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認知症の専門病棟を持ち、震災時にも頼りになる存在に
<福島県福島市 医療法人慈心会 村上病院>

院長 村上敦浩先生 院長 村上敦浩先生

村上病院は院長の村上敦浩先生のお父様が1970年に設立した精神科の病院です。1988年には認知症専門の治療病棟を増設しました。認知症専門の入院施設があるというメリットは、東日本大震災で被災した患者さんや避難所にいて症状が悪化してしまった患者さんの受け入れに、最大限発揮されました。

認知症専門病棟を先駆けて増設し震災でも大きな役割

院長の村上敦浩先生は、認知機能に関わる脳の画像診断が専門で、1998年より村上病院で高齢者の精神障害を中心に診察しています。

「認知症の患者さんには食事や排せつなど生活全般に援助や介助が必要になることがあり、また、認知機能の衰えから部屋を間違えることなどもあります。そのような状態でも、安心して入院治療を行っていただくためには、十分に配慮がされた認知症の専門病棟が必要と考え、1983年、60床の認知症の専門病棟を開設しました。さらに、1998年、増築と共に病院全体の病棟構成を見直し、54床の認知症専門病棟と身体管理を目的とした30床の合併症病棟を用意しました」(村上先生)。

福島市で現在、認知症の専門病棟がある病院は、村上病院を含めて二院だけということもあり、精神科や内科の一般の病棟の受け入れが困難な患者さんについての相談が、地域包括支援センターや福島市の高齢福祉課から頻繁にあります。

震災の際にも同院は、被災した認知症患者さんの受け入れや、浪江町、双葉町などから川俣町や二本松市に避難してきて、過酷な避難所生活から症状が悪化したので入院させてほしいといった緊急の要望に応え、認知症治療病棟の存在の大きさを示しました。

「当院でも毎月10人前後の初診の患者さんが来院されますし、計100人ほどの患者さんを診ています。認知症の患者さんの数は、今、全国で200~300万人と言われていますが、高齢になるにつれ発症の割合も増えるわけですから、これからもっと多くなると考えられます。この先、当院に求められる役割もさらに大きくなっていくでしょう」(村上先生)。

 

病気そのものの要因以外に治せることはないか全体像を丹念に把握

診察を行ううえで村上先生は、まず患者さんご本人の話に耳を傾けています。

「『ご本人の意思を最優先に考えていますよ』という患者さんへのメッセージでもあります。それからご家族の話を聞きます」(村上先生)。

診断は、ご本人の診察、ご家族や関係の皆さんからの情報に加え、長谷川式簡易知能評価テスト、時計描画テスト(CDT)、立方体の模写、日本語版COGNISTATなどの検査も取り入れ、頭部CT、血液検査も含め、多角的に行っています。告知についてもきめ細かな配慮をしています。

「たとえ認知症であっても『もの忘れや判断力に問題が出てきているようですね』というようにお話しすることもあります。治らないと認識されている病名を告げられることほどつらいことはないと思うので、『いろんな治療を試みていきますし、しっかりサポートしていきますよ』といったことを必ず伝えています」(村上先生)。

村上先生は、診察で最も注意すべきは、治せる要素があるのにそれを見落としていないかという点だと言います。

「まず、患者さんの生活環境を含めて、全体像をきちんとつかむということを意識しています。症状の部分的なところだけを診て認知症と判断してしまうと、他の要因を見落としてしまう危険があるからです。例えば、日頃服用している薬の影響や、持病の悪化などの体調不良、日常生活にストレスが多く気持ちに余裕がないなど、認知機能障害を起こす要因を持つ方がたくさんいます。患者さんの全体像をよく診ておかないと、治せる状態の患者さんまで認知症と診断してしまい、治せる病気をそのまま見過ごすことになりかねません」(村上先生)。

複数の病院からの多剤投与のため認知症のような症状が出てしまう場合もあります。認知機能に影響のある薬をたくさん飲んでいたことがわかり、薬を整理したらそれだけで症状が改善したという患者さんもいます。

また、治療について村上先生は、本人が服薬を拒む場合、無理に飲まなくてもいいと考えています。

「無理やり飲んでいただいても、ご本人が心穏やかな状態ではないと治療もうまくいかないと思いますし、高齢の患者さんの場合、そのくらいの方がちょうどいい場合も多いんです」(村上先生)。

 

村上病院では、漢方薬も2005年から積極的に採り入れています。認知症患者さんの周辺症状(BPSD)の改善に効果があると言います。

 

季節感や地域性を治療に取り入れ、患者さんの能力を引き出す

心理士 萩原慎也さん 心理士 萩原慎也さん

村上病院では、治療の一環として回想法も積極的に行っています。

心理士の萩原慎也さんは週に1回、半日を回想法にあてています。

「心がけているのは、五感をできるだけ刺激することです。毎回最初の10分間に、季節の花の鑑賞タイムとして花を見たり触ったり、においを嗅いだりして楽しむ時間を作っています。男性も女性も笑顔になって、きれいだねと喜んでくれます」(萩原さん)。

回想法に使うイネ 回想法に使うイネ

また、土地柄農業を営んでいた方が多いので、最近では稲を育てて成長具合を一緒に観察する試みも行っています。

「稲の穂が出たときに、患者さんが『もっと水をあげた方がいい』とアドバイスをしてくれることがあります。とても驚いたのは、稲穂を握って『もうあと1週間で実が膨らんでくる』と言われたら、本当にその通りになりました。記憶に障害が出ても、かつて職業として体で覚えたことや得意だったことは決して忘れないのだと実感しました」(萩原さん)。

