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歴史ある総合病院の前進
認知症診療に対する現場発信の新たな取り組み
<大阪府堺市 公益財団法人 浅香山病院>

精神科院長 谷口典男先生 精神科院長 谷口典男先生

大阪府南部の中核都市である堺市で80年以上にわたって精神・神経疾患に取り組んで来た歴史をもつ浅香山病院。診断・治療の専門性はもちろんのこと、臨床現場で患者さんと向き合う看護師発案による新しい取り組みで患者さんと家族を支え、認知症医療の質の向上を目指しています。

堺市の認知症医療の中心となる総合病院

浅香山病院は1922年に堺脳病院として創設され、精神・神経疾患に取り組んできた歴史をもち、現在では内科・循環器内科など19の診療科を標榜する総合病院として、地域医療に貢献しています。

認知症医療に対しては、精神科病棟948床のうち120床が認知症治療病棟で、堺市に2つある認知症疾患医療センターのひとつとして、地域の中心的役割を果たしています。

精神科院長の谷口典男先生は、大学時代から認知症の疾患研究に関わり、大阪大学医学部附属病院や国立大阪病院で精神科医と神経内科医の2つの視点で認知症患者さんと向き合ってきました。「当院の認知症疾患医療センターでは常時7~8人の医師が診察にあたっているので、私の役割は、神経難病などが原因となる認知障害を見逃さないことと、センターのスタッフたちの自由な発想を尊重し、応援することだと思っています」と谷口院長は語ります。

 

近年はごく早期での相談が増加

認知症疾患医療センター医長 釜江和恵先生 認知症疾患医療センター医長
釜江和恵先生

現在、同院の認知症診療の中心的存在である釜江和恵先生は認知症を診てきたこれまでの経験を生かし、さらに発展させることができる病院を探して浅香山病院に出会い、認知症専門医として着任しました。

「11年前に私が来たときは既に認知症疾患センター(当時)として地域の認知症医療の中核を担っていました。現在は認知症疾患医療センターとして、医師会や行政などと連携し堺市の中で地域医療に果たす役割が大きくなってきています。最近では、かかりつけ医の先生や精神疾患を専門としない病院との連携を進めていくことを課題としています」(釜江先生)。

外来での新患は、精神保健福祉士への電話相談で受け付け、かかりつけ医からの紹介を得て、受診することになります。年間の相談件数は1,200件に至り、そのうち緊急性の高い患者さん200人程が診断の上、入院しています。精神保健福祉士の電話応対では家族から状況を詳しく聞き取り、緊急性が高いケースはすぐに受診できるように配慮されています。精神保健福祉士の詳しい聞き取り情報は診療に役立っており、谷口先生、釜江先生は患者さん自身の診療に注力することができています。

以前は、幻覚や妄想、興奮など強いBPSD(周辺症状)が出たり、緊急入院が必要なほど症状が進んでいるケースがほとんどでしたが、最近では早期受診の啓発が進んできたため、患者さん本人にも病識があり、鑑別診断のための受診が多くなっています。

「典型的な症状が出ている場合は初診で診断が可能ですが、神経症やうつ病、身体疾患に起因する認知障害の方も一定の割合で見られます。早期発見は確かに大切なのですが、若年でごく早期の場合、認知症と診断することで本人の社会的状況に影響を及ぼすことがあるため、『過剰な診断』にならないよう気をつけています」(釜江先生)。

 

診断に担当看護師が付き添う

精神科医療連携室 認知症看護認定看護師 看護師長 三好豊子さん 精神科医療連携室 認知症看護認定看護師
看護師長 三好豊子さん

同院では、今年の4月から、初診時に検査から医師の診察まで専門の看護師が一日付き添う試みを始めました。最初にMRIや脳波、血液検査、胸部レントゲン、心理テストなどを行うため2時間ほどかけて広い病院を歩き回る必要があるため、不安を与えないように案内をしつつ、患者さんと家族の状況を丁寧に観察するのです。

この役目を担うのは看護師長の三好豊子さん。毎日、初診の患者さんが訪れますが、精神保健福祉士による事前の聞き取りで最もサポートが必要と思われる患者さんに三好さんが付き添います。

患者さんはトイレにひとりで行くことができるか、家族は精神的に追い詰められていないか、サポートや声かけは適切か、患者さんと家族の関係は良好か、患者さんはどんな人となりかなど、三好さんからの情報が心理判定の成績とともに診察前に医師の手元に届けられるのです。

「患者さんは心の中に『私にも輝いていたときがあった』という思いをもっていると思います。だからこそ、今の状態だけではなくその患者さんの人となりを理解した看護が重要だと思います。自分が発信する情報が看護や診療のサポートとなり、患者さんとご家族の安心に繋がるのですから、大きなやり甲斐を感じます」と三好さんは語ります。

釜江先生は三好さんの働きに対し、「最初の電話相談の段階で精神保健福祉士がご家族から自宅での生活ぶりなどを聞いていますが、それはあくまでご家族の視点。経験豊かな看護師が2時間にわたって観察し聞き出した情報が示されるのはとても心強いものです。始めたばかりの取り組みですが、しっかり育てて、広めていきたいですね」と絶賛します。

谷口院長も「検査を負担に感じる患者さんの場合、うまく検査が行えないこともありますが、病棟経験の長い看護師がいると患者さんのストレスを軽減しつつ、スムーズに検査が進むようですね」と、この取り組みを高く評価します。

