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認知症患者さんへの一歩先ゆくアプローチ  多職種協働リハビリテーション
<秋田県 大仙市 秋田県立リハビリテーション・精神医療センター>

リハビリテーション科・神経内科専門医 下村辰雄先生 リハビリテーション科・神経内科専門医
下村辰雄先生

認知症の医療と寝たきり予防を目的とし、認知症患者さんに積極的なリハビリテーションを行う全国でも珍しい医療センター。理学療法・作業療法・言語療法・心理療法などを行う多職種のスタッフが密接に連携し、多面的なアプローチによる新しい認知症医療の形を模索しています。

神経・精神科とリハビリテーション科の融合

全国でもっとも早く高齢化が進み2020年に高齢化率が35%を超える秋田県において、秋田県立リハビリテーション・精神医療センターは、脳卒中など脳血管障害の患者さんの運動機能回復を目的とするリハビリテーション科と、認知症と精神疾患の治療を行う神経・精神科の2科で開設されました。2012年には2つの科が連携し「認知症診療部」が誕生し、リハビリテーションのノウハウを生かした認知症医療・ケアの高度化を着々と進めています。

「認知症の患者さんは、脳血管障害や運動機能障害のように自ら積極的にリハビリを行うことは少ないため、日常の散歩や生活活動へのアプローチという形でリハビリをはじめる場合もあります。認知症へのリハビリをはじめて10年ほど経ちますが、看護師・理学療法士との1対1のケアやリハビリ、回想法・精神作業療法等の集団療法など、さまざまなスタッフがかかわることで、患者さんは集団に適応し、精神症状が起こりにくくなることがわかってきました」と同センターの認知症治療の中心的存在である下村辰雄先生(リハビリテーション科・神経内科専門医)は語ります。

 

秋田県の認知症診療の充実を目指して
広い敷地内の散歩道 広い敷地内の散歩道

同センターでは、2001年に全国に先駆けて「もの忘れ外来」を開設し、認知症の早期診断・治療を進めてきました。リハビリテーション科と精神科の医師が交互に担当し、患者さんの状態に応じ柔軟に連携し専門性を活かした分担を行っています。

認知症患者さんの入院病棟は、行動障害や精神症状が強い患者さんが入院する神経・精神科の管轄と、認知症の鑑別やリハビリを主体とする患者さんが入院するリハビリテーション科の管轄に分けられています。「精神症状が強く精神科の先生が受け持った患者さんでも、身体的な障害でリハビリが必要な場合にはリハビリテーション科の医師が手助けをしています。2科が連携し、治療・リハビリを行うことで、退院し自宅で暮らせるようになる患者さんも珍しくありません」(下村先生)。

2013年10月1日に秋田県で初めての認知症疾患医療センターが開設され、「医師や看護師、ケアスタッフはもちろん、さまざまな職種が協力し、生活のあらゆる場面でかかわることでリハビリ効果をあげているこのセンターのノウハウを蓄積し、発信していきたい」との熱い思いが、スタッフを動かしています。

 

広い敷地を活かし、訓練室までの移動もリハビリの一環に

作業療法士 加藤淳一さん 作業療法士 加藤淳一さん

25万㎡(東京ドーム約5個分)の敷地面積を有する広々とした同センターでは、患者さんは毎日、病棟から訓練室まで100メートルほど施設内を歩く必要があるのですが、その移動もリハビリの一環となります。作業療法士の加藤淳一さんは「集団行動ができない患者さんの場合、スタッフが手を繋いで時間をかけて訓練室に向かいます。『訓練室に行けるようになる』ことが最初の目標です。『訓練は嫌いだけれど気の合う患者さんと一緒なら行く』というケースもあり、患者さん同士が協力して訓練室まで車椅子を押して向かうこともあります」と語ります。

作業療法のさまざまなプログラムの中で人気が高いのは、施設内の畑での野菜づくり。農業を仕事としていた患者さんも多く、畑では患者さんがスタッフに指導をする様子もよくみられます。「手を動かして何かをつくる作業は患者さんの活動性を高める効果が高いですが、農作業は特に季節感もあって良いですね」(加藤さん)。

豊作となった野菜が、同センターの給食に使われることもあるそうです。

「訓練室で行うことだけがリハビリではありません。すべての動作、行動がリハビリになります。そのためには、全スタッフがそれを意識して患者さんに接する必要があります」(下村先生)。

 

患者さんひとり一人との触れあいを大切にする理学療法

認知症患者さんへのリハビリの一環として理学療法が積極的に行われています。精神症状などに直接的な効果があるわけではありませんが、認知症患者さんは合併症による運動障害をもつことも多く、運動や活動量が減って身体的機能や認知機能・精神機能が低下する廃用症候群や寝たきりになる可能性があります。運動機能を回復させることで、これらを防ぐこともできます。

理学療法士 五十嵐優子さん 理学療法士 五十嵐優子さん

理学療法士の五十嵐優子さんは「認知症の患者さんは集団行動を嫌がる方も多いので、1対1で行う理学療法が有効な場合もあります。複雑な訓練ではなく、ゆっくり話を聞いたり、手を繋いで散歩に行ったり、痛いところを温めたりすることから始めています。痛みが和らいで動けるようになると、信頼関係も生まれるので訓練が進めやすくなりますね」と語ります。

