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「笑い」と「自信」で患者さんとご家族を幸せに導く
<青森県青森市 社団法人慈恵会 青い森病院>

院長 平野敬之先生 院長 平野敬之先生

「笑い」と「自信」の2大柱を掲げて、認知症医療に取り組んでいる病院が、本州の北端にある青い森病院です。その名の通り、青森市にある精神科・内科の病院で、160床の入院施設を擁し、認知症グループホームも併設する、社団法人慈恵会の系列病院です。頻繁に研修活動も行い、「病院全体で一人の患者さんをしっかりと把握する」ことに努めています。

「否定せず、当たり前に接する」医療

吹き抜けの開放的なロビーが、来院者の心まで明るく晴れ晴れとさせる、青い森病院。

1998年に現在の名称となり、青森空港の目と鼻の先に移転した同院は、前身を含め開院半世紀を迎える、歴史ある病院です。2011年4月に新院長に就任した平野敬之先生は、長年多くの総合病院で精神科医療、精神科救急、そして緩和医療にも携わってきた、心と体のエキスパート。阪神淡路大震災等で救援活動に参加し、今回の東日本大震災でも被災者の心身の痛みに心を寄せている医師の一人です。

以前から、「ここに来ると、よその施設や病院で感情の浮き沈みの激しかった患者さんもおだやかになる」という評判の病院でしたが、平野先生の就任直後から紹介受診が相次ぎ、軽度から周辺症状が顕著にみられる重度の方まで、多くの認知症患者さんが訪れるようになりました。

「格段、先進的なことをしているわけではありません。とにかく迅速に対応し、当たり前のことを当たり前にしているからだと思います」(平野先生)。

認知症医療における「当たり前」を平野先生は、「特別な人だという目で見ず、否定しない。良いところを見つけて伸ばす手助けをさせていただき、患者さんにとって嫌なことはしない。普通に接するということ」と考えています。問診、認知機能テスト、画像診断、診察に至るまで「何かを特別重視しているわけではなく、すべてが重要」ととらえている平野先生は、「患者さんの背景に関するご本人、ご家族からの情報は、多ければ多いほど治療計画に役立つ」と言います。

 

「笑い」の力を認知症医療にも活用

ある日のこと。診察室に入ってきた初老のご夫婦を笑顔で出迎えた平野先生。認知症の疑いがある男性患者さんの方に、「お連れの方、お嬢さんですか?」――思わず笑い出す、ご婦人。つられて笑う、患者さん。「え、奥様ですか。お若いから娘さんだと思って」。初診で緊張気味だったご夫婦の空気が、一変しました。

平野先生いわく、「診察室に入って、何分で笑っていただけるかが勝負」。早い人で30秒、この患者さんもその一人です。「笑うこと、喜ぶこと」を、認知症治療の柱の一つと考えている平野先生は、笑顔がはじけたとたん、互いの距離も縮まり、患者さんに気持ちよく診察を受けていただけるという信念のもと、患者さんやご家族の笑顔づくりに励んでいます。

「ご家族や付き添いの方が笑うと、患者さんも笑ってくれることが多いですよね」(平野先生)。

とはいえ、笑顔になったからといって、初診時に患者さんの背景全てが把握できるわけでもありません。度重なる診察を通じ、徐々に情報が入ってくることが常です。

「認知症は生活障害。生活しやすくするために、どう治療し、何をサポートすべきか考えるにあたっては、多くの情報が大事。何度目かの診察でそれまでおっしゃらなかったご家族の話などが突然出てくることがあるので、初診での笑いをきっかけに、いつでも自由に、気楽に話せる環境づくりを心がけています」(平野先生)。

 

スタッフの笑顔が患者さんを変える

看護師 髙田昭子さん 看護師 髙田昭子さん

笑顔を大事にしたいという思いは、スタッフにも浸透しています。

「患者さんとご家族と私たちスタッフ、全員の笑顔が大切」と言うのは、看護師長として認知症治療病棟を取り仕切る髙田昭子さん。

「患者さんに笑顔になっていただくためには、まず私たちが笑顔でいなければ。朝、その日の担当者のかけ声で、1分くらい皆で笑うんです。わけもなく(笑)」(髙田さん)。

白衣の天使という言われ方をする看護職、病院スタッフとはいえ、気分が優れない日もあります。

「忙しい、調子が悪いとばかりに険しい顔をしていると、患者さんに伝わります。笑って業務をスタートさせることで気持ちも晴れ、患者さんとの関わりも順調になる。何より病院全体に温かな空気が流れます」(髙田さん)。

そうなることで、自然と患者さんもおだやかでいてくださると、髙田さんはとらえているのです。「ここに来ると患者さんがおだやかになる」と評判になったのは、こういった空気も一因と考えられています。

介護福祉士 河村尚子さん 介護福祉士 河村尚子さん

准看護師 細川典子さん 准看護師 細川典子さん

「たとえ、内容がちぐはぐでも、きちんと患者さんの話をお聞きします。怒って詰所に来られた患者さんでも、私どもが共感したり、その方が住んでいた地域の話題をこちらから向けたりすると、怒り顔から徐々に笑顔に変わってくる。その瞬間が嬉しい」と話すのは、介護福祉士の河村尚子さん。院長も認める、「患者さんを笑わせる名人」の一人です。