作業療法士 佐々木藤子さん 作業療法士 佐々木藤子さん

また、認知症の治療病棟では、毎日、生活機能回復訓練という時間を取ることになっており、村上病院ではレクリエーションや創作などの作業療法に力を入れています。

「作業療法士は5人います。病院の規模としては多いと思います」(村上先生)。

認知症病棟専従の作業療法士である佐々木藤子さんは、認知症患者さんの作業療法に関する勉強会などの機会があまりないので、どのようなリハビリのメニューを提供できるか日々模索していると言います。

作業療法で患者さんが作った貼り絵 作業療法で患者さんが作った貼り絵
介護福祉士 佐藤由佳さん 介護福祉士 佐藤由佳さん

「レクや作業を提供する際には、やりたいという気持ちの芽を摘まないよう、皆さんが今やりたいことをすぐに取り入れるようにしています。旬のものを調理して食べたいという希望があれば、翌日には準備をするようにしています」(佐々木さん)。

介護福祉士である佐藤由佳さんも、認知症病棟の作業療法を介助するほか、日常生活のなかで患者さんの能力を引き出す働きかけを工夫しています。

「以前はできなかったことが、今日できたりすることがあります。また、できるところまでいかなくても少しでも興味を持てるかもしれません。この人はこうだと決めつけず、可能性を信じて患者さんの能力を引き出していけるように働きかけていきたいと思います」(佐藤さん)。

 

相談と介護を通して患者さんとご家族の気持ちに寄り添う

精神保健福祉士 谷口徹さん 精神保健福祉士 谷口徹さん

精神保健福祉士の谷口徹さんは、ご家族の相談を受けています。

「ぎりぎりのところまでは在宅で生活していて、ご家族が疲弊して入院に至るという場合が多く、ご家族の苦労をしっかりと受けとめるようにしています。ただ、一番大変なのは患者さん本人だということは、ご家族にわかってもらえるように説明しています。」(谷口さん)。

谷口さんは、受診を拒む患者さんについての電話相談も受けています。

「無理やりでも連れていってほしいというご家族もいますが、それは治療を導入するのに一番良くない方法なので、例えば『頭痛や腰痛がひどいから今日はそこを診ていただこうね』ということをケアマネジャーやご家族から話していただいてお連れしてもらうようにしています」(谷口さん)。

看護師の室井光江さんは、「認知症患者さんの介護は、肉体労働+感情労働」と言います。

看護師 室井光江さん 看護師 室井光江さん

「私でも、患者さんの具合が悪いと、自分の思ってもみなかった陰性感情が引き出されてしまって、自分はこんなに意地悪な人なのかと感じたりします。それをコントロールして穏やかに接するのが、職業として当たり前のことですが、その当たり前が難しいです。患者さんが亡くなられるまで10年間介護されてきたお嫁さんが、きびしく当たられたこともあったのにもっと一緒に生活したかったとおっしゃっていて、その方のような介護が私の目標です」(室井さん)。

作業療法士の佐々木さんも、「介護に疲弊しているご家族は、患者さんの問題行動が強いときはもう会いたくないというような態度をとったりしますが、治療で患者さんが落ち着いてくると病院の夏祭りなどの行事に顔を出したりしてくれるようになる」と言います。

村上先生も、患者さんとご家族の関係への思いをこう語ります。

「献身的に尽くされているご家族を見て、われわれも勉強させられることがあります。自宅や地域での適応がうまくいかなくなって入院したけれど、こちらで環境を整えて、お薬も使って、元に戻って生活できるようになったケースもあります。これは、こちらの努力や気持ちだけで進められることではなく、ご家族の理解や協力が得られて初めて実現できることですから、とてもうれしいことです」(村上先生)。

退院してもらって、自宅や施設に引き継げるよう治療に取り組みたいと村上先生は意気込みを語ります。

 

震災からの立ち直りを精神科医療で支える使命がある

スタッフの方々の使命感は、患者さんから与えられるささやかな喜びによって日々強化されています。

看護師の室井さんが喜びを感じるのは、本来の「その人らしさ」が垣間見られたとき、例えば「入院された当初、こちらが近づくのもちょっと怖いという状態の方が治療が進んで、合うお薬にも出会えて精神状態が安定してくると、本来は優しい方だというのがわかったりするとき」だと言います。

他にも、退院した患者さんから「タラの芽が採れたから取りに来てと言われた」や「あの頃の自分はひどかったよなあと電話があった」といったほほ笑ましいエピソードを、佐藤さんと谷口さんは口々に語ります。

村上先生は、認知症病棟には今後の課題がたくさんあり、患者さんのケアのシステムの改革や整備を考えていかなければと言います。

また、震災の関係でもかなりの患者さんを受け入れている同院ですが、今後、福島の復興を支える使命感もあります。

「福島県から人口が流出していると言われていて、そのなかで医療機関がしっかりしていないと、ますます皆さんが不安になってしまいます。これからも頼りになる医療を提供し続けていくということが、われわれの役目だと考えています。その役割を果たすことが震災からの福島の復興の力のひとつにもなっていくと考え、ぜひ全員で頑張っていきたいと思っているところです」(村上先生)。

 

 

取材日:2011年9月12日
村上病院の外観

医療法人慈心会 村上病院


〒960-1321
福島県福島市立子山字北浦3
TEL:024-597-2124

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