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脳の病変だけでなく生活環境まで含めた全人的治療を
<神奈川県横須賀市 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター>

副院長、認知症疾患医療センター長 松下幸生先生 副院長、認知症疾患医療センター長
松下幸生先生

地元では「久里浜アルコール症センター」という旧称のほうが、知名度が高いかもしれません。日本最大の規模と実績をもつアルコール依存症治療機関が、その豊かなノウハウを活かして認知症治療と病診連携に取り組んでいます。

 

アルコール依存症の専門病院が認知症に取り組む

神奈川県横須賀市にある久里浜医療センターは1941年の創立で、1963年に国内初のアルコール依存症専門病棟が設置されました。1989年にはWHO(世界保健機関)から日本で唯一のアルコール関連問題研究・研修協力センターとして指定され、現在も日本最大のアルコール依存症入院治療施設として、この分野で日本トップクラスの実績をあげています。

2004年に「もの忘れ外来」を開設して認知症治療に取り組み始め、さらに近年は思春期・青年期精神障害、過敏性腸症候群、ネットやギャンブルへの依存症の治療にも取り組み始めました。また、これらの専門的なノウハウを土台とした総合的な精神科治療も手がけています。

2012年1月からは認知症疾患医療センターとしての事業を開始し、2012年4月、それまでの「久里浜アルコール症センター」から現在の名称に改めました。

 

アルコール依存症の専門病院としてのノウハウが、認知症医療に

副院長で認知症疾患医療センター長でもある精神科医の松下幸生先生は、「アルコール医療のイメージがとても強い当センターですが、認知症に取り組むのは自然な流れだったと思います。アルコールが原因となる認知機能障害は珍しくありませんし、高齢のアルコール依存症患者さんがアルツハイマー型認知症など変性疾患の認知症を併せ持つことも多いからです」と語ります。

また、高齢のアルコール依存症患者さんは、肝臓などに身体疾患をもっていたり、生活に困難をきたしたりしていることが多く、全人的・総合的な診察が必要です。さらに、アルコール依存症の患者さんは治療を終えて退院する際、再び依存状態に戻ることなく社会復帰できるよう、継続的なケアが必要となります。そのため、同センターでは、精神科・神経内科・内科の医師が連携し、さらにケースワーカーなども協力する体制を築いてきました。このようなアルコール依存症治療で培われたノウハウが、認知症医療でも活かされています。

 

「包括的総合機能評価」でオーダーメイド医療を

同センターでは認知症医療に「包括的総合機能評価」という考え方を取り入れています。認知症では脳内の病変だけでなく、加齢にともなう身体的な変化や生活環境が問題となりますが、その内容や程度は十人十色です。そのため、患者さん一人ひとりについて、生活機能(Physical)、精神機能(Mental)、社会・環境(Environmental)の3つの面から評価して、オーダーメイドの医療を構築しようという取り組みです。この視点を導入することで、アルコール性の認知症かアルツハイマー型認知症かで分けるより、独り暮らしか介護を担えるご家族が同居しているかで分けるほうが取り組みやすい課題などが浮き彫りとなり、アルコール医療に長く取り組んできた経験を、具体的に役立てることができるのです。

 

アルコールによる認知障害と認知症の境界は

認知症患者さんが、飲酒のコントロールができなくなってアルコール依存症のように見えるケースもあり、認知症が先かアルコールが先かの区別は専門医でも難しいといいます。「アルコール性の場合は酒を断てば改善する“可逆的な認知症”なので、治療してみたらわかります。ただし、入院治療で症状が改善する率は、50歳代では7割くらいですが、60歳代で半数、70歳代では3割くらいと年齢とともに減る傾向があります。年をとって体が弱くなっているのに、食事をきちんと摂っていないなど悪い生活習慣が重なっていることも、治りにくくなる要因でしょう」と松下先生は語ります。

 

初診では特に患者さんの気持ちへの配慮が重要

認知症疾患医療センター 臨床心理士・心理療法士 杉浦久美子さん 認知症疾患医療センター
臨床心理士・心理療法士 杉浦久美子さん

認知症疾患医療センター 臨床心理士・心理療法士 岡田瞳さん 認知症疾患医療センター
臨床心理士・心理療法士 岡田瞳さん

認知症疾患医療センター 看護師長 越野仁美さん 看護師長 越野仁美さん

もの忘れ外来は月曜日から木曜日の午前中に開設され、年に600人ほどの新患が訪れています。約半数が認知症と診断され、そのうち半数がアルツハイマー型認知症です。次いで混合型(アルツハイマー型と血管型)が多く、レビー小体型と血管型(単独)がほぼ同数で続くという割合です。アルコール依存症診療は従来の専門外来「アルコール科」で行われていますが、もの忘れ外来を訪れた患者さんの5%ほどはアルコール性の認知機能障害と診断されています。

心理テストはMMSE(認知機能検査)を基本に、いくつかのテストを組み合わせて行います。「まれですが、もの忘れの外来にアルコール依存症の患者さんが来られることもあるので、会話のなかでお酒の飲み方なども聞きながら、ヒントを見落とさないように気をつけています」と語るのは臨床心理士・心理療法士の杉浦久美子さんです。

同じく心理テストを担当している臨床心理士・心理療法士の岡田瞳さんは「患者さんにとって楽しい経験ではないので、雑談のように言葉を交わしながら、『いつの間にか終わった』という進め方が目標です」と語ります。

「受診を嫌がる患者さんをご家族がようやく連れてきたということも少なくありません。検査が多くて時間がかかりますが、段取りを考えて、ご家族と事前に相談もして、患者さんが病院を嫌いにならないような配慮を心がけたいです」と語るのは看護師長の越野仁美さんです。

 

J-ADNIに参加しMCIも積極的に診断

もの忘れ外来を受診する人の3割は病気ではないという結果になりますが、同センターはJ-ADNI臨床研究(アルツハイマー病の克服をめざす全国規模での臨床研究)に参加し、MCI(軽度認知障害)段階での診断にも力を入れています。MRIに加えて、ヘリカルCTとSPECTも設備しているので必要に応じて使うことができ、髄液検査や遺伝子検査も可能です。「遺伝子検査は特殊な検査ですが、もともとアルコール分解酵素の遺伝子多型を頻繁に検査していたので、それを応用してアルツハイマー型認知症のリスク遺伝子であるApoEの検査を行っています」(松下先生)。

 

病診・地域連携のための情報収集とツールづくりに注力

久里浜医療センターのみなさん ※写真は取材当時のもの久里浜医療センターのみなさん
※写真は取材当時のもの

同センターは、認知症病棟をもたない認知症疾患医療センターとして早期診断に加え、病診連携・地域連携に力を入れています。 認知症疾患医療センター内に設置された認知症疾患医療連携協議会では、どこにどのような病院があり、診断できるところ、治療薬を処方できるところ、MRIの設備があるところなどの特徴を一覧できる連携マップの作成に取りかかっています。地域包括支援センターなどが「どこへ行くべきか」を的確に指示できるよう情報をまとめるのが目標です。また、医師同士の紹介状に類する連携書類を福祉・介護関係者とやりとりできるようにすることも目指しています。今後、認知症は必ず増えてくるため、診断や交通整理をする機関がますます重要になると考え、同センターでは将来を見据えた取り組みを行っています。

 

 

取材日:2013年8月2日

久里浜医療センターの外観

独立行政法人国立病院機構
久里浜医療センター

〒239-0841
神奈川県横須賀市野比5-3-1
TEL:046-848-1550

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