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多職種チームで早期発見・早期対応の町づくり
<山形県長井市 医療法人杏山会 吉川記念病院>

吉川記念病院 院長 吉川順先生 吉川記念病院 院長
吉川順先生

人口1万5千人の町で“認知症初期集中支援チーム”が動き始めました。担い手は隣接市にある病院の多職種チーム。町と連携して、認知症患者さんが安心して暮らせる町づくりの取り組みが始まっています。

進んだ認知症治療を経験した後に故郷へ

山形県長井市の吉川記念病院では、精神科と小児科を中心に、内科、神経内科、リハビリテーション科、老年精神科などの外来診療を行い、200の病床のうち50床を認知症治療病棟に充てています。

院長の吉川順先生は、長年にわたって獨協医科大学や栃木県の精神科病院で認知症の診断と治療、調査・研究に取り組んだ後に、実家のあるこの地域に病院を設立しました。

「栃木の認知症医療は先進的だったので、故郷では医療と福祉が連携できていなかったことにショックを受けました」と吉川先生は振り返ります。そして着任以来、病院での治療に加えて、地元の長井市や隣接する白鷹町で医療・福祉関係者や一般向けのセミナーや自治体への働きかけを精力的に行い、ネットワークを築いてきました。そんな吉川先生が中心となって動き始めたのが白鷹町での“認知症初期集中支援チーム”です。

 

専門家が町に出て認知症を早く医療につなぐ試み

厚生労働省は“認知症施策推進5か年計画”、通称“オレンジプラン”を策定し、2013年度から2017年度までの5年間で認知症の早期発見・早期対応の取り組みを進めて、患者さんご自身やご家族の負担を抑えつつ地域で長く暮らせる社会をつくることをめざしています。

この計画で重要な役割を果たすのが“認知症初期集中支援チーム”で、2013年度に全国14の市町でモデル事業が始まりました。政令指定都市など大きな都市がほとんどですが、小さな町がふたつ採択され、そのひとつが山形県白鷹町です。人口は1万5千人、約3割が高齢者というこの町で行われる事業を、同院が手がけます。

チームの役割は、まだ診察・治療を受けていない初期の認知症患者さんを見つけ出して医療や福祉につなげること。従来の早期発見・早期治療の取り組みが、普及啓発を行って早めの受診を促す“待ち”の取り組みだったのに対して、医療と福祉の専門家が患者さんの家を訪問してアセスメントを行う“攻め”の取り組みであるという特徴があります。

 

モデル事業への立候補を隣町に提案

「認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)の方を発見して、現状よりもずっと早期に対応すれば、認知症が発症してもほとんど問題なくご自宅で暮らせます。ご本人とご家族の負担が軽くなるのはもちろん、医療や福祉のコストも大きく削減できることが試算によって明らかになっています」と吉川先生は語ります。

しかし、まず取り組まなければならないのは、発症しているのに治療を受けていない患者さんを医療の流れに乗せることです。

「山形県は、全国的に見て認知症の医療受診率が低いのです。ご家族と同居している患者さんが多いのですが、その分、ご家族で何とかしようと努力してしまう傾向があるようです」(吉川先生)。

早期診断を進める手立てを探し求めていた吉川先生が、白鷹町に「このモデル事業に手を挙げよう」と提案したのが、町と病院の連携の発端となりました。

白鷹町地域包括支援センター 保健師 鈴木由紀子さん 白鷹町地域包括支援センター 保健師
鈴木由紀子さん

白鷹町地域包括支援センターの保健師、鈴木由紀子さんは「町としても認知症医療には積極的に取り組んできたのですが、独居や高齢夫婦世帯も多く、新たな対策が必要だと考えていました。町の職員だけでチームをつくるのは難しいので吉川記念病院と連携できて本当に助かりました。小さな町がモデル事業に採択されたことは、『宝くじに当たるよりスゴイ』と職員同士で話をしています」と語ります。

 

院内に多職種チームを編成し地域包括支援センターと連携

“認知症初期集中支援チーム”は、同院で認知症治療に取り組んできた看護師、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士、介護福祉士と吉川先生の多職種メンバーで構成され、さらに白鷹町地域包括支援センターのスタッフが加わっています。チームメンバー全員が、それぞれ職種ごとに厚労省が指定する研修を受けています。

