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認知症外来を開設、医療・福祉と連携して笑顔で暮らせる地域へ
<島根県大田市 大田市立病院>

神経内科医 岡田和悟先生 神経内科医 岡田和悟先生

島根県の中央部に位置し、世界遺産・石見銀山の歴史的遺跡が点在する大田市。その公立病院である大田市立病院は、高齢化が進む地域の医療機関として、より丁寧で的確な診断・治療を行うため、認知症外来を開設しました。認知症専門医である岡田和悟先生は、認知症外来を担当するかたわら、地域のネットワーク作りにも積極的に取り組んでいます。

地域の高齢化に対応し認知症外来を開設

島根県では、2011年9月に島根大学医学部附属病院に認知症疾患医療センターを開設するなど、認知症を正しく理解し早期発見・早期治療を推進する動きがあります。そのような中、高齢化が全国平均より早く進行する地域のニーズに対応するため、大田市立病院は同年5月に認知症外来を開設しました。内科と神経内科で外来・病棟を担当されてきた岡田和悟先生がトップに立ち、診察にあたっています。

岡田先生は、医師2年目からレビー小体型認知症の症例に関わったこともあり、脳血管障害、パーキンソン病とともに、認知症を自らの大きなテーマの一つととらえてきました。県では数少ない認知症専門医にも認定されています。認知症は検査にしても治療の説明にしても十分に時間をかける必要があることから、一般外来とは一線を画した体制で診察・診断を行いたいという岡田先生の思いが認知症外来の開設につながりました。

スタッフもそれまで神経心理検査を担当していた言語聴覚士のほかに臨床心理士が新たに加わり、開設まで1年ほどかけて診療体制を整えてきました。

 

かかりつけ医・院内他科との連携で診察・治療

現時点では、かかりつけ医からの紹介で受診する患者さんが約半数を占め、多くは治療方針が決まった段階、あるいは投薬治療で症状が落ち着いた段階でかかりつけ医に引き継ぐ形となっています。

また、同院入院中に認知症の合併が疑われて紹介となる患者さんが3割、院内の外来他科からの紹介が残りの2割を占め、ほかの疾患の患者さんにおける認知症の有無をチェックする場ともなっています。

開設から半年を迎え、岡田先生が大田圏域で講演会を行ったり、新聞などのメディアで取り上げられたりすることもあって、地域の方々からの認知症外来の認知度は少しずつ高まってきました。

「時間をしっかりとって認知症の有無、病型などを説明します。さらに資料などを使って病気について解説したり、周りのスタッフのフォローもあって、患者さんやご家族にとっては検査がしっかりできたという満足感が得られるだけでなく、これまでの認知症に対する断片的な知識が整理されて、今後に向けてどうすればいいかを考える際の参考になっていると思います」(岡田先生)。

 

時間をかけた検査を診断・治療に生かす

初診時は、問診と心理検査、採血、診察を行います。認知症外来を開設した目的の一つである、「しっかり時間をかける」のは診察だけでなく心理検査も同じです。長谷川式簡易知能評価検査、MMSE(認知機能検査)のほか、うつ性を評価するSDS、アルツハイマーの評価スケールであるADAS、BPSD(周辺症状)の症状がある場合はNPIとさまざまな形で評価を行います。脳卒中やアルツハイマーによる意欲の低下が注目されていることから、岡田先生が日本語訳を行い脳卒中後の治療などに活用されている「やる気スコア」も取り入れて、意欲障害のスクリーニングも実施しています。

看護師 坂根英子さん 看護師 坂根英子さん

言語聴覚士 大畑あかねさん 言語聴覚士 大畑あかねさん

看護師の坂根英子さんは、「検査の段取りを説明する際、病識がない患者さんには心理検査と言わずに言葉の検査などと柔らかい表現にしています」と患者さんへの心配りを話します。また「同伴するご家族はお仕事がある方も多いですから、次回の診察の内容や必要な時間の目安を伝え、予定が立てやすくなるよう配慮します」と、ご家族にも気を配ってスムーズな検査実施へとつなげています。

検査に携わる言語聴覚士の大畑あかねさんは、「解答の内容は正解でも答えるまでに時間がかかる場合や、患者さん自身はできると言うことでもご家族に話を聞くと実態が違う場合など、検査の点数だけではわからないこともあります。検査時の状況やご家族のお話まで、点数以外の情報もカルテに記載し岡田先生に伝えています」と話します。

