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総合病院での経験とネットワークを地域医療に生かす
<山形県酒田市 わたべクリニック>

院長 渡部俊幸先生 院長 渡部俊幸先生

開業からわずか2年で多くの認知症患者さんが集中するようになった精神科クリニック。地域の中核病院で長く勤務し、認知症疾患医療センター長も務めた院長が要となって、地域医療ネットワークや病診連携の仕組みが築かれつつあります。

総合病院は忙し過ぎる。患者さんと向き合うために開業

「総合病院の勤務医は、やり甲斐のある仕事です。しかし、忙し過ぎて患者さんと向き合う時間がとれないことに加えて、50歳を超えて体力の限界を感じたのが、開業を決断した理由でした」。

わたべクリニックの院長である渡部俊幸先生はこう語ります。

待合室 待合室
中待合室 中待合室

大学を卒業し、7年間の臨床と研究の後、1996年に市立酒田病院の精神科長に就任、認知症疾患医療(老人性痴呆疾患)センター長も兼任することになった渡部先生は、あまりの忙しさに「5年で辞めよう」と考えたそうです。しかし、無我夢中で働いているうちに年月は過ぎ、同院が2008年に県立日本海病院と経営統合(地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院)の期間を通じて同センター長(通算16年)を兼任し、科長としても活躍し続け、後進の若手を育てたうえで、2012年に開業に至ったのです。

総合病院の精神科では外来患者さんの増加が著しく、連日、遅くまで診察が続いたうえに夜勤と夜間救急があり、さらに、他科に比べて特に多い書類作成業務で休日も消える状況だったといいます。

開業した今も、要請があれば措置入院・医療保護入院の診察に出かけ、定期的に日本海総合病院の外来や当直、研修医指導を担当するなど、相変わらず忙しい日々が続いています。休日には保健所や市のこころの相談や専門職向けセミナーの講師を務めることも少なくありません。

「開業しても多忙さは同じです。それでも夜勤がなくなっただけ、体力的に少し楽になりました。何より、患者さん一人ひとりとゆっくり向き合えるのが嬉しいですね」と渡部先生は語ります。

開業からわずか3ヵ月で300人の認知症患者さんが

渡部先生が認知症医療を手がけ始めたのは、市立酒田病院で認知症疾患医療(老人性痴呆疾患)センター長を務めるようになってからでした。

「それ以前は統合失調症や神経症、うつ病などの精神疾患を専門にしていましたが、認知症のBPSD(周辺症状)は他の精神疾患の症状と共通する部分も多く、ノウハウを生かせることがわかりました。中核症状の治療は非専門医でも可能ですが、BPSDの治療は精神科医の使命だと感じましたね」(渡部先生)。

現在、同クリニックで治療を受ける認知症患者さんは600人ほどになり、患者総数の約半分を占めています。開業直後から多くの認知症患者さんが来院され3ヵ月で300人近くになり、今も日に2~3人の新患のうち1人は認知症での相談・受診です。

「総合病院は混んでいて待ち時間が長くなります。『認知症かも』と不安を感じている患者さんやご家族にとって、当院のようなクリニックのほうが気軽に相談できるのかもしれません。総合病院時代と比べて、軽症やMCI(軽度認知障害)の患者さんを診ることが多いことも、患者さんにとってクリニックのほうが、通院へのハードルが低いことを表していると思います」(渡部先生)。

認知症患者さんの急激な増加によって、認知症疾患医療センターでの相談が順番待ち状況になっているため、前センター長だった渡部先生を頼りに、地域包括支援センターなどから新しい患者さんが紹介されてくることも珍しくないといいます。

 

初診に時間をかけられるのもクリニックならでは

認知症を疑って来院した初診患者さんの場合、看護師が1時間ほどかけて予診とご家族からの聞き取りを行い、さらに渡部先生が30分ほどかけて問診、検査も含めてのべ2時間ほどを費やします。

