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住み慣れた街でずっと暮らせるように──
地域ぐるみで総合的にサポートする高齢者医療の専門機関
<東京都台東区 台東区立台東病院>

台東区立台東病院 病院長 杉田義博先生 台東区立台東病院 病院長
杉田義博先生

東京の下町にある台東区立台東病院は、東京都唯一の区立病院です。23区で最も高齢化が進んでいる台東区において、高齢者医療に特化、地域のかかりつけ医との連携を推進し、需要が高まっている認知症治療に積極的に取り組んでいます。老人保健施設を併設し、病院での急性期治療から老健施設での在宅復帰支援、施設介護まで、必要に応じた医療・介護サービスを提供して、地域の高齢者を支えています。

地域の高齢者のために、老人保健施設を併設する総合診療科病院として開設

台東病院は、台東区が高齢者中心の医療機関として2009年に開設。公益社団法人地域医療振興協会が運営する公設民営型の病院です。総合診療科が中心となって、高齢者の全身の健康問題に対応し、高齢者医療で必要度が高い、認知症、緩和ケアと在宅医療の支援を柱に、高齢者によくみられる疾患の治療を総合的に行っています。急性疾患に対処する設備はもちろん、急性期治療を終えた患者さんを受け入れる回復期リハビリ病棟や療養病棟も備え、高次医療機関ではできない治療にも取り組んでいます。

建物内に併設する老人保健施設「千束」では、都内では数少ない認知専門棟を50床設け、さまざまな重症度の患者さんを受け入れて退院後の在宅復帰を支援するとともに、在宅療養が難しい高齢者の生活をサポートしています。

 

『認知症になってもその人らしく地域で暮らす』を支えるために専門性を強化

同院の病院長である杉田義博先生は、へき地医療や地域医療を経験したのち、同院開設時に総合診療医として赴任。杉田先生はかつての赴任先の離島などで、認知症になっても特別ではなく、地域の中で見守りながらその人らしく暮らせる環境をみてきた経験から、検査結果だけで判断せず患者さんが困っていることを理解して、その人らしく暮らせる環境が提供できるように工夫することがADL(日常生活動作)の改善につながると考えています。

「高齢化が進みましたから、認知症があって当たり前。認知症患者さんと向き合い、骨折や肺炎など急性疾患がある場合には入院治療で対応し、安定したあとはリハビリなどで自宅に帰れる状態にするのが当院のミッションのひとつだと考えています」(杉田先生)。それを実現するため、医師は総合診療医として誰もが認知症患者さんを診ることができるように研鑽を重ね、スタッフの認知症への理解を深めるために勉強会を行っています。また、地域の医療機関と連携し、地域全体で患者さんを支える仕組み作りに取り組んでいます。

 

物忘れ外来で診断し、地域かかりつけ医で経過治療を行う、地域連携を実践

外来での看護師による問診風景 外来での看護師による問診風景
台東区立台東病院 看護師 新井梨枝さん 台東区立台東病院 看護師 新井梨枝さん

地域の医療機関から同院へ紹介された患者さんは、物忘れ外来を受診します。診断がついて治療方針が固まったら、できる限りかかりつけ医に逆紹介しています。杉田先生は、認知症と診断された後も在宅で経過治療を行っていくために、地域のかかりつけ医で認知症も含めた患者さんの全身管理を担ってもらうことが大切だと考えています。「経過治療中の患者さんの状態変化等、いざという時には当院が入院治療の受け皿となって対応しています。受け入れ先があることで、かかりつけの先生方は安心して治療ができているようです」(杉田先生)。

