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認知症の緩和・治療に一石を投じる動物介在療法を推進
<岡山県岡山市 医療法人雄風会 あしもりクリニック>

生長グループ 理事長 生長豊健先生 生長グループ
理事長 生長豊健先生

岡山市の足守地区には、あしもりクリニックをはじめとする生長グループの医療・福祉・介護の各施設が点在しています。住民の健康管理からターミナルケアまでを支える同グループでは、認知症へのよりよいケアを模索するなかで、日本で初めて本格的な「ドッグセラピー」を導入。多くの有効例を重ね、認知症治療に一筋の光を差し込んだとして、注目を集めています。

「患者さんの背景が見える医療」を目指す

岡山市の北西部、吉備路と呼ばれる風光明媚な丘陵地帯に生長グループの各施設があります。外来診療を行う新あしもりクリニック、加茂川診療所をはじめ、訪問看護ステーション、通所デイケア、特別養護老人ホームまで、グループ施設数は20。医療・福祉・介護のすべてを網羅し、地域住民の健康を連携して支えているのです。

「当初から手広くやろうと思ったわけではなく、最初は職員3人の小さな内科でした」と振り返るのは、理事長の生長豊健先生。市中心部の病院で内科医を勤めていた頃から「その人のバックグラウンドが見える関わり方がしたい。患者さんの生活を感じながら治療をしたい」という思いが強く、地域医療を実現するため、足守地区をその地と決めました。かくして、1984年にグループ第一号となるあしもり内科を開設。吉備路の田園風景を眺めながら「クリニックの電話がナースコール、この地域の道路が病院の廊下、それぞれのご家庭が病室のつもりで取り組もう」を合言葉とし、その言葉通り、毎日のように往診に出かけていきました。

生長先生の姿勢はすぐに住民に受け入れられましたが、この地域は市内でも有数の超高齢化地域。当初の願い通り患者さんのバックグラウンドが見えてきた結果、高齢者の住環境が決して好ましいものではない現実を知り、特別養護老人ホーム、ケアハウス、自立支援に向けたアクティブデイサービスセンターなど、地域住民、特に高齢者にとって必要な施設を次々と開設していきました。

 

地域でターミナル医療を実現

このようにして、医療から介護まで、結果的にすべての施設が開設から28年をかけ、この地に揃うまでに至りました。いわば、病気の治療からリハビリテーション、ターミナルケアまで、すべての営みをこの地域から離れずに行うことができる基盤を整えたのです。

あしもりクリニック 名誉院長 吉田英紀先生 あしもりクリニック
名誉院長 吉田英紀先生

あしもりクリニック 院長 市木研先生 あしもりクリニック
院長 市木研先生

「急性期疾患の場合は市内の総合病院や専門医に行かなければなりませんが、やがて地域に戻ってこられる。そのとき、ターミナルケアまでこの地で診られたら、患者さんにとって最も望ましいはず」と話すのは、あしもりクリニック名誉院長の吉田英紀先生。この地域で生き、生涯を終える「地域で看取る」ことが同グループの願いであり、人間のあるべき姿だと言います。

「認知症は福祉の支えがないと、医療だけでは限界があります。地域のなかで医療・福祉・介護がそれぞれ共同し、患者さんやご家族を支えていきたい」(吉田先生)。

同グループの理念に賛同して、4年前に足守地区へやってきたのが、あしもりクリニックの院長を務める市木研先生です。以前は急性期医療の現場にいましたが、「急性期は病気そのものを治すことが目的なので、じっくりと患者さんに向き合える状況ではないことが多いのです。しかし、私は病気を抱えて生活をしている生活者そのものに関わりたいと思っていたので、地域に溶け込んだ医療をしていこうという生長先生、吉田先生の考えに共鳴しました」――これが同グループに関わるようになった動機だと市木先生は話します。

地域に溶け込むため、同グループのスタッフは、医療・介護現場での仕事だけではなく、「有志で溝掃除を手伝ったり、地域のイベントにも積極的に顔を出したりしている若いスタッフが多い」(市木先生)と、グループをあげて地域づくりにも参加しています。

 

様々な立場・職種の共通理解のための「連携シート」

認知症の患者さんに対しては、医師が医療の側面から、ケアマネジャー、介護士、理学療法士などが、それぞれの立場からの関わり方をしており、グループが大所帯なだけに、「1人の患者さんに対して10~20人が関わるのも珍しくない」(吉田先生)と言います。

そして、認知症治療においては、「長谷川式などの認知機能テストも行いますが、さらに重要視しているのは、スタッフからの生きた情報」(市木先生)と強調します。

というのも、「大勢の人間が関わった分だけ、情報が入ってきます。医師は医師の見方しかできないところもありますが、ご家族、介護士など、立場や職種が変われば、医師とは違ったいろいろな見方ができます。こうして集まった情報を吸収し、咀嚼することによって、私たち医師もベターな選択ができるのです」と、吉田先生は多くの人間が関わることの利点を訴えます。

市木先生も、現場スタッフやご家族からの情報に「助けてもらっている」と言います。

「患者さんのライフスタイルを守りたいのに、言葉が出にくかったりして、患者さんの思いが伝わりづらいときもある。そんなとき、日頃から関わりの深いご家族や実際に生活の場を見ているケアスタッフからの情報は、大変参考になります」(市木先生)。

