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院内外の“協働”で全人的医療の実現を
<茨城県稲敷郡 東京医科大学茨城医療センター>

科長(准教授) 市来真彦先生 科長(准教授) 市来真彦先生

地域の中核病院である東京医科大学茨城医療センターのメンタルヘルス科(精神科)は、認知症の高度な検査・診断力によって地域のニーズに応える一方、センター内の訪問看護ステーションや複数のデイケア施設とのタイアップによる患者さんのケア、そして、開業医ら地元専門家との“協働”にも力を注いでいます。

的確で早い検査、診断こそが大学病院の役割

認知症の患者さんに対して「総合病院」の精神科が果たすべき一番の役割―それは「充実した検査機器類を駆使した総合的な検査、診断にある」と東京医科大学茨城医療センターメンタルヘルス科(精神科)の市来真彦先生は言います。

「大型の検査機器による緻密な脳血流検査などが当科の一番の特徴です。病棟を持たない当科が高齢者の多いこの地域にどのように貢献できるかを考えた結果、的確な診断をして患者さんの地元の開業医につなぐことを第一と考えています」と、市来先生の姿勢は明確。採血、MRI、CT、SPECTなどの検査結果をもとに総合的な診断に努めています。

「精神科の診療所には画像診断機器がないところが多く、採血もあまりしないのでは(笑)。これらの検査を行わずに診断できる病気もあるとは思いますが、甲状腺などの疾患は採血しなければわかりませんし、大学病院である以上は鑑別診断を行ったうえで、確定診断を行わなければなりません」(市来先生)。

2002年12月に始まった認知症疾患センター外来を改変して、約3年前に「もの忘れ診断外来」としたのも地域のニーズに応えてのこと。こうした検査、診察態勢によって「認知症を早期に発見し、早期に対応することが何よりも肝心」だと市来先生は力を込めて語ります。

 

認知症の進行を遅らせるには早期の発見と適切な対応の継続が大事

現在の認知症の薬は、根治ではなく症状の進行を遅らせるもの。ではどうすれば、少しでも進行を遅らせることができるのか。それは“早めの発見と適切な対応の継続”だとするのが市来先生の見解です。

「根治薬がない今の認知症の治療に求められているのは、①早く発見して、②適切な治療をしっかり継続し、③定期的に状態を見直して次の段階に進む以前に対応してゆくことではないかと思います」(市来先生)。

そう話す一方で「発症する前の対策として、情報提供には大きな意義があります」と併せて啓発の重要性を説く市来先生。保健所などからの依頼で講演する機会が多いという先生は「たとえテーマが『子育て支援』であっても、少しだけ認知症の話題を交ぜるようにしています。それで、参加者100人のうち1人でも、2人でも心に留めてくれれば十分です」と穏やかな表情で語ります。

 

周りの人の力で患者さんのモチベーションアップ

家族など患者さんの周りの人を生かすことも、市来先生が大切にしている方針の一つです。

「患者さんに薬の服用を念押ししても、なかなかうまくいかない。ちゃんと飲ませることができるのは、やはり周りにいるご家族です」と話す市来先生が興味深い一例を挙げました。

ある患者さんが夏休み中のお孫さんを連れて来院されたので、先生はその子にお願いをしました。それは、おばあちゃんの薬の服用のお手伝いです。お孫さんは張り切って翌日から「おばあちゃん、お薬、飲んだ?」と可愛い声でひと言。

「そりゃ飲みますよね。私じゃなくてお孫さんに言われれば」と市来先生は心からうれしそうに微笑みます。

手術のない精神科の治療は、大きく薬物治療と非薬物治療に分かれます。そして非薬物治療とは“人による治療”だというのが市来先生の持論。

認知症看護認定看護師 大内美智子さん 認知症看護認定看護師 大内美智子さん

メンタルヘルス科の認知症看護認定看護師・大内美智子さんも、周りの人が共に支えることが大事だと語ります。

以前は病棟担当だったので、接するのは入院している患者さんだけ。しかし外来に異動して「認知症の患者さん一人ひとりに生活があり、その生活は多くの人が支えている。私もその中の一人だと実感しました」と大内さんは言います。そして「不安を抱えているご家族も多いので、グチなども含めてしっかり受け止め、不安を少しでも和らげることが看護師の仕事だと思っています」と自身に言い聞かせるように言葉を続けました。

 

“笑い”と“コミュニケーション”が治療にプラス

長く“笑いの効用”の研究に取り組まれている市来先生は「“笑い”は診断ツールとしても治療ツールとしても有用だ」と訴えます。 「例えば重いうつ病の患者さんは全く笑いませんが、元気になってくると段々笑顔が出てくる。だから私は患者さんの顔に笑みが浮かぶかを常にチェックしています」。さらに「笑いにより脳が活性化されることで、認知症の治療につながる可能性がある」と指摘します。

