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訪問診療の現場から地域医療の未来を探る
<東京都大田区 たかせクリニック>

理事長 高瀬義昌先生 理事長 高瀬義昌先生

大田区で訪問診療を専門に取り組む「たかせクリニック」。長年の小児科勤務で培ってきた家族療法とチーム医療の経験を生かした実践により、多くの医療・福祉関係者を巻き込んで、「高齢者が安心して暮らせる街」が育ちつつあります。

在宅支援診療所として開業

東京都大田区の「たかせクリニック」は訪問診療を主とする在宅療養支援診療所です。大田区下丸子にある拠点は診察室と事務所のみで、月曜日から金曜日、朝9時から夕方5時まで患者宅を訪問して診療を行っています。診療エリアは原則、大田区内ですが、クリニックを中心に半径16kmは往診可能で、圏内には千代田区や横浜市も含まれます。

300人ほどの患者のほとんどが高齢者で、その8~9割が認知症。「独居や老老介護が社会問題となっていますが、訪問診療で患者さんを診ていると認知症の夫を介護する妻も認知症という『認認介護』も珍しくありません。一方で病院も介護施設も認知症患者の受け入れには限りがあります。近い将来、ケアを受けられない認知症患者が街に溢れる事態になりかねないと思っています」と、同クリニック理事長の高瀬義昌先生は警鐘を鳴らします。

 

小児科との共通点は家族とチーム

高瀬先生は信州大学医学部を卒業後、小児科医としていくつかの総合病院で勤務、小児科医長や院長を経て、2004年にクリニックを開業しました。

小児科の分野でキャリアを築いてきたのに、主に高齢者を診る訪問診療クリニックを開業するのは不思議に思えますが、そこに共通するのは「家庭医学」と「家族療法」という考え方でした。家庭医学は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに見られる総合医学を専門とする科で、内科、小児科、精神科、小外科、場合によってはお産も取り上げる科です。もちろん、家族全体を対照とし、文字通り、ホームドクターという事になります。

高瀬先生は小児科の医療実践において早くから患者と家族の関係が病状に反映することに注目していました。1988年にフィラデルフィア小児病院と児童相談所を訪問して、その思いは確信に変わったそうです。訪問先の小児病院では患者に目を向けるだけでなく、家族、特に両親への心理療法的アプローチで、見事な成果をあげていたのです。

「家族だけでなく家族と医療チーム、医師と看護師など患者に関わるすべての人の信頼関係も治療効果を左右するファクターとして注目されていました。さらに、チーム医療において医師の意思決定が絶対ではなく、セラピストやソーシャルワーカーの判断が重視される場面が珍しくないことにも驚かされました」と高瀬先生は振り返ります。

 

早期発見のために小さな変化を見逃さない

小児科で患者とその家族に正面から向き合う診療を続けていた高瀬先生ですが、頑張るほど患者が増えて、じっくり診療できないというジレンマに陥ったことから開業を決意。ゆっくり患者さんと向きあうため外来はほとんど設けず、訪問診療専門のクリニックとしました。「高齢化の進展により在宅医療や地域連携が重要だと言われるようになった時期でした。それまで、小児科で実践してきた家族療法やチーム医療の経験を活かし、社会に貢献したいという想いもありました。子どもも高齢者も、家族や地域コミュニティのなかでケアすべき存在であるという点では同じですからね」と高瀬先生は語ります。

基本の往診は月に2回。白衣ではなく普段着で訪問して、世間話をしながら診察するのですが、会話の内容や手を握った時の握力、室内の状況、家族の様子などに細心の注意をはらって、小さなサインを見逃さないようにしています。「認知症ではないか?」と感じた時には、指でキツネやハトを作れるかどうか、時計や立方体を描画できるかという簡単なテストを、会話のなかでさりげなく行うことから始めます。

「話のつじつまがあっていても、生活がキチンとできていても、認知症ではないとは限らないということを、高齢者を診る医師は頭にたたき込んでおく必要があります。私が診たなかでも、マニュアル車を運転する人、饒舌に専門的な話をする人、囲碁や将棋がやたらと強い人が認知症だった、というケースなどいくらでもあるのです」(高瀬先生)。

