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綿密なカンファレンスで患者さんへの理解を深める
<福岡県田川市 医療法人和光会 一本松すずかけ病院>

薬剤師 横山博先生 薬剤師 横山博先生

一本松すずかけ病院は、神経精神科から内科、診療内科、リハビリテーション科などを標榜し、半世紀以上もの間、地域の精神医療に貢献してきました。認知症医療においても60床の専門病棟を備え、地域連携や退院後の受け皿づくり、社会復帰にも積極的に取り組んでいます。長年にわたる医療クオリティーの高さが認められ、日本医療機能評価機構の認定病院に指定されるなど、地域の中核病院としてさらなる期待が寄せられています。

まずは「身体的な疾患の除外」から

看護師 孫野路子さん 看護師 孫野路子さん

その名の通り、プラタナス=すずかけのシンボルツリーが印象的な一本松すずかけ病院は、福岡県の中央部、炭坑節の発祥地として知られる田川市にあります。

同院の認知症患者さんは、アルツハイマー型認知症が約8割を占めており、60床の認知症病棟は、常にほぼ満床状態。地域の高齢化が進むにつれ、手厚い認知症医療およびケアが評判となり、高齢者の受診相談が急増中という現状です。

同院の認知症医療は、まずは身体的な疾患が原因かどうかの見極めを慎重に行うことから始まります。初診時に、受診のきっかけや日常生活で抱えている問題点を患者さんご本人やご家族から綿密に聞き取り、頭部CT検査、知能検査、血液生化学検査まで行います。

「的確な診断・治療をするため、身体疾患の除外をきちんと行うことが大切。そのうえで初めて認知症の診断となります。患者さんの日常生活で何が課題となっているのか、ご家族が抱えている問題点も傾聴していきます」と話すのは、廣瀬和徳先生。

廣瀬先生ら担当医は、日々認知症病棟を訪れ、「担当看護師から患者さんの様子を聞くだけではなく、実際に自分の目で確認し、観察する」ことをモットーにしています。

 

正しい診断をつけたうえでの投薬、看護・介護

同院では他院や施設からの紹介で即入院となる場合にも、「本当に前医でつけられた診断名のままでよいのかどうかの観察」(廣瀬先生)からスタートします。というのも、「アルツハイマー型認知症の患者さんをそちらで診てください」と、あらかじめ診断名がついていたものの、実はてんかんだった、脳腫瘍だったという場合があるからです。

その際、医師とともに患者さんを強力サポートするのが、看護師からソーシャルワーカー、作業療法士、介護福祉士など40名弱の専門スタッフです。特に看護師は的確な診断をつけるための材料を担当医に提供することが、大切な業務の一つとなっています。

「入院から最初の1週間は患者さんの行動や生活ぶりに注意を払い、観察し、先生と話し合いを重ねます。新たな病名がついた場合には薬の調整が必要ですし、看護・介護においても対応の仕方が変わってきますので」と、看護師の孫野路子さんはその重要性を強調します。

一般的に精神科領域における投薬においては、特に微調整が必要だと言われますが、同院で薬剤師のリーダー的存在である横山博先生は、こと認知症において「高齢の方が多いだけに、安全な薬を提供することが大事。転倒から寝たきりにつながるケースも多いので、転倒リスクが高くなる可能性のある薬には慎重を期すなど、配慮しています」と話します。横山先生ら薬剤師は調剤のみならず、「患者さんの状態を正確に知ることが重要」と、病棟を回り、服薬指導に励んでいます。

「退院されて、ご家庭に戻られてからは特に薬の管理が大事になってきます。ご家族も患者さんも、薬に関して薬剤師にどんどん相談していただきたい」(横山先生)。

 

「連絡ノート」でスタッフ間の連携を密に

「皆さんそれぞれの立場で患者さんをみているのですが、分業が徹底していることで、逆に思惑が十分に伝わらないことがありました。そこで各職種間では情報共有シート、病棟スタッフ間では連絡ノートを活用し、共通理解を深めることにしました」と孫野さんは狙いを話します。

結果、「こういう経緯でこの依頼をしてきたのか」「看護師はあのときこう考えていたのか」と互いに理解し合うことができ、患者さんについて共通認識を深めることができるようになったのです。連絡ノート以外にも、実際に申し送りをする場に、看護師だけではなく専属作業療法士、ソーシャルワーカーなどにも同席してもらい、全職種から一言ずつ発言してもらうのが、同院のやり方となっています。

作業療法士の中尾洋介さんは、職種を超えて理解を深めたいと、自ら願い出ておむつの交換なども行ってきました。「自分の仕事だけではわからないこともある。身をもって経験しないと」とその理由を話します。

作業療法士 中尾洋介さん 作業療法士 中尾洋介さん

各種レクリエーションはリハビリの一環として作業療法士が中心となって行っており、カラオケからお菓子づくり、運動療法など様々。集団レクリエーションのほか、手芸や回想法など小集団で行うレクリエーション、患者さんに合わせた個別トレーニングなど、多種多様なプログラムを揃えており、積極的に新しいメニューを取り入れていることも同院の特長の一つです。