問診だけで診断できるケースも多いのですが、介護保険申請に必要となるため、大抵は画像診断も行います。脳CTまたは脳MRIを基本として実施し、必要に応じてSPECTも行うのですが、日本海総合病院の放射線科に直接予約を入れられる連携体制が築かれており、撮影されたデータは医師会との連携ネットワークを介して同クリニックから閲覧することができるようになっています。

看護師 大野木佳代子さん 看護師 大野木佳代子さん

看護師の大野木佳代子さんは「予約の電話があった段階で、患者さんが『自分が受診するのだ』ということを納得した状態で来院できるように、ご家族や介護者の方にお願いしています」と語ります。認知症では受診を嫌がる患者さんが多く、家族の病気の付き添いなどと偽って病院にお見えになることもあります。「やむを得ない場合もあるかと思いますが、偽りからスタートすると、ご本人の協力が得られず治療中断になることが多いのです」(大野木さん)。

 

ご家族の理解を進めることが早期発見の鍵

早期発見・早期治療を実現するために大切なのは、ご家族の理解だと大野木さんは考えています。ご家族が認知症であることを隠そうとするケースはほとんどなくなりましたが、「年だから少々の物忘れは仕方ない」と軽く考えて、治療開始が遅くなってしまう例が多くみられます。

「お嫁さんが『私が我慢すれば......』と頑張るのも良くないですね。この地域は大きな家屋が多くて、一日中顔を付き合わさずに済むので『我慢できてしまう』ことも、受診や相談が遅くなる要因になっているように感じます。一般への啓発にも取り組む必要がありますね」(大野木さん)。

大野木さんは渡部先生と過去に旧市立酒田病院で病棟勤務をしていた時期があり、同クリニック開業と同時にこちらへ移ってきました。「病棟では夜勤があって忙しさに流されてしまいがちです。外来で、落ち着いて患者さんやご家族と接することができるのは本当に嬉しいです。初診時は特に時間がかかりますが、最後には笑顔になって帰られる姿を見ると、大きな充実感を覚えます」(大野木さん)。

 

病診連携を充実し、全ての医師が認知症に取り組める仕組みを

認知症治療の取り組みで課題となっているのは、地域医療におけるBPSDへの対応力の不足だと渡部先生は考えています。

「中核症状の治療はかかりつけ医の先生方にお任せし、BPSDは精神科医などの専門医が手がけるのが良いとは思うのですが、認知症患者さんの増加によって、このままだと遠からず専門医がパンクしてしまいます」(渡部先生)。

病診連携や地域の医療・介護のネットワークを活用して、非専門医もBPSDの治療ができる仕組みを構築し、さらに中核症状の軽症・中等症・重症の段階とBPSDの有無や深刻度に応じて対応できる介護施設やサービスを充実する必要があります。

「BPSDに取り組むには知識や技術だけでなく、時間が必要なのです。今の診療報酬のシステムでは、精神科以外の医師がゆっくり話を聞く時間をとることは難しい。認知症にじっくり対応できる診療制度を国にも考えていただきたいと切に願っています」(渡部先生)。

診察室 診察室

渡部先生の夢は、認知症患者さんが安心して暮らせる地域をつくること。そのためには、住民みんなで患者さんをサポートする必要があります。たとえば患者さんがスーパーから商品を持って帰ってしまったら、店からご家族に連絡があって後から支払うことができる。徘徊もみんなで見守って、自宅に連れて来てくれる。「これを、夢で終わらせずに少しでも理想に近づけるために、医療従事者と介護・福祉関係者、行政が協力して仕組みづくりを進めていかなければなりません」(渡部先生)。

市の中核病院で長く認知症疾患医療センターのトップを務め、今も家族会から行政まで幅広いネットワークを持つ渡部先生だからこそできる取り組みは、これからも続きます。

 

 

取材日:2014年4月11日

わたべクリニックの外観

わたべクリニック

〒998-0853
山形県酒田市みずほ1-2-20
TEL:0234-43-1337

わたべクリニックの外観2

 

 

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