下村先生も「理学療法は療法士が患者さんの身体に触れるプログラムが多いので、スキンシップを通した安心感もあるようですね。運動機能が回復すると精神的に落ち着く患者さんも多いです。心身共に今以上に悪くなるのを防ぐという意味で、理学療法はとても有効です」とその効果を語ります。

臨床心理士 菊谷千映子さん 臨床心理士 菊谷千映子さん

また、同センターでは臨床心理士が、診断時の心理検査に加えて回想法を実施しています。「患者さんとの面談では緊張を和らげて、実力を発揮できるように工夫しています。心理検査は個室で、マンツーマンで対応するので、誰にも言えなかった不安を吐露される患者さんも多くいます。入院患者さんにグループで行う回想法は、患者さんの年代に応じたテーマや資料を用意し、若いころの話をじっくり聴くことで、孤独感の軽減や日常生活の活動性への関心が高まることが期待できます。ここで得た情報を治療やリハビリに役立ててもらえる形で整理して、他の職種のスタッフに伝えています」と、臨床心理士の菊谷千映子さんは語ります。

 

看護と栄養の両面から患者さんに穏やかな日々を

看護師・上級認知症ケア専門士 越川美紀さん 看護師・上級認知症ケア専門士
越川美紀さん

「認知症患者さんの多くは不安や混乱に満ちた長いトンネルのなかで暮らすような想いをしておられます。しかし、私たちのケアが適切ならば、その日々をもっと快適で穏やかなものにすることができます」と語るのは、看護師の越川美紀さんです。認知症病棟には認知症ケア専門士の資格をもつ看護師が5名勤務していて、越川さんは「上級」の資格をもつ、看護チームのリーダーです。

病棟で認知症の患者さんは「食べること」に関するトラブルが多くみられると、越川さんは言います。「嚥下の問題だけでなく、味覚異常が起こり『嫁が塩をたくさん入れた』と被害妄想に発展したり、『食べる』という行動の意味がわからなくなったりもします」(越川さん)。

管理栄養士 石崎美識さん 管理栄養士 石崎美識さん

このような場合、同センターでは管理栄養士が積極的な対応をしています。「病棟スタッフからの情報を元に味付けや形状を工夫しますし、病棟に食事の様子を見に行くことも多いです」と語るのは管理栄養士の石崎美識さんです。「塩辛いものが欲しい」「味が薄い」という要望や不満に対して、医師に相談し、厨房の協力を取り付けて個別に対応をしています。

「安易に点滴や経管栄養に移行せず『食べること』の意義を大切に考えています。院内外の連携で栄養士が深くかかわる例はまだ少ないと思います。特に、退院や転院で生活の場所を移すとき、栄養に関する情報はとても重要です。院内では『栄養状態評価表』を活用し、院外に情報を繋ぐ『栄養連絡票』を運用しはじめました。連絡票の活用により、退院後も患者さんに適した食事が続けられることを望んでいます」(石崎さん)。

 

入院前から退院後まで一貫して患者さんを見守る

精神保健福祉士 戸嶋直子さん 精神保健福祉士 戸嶋直子さん

受診・入院、また退院時のサポートは医療相談連携科で行っています。もの忘れ外来の予約段階から担当し、緊急性のあるケースかどうかの振り分けも行っています。地域包括支援センターなどから持ち込まれたケースでは、虐待の疑いや老老介護という現実に直面します。精神保健福祉士の戸嶋直子さんは「患者さんの緊急性がどれほど高いかに気をつけて相談を受けています。精神症状が急激に悪化している方、症状が進んだ独居の方など、緊急性の高い患者さんは先生と相談の上、早期受診を進めています」と語ります。

入院患者さんに対してはケースワークを担当し、「ひとり一人の患者さんを一貫して見守ることが大事なので、病棟はもちろん作業療法、理学療法、食事の様子も見に行きます。そこで、在宅や施設に移るときに伝えるべき情報がたくさん見いだせるからです。院内でも、私があらゆる部署に顔を出すことで、多職種連携がスムーズに動くことを期待しています」(戸嶋さん)。

 

スタッフがお互いの領域に踏み込むことで深まる協働

緑と光があふれる施設内 緑と光があふれる施設内

このセンターにおける認知症治療は、リハビリテーションを通したアプローチが特徴的なだけでなく、さまざまな職種のスタッフが、他の職種との協働に前向きに取り組み、さらにそれぞれの管轄エリアにとどまらず、お互いのエリアに踏み込んでいって、患者さんを全人的に捉えようとしているところにあります。

「今後、認知症患者さんが増えていくと、病室や自宅など、日々の生活のなかで治療とケア・リハビリを行う必要性が出てくるでしょう。理学療法士、作業療法士や臨床心理士だけでなく、介護関係者も含めて患者さんにかかわるすべての人がリハビリを実践する必要があります。当センターでの取り組みが将来の認知症治療に貢献し、患者さんの笑顔を増やすことができると信じています」(下村先生)。

 

取材日:2013年5月10日

秋田県立リハビリテーションの外観

地方独立行政法人 秋田県立病院機構
秋田県立リハビリテーション・精神医療センター

〒019-2413
秋田県大仙市協和上淀川字五百刈田352
TEL:018-892-3751

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