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生活全体を見たカウンセリングで患者さんとご家族に満足を
<大分県別府市 安部第一医院>

院長 安部明夫先生 院長 安部明夫先生

安部第一医院は、1962年の開業以来50年以上にわたり、地域に根ざした医療を提供してきました。神経内科を専門とする安部明夫先生は、米国での認知症研究や大学病院での臨床を経て、99年に2代目院長に就任。高い専門性に基づく診療と、親身なカウンセリングで、多くの患者さんとご家族から信頼を得ています。

米国に留学し認知症研究に取り組む

「広島大学医学部で医学博士の学位を取ったあと、担当教授の勧めでカリフォルニア大学サンディエゴ校に留学しました。そこで認知症の研究――正確にいうと“老年痴呆の分子遺伝子基礎研究”を手がけたことが、私が認知症に向き合ったきっかけです」 。

約25年前の留学経験を語る安部先生の専門は神経内科。広島大学を卒業後、同大学および大分医科大学(現 大分大学医学部)の医局に籍を置いていましたが、当時は神経内科で認知症を診ることはなかったといいます。

ところが、米国で認知症の研究に携わったことに加え、認知症研究で実績のある中村重信先生が母校の教授に就任。中村先生は安部先生の研究に大きな関心を抱き、帰国を求めました。

「帰国して母校へ戻り論文を発表すると、私は医局の中で認知症の専門家と位置づけられ、外来の診察にもあたるようになりました。しかし、抗認知症薬は当時はまだありません。脳代謝改善薬や脳循環改善薬が注目されており、私も治験係として毎週のように厚生省(現 厚生労働省)に出向き、検討を重ねましたが、実際のところはあまり効果がない。そんな時代でした」(安部先生)。

 

認知症は、純粋な神経変性疾患ではない

外来診療を通して、安部先生はある疑問に行き当たります。

「私は神経内科医ですから、認知症を他の神経変性疾患と同じようにとらえていました。しかし、脳のどこに責任病巣があるか調べても見つかりません。徘徊を起こす責任病巣というものは存在しない。症候分析をしようとしても認知症はあまりに多様であり、これまで接したことのある神経変性疾患とは全く異なる印象を持ちました」(安部先生)。

その頃、安部先生は体調を崩したこともあって、大学を退職して郷里の別府に戻り、特別養護老人ホーム「宇佐ナーシングホーム泰生園」の嘱託医に就きました。

泰生園は、精神科医として長く認知症研究に注力してきた雨宮克彦先生が、その研究の成果を生かすべく1987年に立ち上げた認知症専門の施設です。そのため認知症のケアにおいて、全国でも先導的な役割を果たしていました。

ここで雨宮先生の考えに触れ、安部先生は認知症のとらえ方を一変させます。

 

BPSDは病気ではない

「もの忘れ、記憶障害は神経変性疾患です。仮にこれらを認知症の半分だとすると、残りの半分はその人に残っている正常な神経細胞の迷いや混乱が引き起こしているのです。つまり、患者さんご本人やご家族が日常でお困りの問題行動、BPSD(周辺症状)は病気ではありません」。

安部先生はそう明言し、さらに説明を続けます。

「例えば、自分が退職したことを認識できずに職場に行こうとして、道がわからなくなってしまう。それが徘徊になります。また、所構わず放尿してしまうのは、泌尿器系の問題ではなくトイレの場所が認識できないということです。つまりBPSDは、その人の迷いや混乱している部分が正常な反応として出てきているだけのこと。したがって治療の対象にはならず、介護としてマネジメントしなければなりません。これを嘱託医として介護の現場で経験できたのは有意義でした」。

 

診断において患者さんの「自分史」を重視

明るい待合 明るい待合

安部先生は1999年、父親が開業した安部第一医院の院長に就任しました。以来、地域に根ざした診療を提供してきました。

同院に相談に来る認知症の患者さんは要介護度が1か2で、症状が出て1年くらいのうちにご家族が気づいて受診することが多いといいます。

院内にあるCTで画像検査も行いますが、安部先生が診断において何よりも重視しているのは、患者さんの自分史を詳しく聞くこと。「BPSDにはそれまでの人生が反映していることが多い」というのがその理由です。

