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精神科と神経内科が連携し専門医療を提供する認知症診療の拠点
<兵庫県神戸市 神戸大学医学部附属病院>

認知症疾患医療センター・精神科神経科 山本泰司先生 認知症疾患医療センター・精神科神経科
山本泰司先生

神戸大学医学部附属病院では、認知症専門外来“メモリークリニック”を設置し、神戸市の認知症診療の中心的役割を担ってきました。2009年には同市の指定を受けて認知症疾患医療センターを開設。地域のかかりつけ医との連携を深めるとともに、専門外来では精神科神経科と神経内科が協力し合って治療にあたる体制を構築しています。それぞれの診療科が専門的な知識を生かして診療を行うだけでなく、難症例は検討会で取り上げ先生方が異なる視点から知恵を出し合って多角的な診断・治療を行うとともに、地域全体の認知症医療の活性化に取り組んでいます。

かかりつけ医と連携し、地域全体で患者さんを支える

認知症疾患医療センター センター長・神経内科 戸田達史先生 認知症疾患医療センター センター長・
神経内科 戸田達史先生

同院の精神科神経科は、10年ほど前に認知症専門外来を開設し、山本泰司先生率いる老年精神医学研究グループのメンバーが診療にあたってきました。現在は認知症疾患医療センターとなり、神経内科教授でセンター長を務める戸田達史先生のもと、精神科神経科医3名と神経内科医2名、さらに臨床心理士、精神保健福祉士が所属し、多くのスタッフがかかわる認知症診療を実践しています。神戸市を中心に兵庫県南部をカバーし、医療・介護機関との連携や医療従事者への指導、地域住民への啓発活動などに取り組んでいます。

同センターの中心的存在である山本先生は、センターの役割について「認知症患者さんの精査と鑑別を行い、治療方針を決めてかかりつけ医の先生に戻っていただくことで、できる限り多くの患者さんの鑑別診断・治療、合併症に対応するのが本来の形です」と話します。

 

精神科神経科が築いた土台に神経内科が加わる

認知症疾患医療センター・神経内科 古和久朋先生 認知症疾患医療センター・神経内科
古和久朋先生

2010年には神経内科医である古和久朋先生が同院に着任、2011年より認知症専門外来での診療に加わったことから、認知症診療における精神科神経科と神経内科の連携がスタートしました。

古和先生は長年認知症研究に取り組み、東京大学医学部附属病院勤務時は専門外来の立ち上げや、アルツハイマー型認知症の克服を目指す全国規模の臨床研究にも携わってきました。「私がここに来たときには既に専門外来がありましたから、合流させてもらうことにしました」と、両科が連携する体制ができた当時を振り返ります。

 

精神科神経科と神経内科が得意分野で力を発揮

二つの診療科が協力して認知症診療を行う利点として、古和先生はそれぞれの得意分野を生かせることをあげます。

「レビー小体型認知症のように、運動機能の症状を伴いながら認知機能が低下する場合は私たち神経内科が得意です。一方、精神科の先生は、妄想や幻視、幻覚など精神症状がある患者さんの治療に慣れています。患者さんの症状によってどちらの診療科の医師が担当するか、ある程度決まっていきます」(古和先生)。

認知症の専門外来に複数の科がかかわっていることが同院の最大の特徴であり、「他院の先生方からもうらやましがられていますよ」と、古和先生は笑顔で話します。

認知症疾患医療センター・神経内科 鷲田和夫先生 認知症疾患医療センター・神経内科
鷲田和夫先生

古和先生と共に治療にあたる神経内科医の鷲田和夫先生も、「私たちが担当する患者さんに精神症状が現れる場合もあり、わからないことがあればすぐ精神科の先生に相談できるのは心強く、いい環境です」と協力し合えるメリットを語ります。

 

患者さんの状況に応じて精神保健福祉士が診療科を選択

認知症専門外来を受診する患者さんは、患者さんやご家族が同センターの相談窓口に直接相談する場合と、地域のかかりつけ医が同院の地域医療推進室を通して疾患の精査を依頼する場合の、大きく二つの窓口に分かれます。

認知症疾患医療センター・連携担当精神保健福祉士 前田八重子さん 認知症疾患医療センター・連携担当
精神保健福祉士 前田八重子さん

同センターの相談窓口を担当する精神保健福祉士の前田八重子さんは、患者さんやご家族から相談があったとき、患者さんの状況や相談内容を親身になって聞き、適切に次のステップにつないでいます。かかりつけ医で、他疾患の可能性を除外した上での受診が望ましい場合は、かかりつけ医など地域の先生を受診し、紹介状を持参の上、同院を受診することを勧めています。

