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月1回の“もの忘れカフェ”で患者さんやご家族の思いを受け止める
<大阪府堺市 社会医療法人同仁会 耳原鳳クリニック>

耳原鳳クリニック 所長 池田信明先生 耳原鳳クリニック 所長
池田信明先生

2012年に厚生労働省が策定した“認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)”では、認知症患者さんやそのご家族等に対する支援策として“認知症カフェ”の普及が掲げられました。大阪府堺市の耳原鳳クリニックでも、2013年末から月1回のペースでクリニックの4階にある見晴らしの良い開放的なスペースでもの忘れカフェ(認知症カフェ)をオープンしています。「うち、こんなことあってん」「私んとこはこうや」「せんせー、ちょっと聞きたいねんけど」――患者さんやご家族、介護者のほか、医師や介護福祉士などスタッフも集まって話は弾み、笑い声が響きます。

高まるニーズを受けて“もの忘れ外来”を開設

耳原鳳クリニックは、内科一般、外科などを標榜しており、前身の耳原鳳病院から数えて50年以上の歴史を持つ、地域に密着したクリニックです。同クリニックでは糖尿病、頭痛、リハビリなどの専門外来にも力を入れており、2007年には“もの忘れ外来”を開設しました。

同クリニックの所長で神経内科・リハビリ専門医の池田信明先生は、専門外来開設のきっかけをこう語ります。

「もともと血管性認知症患者さんを多く診ていましたが、アルツハイマー型認知症の患者さんも増え始めました。専門外来があれば、もの忘れが気になり始めたときに、患者さんがどこを受診すればいいか、迷わずにすみますから」(池田先生)。

もの忘れ外来では診療日を火・水曜完全予約制とし、初診の患者さんは1日3人、週2日で計6人に限定しています。池田先生自らが問診を行い、検査結果や今後の治療方針など、ご本人やご家族に時間をかけてじっくりと説明するためです。神経内科で診察している患者さんを合わせると、クリニック全体での認知症患者数は、1ヵ月約400人。初診の場合は常に予約待ちという状態ですが、池田先生は早めの受診を呼びかけています。

「早期に発見し、早く治療を始めれば、症状の進行を抑えることができます。しっかり診断を行い、かかりつけ医に治療を引き継ぐことを心掛けています」(池田先生)。

常にゆったりとした口調で、穏やかな雰囲気の池田先生は、患者さんからもご家族からも信頼を寄せられています。

 

糖尿病患者さんの認知症発症を見逃さないために

同クリニックの認知症診療のポイントには、糖尿病患者さんの認知症併発を見逃さない、“もの忘れカフェ”の開催、若年性認知症患者さんへの積極的支援の3つが挙げられます。

糖尿病患者さんの認知症併発に関しては、糖尿病と認知症、双方の専門外来で連携を取り、早期発見に努めています。

同クリニックの糖尿病外来には1ヵ月に千人近い患者さんが訪れていますが、糖尿病は認知症の危険因子であり、もともと糖尿病を持っている患者さんが認知症を発症する確率は決して低くないことから、同クリニックでは早くから合併症の一つとして注意喚起してきました。

看護師 河内よし美さん 看護師 河内よし美さん

とはいえ、糖尿病の治療で通院している患者さんの中には、認知症の発症を疑いながらも受診に踏み切れない方、認めたがらない方もおられます。看護師の河内よし美さんは「そんな方の背中を押して、早期発見・治療につなげるのが私たちの役目」と話します。

糖尿病の治療で通院している患者さんも、バイタルチェックや問診などの診療時や受付でのやりとりなど、患者さんの様子にクリニック全体で注意を払い、少しの変化も見落とさないように心掛けます。いつもと様子が違うと気づいたときは、ご本人の了解を得て池田先生に紹介し、受診につなげています。

「糖尿病だけと考えていては、認知症を見逃してしまうかもしれません。患者さんのすべてに目を向けて、少しでも早く認知症のサインに気づいてあげたいと思います」(河内さん)。

 

自由闊達なトークでストレスの解消も

“もの忘れカフェ”にて会話を楽しむ様子

2つめのポイントは、2013年末から開始した“もの忘れカフェ”の取り組みです。

厚生労働省が策定したオレンジプランでは、“認知症の人と家族、地域住民、専門職等の誰もが参加でき、集う場”と定義しており、同クリニックでは毎月第1木曜日に、認知症患者さんとご家族、介護者らが3~4人の小グループ単位でテーブルを囲み、飲み物を片手にフリートークを楽しんでいます。

同カフェをオープンするきっかけは、池田先生の「患者さんもご家族も、私たちに質問したいことや伝えたいことが、本当はもっとあるのでは」という思いからでした。

「通常の診療時間では話し足りないと感じている方もおられるはずです。こういう場があれば、外来では言えなかったことが話せますし、私たちへも質問しやすいのではないかと考えました」(池田先生)。

