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もの忘れ外来の開設から約10年、広がりつつある認知症への理解と地域連携
<宮崎県東諸県郡 医療法人慶明会 けいめい記念病院>

副院長 岡原一德先生 副院長 岡原一德先生

数々の古墳や史跡、そして九州でも有数の清流・本庄川で知られる東諸県郡国富町。その町中に立つけいめい記念病院は、10の診療科目を標榜する総合病院として地域の医療を支えています。患者さんの多くを地域の高齢者が占め、認知症で新たに受診する方は年間600~700人を数えます。

脳神経外科医から認知症専門医へ

けいめい記念病院副院長で脳神経外科を専門とする岡原一德先生が同院に赴任し、もの忘れ外来を立ち上げたのは約10年前、2007年のこと。「私はもともと脳神経外科医ですが、前任の病院で多くの認知症診療の経験を重ねました」と岡原先生は振り返ります。

「私は大学卒業後、地域の救急医療に携わったのち、1997年に鹿児島県の昭南病院に赴任しました。そこは介護老人保健施設などを併設しており、認知症の方がたくさんおられました。当時で高齢化率が35%を超えるような地域でしたから」。

「しかし地方に神経内科医は少ないし、認知症の初期の方は精神科にはなかなか来られません。そこで、脳外科の手術もしながら認知症の外来を診るようになり、私自身も並行して勉強を重ねて、やがて認知症を専門とするようになったのです」(岡原先生)。

家庭での小さなエピソードにも診療のヒントが

認知症の疑いのある方が、同院に来院するきっかけは、かかりつけ医からの紹介や介護関係者の勧めなどさまざま。中でも「親のもの忘れが目立つようになった」とご家族が心配して連れて来られることが一番多いそうです。

「マスコミで認知症が取り上げられる機会が増えたからでしょうか、認知症に対する一般の方の問題意識が高まり、早期に診断・治療を受けたいと思う方が増えてきたように感じます」(岡原先生)。

看護師 上野千鶴さん 看護師 上野千鶴さん

外来で既往歴の聞き取りやバイタルチェックを担当する看護師の上野千鶴さんは「最初のコミュニケーションが診療をスムーズに進めるポイント」だと経験に基づいて語ります。

「ご本人はもちろん、ご家族の表情も注意して見ています。患者さんの中には、興奮されている方、拒否姿勢を示す方もおられますが、しっかりお顔を見て血圧などを測っていきます。また、話すと泣き出されるご家族も少なくありませんが、お気持ちをしっかり受け止めながら、生活の状況などを聞くようにしています。ご家庭でのちょっとしたエピソードが、診療のヒントになることもありますから」(上野さん)。

まず、ご本人とご家族の表情を観察して診療を開始

臨床心理士 福谷靖博さん 臨床心理士 福谷靖博さん

認知機能検査を担当する臨床心理士の福谷靖博さんも「患者さんの目を見ながらゆっくり話しかけるよう心掛けている」と話します。

「検査に不安を持ち、質問に答えられないのは恥ずかしいと思う方が多く見受けられます。だから、まず安心して検査に臨めるような雰囲気をつくるよう配慮しています。ちょっとしたことで患者さんは不安になったり落ち着きがなくなったりします。すると検査結果も左右されてしまう。だから患者さんのペースに合わせて、こちらが待つような感じで検査を進めていきます」(福谷さん)。

岡原先生もまた「まず、ご本人の顔をしっかり見ることが大事」だと語ります。

「診察室に入ってもらうとき、私がお名前を呼んで、返事の仕方、歩いてくるスピード、顔つきなどを見ます。また、付き添いはどのようなご家族なのか。その表情はどうか。その確認から診療は始まるのです」(岡原先生)。

100人のうち95人まではCTで診断がつ

認知症で新たに受診する方は月平均50〜60人。年間で600~700人になります。宮崎県内には3ヵ所の認知症疾患医療センターがありますが、どこも予約制で2~3ヵ月待ちの状態。そんな状況の中で岡原先生は「当院の外来で一定の診断はつきます」と語ります。

「まず、ご本人のこれまでの生活歴と今の状況を問診などで把握します。初診の15分から20分で認知症か否か、ほぼ分かります。そしてCT。当院にはCTしかありませんが、MRIや脳血流などの検査が必要な方は少なく、100人のうち95人まではCTで診断をつけられます」。

そう語る岡原先生は「家族関係の状態を把握することが診察の大きなポイントです」と指摘します。

「ご本人とご家族の関係がうまくいっている場合は、どちらからもきちんと情報が聞き出せます。しかし、関係がぎくしゃくしていると、話が食い違ってしまうことが多いので、双方の話を聞きつつ、私たちの判断を加えながら情報を整理し直さないといけません。バイタルチェックや診察待ちのとき、 ご本人のすぐそばにご家族が座っているか、離れて座っているか。そうした“物理的な距離”も関係性の判断材料にしています」(岡原先生)。