「検査の項目が多く、要する時間は長くなりますが、スタッフの頑張りのおかげで、検査結果をはじめさまざまな情報が治療に役立っています」と、岡田先生はスタッフのサポート力をたたえます。

 

ご家族も患者さんへの対応方法を知ることが大切

臨床心理士 長岡敦子さん 臨床心理士 長岡敦子さん

言語聴覚士 森山澄子さん 言語聴覚士 森山澄子さん

心理検査を行うことは、診断に反映されるだけでなく、ほかのメリットもあります。臨床心理士の長岡敦子さんは、「検査をしていくと、できないことや苦手なことがわかる反面、できることも明らかになってくるので、隣で聞いているご家族が驚くときもあります。好きなことや興味のあることはできる場合もあるので、ご家族がそれを理解し、できることに目を向けるための一助になるのではないでしょうか」と語ります。

ご家族や介護者が患者さんや認知症という病気を理解して適切な対応をとることは、患者さんとご家族双方にとっての穏やかな生活につながります。

言語聴覚士の森山澄子さんも対応の仕方の重要性を指摘します。

「病棟でリハビリも担当していますが、攻撃的な行動をとると言われている患者さんでも、こちらの対応を変えれば落ち着かれることがあります。おむつを換えてほしいのにスタッフにうまく伝わらなかったなど、攻撃的な行動をとるのにもご本人なりの理由があります。こちらが患者さんの要望に耳を傾けて対応すれば変化することもあるのです」(森山さん)。そのため、ご家族にも「一般の方向けの地域の勉強会やテレビの情報などで対応の仕方を学ぶと介護がしやすくなるのではないでしょうか」とアドバイスを送ります。

岡田先生は「記憶障害があっても患者さんの感情は生きていますから。その人の状況を一般の患者さん以上に理解し、同じ目線で話を聞く、それだけで症状が治まり穏やかになることがありますね」とスタッフの言葉に深くうなずきます。

 

地域で「医療・福祉・介護」連携の体制作りも

大田市は、全国平均と比べ後期高齢者の割合が高く、認知症対策も急務です。

「誤嚥性肺炎で入院した患者さんにもその奥さまにも認知症の症状があるといったことがありました。遠方に住むご家族と相談し、ご夫婦一緒に施設に入るという結果となりましたが、老老介護は少なくありません」(大畑さん)。

そのような地域性からも、岡田先生は、「認知症は避けて通れない問題として一般の方にも知識を持っていただいて、早めに気づいて早めに治療を受けられることが大事です」と語ります。

「ご家族が特に困るのは周辺症状ですから、病院の治療のほかに地域でどうフォローしてもらえるか、周辺症状への対応のノウハウをご家族にどう伝えるかということも課題ですね」(岡田先生)。

患者さんを切れ目なくサポートするには病院の治療だけでは不十分であることから、地域の医療・介護・福祉の連携作りとして、岡田先生は市の医師会の有志と共に「大田圏域認知症ネットワーク」を立ち上げました。

大田市のシンボル三瓶山の中心となる4つの山々に例え、「認知症外来」「かかりつけ医」「福祉」「介護」の4つがつながり、それらの連携で患者さんとご家族が笑顔で暮らせる地域を目指します。

病院の先生や職員、行政、介護スタッフなどが会員で、2011年8月の講演会には約150人が参加。今後は定期的に勉強会を開催し、講演会形式だけでなく討論ができる場を設け、診断から介護まで網羅した勉強の場としていく予定です。

医療人のあり方をモチーフにした壁画「癒し」 医療人のあり方をモチーフにした壁画「癒し」

「県による認知症サポーター養成講座の開催、隣の出雲市に認知症疾患医療センター開設など、社会のバックアップ体制もあります。地域の医療機関、地域包括支援センターやケアマネジャーと連携し、診断したら診断しっぱなし、薬を処方したら処方しっぱなしではない、日常の生活が支障なく送れるようなサポート体制をしっかり作りたいですね。もちろん一般の方が認知症について勉強する機会も作っていけたらと思っています」(岡田先生)。

認知症外来での専門性の高い診断と治療、そして地域では職種・組織を越えた連携体制。岡田先生の取り組みは始まったばかりです。

 

 

取材日:2011年12月8日
大田市立病院の外観

大田市立病院


〒694-0063
島根県大田市大田町吉永1428-3
TEL:0854-82-0330

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