同院の週2回の物忘れ外来では、最初に簡単な問診の後、神経心理検査や画像検査を行った上で、医師の診察が行われます。その日のうちにMRI検査も行うことができ、受診当日に診断がつくことも同院の特色のひとつ。問診や神経心理検査を担当する外来看護師の新井梨枝さんは、患者さん本人が認知症を自覚していないことも多いため、「検査という表現は使わず、アンケートと説明することもあります」と配慮をみせます。「患者さんは同じことを何回も話す場合がありますが、何度でも穏やかに耳を傾けるよう心がけています。また、問診の際に気になる患者さんや、介護保険制度などの社会資源を活用できていない患者さんの場合は、私も診察に立ち会って話を聞き、地域包括支援センターへの相談等、介護サービスを利用できるようにお手伝いすることもあります」(新井さん)。

きめ細かな対応が適切な治療やサービスにつながり、同院の理念である地域の高齢者を支えることにつながっていく――その思いを胸に、新井さんは日々患者さんと向き合っています。

 

地域連携相談室の細やかな対応が医療・介護連携の鍵に

台東区立台東病院・老人保健施設千束 ソーシャルワーカー 原健治さん 台東区立台東病院・老人保健施設千束
ソーシャルワーカー 原健治さん

認知症医療で重要となるのは、地域の医療機関や介護施設とのスムーズな連携です。同院の地域連携相談室は、入院・入所を希望する人の相談をはじめ、利用者さんとの面接、退院・退所後の療養先の相談、地域のケアマネジャーとの連絡など幅広い業務を担い、地域連携の中心となっています。地域連携相談室のソーシャルワーカーの原健治さんは「相談を受けた時点からサポートは始まっている」と語り、要望にすぐに応えられない場合でも、サポートできる情報を伝えたり、ほかの機関につないで「安心」を持ち帰ってもらうよう心がけています。

「老健施設から自宅に戻られるときは、ご家族と担当ケアマネジャー、退所後自宅で関わる介護スタッフなどと退所前連携会議を開き、利用者さんが抱えるリスクやその回避策、訪問リハビリや訪問介護などの居宅サービスをどう組み込むかまで話し合っています」(原さん)。

原さんは自分がどう動くかが患者さんのその後の治療・ケアに大きく影響するという自覚を持って、患者さんの受け入れ先施設やかかりつけ医の訪問などを積極的に行い、他機関との連携に熱心に取り組んでいます。杉田先生は「患者さんが自宅に戻れるよういつも努力して調整してくれている」と原さんに大きな信頼を寄せています。

 

認知専門棟を備える老健施設で寄り添う介護を実施

認知専門棟の明るく広い談話スペース 認知専門棟の明るく広い談話スペース
台東区立老人保健施設千束 介護看護長・保健師 眞下美千代さん 台東区立老人保健施設千束
介護看護長・保健師 眞下美千代さん

台東区立老人保健施設千束 介護福祉士 大澤恭子さん 台東区立老人保健施設千束
介護福祉士 大澤恭子さん

作業療法で農作業を行う施設の屋上スペース 作業療法で農作業を行う
施設の屋上スペース

老人保健施設「千束」は、病院の上層階にあります。認知専門棟では、スタッフの詰め所のすぐ前のオープンスペースを広い談話室とし、利用者さんは寝たきりの人も含め、東京スカイツリーを望む開放的な室内で日中のほとんどの時間を過ごしています。

同施設の介護看護長を務める眞下美千代さんは、「認知機能が低下した人は不安が大きく、人の気配や生活音があると安心して眠れる場合もあります。そのため、自然にみんなが談話室に集まってくるようになり、大勢で過ごすようになってきました」と説明します。

BPSD(周辺症状)のある利用者さんもいますが、杉田先生は、BPSDもその人なりの表現で何か理由があっての行動と考え、施設内では身体拘束を行わず、BPSDを無理に抑えるための治療薬は増やさない考え。眞下さんも「環境によって良くも悪くもなるBPSDは、スタッフのケアの良し悪しを映し出す鏡」ととらえて、「寄り添う介護」をスタッフ全員で行うように努めています。

認知専門棟で主任を務める介護福祉士の大澤恭子さんは、「認知症の患者さんは、感情表現はしても意思表示をしないこともありますから、こちらから体調の変化や思いに気づく、観察力を持つことが大事」と話します。