電話相談を受けた時点から電子カルテに記録

認知症の方やご家族から聞き取った情報のほとんどは、電子カルテに記録します。作業を担当しているクラークの瀬戸口さんは、電話で相談を受けて受診が決まると、すぐにIDを作り、その相談内容から記録をつけていきます。

受診予約以外の電話相談を受けるのも瀬戸口さんの仕事。ご家族からの「どうすればいいのか?」という戸惑いながらの相談に対応することも少なくありません。瀬戸口さんは「お話が10分かかっても20分かかっても、とにかく聞くことが大事」だと実感を込めて語ります。

「ご本人を連れて来られるまでが、やはり大変なようですが、診察を受けると、ほとんどのご家族が一息つくようです。ご家族を責め立てる方もいらっしゃるようなので“穏やかに聞き流してください”と、お電話でできる限りのアドバイスをするようにしています。また、ご家族が一緒だと来院しづらいのか、ケアマネさんと来られる方もおられますね」(瀬戸口さん)。

ご家族からの小さな一言が励みに

上野さん、福谷さんも、認知症の方やご家族と交わす“言葉の大切さ”を日頃から痛感しています。

「『どうしましたか?』『大丈夫ですよ』文字にすれば小さな一言ですが、その一言が安心につながることがよくあります。逆に、ご家族が『岡原先生が丁寧に診察してくださり嬉しかった』と他のフロアの看護師に声を掛けたと聞いて、私が嬉しくなることもありますね」(上野さん)。

「症状をお聞きした後に、ご家族から『話を聞いてくださりありがとうございました』と丁寧に頭を下げられたことがあります。私自身としては『それほどたくさんの話を聞いてはいないのに』とも思いましたが、やはり嬉しかったですね。検査中、接する時間に限りはありますが、できるだけ丁寧なコミュニケーションをとるよう心掛けています」(福谷さん)。

処方が正しいか、ご家族からのフィードバックで確認

診断をつけて治療の方針を決めた上で、岡原先生は、ご本人とご家族の希望を考え合わせ、継続してけいめい記念病院で治療するか、地元のかかりつけ医に任せるかを判断します。

認知症だけでなく、心臓病や骨粗しょう症などほかの疾患を抱えている患者さんは、かかりつけ医に基礎疾患を治療してもらい、認知症だけは同院で継続して治療することもあれば、薬剤を指定して全てかかりつけ医に任せ、必要な時にその都度連絡してもらうこともあります。

岡原先生は「治療においては薬剤の見極めが非常に重要です」と持論を述べます。

「例えば、私の診察を受ける前に、眠れないからと睡眠薬を処方される方がいますが、睡眠薬はレビー小体型の認知症を悪化させることがあります。また、出ているのはアルツハイマー型の症状だけれども、実際にはアルツハイマーが6割で、脳血管性が2割、レビーが2割という混合型の方もいます。その場合、お薬をどう処方するかは、経験則に照らして吟味しなければなりません」。

「自分の処方が常に正しいとは限りません。大事なのは、いつもそばにいるご家族に、薬の効果を見届けてもらいフィードバックしてもらうこと。要はその繰り返しです。症状が悪い方向に向かったら、きちんとそれを踏まえて、より良い処方を考える。それをご家族の理解と協力を得て進めることが、認知症の治療には何よりも大切なのです」(岡原先生)。

医療・介護関係者の連携は知識の共有が課題

もの忘れ外来のスタッフの皆さん もの忘れ外来のスタッフの皆さん

岡原先生は2009年に国富町認知症勉強会 にじの会を立ち上げ、地域での連携や教育、啓発にもリーダー的な役割を果たしています。

同会の参加者の多くは、医師、薬剤師、看護師、認知症の方のご家族やご本人などで特に制限は設けておらず、費用は資料代の100円のみ。岡原先生もボランティアで講義などを行っています。

「認知症を勉強する場所、機会が地域に必要だと考えました。具体的な活動としては、まず誰かが症例を発表して質疑応答を行います。その内容を受けて私が30分くらいお話をして、正しい知識、新しい知識を知ってもらうようにしています。互いに知識を共有していないと、地域でのスムーズな連携ができませんから」。

現在ではいろいろな薬剤が出て、治療できる認知症も増えてきました。しかし残念ながら完治はせず、歳をとるにつれ悪くなることが多いのが現実です。「早期の発見、治療はもちろん大事ですが、何よりも重要なのは中長期的な視点に立って、ご本人とご家族の生活を支えることです。私が当院へ来て約10年、認知症への理解は徐々に広がりつつあると感じますが、認知症を“地域の問題”としてどう捉え、どう対応するのか、その仕組みをつくるのは、まだこれからです」(岡原先生)。

 

取材日:2016年10月14日

けいめい記念病院の外観

けいめい記念病院

〒880-1111
宮崎県東諸県郡国富町大字岩知野字六江762
TEL:0985-75-7007

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