「ご本人のパーソナリティー、仕事の内容、職場環境、家族のありようなどを詳しくインタビューし、ご家族からもお話を伺います。どなたも苦労をされていますが、特に家庭内での葛藤が多かった方にBPSDが強く出る傾向があります。お薬を処方しますが、大事なのはこれからのQOL(生活の質)をどう維持するかということ。そのマネジメントを考えないといけません」(安部先生)。

 

患者さんの認識力、対処能力の把握が大切

看護師 大胡ひとみさん 看護師 大胡ひとみさん

同院は、長く地域に密着した診療を続けているため、患者さんと医院スタッフの距離が近いことが大きな特長です。看護師の大胡ひとみさんは「気軽に相談していただけるようアットホームな対応を心掛けています」と話します。

「ご家族は不安を抱えて来院されますので、まずねぎらいの言葉を掛けて、悩みやお困りのことをしっかりお聞きします。暴言に悩んでいるという方に『それは患者さんの本心ではありませんよ』と説明すると、そのひと言だけで安心した表情を見せる方もおられます」(大胡さん)。

継続した服用の大切さについて説明するのも大胡さんの仕事です。「症状が改善したからと、ご自身の判断で服用を止める方がおられますので、中断したらどうなるのかを資料を基に説明します」(大胡さん)。

看護師 林心太郎さん 看護師 林心太郎さん

大胡さんの先輩にあたる看護師の林心太郎さんは「患者さんの生活歴や職歴、そして現在の認識力、対処能力を把握しておくことが大事」だと語ります。

患者さんと円滑なコミュニケーションを図るうえで、それらを通してご本人の世界観を知っておくことが非常に大切です。また、対処能力が落ちていると、糖尿病など慢性疾患の悪化や脱水症状などにつながりかねませんから、私たちが見逃さないよう常に注意しています」(林さん)。

 

啓発や連携、介護事業にも注力

グループホーム「はぴね別府」 グループホーム「はぴね別府」

安部先生は啓発活動や医療・介護関係者の地域連携にも力を注いでいます。2004年に公益社団法人「認知症の人と家族の会」の大分県顧問に就き、多くの患者さん、ご家族と交流。また、翌年には別府市の関係者を対象に別府認知症研究会を立ち上げました。同会は年2回の会合を10年近く続けており、現在では毎回約200人が参加。著名な医師・研究者の講演のほか、事例発表などを行っています。

一方で、2002年にはグループホーム「はぴね別府」を開業し、スタッフと密に連携しながら、入居している患者さんの診療にあたっています。

「まず在宅、次にグループホーム、難しくなったら特別養護老人ホームという流れになりますが、うまくマネジメントすれば、特養に行くまでの期間を長くとれます。実際、はぴね別府の開業から10年以上になりますが、当時からの入居者さんで今も要介護度が変わらない方が7人もおられます」(安部先生)。

 

症状だけを診ていてはいけない

今後の認知症診療における同院の課題として、安部先生は「カウンセリング」を挙げます。

「内容は主にBPSDへの対応法の提案で、看護師が数時間かけて相談に乗ることもあります。これが正解だという提案内容や相談の返答はありませんから、院内研修や勉強会でカウンセリング能力を高め、相談内容は全部レポートに残しています」(安部先生)。

看護師の林さんはBPSDの対応に加え、ご家族の精神的な負担軽減もカウンセリングの目的だと言います。

「ご家族の中には、患者さんとうまく接することができないため自己嫌悪に陥り、大きなストレスを抱えている方が少なくありません。身近に頼れる存在があればストレスは軽減されますから、私たちがその支えになること、他にも活用できる社会資本があることをご説明します」(林さん)。

安部先生は「患者さんの症状だけを診ていてはいけない」と力を込めて語ります。

「診療して長谷川式簡易評価スケールの点数が上がったとしても、患者さんとご家族が満足していなければ意味はありません。症状だけではなく、患者さんとご家族の生活全体に目を配ってカウンセリングを行うこと。それがかかりつけ医である私たちの役割なのです」(安部先生)。

 

 

取材日:2014年6月19日

安部第一医院の外観

安部第一医院

〒874-0905
大分県別府市上野口町3-40
TEL:0977-23-3345

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