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患者さんとご家族の思いに軸足を置いてチーム医療を実践
<栃木県那須烏山市 医療法人薫会 烏山台病院>

医療法人薫会 烏山台病院 院長 杉浦啓太先生 医療法人薫会 烏山台病院
院長 杉浦啓太先生

豊かな自然に恵まれた那須烏山市の医療法人薫会烏山台病院。半世紀にわたり地域の精神科医療に貢献してきた同院は、現在、認知症疾患医療センターが中心となったチーム医療体制を築き、高齢者が安心して暮らせる地域づくりに大きな役割を果たしています。

半世紀の歴史を土台とした認知症疾患医療センター

栃木県那須烏山市で1965年に開院した烏山台病院は、精神科をメインに心療内科、内科、循環器科を標榜し、精神科122床(一般24床、療養98床)の病棟を有する中規模病院です。同じ敷地内に介護老人保健施設富士山苑(定員100名、うち認知症専門棟50床)も併設しています。

開院以降、急性期から療養期まで一貫した精神神経医療で地域社会を支えてきた同院は、1999年に栃木県から“老人性痴呆疾患センター(当時)”の指定を受けて以来、県東部での認知症医療の中核的な役割を担ってきました。

特に、2009年にセンターの名称と制度が現在の“認知症疾患医療センター”へと改まったのを機に組織の充実を図り、地域の住民から厚い信頼を寄せられる存在となっています。

2011年から院長を務める杉浦啓太先生は「私が赴任した時には既に、認知症医療は素晴らしいバランスで機能していました。医師として治療に集中できる環境を与えてもらえているので、院長の役目として、スタッフが力を発揮できる体制を強化していきたいですね」と、病院スタッフの働きを誇らしげに語ります。

 

紹介なしで電話相談から始まるケースが増加

認知症医療に取り組み始めた当初は他院からの紹介がほとんどでしたが、徐々に紹介なしの初診患者さんが増えてきました。

2013年度は、初診で認知症外来に訪れた患者さん約240人のうち、かかりつけ医や他の医療機関からの紹介が約4分の1、ケアマネジャーや行政機関からの紹介が約4分の1。残りの約半数は紹介なしで直接、相談窓口に電話をしてきた方たちです。

「早期発見・早期治療の大切さが多くの方に知られるようになったことと、当院が認知症治療のセンターとして、地域の皆さんに信頼をいただいた結果の変化だと思います」(杉浦先生)。

同センターの相談窓口には週に10件以上の電話があるといいます。

電話には精神保健福祉士が対応し、簡単なアドバイスや介護サービスの紹介で済む場合もありますが、受診が必要と思われるご相談には予約をとってから診察前に症状や生活の現状、既往歴や服薬状況、家族構成など丁寧な情報収集を行います。

精神保健福祉士 静野智隆さん 精神保健福祉士 静野智隆さん

「漫然と話を聞くのではなく、医師の診断や福祉サービスの手配に必要な情報は何か、先を考えながら尋ねるようにしています」と語るのは、センター専従の精神保健福祉士である静野智隆さんです。

ストレスが溜まっているご家族からの電話の場合は、悩みや愚痴を吐き出して落ち着かれるまで遮らずに傾聴したり、電話では話したがらない方の場合は無理に深掘りせず初診時の面談で改めて尋ねるなど、相手の気持ちを尊重して対応、得られた情報は全スタッフで共有しています。

 

入院が必要な患者さんもおおむね3ヵ月で改善

初診患者さんは、精神保健福祉士が生活状況や介護サービス利用状況等についてお話を伺った後に、医師が診察を行います。2013年度の初診患者さんで重度が2割、中等度が3割、MCI(軽度認知障害)~軽度が3.5割でした。比較的軽い段階で受診される患者さんも多いことがわかります。

診察担当医の一人である杉浦先生は「患者さんだけでなく、ご家族の様子をしっかり見ることも大切です。経験的にみて、問診にうまく答えられない患者さんの様子に神経質になるご家族と、大らかに見守るご家族では、その後の経過が違うように思います。ご家族の苦労を労いつつ、患者さんを取り巻く環境が大事だということを伝えるようにしています」と語ります。

BPSD(周辺症状)が強く出ている患者さんは精神科一般病棟で入院治療となり、現在、24床のうち7~8割が認知症患者さんです。院内薬局とも協力しながら、これまで使っていた薬を整理しつつ、向精神薬を適切に使用することで1~2週間で落ち着きを取り戻せる方がほとんどです。

看護師長 中津原秀子さん 看護師長 中津原秀子さん

 

病棟の看護師長、中津原秀子さんは「症状が落ち着いてきたら、作業療法士に病棟へ来てもらって、手作業などのレクリエーションを始めています。ご家族には面会を積極的にお勧めしています。入院前の強いBPSDは病気の症状であって治療で抑えられると、実感していただくことが大切だからです」と語ります。

3ヵ月ほどで退院可能な状態まで改善することが多いので、症状が落ち着き始める入院2週間後ぐらいから、退院後の生活の場をどうするかを考えながら、多職種スタッフチームの取り組みが始まります。