同施設では、作業療法のひとつとして農作業を取り入れ、600㎡以上ある屋上の農園でトマトやカボチャなどの野菜を育てています。車いすの方でも作業しやすい高さのスペースや衛生面に配慮する等、誰もがものを育てる喜びを実感して作業が続けられるように工夫しています。また、東日本大震災後は町内会の復興支援バザーに出展するために利用者さんたちでぬいぐるみなどを制作。「BPSDが強く、ケアに苦労していた利用者さんも『困っている人のために』と作業に没頭していました。人の役に立つことは何よりの認知症治療・予防になると感じています」と眞下さんは顔をほころばせます。

 

在宅介護が難しい患者さんにはターミナルケアも実施

老人保健施設は、入院治療後の在宅復帰を目指してリハビリを行うための役割を担っていますが、同施設では一人暮らしなどで在宅復帰が難しく、ご家族のサポートを受けられない患者さんも受け入れ、ターミナルケアまで行っています。

「この地域は店舗・工場兼住居が多く、2階に寝室があるという住宅事情から、在宅で生活できない患者さんも少なくありません。在宅介護が難しくてもご家族の情は厚いので、自宅の畳の上で大往生するのと同じように、当施設でご家族や慣れたスタッフに囲まれて最期を迎えていただきたいと思っています」(杉田先生)。

老衰により食欲が低下してきたら、ご家族と話し合い、胃ろうや点滴で延命するのでなく自然な形で最期のケアを行っています。

地域連携相談室の原さんは、ご家族のいない利用者さんのターミナル期に、新しい浴衣を用意して喜んでもらったことが印象的だったと言います。「私たちはプロですから、あまり感情を表に出さないようにしなければならないのですが、喜んでいただいてうれしかったですね。ターミナルケアに携わっていることの重みを実感しました」(原さん)。

 

利用者さんだけでなくご家族の満足につながるケアを

ケアにあたる介護福祉士の大澤さんは、「ターミナルに向かう利用者さんに対して何ができるかを常に考えます。利用者さんから希望を引き出してご家族に伝え、ご家族が関わって希望を形にすることを目指しています」と言います。同施設ではご家族も介護スタッフの一員ととらえ、利用者さんが食べたい料理があれば、施設で作るのではなくご家族に作ってきてもらうなど、役割を担ってもらうことで利用者さんとご家族のきずなが深まると、眞下さんもうなずきます。

「ターミナル期の利用者さんの望みが一時帰宅であれば、たとえ短時間であっても帰宅できるようにご家族と話し合います。一時帰宅が実現できれば、利用者さん本人だけでなく、ご家族の満足感につながるのです」(眞下さん)。

 

地域の医療・介護従事者のネットワークづくりにも尽力

地域の医療ネットワークづくりに取り組む杉田先生 地域の医療ネットワークづくりに取り組む
杉田先生

「認知症患者さんに寄り添って全身を治療することには自信を持っていますが、認知症自体の治療についても、もっと病院全体で特化して専門性を持っていきたい」と、杉田先生は意欲をみせます。

また、患者さんのトータルケアに欠かせないと杉田先生が注力しているのは、地域の医療・介護従事者の関係づくりです。「医療・介護従事者は、それぞれ熱心に在宅ケアに取り組んでいますが、まだネットワークができていません。浅草・台東地区において顔の見える関係を築き、連携を強化していこうと思っています」(杉田先生)。

登山に例えると現在は「まだ4合目」と謙遜する杉田先生ですが、地域の医師と認知症ケア研究会を立ち上げました。講演会や研修会などを開催して実際に顔を合わせて学び合う機会を設け、幅広く活動に取り組み、住み慣れた街に終生暮らし続けられる街づくりに尽力しています。

 

取材日:2013年8月2日

台東区立台東病院の外観

台東区立台東病院


〒111-0031
東京都台東区千束3-20-5
TEL:03-3876-1001

 【 台東区立老人保健施設「千束」 】
 TEL:03-3876-1002

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