「相談時には、患者さんの認知症状を的確に把握することに努め、認知症の可能性が高いと判断した場合には、速やかな当院の受診を勧めています」(前田さん)。

さらに、前田さんは患者さんの病状に合わせて、精神科神経科と神経内科に振り分けた受診予約を行っています。

「パーキンソン様症状など神経疾患の症状が強く出ていたり、ご家族が精神科は敷居が高いと感じていれば神経内科、BPSD(周辺症状)が強く精神科神経科の受診が望ましい場合は、精神科神経科の予約を取ります。ただ、専門外来の先生方は全員、認知症専門医でいらっしゃるので、診療科にこだわり過ぎることなく、全ての先生が診察・診断が可能と考えて予約を入れています」(前田さん)。

 

検査と総合的な診療で、血管性認知症も見逃さない

同センター受診時には、まず問診票の記入とGDS(老年期うつ病評価尺度)、やる気スコアをアンケート形式で実施し、患者さんとご家族の生活に直接影響する感情障害の状態を確認しています。

診察時に先生が行う神経心理検査は、MMSE(認知機能検査)や、実行機能障害を重点的に評価するための検査等を実施します。綿密な検査は、アルツハイマー型認知症はもちろん、血管性認知症の可能性を除外するために行われます。

「脳梗塞や脳出血など脳血管障害が原因で起こる血管性認知症は、アルツハイマー型に次いで多い認知症ですが、身体的なリハビリが優先されるため見過ごされがちです。血管性認知症は、物事を判断して遂行することができなくなる実行機能障害が現れたり、体の動きが遅くなる、すぐに泣いたり怒ったりと感情的になるといった特徴があります。このような所見はもちろん、MRIやSPECTなどの画像検査、神経心理検査の結果などを総合的に診て正確な診断を心がけています」(鷲田先生)。

アルツハイマー型と血管性との合併も多く、互いに影響し合って症状が進行します。同センターではいずれも見落とさないように注意を払い、正しい診断を行うことを重視しています。

 

患者さんの心に配慮しながら、ADASでより正確な診断を

さらに詳しい検査が必要なときには、臨床心理士がADAS(アルツハイマー病評価スケール)を行います。ADASは、認知症の状態を評価するものですが、MCI(軽度認知障害)かどうかを見極めるために実施されることもあり、古和先生は「ADASの結果、年齢相応のもの忘れだとわかれば、患者さんにも『認知症ではありません』と、はっきりと伝えられますから」と、ADASの意義を話します。

認知症疾患医療センター・神経内科 臨床心理士 山本貴美子さん 認知症疾患医療センター・神経内科
臨床心理士 山本貴美子さん

臨床心理士の山本貴美子さんは、ADASが約40分という長丁場の検査であることから、患者さんが今の状況をどう受け止めているかを最初に確認し、「最後まで一緒にやりましょう」という気持ちで検査を行っています。

「検査は最後まで回答していただかないと意味がありません。検査に拒否感を抱いている方から協力的な方までさまざまですので、最後まで続けられるようにお一人お一人の思いを探りながら検査を進めます。患者さんは私よりも人生経験豊富な方ばかりですので、いつも尊敬の気持ちを忘れず、きちんと敬語を使って話をするようにしています」(山本貴美子さん)。

 

地域連携の形が整ってきている今、個々の患者さんに合った薬物療法、
介護ケアの選択を重視

認知症疾患医療センター・神戸大学保健学研究科 川又敏男先生 認知症疾患医療センター・
神戸大学保健 学研究科 川又敏男先生

山本先生と共に長く専門外来で診察を行ってきた川又敏男先生は「経過治療はできるだけかかりつけの先生にお願いして、患者さんをかかりつけの先生にお返しするという地域連携の形を大事にしてきました」と語ります。

「地域の先生方の認知症診療に対する意識も高まってきたので、典型的な症状の患者さんはかかりつけの先生、少し複雑な患者さんは当センターで治療と、いっそう役割分担ができています」(川又先生)。

薬物療法は、患者さんに応じて最も適した薬剤を医師が見極め、処方します。症状の出方に応じた治療はもちろん、きちんと服薬してもらうことが大切なので、ご本人やご家族の状況など社会的背景に合わせて可能な投与方法を考慮し、薬剤を選択することが必要です。「効き目が十分でなければ、適切な時期に薬の変更を提案し切り替えることも大切」と、山本先生と古和先生は口をそろえます。           