同グループでは現在、蓄積された情報の共有化とスタッフ間の意思疎通を目的とした綿密な「連携シート」を患者さん一人ひとりに対して作成中です。

「グループ内でしっかりと連携を取ることが、何より患者さんのためになりますから。連携シートはそのために一役買ってくれるはずです」(市木先生)。

 

第二の主治医は“セラピードッグ”

同グループには主治医のほかに、「第二の主治医」がいます。「メロン」、「ジャスティン」など、4匹の犬です。

「ドッグセラピー」とは、治療を目的とし、訓練を受けた犬と専門スタッフが協力して行う動物介在療法のことで、「セラピードッグ」とは、人と視線を合わせたり、触れられてもじっとしているなど、特別な訓練を受けた犬のこと。4匹ともセラピードッグとして同グループの施設で活躍しています。

NPO法人介護高齢者ドッグセラピー普及協会の理事長でもある生長先生は、2002年に日本で初めて本格的なドッグセラピーを本場アメリカから導入し、積極的に患者さんの治療に役立ててきました。

専門家から手法を学び、10年間で認知症患者さん、脳疾患の後遺症がある患者さんなどの機能訓練を行ってきた結果、著効例と有効例を合わせると過半数の人に効果がありました。「犬が苦手な人もいるし、すべての人に効果があったわけではありませんが、一割程度の認知症の患者さんでは何にも意欲がなくなっていた方が言葉を発するようになったり、犬と一緒に歩くと日に日に歩行距離が延びていったり...」と、生長先生自身が驚くような治療効果までみられたのです。

患者さんとボール遊びをするセラピードッグのメロンとセラピストの三宅慶子さん 患者さんとボール遊びをするセラピードッグの
メロンとセラピストの三宅慶子さん

その内容は、傍目にはごく和やかな犬との触れ合い、と映る治療ばかりです。例えばある日の午後に行われていたのは、認知症の患者さんとメロンの、1対1の交流。いすに座った患者さんのひざに向けて、セラピストの三宅慶子さんがボールを投げると、メロンは患者さんのひざからボールを取り、患者さんのひざに座ったり、手をさわったりを繰り返します。「ほら、左手がパッと出ましたよね。本当はメロンの頭を撫でてほしかったけれど、無理に患者さんの手を持っていったりは絶対にしません」と三宅さんは言います。

例えば無表情だった患者さんが犬とふれあうなかで、「頭を撫でたい」と自ら撫でるまでに至る「心の動き」が大事であり、目標です。そのため様々な誘いかけはしても、決して強制はせず、待ちの姿勢で臨みます。

「あくまで療法ですから、単に触れ合うのではなく、3カ月ごとに目標を決め、効果を判定しながら進めています。今日の目標は左手を動かし、手のひらを開いてもらうことで、そのために犬との握手やボール遊びをしてもらいました。患者さんはみるみる良くなるというより、犬の頭を撫でてくれるような反応のときもあれば、何の反応もみられないときもあります。けれども、徐々に効果を持続できるよう、メロンを見ただけで笑顔が引き出せるように繰り返し触れ合っていきたいです」(三宅さん)。

 

ドッグセラピーの普及を目指して

症状改善というエビデンスは学会発表などを通して少しずつ世間の知るところになり、同グループ施設での取り組みをマスコミが紹介したり、ドッグセラピーに関する著書『奇跡を起こすセラピードッグ 名医ジャスティン』(講談社)も注目を集めています。

しかし、まだ確立された治療法ではないゆえに、様々な壁も立ちふさがっています。「保険対象外なので、費用の問題があります。さらに、セラピードッグを育て、訓練していくトレーナーやセラピスト育成などの問題もある」と様々な課題を挙げる生長先生。動物介在療法自体は徐々に社会的認知度が高くなっており、生長先生は認知症治療の今後を変える力をドッグセラピーに見いだしています。

「ドッグセラピーはアクティビティーとしての癒しだけではなく治療として効果があることが確認できたので、さらに症例を重ね、介護保険の適用を目指したい」と、力強く語る生長先生です。

ドッグセラピーの普及活動も課題の一つですが、グループ全般を通して、「おのおのがレベルアップに励んでいきたい。ハード面は整いつつあるけれど、個々にキャリアアップを図るなど、やれることはまだある」と、ソフト面の拡充についても言及する、市木先生。

セラピードッグたちと
セラピードッグたちと

「急性期の病院からこちらの地域に戻ってこられた方が、継続して安定した医療・福祉が受けられるように、しっかりと研鑚していきたい」と、今後の目標を掲げています。

より多くの認知症患者さんがセラピードッグと触れ合い、住み慣れた地域で暮らしていける近い将来を目指し、生長先生らの挑戦は続きます。

 

 

取材日:2012年1月24日
あしもりクリニックの外観

医療法人雄風会

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あしもりクリニック

〒701-1464
岡山県岡山市北区下足守1900-1
TEL:086-295-1133

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高松アクティブホームの外観

高松アクティブホーム

〒701-1333
岡山県北区立田587
TEL:086-287-9888

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