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地域に認知症サポートのネットワークを広げたい
<千葉県船橋市 矢走クリニック>

院長 矢走誠先生 院長 矢走誠先生

約20年前から認知症診療に取り組んできた矢走誠先生は、街のかかりつけ医として患者さんとご家族のサポートに努める一方、船橋市で初の認知症サポート医として地域のネットワークづくりにも注力。今後の高齢化に備えた診療体制の拡充を訴えています。

1960年代に建てられた住宅団地で高齢化が進む

精神科を専門とする矢走誠先生が、認知症の診療に本格的に向き合ったのは医師になって3年目のこと。「当時勤務していた大学病院から派遣された先が、介護老人保健施設を併設した病院で、当時で言う痴呆疾患治療病棟と痴呆疾患療養棟が50床ずつありました。だから必然的に認知症を診なければならなくなったんです」(矢走先生)。

その後、総合病院の精神科勤務などを経て、開業医として診療を始めたのは2002年。当時、外科医として開業していた父親と診療日時を分けて精神科・神経科・心療内科の外来をスタートさせました。

「開業前、船橋市立医療センターに勤務していたころ、船橋市の年代別人口データを見て“10年後、20年後は高齢者が増えて大変なことになるのでは!?”と思いました。東京オリンピックが開催された1964年前後、船橋に数多く建てられた住宅団地が高齢化の時期を迎えており、それが人口構成に影響しているのでしょう」。

そうした先生の懸念の通り、認知症の患者数は年々増加。父親の死後、クリニックを矢走先生の専門分野に特化した現在、新規の患者さんの7~8割が認知症を患っているといいます。

 

患者と家族の理解・協力が“治療の土台”になる

認知症の診療を行ううえで、矢走先生が掲げるテーマは明確です。

「認知症の初期から中期にかけて、症状の進行を遅らせつつ、家族が快適に介護できるようサポートすること」――そのために矢走先生は、特に初診での診察に時間をかけ、診断がつくと、その内容はもちろん今後の治療やそれにかかる費用、さらに介護保険の申請の仕方まで懇切丁寧に説明します。

初診で認知症の疑いがあれば、ほとんどの場合、長谷川式でチェックし、その際に必ず患者さんに「簡単なことを聞きますけど、怒らないでくださいね」と断ります。「そう言っておかないと怒る患者さんもおられますからね。それでも患者さんを傷つけてしまうことはありますが、遠慮していては診療できませんから」という矢走先生は続けて、「ご家族は心配し、ご本人は大丈夫だと言う――そもそも見解が違うケースが多いんです。だからこそ医師の私が“公式な見解”を示して、ご本人とご家族の理解と協力という“治療の土台”をつくらないといけません」と初期段階での診断とその説明の重要性を力説します。

 

認知症患者の処遇改善に法的整備を

認知症の診断がつくと、クリニックの近隣にある市役所の出張窓口を紹介し、帰宅する患者さんとご家族にその足で介護保険を申請するよう勧めます。そこまでする医師は決して多くはありませんが、矢走先生は「やらないのは手抜きですよ」と言い切ります。「認知症の患者さんは自分で生命、財産が守れません。ご家族が倒れたらそれで終わり。だからこそケアマネジャーをつけることが大事です。介護保険をどう使うかはご家族で相談して決めればいいので、まず申請しておくことです」。

矢走先生はこうした法的な制度の積極的な活用を促す一方、患者の処遇等において法的な整備が不十分な面もあると指摘します。その1つは高齢者施設の鍵、もう1つが在宅診療・介護の居住環境です。

「高齢者向け施設の出入口などに、よく鍵がついています。おそらく徘徊を防ぐための処置でしょうが、監禁しているとも言える。例えば私たち精神科医が患者さんを措置入院させるには厳格な手続きが必要ですが、そうした法的なルールがないまま鍵をつけているとしたらやはり問題です。災害時の避難なども想定したうえで、法的な根拠を明確にすべきです」。

在宅に関しても「住み慣れたわが家で......は聞こえはいいけれど、本当に健康的な環境が守られているのか」と疑問を投げかけます。「市の職員やケアマネジャーなど公的な立場の人間が月に1回巡回して衛生状態をチェックするなど、こちらも法律を整備すべきです。もちろん、経済的な事情で環境を整えられない場合は、公的な施設で受け入れることも必要でしょう」。

 

市で初の認知症サポート医としてネットワークづくりに注力

矢走先生は、認知症診療のネットワークづくりにも主導的な役割を果たしてきました。

「実は私が船橋市で最初の認知症サポート医なんです。開業した当初は1人のかかりつけ医としてがんばっていましたが、患者さんが増え診療する医師や施設も増えてきたので、船橋市認知症サポート医会を組織しました。多くの科の先生に参加していただきたかったので、会長を整形外科の先生にお願いし、私は副会長につきました」。

また船橋市には2009年、認知症ネットワーク研究会が発足。サポート医会をはじめ、介護支援専門員の組織や家族の会が相互に連携、協力しています。

もちろん矢走クリニックが中心になった連携も活発で、初診の患者さんの多くが、地域の開業医や包括支援センターなどからの紹介です。特に船橋市立医療センターとは緊密な関係にあり、MRI、MRA、SPECTの検査を依頼する一方、多くの患者さんの紹介を受けています。

「センターの副院長が脳外科出身の先生で、独自に認知症のスピード問診票を作成されました。当院でも連携の一環で使っていますよ」と、矢走先生はさまざまな連携の広がりに手ごたえを感じながらも、「しかし認知症を診る医師がまだまだ少ない」と表情を厳しくします。

 

1人でも多くの医師が認知症に向き合ってほしい

矢走先生は、診察した患者さんの自宅の近くにサポート医がいれば、できるだけそこを紹介するようにしています。「ご本人も付き添うご家族も通院が大変ですから、クリニックは近い方がいい。ご紹介したあと当院で再度診るのはBPSD(周辺症状)がひどくなった場合くらいで、ほとんどありません。しかし、そもそも診る医師自体が少ないのです」。

「例えば船橋市精神科医会に精神科医が45人いますが、そのうち認知症診療を積極的に行っているのは私の知る限り5人。つまり約1割しかいません。確かに認知症の治療はデリケートで難しいし、ご家族との二人三脚が長く続くこともあるので腰が引けるのもわからないではない。しかし私が診療を始めた約20年前に比べれば良い薬も出てきています。困っている患者さん、ご家族が大勢いるのだから、精神科に限らずどの科の先生でもいいので、1人でも多く認知症の診療に取り組んでほしい。強くそう思います」(矢走先生)。

 

 

取材日:2012年6月7日
矢走クリニックの外観

矢走クリニック

〒273-0865
千葉県船橋市夏見1-1-3
TEL:047-422-0711

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