「心がけているのは、認知症ということを意識しないこと。が、病気の人という目でみず、病前はこんな人だったのかなとイメージしながら心で接しています」(中尾さん)。

ケースカンファレンスで患者さんへの理解がアップ

「皆が同じ認識で」というかけ声は、患者さんをよりよくケアするための看護・介護職あげてのスローガンです。

連絡ノートはそのためのツールの一つですが、全スタッフが患者さんをより深く理解するため、カンファレンスにも力を入れ、入院時、1カ月後、退院調整時と、最低でも3回のカンファレンスを行います。

さらに、問題行動等がみられる場合には、全スタッフの対応を統一して患者さんに向き合うため、担当医、看護師、作業療法士などが一堂に会し、「ケースカンファレンス」も行っています。

例えば、生活歴や家族背景など、患者さんに関する情報をつまびらかにし、「この人はどんな思いでこの時期を過ごしていたのか」「病気になったことをどう受け止めているのか」といったことを皆で考え、「嚥下状態が悪いけれど、酢の物は意外と食べてくれるよね」「後ろから声をかけられるのが苦手みたいです」というような、それぞれの立場から得た情報を出し合います。

看護師 田村愛さん 看護師 田村愛さん

その結果、患者さんを全スタッフがより深く理解するようになり、「私たちが関わり方を変えたことで、暴力行為がみられる患者さんが変わっていった場合もありました」と孫野さんはその成果を語ります。

同じく看護師の田村愛さんも、「私たちの対応一つで患者さんに変化があることがケースカンファレンスなどを通じてわかりました。ほかの人からすれば問題のある行動にみえても、ご本人にとっては何か意図があるかもしれない。患者さんの世界に私たちが入り、共感し、何に安心するのかを理解していくことが大切だと学びました」と振り返ります。

 

「自宅で過ごす環境」に近づけるケア

介護福祉士 楠本久美子さん 介護福祉士 楠本久美子さん


ソーシャルワーカー 西村友希さん ソーシャルワーカー 西村友希さん

認知症病棟において、日常生活のケアを担っている介護福祉士の楠本久美子さんは、「病院生活ではなく、なるべく患者さんの日常に近いスタイルで過ごしていただきたい。自分の家のような安心感をもってもらいたい」と話します。

その一環として、よく声かけをし、「お茶を飲むこと一つをとっても、家で温かいお茶を入れ、茶飲み仲間と飲んでいるような感覚をここで再現したい。そのための雰囲気づくりを心がけています」(楠本さん)。介護福祉士がすべてをお世話するのではなく、患者さん同士で「今日は私がお茶を入れるわね」という光景もみられるようになってきました。

退院後は自宅に戻られたり、施設に入ったりなど、次のステップが待っていますが、その調整を一手に行っているのが、ソーシャルワーカーの西村友希さんです。施設などへの入所が予定されている場合には、その施設まで自ら出向き、担当看護師や作業療法士などにも同行してもらって、施設側への情報提供を行っています。

「病棟で現在どういう風に過ごしているか、患者さんの状態を各専門職から伝えてもらい、施設の方に安心して受け入れてもらえるようにするのも目的の一つですが、患者さんがこの施設でどんな生活ができるか見せてもらう意味合いも大きいです」と話します。

「施設を訪問したとき、患者さんがおだやかに過ごされている姿をみたりすると、本当によかったと思いますね」とほほ笑む西村さんです。

 

地域での受け皿づくりにも奔走

西村さんらソーシャルワーカーや同院地域連携室のスタッフ、看護師らも、勉強会や施設訪問などを通じ、地域との連携を積極的に図っています。

「施設には初期の段階で早めの受診相談をしてもらい、通院の調整や、場合によっては入院をすすめたりと、相互連携を取ることで患者さんやご家族を支えられると思います」(孫野さん)。

「地域を回って話を聞くと、最初は内科に行った人が多い。ありとあらゆる検査をした結果、やっと『認知症でした』と。認知症は精神科の分野でもあるし、認知症の指定医や薬の調整にたけた医師、薬剤師がいるので、ぜひ精神科を訪れてください」(孫野さん)と、認知症治療における精神科の認知度を上げることにも日々奔走しています。

さらに専門性を高めるため、同院では認知症ケア専門士の資格取得に向けて取り組んでいるスタッフもおり、「多くのスタッフが資格取得をめざし、その資格を生かしていけるようなプランも立てていきたい。患者さんの生活をよりよく支えたい」と話す孫野さん。

廣瀬先生の「患者さんの自尊心を尊重し、生活における問題点をとりのぞいてあげたい」という思いと、スタッフの「看護力、介護力をあげたい」という思いが一つになっている一本松すずかけ病院です。

 

取材日:2011年11月4日
一本松すずか病院の外観

医療法人和光会 一本松すずかけ病院


〒825-0004
福岡県田川市大字夏吉142
TEL:0947-44-2150

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