ゆったりケアおおとり 介護福祉士 伊与田真也さん ゆったりケアおおとり 介護福祉士
伊与田真也さん

同カフェでは池田先生と看護師、医療ソーシャルワーカー、介護福祉士の4人が各テーブルを回って会話に加わったり、参加者からの質問に答えたりしますが、併設のデイサービス「ゆったりケアおおとり」で介護福祉士を務める伊与田真也さんは「自分たちは完全に黒子」と笑顔で話します。

「話に加わりそびれた方がおられたら、さりげなく誘導してあげることもありますが、何より皆さんがそれぞれのトークを楽しんでいらっしゃるので、聞き役に回ることのほうが多いですね」(伊与田さん)

特定のテーマは設定せず、自分の思いを口にしたり、体験談を披露したりと、自由に会話を楽しんでもらっています。

「関西のノリなんでしょうか、言いたいことを言い合っても、気まずくなることはありませんね。『うちはまだマシやわ』と笑い出す方や、『その方法、今度使ってみよ』と介護のヒントを得ていかれる方もいて、皆さん目いっぱいおしゃべりを楽しみ、ストレスを解消して帰って行かれますよ」と、伊与田さんは目を細めます。

 

若年性認知症患者さんへのケアにも尽力

3つめのポイントは、若年性認知症患者さんへの積極的な支援・ケアです。

同クリニックの認知症患者さんのうち、5%程度が若年性認知症の患者さんです。50代と比較的若い患者さんも多いことから、社会とのつながり・居場所づくりへの支援を目的に、週に1度“ミドルエイジ・カフェ”と銘打って、日常生活に必要な能力の維持・向上を目指して運動や交流を通じたリハビリを行っています。

作業療法士 永井香織さん 作業療法士 永井香織さん

作業療法士の永井香織さんは「まだまだお若いので、家に閉じこもらず、社会とのつながりを持っていただきたいと思います」と、ストレッチなどの体操指導、パソコン作業、ゲーム療法などもリハビリの一環に取り入れています。

50代で若年性認知症を発症し、退職を余儀なくされたある患者さんが園芸好きだと聞いて、その頃は使用されていなかった屋外リハビリスペースを、永井さんは畑へと改良をお願いしました。

「最初はあまりリハビリに来られなかったのですが、だんだんと顔を見せる回数が多くなりました。熱心に畑仕事に取り組まれた結果、数種類の野菜が育ち、皆で収穫して料理できるまでになりました」(永井さん)。

自分の可能性を再発見したその患者さんには、次のステップとして、ボランティアで別の場所でも野菜を栽培し、外部とのつながりを持つよう勧めています。

 

もの忘れカフェのさらなる発展を夢見て

同クリニックでは年に数回、認知症についての講習会を行い、疾患の普及活動に努めています。その結果、ごく早期の受診に結びつくなど一定の成果を上げてきました。

現在池田先生は、認知症の専門外来だけでなく、そのほかの診療科でも認知症を診断できるようにするのが急務の課題と考えています。

「認知症患者さんは内科にも外科にもいらっしゃいます。対象疾患だけに注目していると、認知症の発見が遅れてしまいます。どの診療科にかかっていても早期に発見できるよう、医療関係者の間でも知識や情報を共有して、共に勉強していきたいと思います」(池田先生)。

親身に患者さんの話を聞いておられる池田先生 親身に患者さんの話を聞いておられる
池田先生

“もの忘れカフェ”を発展させ、患者さんとご家族を支えていくことも、今後の目標の一つです。現在、カフェの取り組みは全国で展開されていますが、同クリニックのように医師や看護師が自ら率先して実施している施設は少なく、今後に注目が集まっています。

「この先もの忘れカフェがどう発展していくかは、利用者の皆さん次第です。いずれは利用者さんに運営をおまかせして、自分たちで進めてもらえればいいですね」と、河内さんは話します。

参加者のためにカップホルダーを持参するリピーターまでいるほど人気のカフェですが、伊与田さんは、利用者さんのみならずスタッフにとっても利点があることを強調します。

「カフェでの会話を通して、私たちスタッフが『患者さんはこんなことで悩んでいるはず』と思っていたことが、実はそうではないと気づかされることもあります。皆さんの本音を聞くことが自分たちにも刺激になり、新たな発見の場となっています」(伊与田さん)。

カフェの利用者さんが翌月には近所の友人を誘って訪れるなどすそ野も広がり始め、池田先生らはカフェの存在が地域住民の認知症への理解につながっていると感じています。

「目指すのは、患者さんが自分でコーヒーを入れて飲み、談笑している姿です。私たちが提供するのではなく、患者さんやご家族、そして地域の方々とカフェでの時間を共有していくことが目標です」と、池田先生は夢を語りました。

 

 

取材日:2014年2月6日

耳原鳳クリニックの外観

社会医療法人同仁会
耳原鳳クリニック

〒593-8325
大阪府堺市西区鳳南町5丁595番地
TEL:072-275-0801

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