精神保健福祉士 青木真美さん 精神保健福祉士 青木真美さん
作業療法士 佐藤由香さん 作業療法士 佐藤由香さん

町民との窓口は地域包括支援センターです。「ご本人やご家族に訪問の同意をいただくことからスタートし、かかりつけ医の先生と話すなど基本的な情報を集めて同院のチームに伝えます」(鈴木さん)。

病院チームの窓口は、精神保健福祉士の青木真美さんです。「チームのなかから2~3人で訪問しますので、鈴木さんからの情報を基に、誰が適任かを考えて訪問スケジュールを調整します。例えば、ADL(日常生活動作)に不安がある方の場合は作業療法士が担当すると、日常生活の悩みにアドバイスができて、良い関係が築きやすくなります」(青木さん)。

作業療法士の佐藤由香さんは「廊下が滑って歩きにくい、トイレに行く時に迷うなどのよくある悩み事も、病院で聞くのと違って実際の家の様子がわかるので、具体的なアドバイスができ、やりがいを感じます」と語ります。

 

複数回の訪問で病状や必要な支援策を判断

初回の訪問では信頼関係づくりを重視し、2回目以降の訪問でDASC(認知症総合アセスメント)やDBD13(認知症行動障害尺度短縮版)などのスケールに基づいて対象者ご本人やご家族から聞き取りを行います。このアセスメント結果などを基にチーム全員による会議で病状を判断、必要な支援を進めていきます。

臨床心理士 熊谷愛さん 臨床心理士 熊谷愛さん

聞き取りを担当する臨床心理士の熊谷愛さんは「患者さんの生活の場で聞き取りを行うのは難しい面もあるのですが、実際の生活の様子がわかるので、とても参考になります。どんな支援が適切かという判断は、私はまだ知識不足なので、チームのメンバーから学んでいきたいと思っています」と語ります。

認知症の可能性が高い場合は専門医につないだり、かかりつけ医から紹介状をもらって同院で確定診断を行い、治療へと進めていきます。「通院ができないという方は、私が訪問して診断をつけることもあります。事業の枠組みとして6ヵ月以内に、医療や福祉のシステムに乗せていくのが目標です」(吉川先生)。

 

自宅での患者さんと接する経験が病棟で生きる

介護福祉士 白木隼介さん 介護福祉士 白木隼介さん
看護師長 五十嵐美枝子さん 看護師長 五十嵐美枝子さん

普段は老人性認知症疾患治療病棟で治療・看護にあたっているスタッフもチームに参加しています。

介護福祉士の白木隼介さんは「病棟では重度の患者さんしか見ないので、軽症の患者さんの生活を見ることで、疾患への理解が大きく深まったのを感じます。地域で認知症患者さんが暮らす将来をイメージして、自分自身の生活や隣人との付き合い方も考えるようになりました」と語ります。

看護師長である五十嵐美枝子さんも、「病棟の患者さんとご家族が、どんな苦労を乗り越えてこられたのか、実感できます。また、患者さんのテリトリーであるご自宅にお邪魔する経験は、病棟での自分が患者さんに寄り添えているか、上から指示するような物言いになっていないか、反省する視点を与えてくれました」と語ります。

「チーム全員にとって、ご自宅での患者さんの様子が病院とは違うことを肌で感じる良い機会になっています」と吉川先生も語ります。「医師も同じです。認知症、特に脳血管性の患者さんは、病室で白衣の医師を前にするとシャキッとして、実際より軽症に見えることがあります。勤務医時代、軽症だと思っていた患者さんを町のスーパーで見かけた時、重度患者さんに特有の行動があることに驚いて以来、白衣を着るのをやめたのです。モデル事業に関わることで、多くのスタッフが貴重な実感を得られることをありがたく思っています」(吉川先生)。

同院では、厚労省のオレンジプランが動き出す前から、認知症や統合失調症の治療で多職種チームが活動していました。小さな町のモデル事業から大きな成果が生まれ、同院を柱とした地域医療がますます進んでいくことが期待されます。

 

 

取材日:2014年2月4日

吉川記念病院の外観

医療法人杏山会 吉川記念病院

〒993-0075
山形県長井市成田1888-1
TEL:0238-87-8000

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