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認知症看護認定看護師を配置し、より高度な医療看護体制を目指す
<千葉県松戸市 松戸市立福祉医療センター 東松戸病院>

院長 岩井直路先生 院長 岩井直路先生

緑に恵まれ、閑静で落ち着いた環境にある東松戸病院は、主に亜急性期医療や回復期のリハビリテーションに力を入れる市立病院です。介護老人保健施設も併設し、認知症を併せ持つ高齢の患者さんに対応する医療、看護、介護に積極的に取り組むほか、寝たきりを予防し健康長寿を目標とする考えから、地域住民への啓発活動にも尽力しています。

認知症を伴う高齢の患者さんを支える

現在、東松戸病院の入院患者さんの平均年齢は75.6歳であり、院長の岩井直路先生をはじめ病院スタッフは、高齢の患者さん特有の疾患に対応できる医療看護体制を目指しています。
認知症の入院患者さんでは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を有するアルツハイマー型認知症の方も多く、認知症看護認定看護師を配置することで、より専門性の高い看護を提供できる基礎が固まりつつあります。

外来では神経内科に“もの忘れ外来”を設置、2013年からは“もの忘れ悩み相談室”も開設して、認知症の早期発見にも貢献しています。また、岩井先生は「入院患者さんの退院後の生活を支援するには、地域で患者さんを受け入れる体制づくりが重要です」と語り、訪問診療を行うかかりつけ医や老人介護施設、地域包括支援センターなどとの連携を進め、松戸市の高齢者医療の中心的存在としての役割を担っています。

また、肺がん診療に長く携わり禁煙運動を提唱していた経験から、疾患予防を重視する岩井先生は、認知症だけに特化せず、広い意味での予防を早くから意識してもらいたいと、市民向けの講座で健康意識を高める活動にも精力的に取り組んでいます。

 

早期診断のため、脳脊髄液検査も実施

副院長 山本剛司先生 副院長 山本剛司先生

同院の神経内科では、副院長である山本剛司先生と藁谷正明先生が認知症の診療に当たっています。

初診時、山本先生はまず患者さんがもの忘れの症状を自覚しているかを確認します。先にご家族が話し始めたときはいったん待ってもらい、患者さんからお話を聞くようにしています。

「自分の話を先に聞いてもらえると感じると、患者さんも気持ちよくお話しできるように思います。『私も自分のもの忘れが心配で』と答える方と、『私は全然問題ないと思うのだが、家族がうるさいので』と話す方がいらっしゃいますね」(山本先生)。

後者の患者さんには、「確かにおっしゃる通りと思いますが、皆さんが心配されているので、とりあえず検査をしてみましょう」と話しかけます。認知症の可能性が高い場合には、「拝見していると特に問題はないように思いますが、検査上では異常がみられますので、今後認知症に進まないためにもお薬を飲まれたらどうでしょうか」と、山本先生は患者さんの気持ちに配慮した声かけを行います。

認知症の中には特発性正常圧水頭症のように外科的治療で良くなる可能性のあるものや、一時的に記憶障害が出る老人性うつ病など、鑑別が難しい疾患もあります。

神経内科 部長  藁谷正明先生 神経内科 部長  藁谷正明先生

藁谷先生は「認知症と一言でいっても原因はさまざまなので、診断は全ての可能性を考えて慎重に行うことを心がけています。脳外科や精神科とも連携して検査や診察を進めます」と語ります。

アルツハイマー型認知症の診療には早期診断、早期介入が重要です。近年、アルツハイマー型認知症の診断は大いに進歩し、同院でもMMSE(認知機能検査)をはじめとする神経心理検査に加えて、画像統計解析を用いた脳MRI検査(VSRAD)や、地区の基幹病院である松戸市立病院と連携し核医学検査を施行するなど、正確な診断が可能になっています。それでも診断が困難な患者さんには、同意を得た上で腰椎穿刺による脳脊髄液採取を行い、アルツハイマー型認知症の病態に深く関与している脳脊髄液中のアミロイドβやタウ蛋白を測定しています。これにより超早期の正確な認知症診断が可能となっており、より症状が軽度のうちから介入し、患者さんのQOL(生活の質)を維持できるようになりました。

 

話を聞いて患者さんを知ることが治療につながる

認知症の治療のポイントは患者さんを知ること、と山本先生は強調します。

「職業や戦争体験など患者さんのバックグラウンドを知った上で会話をすると、患者さんの目が輝きますね。信頼関係が形成されてコミュニケーションが図りやすくなり、指示を守って服薬していただけるなど、コンプライアンスの向上にも役立ちます」(山本先生)。