妄想やうつ、不安などBPSDがあれば、薬物療法のほか、環境整備などのアドバイスも行って、症状の改善に働きかけます。

認知症疾患医療センター・精神科神経科 阪井一雄先生 認知症疾患医療センター・精神科神経科
阪井一雄先生

同じく専門外来で認知症診療を行う阪井一雄先生は「認知症があっても必ずBPSDが出るわけではありません。発症には、ご本人の性格やご家族との関係、環境などが要因となっているのではないでしょうか」と指摘します。

「介護する方と患者さんとの関係性を改善するため、介護者教育などのアプローチも必要でしょう。また、患者さんとご家族だけでは煮詰まる場合もあるので、訪問介護やデイサービスを利用するなど、第三者に加わってもらうことも解決策のひとつです」(阪井先生)。

 

複数の診療科で認知症の症例検討会を行い、難症例に対応

現在、山本先生は、センター内はもちろん、他診療科、さらには周辺の医療機関との連携を進め、治療レベルの向上を図っています。同センターで月1回実施している症例検討会には、センターの医師、臨床心理士、看護師などのスタッフを中心に、院内の総合内科や放射線科医らが参加し、診断・治療が難しい症例について多角的な検討を行い、正しい診断とよりよい治療を探ります。

「検討会では、放射線科の先生から画像診断についての意見や内科の先生から背景の身体疾患に関する質問をもらうことで、患者さんを新たな側面からとらえることができます。複数の先生方が異なる視点で症例を診ることで、難しい症例の対処も可能になるとともに、私たち全体の診療レベル向上につながっています」(山本先生)。

症例検討会を通じて、センター内の診療方針が共有でき、精神科神経科、神経内科どちらを専門にしていても、“正しく診断し、適切な治療に導く”という同センターの役割を果たせます。同院の先生方が意思の疎通を図りながら知識・スキルを向上させる場でもあると山本先生は考えています。

また、同センターの役割として地域のかかりつけの先生方との勉強会を開催しています。“認知症を診ていない先生から素朴な疑問が出るような会”を目指して、10人程度の少人数による開催を心がけているという山本先生。勉強会への参加をきっかけに、どの地域にどのような患者さんを診ている先生がいるかがわかり、顔がわかる関係をつくることで、地域連携の拡大につながっているそうです。

 

病因解明後に向け、さらなる連携を

今後の認知症治療について、神戸大学大学院保健学研究科の教授として後進の指導にもあたっている川又先生は「いずれ病因が解明されるはず」と明言します。

「病因が解明されれば、進行をくい止め、以前の生活に患者さんを戻すことができるでしょう。その際に必要になってくるのは、医療よりむしろリハビリです。指導している学生に対しては、来るべき時代に備えて、よいリハビリやケアができるよう各分野のスタッフが連携し、チーム医療を提供できる体制をつくっていかなければならないと話しています」(川又先生)。

また、阪井先生は「認知症はいろんな視点から現象を診て、さまざまな面で解釈を重ね、いろんな可能性から問題を考えていくことが大切」と指導しているといいます。そして「私は臨床心理士の資格も持っていますが、臨床心理士にももっと認知症に関心を持ってもらいたいですね」と医療従事者間での連携の必要性を強調します。

 

人との「つながり」に重きを置き、先端医療を提供

超高齢社会を迎え、認知症をはじめとする精神・神経疾患にチーム連携で取り組む皆さん 超高齢社会を迎え、認知症をはじめとする精神・神経疾患に
チーム連携で取り組む皆さん

長年研究と治療に取り組んできた山本先生は、認知症を取り巻く状況を振り返り、「近年は世の中が治療のバックアップをしてくれています」と顔をほころばせます。高齢者の病気の代表格が認知症であるという認識が広がり、患者さんが初期の段階で受診しやすくなっているためです。認知症診療に積極的に取り組む地域診療医も増えています。

山本先生は“人と人のあいだをつなぐのが自分の役割”ととらえ、複数の診療科やほかの医療機関との連携を進め、センターの機能を拡充してきました。山本先生同様、人との“つながり”に重きを置く医師・スタッフによって、精神科神経科と神経内科、それぞれの強みを持ち寄った認知症診療が実現し、地域の患者さんとかかりつけ医を支えるとともに、これからの時代に望まれる治療の形を提案しています。

 

 

取材日:2014年2月18日

神戸大学医学部附属病院の外観

神戸大学医学部附属病院

〒650-0017
兵庫県神戸市中央区楠町7丁目5-2
TEL:078-382-5111(代表)
TEL:078-382-6908(認知症疾患医療センター)

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