 

地域で認知症を支える仕組みづくりに注力

患者さんとその家族にじっくり向き合う診療と並行して、認知症患者を地域で支える医療体制づくりにも力を入れています。

大田区にある3医師会のひとつ蒲田医師会の理事として、2006年からは同区の「認知症連携パス」の策定に尽力しました。大田区のパスの特徴はかかりつけ医が相談・紹介する先の専門病院が3段階に設定されていることです。専門性の高い総合病院に紹介されるのは本当に診断が難しい患者のみ。大きな病院に患者が殺到して初診まで何ヵ月も待つような事態を避けると共に、症状の軽い患者は馴染みのかかりつけ医や地域の病院で治療できるというメリットがあります。

「私たち在宅医や、かかりつけ医の役目は見回りと見守り。普段から診ている患者さんが認知症を発症していないか目を配り、自宅での治療をサポートするのが重要な仕事で、専門的な診断(治療)は大規模な総合病院に任せる。この役割分担を可能にするのが連携パスです」と高瀬先生。大田区の連携パスは、医療従事者用の用紙もイラスト満載で直観的に分かるようになっています。専門知識がない人が見ても分かりやすいので、患者さんの症状や治療計画を家族、医師、ケアスタッフで共有するための共通言語として機能するのです。

 

高齢者医療には多職種協働が不可欠

たかせクリニックの主催で開催される「多職種協働勉強会」には、毎回200人ほどの参加者が集まります。

「病院と訪問診療のどちらか一方だけでは高齢者医療は成り立ちません。医療と介護の連携も重要です。最近のケアマネジャーは知識も経験も豊富で、『明らかに認知症の徴候があるのに、要介護認定のための診察をした医師が見落とすので困る』という嘆きを聞くこともあります。介護スタッフは医師より遙かに長い時間、患者さんに接していますし、訪問医療に携わる我々も専門病院のような画像診断装置は持っていませんが患者さんの暮らしの現場を知っています。多職種連携とはつまり、それぞれの専門性を尊重し、情報を補いあって、患者さんと家族のために最善をつくすチームを創ることだと思うのです」(高瀬先生)。

勉強会に参加する勉強熱心な人が限定されているのが現在の悩みであり、今後は介護施設や有料老人ホームなどの施設長などへ参加を呼びかけていく予定。「病院も施設も在宅医療、在宅介護と連携しなくては経営が難しい時代が来ています。競い合ってケアの質を上げると同時に、力をあわせて高齢者の多様な選択を支える地域社会を作っていく必要があると考えています」と高瀬先生は語ります。

 

薬剤師との連携も模索。社会全体で高齢者を支えたい

忙しい合間をぬって執筆活動も積極的に行っている 忙しい合間をぬって執筆活動も積極的に
行っている

高齢者の多剤服用の整理にも力を入れています。高齢になると複数の病気を持ち、大量の薬を処方されていることがあります。「高齢者に対して医師は多めに薬を処方する傾向があるのです。介護に疲れた家族の求めに応じて処方された睡眠薬や精神科の治療薬で、患者さんの活動性が低下してしまうことも珍しくありません。また、飲み忘れや飲み過ぎのリスクもあります。今後は地域の薬局の薬剤師とも連携を深めて、多剤服用の悪循環を絶つ取り組みを進めたいですね」と高瀬先生。

たかせクリニックでは「チームワーク」「フットワーク」「ネットワーク」という3つの「ワーク」をキーワードとして大切にしています。日々、患者の家を訪問しながら、医療・介護に関わる様々な人、専門職、組織を繋ぎ、高齢者が安心して暮らせる地域を創り育てつつあるその実践は、まさにこの3つのワークの体現と言えます。

忙しい診療の合間を縫って執筆や講演に取り組むのも、志を同じくする仲間を増やすため。認知症になっても、患者とその家族が安心して暮らせる社会を築くため、3つのワークを駆使した挑戦は続きます。

 

 

取材日:2012年11月1日
たかせクリニックの外観

医療法人社団 至髙会 たかせクリニック


〒146-0092
東京都大田区下丸子1-16-6-1F
TEL:03-5732-2525 

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