認知症看護認定看護師 川﨑智恵さん 認知症看護認定看護師 川﨑智恵さん

毎週水曜日に開かれている“もの忘れ外来悩み相談室”で窓口を担当する認知症看護認定看護師の川﨑智恵さんは「診察を受けるほどではないと思っても気軽にご相談にお越しください」と呼びかけます。

ご家族の言動から認知症を疑い、どこかに相談したいという場合も川﨑さんが対応します。山本先生も「ご家族に的確な質問を投げかけて話を聞き出し、内容をまとめて読みやすいレポートを作成してくれます。診察の事前情報として役立っています」と、川﨑さんを頼りにしています。

 

看護の視点の変化で患者さんが変わる

2011年に川﨑さんが認定看護師を取得してから、同院では看護の視点が強化され、病棟スタッフの体制や対応も大きく変わりました。認知症が進んだ入院患者さんをなるべく一つの病棟に集め、多職種で患者さんと関わるようにしたことで、「認知症の方が抱える行動、心理症状が落ち着き、患者さんの状態が改善されるなどの成果が現れてきていると思います」と岩井先生は語ります。

また2012年11月からは、松戸市立病院精神科の認知症専門医によるコンサルテーション・リエゾン精神医療(リエゾンはフランス語で“連携”の意味)も始まりました。

「週1回、専門医が臨床心理士と共に病棟を回り、薬の処方と、患者さんへの適切な関わり方についてスタッフに助言・指導をしています。徐々にではありますが、より良い受け入れ体制が整ってきました」(岩井先生)。

看護局長 川井弘子さん 看護局長 川井弘子さん

看護局長の川井弘子さんは、看護師歴37年。経験豊富な川井さんも、認知症患者さんの看護には難しさを感じるといいます。

「『今からご飯を食べましょうね』と言ってもどこかに行ってしまわれる方もいて、認知症の患者さんの行動に戸惑うこともありました。それでも毎日顔を合わせるうちにご自分から挨拶してくださったり、優しい笑顔になっていかれたりするのを見ると、やりがいを感じます」(川井さん)。

スタッフの育成に力を入れている川井さんは、川﨑さんについて「高齢の患者さんが多いため認知症を高度に学んだ看護師を育てていこうという当院の方向と、認知症の患者さんをもっと知りたいという川﨑さんの思いが一致して、頼もしい認定看護師が誕生しました」と微笑みます。

認知機能が低下している患者さんはどの病棟にもおられますが、中でも川﨑さんの担当する病棟には、認知症状が強く、認知症特有の対応に困ってしまう方が多い、といいます。

当初は、認知症状の強い患者さんが多いことに驚き、患者さんの行動が理解できずに悩んだという川﨑さん。認知症を学ぼうと第一歩を踏み出したきっかけは、患者さんの笑顔でした。

「同じ認知症患者さんから、私には見せない笑顔を引き出せる看護師もいることに気づき、その違いは何だろうと考えたのです。認知症看護を極めて、もっと患者さんを知りたいと思うようになりました」(川﨑さん)。

川﨑さんは「困った行動にみえるものでも、その裏には必ず理由があります。患者さんの人生史や生活を知っていくと、それが自然な行動に思えてきます」と話し、看護スタッフの視点が変わるだけでも患者さんの問題行動は改善すると指摘します。

川井さんも川﨑さんへの支援を惜しみません。「彼女の担当する病棟へは看護助手も手厚く配置して、管理上も精いっぱいの応援をしています」とエールを送ります。

 

施設のケアに活きる多職種によるチームワーク

同院に併設された50床の介護老人保健施設「梨香苑」は、入所のほか、ショートステイとデイケアも行っています。

介護老人保健施設 梨香苑 看護師長 田尻雅子さん 介護老人保健施設 梨香苑 看護師長
田尻雅子さん

看護師長の田尻雅子さんは「在宅からの介護困難な方や、退院に向けたリハビリの過程でまだ自宅には戻れない利用者さんのための生活支援の場として、利用者さんとそのご家族が安心して在宅生活を迎えることができるまで梨香苑を利用いただいております。当苑では認知棟を備えておりませんが、認知症を患っている方でも(中核症状・BPSD(周辺症状)のレベルにもよりますが)状況に応じて受け入れ、その方の生活習慣を大切にしながら日々のケアに従事しております」と、施設の立ち位置を説明します。

