業務は同じで、違いは医療行為をするかしないかだけ。朝のカンファレンスで全員が患者さんの情報を共有し、意見を出し合い、一致団結した看護・介護が行われています。

「当院と他の精神科病院で合わせて18年間、認知症を担当しています。一般病棟も経験しましたが、何か“物足りなさ”を感じて精神科に戻ってきました。一般病棟は病気の治療という一部分しか関わることができません。ここでは病気の治療に対する関わりではなく、生活や人生に関わるという感覚があります。患者さんは皆さん人生の大先輩。今の記憶はあいまいでも、過去の記憶は鮮明です。自分の経験談を話してくださり、こちらが癒されることも少なくありません。看護・介護をしているというより、人とのつながりを感じながら仕事をしていて、他の科では味わえない部分だと思います」(辰巳さん)。

介護福祉士 曽谷愛子さん 介護福祉士 曽谷愛子さん

「この病院に勤務して15年ですが、それほど大変な仕事とは思いません。認知症患者さんは感情表現が素直で、私の言動一つひとつに対して反応があるので、やりがいを感じます。会話は成り立たなくても、何らかの返事を聞き、表情を見れば、今、安心しておられるか、不安に感じておられるかは伝わってきます。それで十分。怒っていそうなときは、どうしたら安心して過ごしてもらえるか、考えることができます」と語るのは、介護福祉士の曽谷愛子さんです。

こうした対応は家族では難しく、他人だからこそ、職業人としての冷静な視点を持つからこそできること。困ったら無理をせず、入院して専門家に任すべきだと樋川先生は強調します。では、同院でどのようなスタッフ教育がなされているのかというと、認知症に関する勉強会はしても、接し方の勉強会は特にしないと言います。先輩たちの対応を見て、個々のスタッフが「こうすれば患者さんにとってよい」と学ぶのだそうです。

「病棟はスタッフに任せているので、歴代の看護師長、先輩方が作ってきた今までの流れが大きいと思います。スタッフが楽なように患者さんを拘束することは簡単ですが、できるだけ患者さんに合わせてやっていく、そのために力を合わせてがんばっていこうという雰囲気が病棟に定着しています」(樋川先生)。

 

コミュニケーションを活発にする学習療法

コミュニケーションツールとしての学習療法 コミュニケーションツールとしての学習療法

同院では、平成19年から「くもん学習療法」を取り入れています。月曜から金曜までの毎日30分程度、病棟で10人位を対象に読み書き、計算を行うというもの。内容は易しいものから難しいものまでありますが、重要なのは問題を解くことより、問題をきっかけにスタッフとコミュニケーションをとること。教材を通じてほめてもらえたり、じっくり話を聞いてもらえたりすることで症状が落ち着くと言います。教材は手段で、その人とじっくり接することが目的というわけです。ただ、学習療法が合わない方もいるので強制はしません。

もうひとつ、個々の患者さんの排泄パターンに合わせて多機能型のおむつを使用していることも、同院ならではの取り組みです。紙パンツ型やふんどし型など多様なおむつを用意し、このタイプで尿漏れをしたら他のタイプに変えるという具合に選択。スタッフは排泄パターンを把握しなければならず大変ですが、それによって患者さんの尊厳が守られています。さらに、昼間は担当を決めて、できるだけトイレに誘導するようにしています。

「最初は難しかったり、大変だったりしますが、立位のとれる人はトイレに行ってもらうことで、尊厳が保たれます。トイレに行くのを嫌がる人には、少し歩きましょうと声をかけて、自然な形でトイレに誘導します。そうして根気強く繰り返すことで、今までおむつだった方がトイレでできるようになると、スタッフもうれしいのです」(曽谷さん)。

そして退院が決まり、施設や家庭に戻る患者さんには、看護サマリーに「手すりを持てば立位も可能」「便座に座ってもらえば排泄は可能」というように申し渡し事項を細かく記入して引き継がれます。この看護サマリーは、排泄以外にも、食事や移動、精神面など12項目ほどあります。

認知症疾患をネットワークでみる多様な介護体制

認知症の患者さんは、その時その時を生きています。ゆえに、「その時だれに出会うか」で生活の質が決まってしまうともいえます。「その出会いを大切にしたい。私と出会ったことがその人の生活の質を上げることになれば」との思いで仕事をしているという曽谷さん。それを新しく入ったスタッフにも伝えるよう心がけているそうです。

こうした治療を経て症状が改善した患者さんは、認知症病棟を出ることになります。その際、看護師長の辰巳さんは患者さんのご家族からよくこう言われるそうです。「ここで本当に良くしてもらったので、ずっとここに置いてほしい」。しかし、ここは治療病棟であるため、自宅や介護施設、長期療養型の病院に移ってもらわなければならず、立場的に辛いと言います。

認知症治療には今、精神科治療だけでなく、身体合併症や在宅介護を含めたトータルな対応が求められています。そこで同院を運営する栄仁会では、認知症疾患をネットワークでみるべく、グループホームや認知症対応型デイサービス、訪問介護など、地域に根ざした多様な介護体制を整備しており、今後さらに施設間の連携を強化していくとのことです。

 

 

取材日:2011年9月7日
宇治おうばく病院の外観

医療法人栄仁会
宇治おうばく病院


〒611-0011
京都府宇治市五ケ庄三番割32-1
TEL:0774-32-8111

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