院内薬局と認知症医療チームとの情報交流も円滑に

薬剤師 瀬尾葉子先生 薬剤師 瀬尾葉子先生

院内薬局もチーム医療で重要な役割を担っています。同院で30年近く勤める薬剤師の瀬尾葉子先生は「建て替え前の当院では診察室と調剤室が隣り合わせで、医師や看護師はもちろん、患者さんとの距離も近く、情報交流が活発でした。その雰囲気が今も続いていますね」と語ります。

精神科の薬は副作用を過剰に不安視されがちで、看護師や精神保健福祉士を介して相談や服薬管理ができていない状況が知らされることもあります。

「お薬を渡す時、言葉の使い方ひとつで患者さんやご家族を不安にしてしまうこともあります。正しい情報を伝えるだけでなく、言葉の選び方、説明の順序などを工夫しています」(瀬尾先生)。

 例えば貼付剤が処方された場合、同じ場所に続けて貼るのを避け、保湿剤を使ったり、はがしたあとは蒸しタオルで湿布したりするなど、皮膚症状を軽減するコツを丁寧に伝えます。

「『かぶれるかもしれないから』とだけ言うと、その貼付剤に対してマイナスイメージを抱いてしまいますが、『温かく柔らかいタオルの感触が患者さんの気持ちを安定させる』とお伝えすると、ご家族も前向きに捉えて実行してくださいます」(瀬尾先生)。

同センターが機能するようになってから、精神保健福祉士による予診の段階で既往歴や服用している薬の情報を把握でき、薬局でもより丁寧な説明や配慮が可能になりました。また、薬に関する知識を多職種のスタッフが積極的に学ぶようになっています。スタッフたちの知識と意欲を生かし、今後は、地域の調剤薬局や訪問看護、福祉事業所などと連携して、同院の手を離れた患者さんへのサポートに取り組んでいきたい考えです。

 

屋外でも病棟でも、患者さんに合った作業療法を

作業療法の様子 作業療法の様子

作業療法は病棟のベッドサイド、院内の多目的室、屋外の畑と別棟の作業療法室で展開されています。

多目的室ではグループで音楽療法や回想法を実施、畑では野菜を作り、別棟の作業療法室では工作や習字、オセロ、将棋、カラオケなど、患者さんの興味に沿った活動を行っています。収穫した野菜を使った料理でお食事会を開くこともあります。

コミュニケーション能力の維持・回復にはグループでの活動が必要ですが、今後力を入れていきたいのは、患者さん一人ひとりに寄り添う個別プログラムの実践です。特に、病棟のベッドサイドはできることが限られる環境ですが、重症の方にも取り組んでもらえるような工夫が必要になります。

一人ひとりの生活歴を知り、何が好きか何が嫌いかを探ることは、病室を出られるようになった後に適切なアクティビティーを選択し、退院後の生活に具体的なアドバイスをするうえで役に立つと考えての取り組みといえます。

作業療法士 笹沼祐一さん 作業療法士 笹沼祐一さん

「話しかけても反応が少なかった患者さんが、徐々に笑顔や言葉を取り戻す姿に触れ、やりがいを感じます。どんな活動が変化のキッカケになるか一人ひとりで違いますし、同じ患者さんでも変化していきます。その情報をしっかり把握し、他職種のスタッフと共有するように心がけています」と、作業療法士の笹沼祐一さんは語ります。

 

地域連携を進め、目指すは認知症医療モデル

「那須烏山市の高齢化率は平成25年10月現在で30%、高齢者のみの世帯や独居高齢者も多く、超高齢化が進む日本の10年後の縮図といえます」と杉浦先生は語ります。

認知症患者さんの割合は増える一方で、外来でも過半数を大きく超えています。精神科の専門病院が認知症治療の中心として地域に認識され、かつてあった精神科への偏見は期待と信頼に変わってきました。「精神科の医療者が、治療法が確立していない時代から統合失調症などに向き合ってきた経験をベースに、次々に登場する新薬を駆使して認知症医療に貢献できるのは嬉しいことです。しかし、患者数は今後も増加しますから、精神科だけではとても対応しきれません」(杉浦先生)。

静野さんも「症状が軽い段階で受診される患者さんが増えたのは早期発見の大切さを啓発した成果ですが、その結果、初診の予約が数ヵ月待ちという状況は、患者さんからみると理不尽です。なんとか早く受診できる方法を考えていきたいです」と悩みを語ります。

烏山台病院の皆さん 烏山台病院の皆さん

そこで重要になるのが、同センターの役割でもある地域連携です。これまでは、増え続ける相談と患者さんへの対応に追われていましたが、今後、医師会や一般市民向け講習会の開催や、行政や福祉事業者との連携を深める活動に力を入れたいというのが、チームメンバーの総意です。

「他地域よりも10年高齢化が進んでいる分、後に続く地域のモデルになるような認知症医療のあり方、地域連携の仕組みを提示したい。それが、優秀なスタッフに恵まれた当院の使命だと考えています」(杉浦先生)。

 

 

取材日:2015年2月20日

烏山台病院の外観 (1)

医療法人薫会 烏山台病院

〒321-0605
栃木県那須烏山市滝田1868-18
TEL:0287-82-2739

施設のホームページへ

 

烏山台病院の外観 (2)

 

 

 

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