また、コミュニケーションも非常に効果的だとし、「家族のおられない患者さんは、デイケアの介護スタッフや利用者仲間とどんどんコミュニケーションして欲しい」と市来先生は説きます。

看護助手・健康運動指導士 山本忠芳さん 看護助手・健康運動指導士
山本忠芳さん

同センター内にある運動専門デイサービス施設「ばんび運動センター」の看護助手・健康運動指導士である山本忠芳さんも、コミュニケーションの大切さを実感している一人です。

運動によって脳の血流量を上げると認知症の予防および進行抑制に効果があるとされています。これと併せて「家に閉じこもらず人前に出て刺激を受けること、利用者同士の会話も効果があるのではないでしょうか。たとえ上手く体を動かせなくても“この人は笑顔が増えた”と感じることがよくあります」と山本さんは言い、それが「健康運動指導士としてのやりがいでもある」と続けます。

 

患者さんと病院、介護施設をつなぐケアマネジャー

同センター内には「ばんび運動センター」のほか、要介護者の食事、入浴などを行う「デイケアほほえみ」、在宅での介護サービスを提供する「東京医科大学霞ヶ浦訪問看護ステーション」があります。

看護師・介護支援専門員 齋藤尚代さん 看護師・介護支援専門員 齋藤尚代さん

訪問看護ステーションの管理者でありケアマネジャーでもある齋藤尚代さんは「メンタルヘルス科と特にチーム医療体制を敷いている訳ではありませんが、必要があれば声を掛けあえる距離にみんながいるので安心」と言い、その関係を“ザル”というユニークな例えで表現します。

「私たち各スタッフは点。それが連携という緩やかな線でつながり“ザル”となって、しっかり患者さんを受け止めている感じです」そう語る齋藤さんらケアマネジャーに、市来先生は大きな信頼を寄せています。

「ここではケアマネジャーがリーダー的な役割を果たしています。世間では医師の方が偉いと思われがちですが、それは違う。精神科の治療は『薬』と『人の力』の2つが重要です。もちろん医師の役割は薬を処方することと、意見書を書くことであって、患者さんの日常のケアまで医師は目を配れません。病院と施設、患者さんの家庭をつなぐのはケアマネジャーの役割です」(市来先生)。

理学療法士 石井智美さん 理学療法士 石井智美さん

齋藤さんが心がけているのは、患者さん、ご家族、介護スタッフが“共に歩く”という姿勢。「絶対に正しい介護方法はありませんから、私たちで工夫して、患者さんとご家族に受け入れてもらい“やってみる”ことが大事」だと言います。

「デイケアほほえみ」で勤務する理学療法士・石井智美さんも「施設内でのリハビリテーションの支援が主な仕事ですが、必要に応じて患者さんの送迎に同行し、ご自宅の環境を拝見。気になる点があればケアマネジャーに伝え、環境改善に尽力してもらっています」と、“スタッフの連携の大切さ”を痛感しています。

 

開業医、薬剤師を含めた協働を目指す

「総合病院、開業医、介護施設等の協働を進めなければなりません」―市来先生は、今後の課題をそう指摘し「これからは“連携”ではダメ。“協働”が求められている」と強く語ります。

「部分ではなく人を診る“全人的医療”が大切だと言われていますが、特にお年寄りは複数の病気を持っていることが多いので、患者さんの精神、身体はもとよりご家族の心身まで1人の医者が診ることが望ましいと考えています。しかし、診療科が高度に専門分化した総合病院では、全人的医療が必要だと言ってもなかなか実践することはできません。できるとすれば、患者さんの地元の開業医だと思います。私たちがしっかり診断し、地元で診療を継続する“病診連携”が原則となることが望ましいと思います」(市来先生)。

そして「薬剤師や介護スタッフとの協働も不可欠」と続けます。認知症の患者さんは循環器などを悪くしていて、複数の薬を服用しているケースが少なくありませんが、それを把握しているのは薬剤師。そして日常の体の動きや表情などを見ているのは、山本さんや石井さんなど介護スタッフです。

「“家族の会”を組織して介護のためのグループワークなどを進めていく計画を持っていますが、そのときには、ぜひ多くの関係者に協働してもらいたい」。市来先生は熱い口調で、今後の展望を示しました。
※11月より隔週の土曜日で4回1クールとして始まりました。

 

 

取材日:2011年8月22日
東京医科大学茨城医療センターの外観

東京医科大学茨城医療センター


〒300-0395   
茨城県稲敷郡阿見町中央3-20-1
TEL:029-887-1161

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