何か問題があればその場でカンファレンスを開き、医師や看護師、介護福祉士など多職種の目が利用される方々に行き届く体制を整えています。認知症の利用者さんへの対応に迷う場合は、認定看護師の川﨑さんに相談することも多いといいます。

「ある日、アルツハイマー型認知症の利用者さんが他施設から入所されました。当初不安が強く、大声で怒鳴ったり、入浴や移動を嫌がり時には手を上げて介護を拒否、何を聞いてもうつむくばかりでなかなか打ち解けてもらえない状況に困り果ててしまいました。そこで川﨑さんに助言をもらい対応を工夫したことで、介護に拒否することが減り、時におどけて声を掛けてくれたり、レクリエーションや行事にも参加され笑顔で会話ができるようにもなり、施設での生活を楽しまれるまでに変わられました」(田尻さん)。

川﨑さんは「私一人が考えてできることではありません。いろいろな立場の目で見た情報を共有する中から、今提供できる対応が見つかるのです」とチームワークの大切さを述べます。

 

地域と連携し、多面的に在宅ケアの家族を支える

同院では、その役割の一つに“在宅医療の後方支援”を掲げ、入院時からソーシャルワーカーが関わって、在宅ケアを視野に入れた調整を行っています。しかし、患者さんを受け入れる側のご家族の形態は時代と共に変化し、介護の手が十分ではなく、経済的な問題を抱えるご家庭も増えているため、「こちらが思うようにはいかないこともあります」と岩井先生は話します。

その一方で、「当院単独の取り組みでは限界がありますが、かかりつけ医の先生方との連携を強めることで、認知症患者さんが地域に帰れる流れをつくることも可能です」と、医師会による在宅ケア委員会など、松戸市のさまざまな地域の取り組みに参画しています。

特に在宅ケア委員会が中心となって進めている、地域連携の橋渡し役となる“認知症コーディネーター”の育成事業には立ち上げから関わり、現在は岩井先生のほか、川﨑さんも尽力しています。

看護局長の川井さんも「目標は元気になってご自宅へ戻っていただくこと」と語り、梨香苑でも支援相談員や理学療法士が介護保険サービス利用についてアドバイスを行うなど、入所中の利用者さんとご家族に在宅介護を前向きに考えてもらえるよう、さまざまな取り組みを行っています。

認知症の症状は記憶障害だけではありません。自発性や意欲の低下で引きこもりがちになり、習慣や趣味も疎かになるのが特徴です。山本先生は、在宅で過ごす認知症患者さんに対して、家の中に閉じこもらずデイサービスなどを利用することを勧めます。

「適度な緊張感を持って多くの人と交わることが、認知症の進行抑制に非常に効果があるという経験を何度もしています。やめていた盆栽いじりをまた始めるなど、積極性が戻り自信を取り戻すことがあるので、『楽しいから一回行ってみてください』とお話ししています」(山本先生)。

藁谷先生も「介護保険サービスなどにつなげるため、認知症診療ではソーシャルワーカーや福祉との連携は欠かせません」と続けます。

 

予防医学の大切さを病院から地域へ発信

回診の際に寝たきりの患者さんが多いことに危機感を持った岩井先生は、認知症予防の観点でも寝たきりにならず活動できることが重要と考え、骨、関節、筋肉などの運動器の働きが衰えるロコモティブシンドロームを予防するための“ロコモ健診”を院内で提案しました。

健康教育は同院の使命の中でも重要な位置付けであり、年2回の市民公開講座のほか、毎月院内で“健康塾”という健康講座を開催しています。川﨑さんも講師になり、認知症の相談窓口の周知や生活面でのアドバイスを行っています。

「独居高齢者の隣人や離れて暮らすご家族からのご相談もあります。何より市民の皆さんのダイレクトなニーズが聞けて勉強になります」(川﨑さん)。

「認知症もロコモティブシンドロームもメタボリックシンドロームも、単独の疾患ではなくそれぞれが関連しています」と語る岩井先生。健康や予防について、「病院だけではなく市民も共に考え、手を取り合って歩むスタンスが大切です。トータルな健康寿命を意識して日々を過ごしていきましょう」と、今後も地域住民へ向けて力強いメッセージを発信していく考えです。

 

 

取材日:2014年2月14日

東松戸病院の外観

松戸市立福祉医療センター 東松戸病院

〒270-2222
千葉県松戸市高塚新田123-13
TEL:047-391-5500(代)

施設のホームページへ

 【 介護老人保健施設 梨香苑 】  

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