 

病棟でも初診時に聞き出した情報をデータベースとして活用

認知症治療病棟 看護師長 桑木智美さん 認知症治療病棟
看護師長 桑木智美さん

患者さんの入院が決まった場合は、三好さんが観察した情報を詳細にまとめて、病棟の看護師やスタッフが日々の診療に活用できるようにデータベース化しています。入院の初日から患者さんに関するまとまった情報があって、スタッフみんなで共有できるので、すぐに適切なケアを考えて実行できます。

認知症治療病棟の看護師長の桑木智美さんは、「病棟では三好さんからの情報を活用しながら、BPSDの要因や誘因をアセスメントし、定期的にケアを見直し実践しています。そして、患者さんの生活のしづらさと思いを理解し、暮らしを支えることで、早期にBPSDの緩和がはかれるような看護に取り組んでいます。平成24年には、認知症クリニカルパスを多職種で作成し、NPI(精神症候評価尺度)やセルフケアの評価、インフォームドコンセント、地域のケア者との合同面談など、ケアの標準化と、多職種・地域との連携をすすめています」と語ります。

 

患者さんの行動を24時間見守る試み

浅香山病院非常勤講師・大阪大学大学院医学系研究科 准教授 山川みやえ先生 浅香山病院非常勤講師・大阪大学大学院
医学系研究科 准教授 山川みやえ先生

同院では患者さんの状態を把握・共有するため、もうひとつユニークな取り組みが行われています。

大阪大学医学部保健学科で看護学の准教授を務める山川みやえ先生は、認知症患者さんの行動を客観的・定量的に捉える研究を進めており、入院患者さんにICタグをつけてもらい夜間も含め24時間、行動を追跡しているのです。

認知症の患者さんは薬の効果があっても、「眠れるようになった」「イライラしなくなった」などと言葉で表現してはくれません。しかし、このデータを見れば、ゆっくり眠っていたか、何度も起きていたか、一日中歩き回っていたか、あるいは一日中じっと座っていたかがわかります。トイレに行く回数が多い患者さんがいて、排泄に問題を抱えていることがわかったという例もありました。

「研究の目的は認知症患者さんの行動の特徴を知ることですが、患者さん一人ひとりの状態を細かく把握することができるので、適切なケアに繋げてもらうために病棟に情報を還元しています」と山川先生は語ります。

桑木さんも、「夜間は特に看護師が少なく、各病棟60名の患者さんを細かく観察することはできません。山川先生のデータが患者さんの様子と日々の変化を可視化してくれるので、とても心強いです」と、この取り組みの意義を語ります。

 

丁寧な家族外来で介護力を向上

認知症治療病棟 認知症看護認定看護師 山本朝美さん 認知症治療病棟 認知症看護認定看護師
山本朝美さん

入院せずに外来で治療を受ける患者さん、または治療病棟を退院して自宅に帰った患者さんを支えるための「家族外来」にも取り組んでいます。「介護に必要な知識や技術を伝えるだけでなく、ご家族の悩みや不安を聞いたり、先生には言い出せなかった疑問・質問を引き出すのも大切な仕事です」と、認知症治療病棟の看護師、山本朝美さんは語ります。

認知症の症状に対して間違った対処をするとBPSDを誘発することもあり、家族の理解はとても大切です。「患者さんの重症度、取り巻く環境はひとりとして同じことはなく、必要となる対応はさまざまです。ご家族といっても、配偶者か、実の娘さんか、お嫁さんかで配慮すべき点が違ってきます。ご家族の悩みが解決し、よい状態で介護が行えるようになるまで時間をかけて、話し合っています」(山本さん)。

 

合併疾患をもつ認知症患者さんの治療が今後の課題

同院は総合病院として合併疾患をもつ認知症患者さんの治療を積極的に行っています。しかし、近隣の病院から合併疾患のある認知症患者さんの受け入れ要請があったときに、ベッドに空きがないために十分に対応できないことが課題となっています。

「合併疾患のある認知症患者さんを地域全体で支えるために、近隣の病院やクリニックとの連携・協力体制づくりに取り組むのが、認知症疾患医療センターに指定された当院の役目だと思っています」と谷口院長は語ります。

同院では認知症クリニカルパスを導入して、認知症ケアの標準化も進めています。他の医療機関や介護施設、市民のサポーターを繋ぐ土台には、相談、外来、病棟に従事する多職種のスタッフが情報を共有し、一人ひとりの患者さんに最適な治療とケアを行うことを目指した日々の診療実践があるのです。

「初診時の看護師付き添いによる患者さんの情報収集、患者さんの行動調査、家族外来などは、みな現場からでてきたアイデアです。『人は薬』という言葉がありますが、患者さんとご家族のためを考えて知恵を出し実行するスタッフたちを見ていると、ほんとうにその通りだと思います」(谷口院長)。

浅香山病院では、認知症医療をより良くしていくために、新たな考え方を積極的に組み入れ、日々前進しています。

 

 

取材日:2013年4月24日、5月20日

浅香山病院の外観
一般科新病院(メディカルタワー)の外観

公益財団法人 浅香山病院

〒590-0018
大阪府堺市堺区今池町3-3-16
TEL:072-229-4882

施設のホームページへ

 

 

 

 【 一般科新病院(メディカルタワー) 】

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