「とにかく否定せず、『だめ』などの表現は使いません」(河村さん)。

こうしてスタッフそれぞれが笑顔で接し、患者さんの笑顔を引き出すことによって、「病院全体におだやかなオーラが生まれるようになった」と髙田さんは満面の笑みで話します。

准看護師の細川典子さんが心がけているのは、「きちんと観察し、患者さんの変化にいち早く気づけるようにすること」。雄弁に話すことができない認知症患者さんは少なくありません。だからこそ、常に気を配り、事故などにつながることのないように配慮していると言います。

「バイタルチェックで問題がなくても、食欲が落ちているようだとか、問いかけに反応が乏しいといった微妙な変化を見逃さないようにしたい」(細川さん)。

日々観察することで、見舞いに来られたご家族にも、「元気がないときの食べ方は、こんな感じですけれど、心配いりません」と説明できると言います。

 

患者さん、ご家族ともに「自信」を

作業療法士 岩見紗梨菜さん 作業療法士 岩見紗梨菜さん

医療相談員 波田野志穂さん 医療相談員 波田野志穂さん

同院で「笑顔」とともに、認知症治療の2大柱となっているのが「自信」です。その一翼として「患者さんができることを増やす。リハビリを通じて笑顔にする」という役割を担っているのが、作業療法士の岩見紗梨菜さんです。

岩見さんは、「自信が失われないように、できることまで奪わず、時間がかかっても待ち続ける」姿勢で臨んでいます。

「自信というキーワードで言えば、彼女たち作業療法士が、もっともそれを与えられる役目にある」と平野先生が期待を寄せる通り、自信を取り戻すためのリハビリを日々工夫しており、「今後は回想法なども取り入れていきたい」と岩見さんは考えています。

さらに、医療相談員の波田野志穂さんは、「患者さんだけでなく、ご家族にも自信を持ってほしい」と願っています。受診相談からご家族支援、関係各機関との連携まで、相談業務全般をこなす波田野さんは、「本当にせっぱつまった状況になってから、相談してくださるご家族が多い」ことに心を痛めています。

そんなときは「まずは、よく相談してくださったという思いをご家族に伝えます。それまでがんばってきたことに敬意を払い、共感し、患者さんだけではなく、ご家族の味方にもなって受け入れるようにしたいのです」(波田野さん)。

こうした声掛けを通じ、ご家族にも自信を取り戻すきっかけをつくるように努めています。

 

教育現場での啓発活動、研修活動も

青森県は、自殺死亡率が全国の中でも高い水準で推移していたことから、ここ10年、県をあげて自殺予防キャンペーンを展開してきました。取り組みの一環として高齢者にも声をかけていく中で「認知症患者さんの早期発見ができたこともあります」と平野先生は評価していますが、受診にまでつながらないごく軽度の方や、逆に重症の患者さんを引っ張り出すまでには至っていない現状もあります。

こうしたことから、積極的に地域に出向き、精神科の敷居を低くする活動に取り組んできた平野先生は、5年前から中学校でも講演を行うようになりました。人生を楽しむことの意味をはじめ、認知症、うつ、統合失調症などについて話をすることもあります。講話の後で「うちの母はアルコール依存症ではないか」と心配した中学生もいました。

「『おじいちゃん、認知症じゃないかな・・・。病院に行ってみたら?』 とお孫さんが言うと、息子さんや娘さんが言うよりも動いてくれやすいようですね」(平野先生)。

こうした狙いもあり、今後も教育現場での認知症啓発活動を行っていく予定です。

認知症の啓発活動とともに、同院が力を入れているのが、スタッフの研修です。患者さんのためにも、病院を良くするためにも、「井の中の蛙になりたくない。そのためにもしかるべき講師の話を聞き、勉強をし、他の病院スタッフとコミュニケーションを図ることが大切」と髙田さんは考えています。毎年のように「研修目標」を掲げており、「笑いによって認知症患者さんがどのように変化するか、看護研究の一つとして取り組んでいる最中です」(髙田さん)。

 

一人の患者さんを全体でサポートする

「看護師が『OOさんのご家族、今どうしているんだっけ?』と聞くと、『この前勤務先が変わられて、昼間はご自宅にいらっしゃらないんですよね』とケースワーカーが即答してくれる」というほど、スタッフ間の連携は密で、それぞれの持つ情報を補い合っている同院。

とはいえ平野先生は、「まだまだやれることはある。おのおのが情報を持っていても、全体で一人の患者さんをしっかりと把握するまでには至っていない」と、さらなる課題を掲げています。

岩見さんは介護職も1年半経験していることから、「介護職の際の経験をリハビリに生かしていくのも、自分の課題。互いの業務を理解した上で話し合えることはたくさんあるので、情報の共有を患者さんのために役立てたい」と意欲的です。

開放的なロビーをバックに、スタッフ一同 開放的なロビーをバックに、スタッフ一同

青森市からの依頼を受け、「高齢者もの忘れ相談事業」にも協力をはじめ、「病院の枠を超えて、様々な機関・施設との連携の輪を広げたい」と話す平野先生。評判の高さに甘んじることなく、「患者さんやご家族と二人三脚で歩いていく。これが私の医療の原点であり、永遠の目標です」(平野先生)。

「自分の家族に接するように患者さんに接する」とスタッフが口を揃える青い森病院は、今日も笑い声で包まれています。

 

 

取材日:2011年11月2日
青い森病院の外観

社団法人慈恵会 青い森病院


〒030-0155
青森県青森市大字大谷字山ノ内16-3
TEL:017-729-3330

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