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丁寧な治療と予防への取り組みで、認知症の方を笑顔に
<福岡県北九州市 社会医療法人 北九州病院 北九州総合病院>

脳神経外科副部長 呉島誠先生 脳神経外科副部長 呉島誠先生

かつては“鉄の街”として知られた北九州市は、2008年に温室効果ガスの大幅削減など低炭素社会の実現を目指す“環境モデル都市”に選定されました。北九州総合病院は、その中でもゼロ・カーボン先進街区に位置づけられた城野地区のシンボルとして2016年5月に新築移転されました。同院の脳神経外科にはもの忘れ外来が設置されており、同科は急性期の脳疾患への対応に注力する一方、認知症の早期発見と予防に対する真摯で丁寧な取り組みも行っており、院内外からの評価が高まっています。

経験ゼロから認知症専門医へ

北九州総合病院は、北九州市の事業の一環として院内にもの忘れ外来を開設しています。現在、もの忘れ外来を担当している脳神経外科副部長の呉島誠先生は、同外来を担当するようになるまで、認知症についてはほとんど知識を持っていなかったそうです。

「もともとの私の専門は、いわゆる“脳神経外科”です。今も、もの忘れ外来以外の日は、主に手術や急患対応に携わっています。その私が認知症に関わるようになったのは、最初にもの忘れ外来を担当していた先生が異動され、外来担当医が不在になったため、私が引き継ぐことになったからです」(呉島先生)。

最初は、認知症の診断をつけることが難しかったという呉島先生。しかし、認知症学会への入会や各種講習会への参加、経験豊富な認知症専門医からの指導を受けるなど、さまざまな勉強を重ねて知識と技術を高め、認知症専門医の認定を取得するに至りました。

現在、呉島先生は週1回のもの忘れ外来で、1日4名、月に20名前後の認知症の方々の診療に対応しています。受診するのはほとんどが地元の方ですが、市外から訪れる方も少なくありません。その背景には、北九州市には50施設近くの医療機関にもの忘れ外来が設置されている一方で、市外には同様の外来があまりないという事情があります。

詳細な検査により、認知症の前段階で拾い上げる

脳神経外科部長 野上健一郎先生 脳神経外科部長 野上健一郎先生
認知症看護認定看護師 木下仁美さん 認知症看護認定看護師 木下仁美さん

同院での認知症診療は、もの忘れ外来からスタートします。脳神経外科部長の野上健一郎先生は、「もの忘れを主訴に脳神経外科の外来を受診される方もいますが、その場合は必ずもの忘れ外来へ紹介し、まずは呉島先生に診ていただく形になっています」と説明します。

同院では、認知症の早期発見を何よりも大事にしており、その方針は、もの忘れ外来に携わるスタッフにも浸透しています。同外来に勤務する認知症看護認定看護師の木下仁美さんは、「ご本人やご家族の『ちょっとおかしいな』という気づきが、当院に電話をかけるという行動につながっています。予約受付の電話対応も大事なステップです」と話します。

電話の目的は外来予約であっても、木下さんたちスタッフが「何かお困りですか」と水を向けると、せきを切ったように話をされ、時には涙する方もいるといいます。

「予約の電話は、事実上、認知症の相談窓口になっています。この段階で専門家として適切に対応することは、ご本人やご家族のストレスや不安を和らげ、早期受診・早期治療につなげるために役に立っていると思います」(木下さん)。

早期発見を大切にする姿勢は、検査体制にも現れています。同院では、長谷川式簡易評価スケール、MMSE(認知機能検査)だけでなく、MoCA(軽度認知障害スクリーニング)、RBMT(リバーミード行動記憶検査)、FAB(前頭葉機能検査)などの精度の高いスクリーニング検査を実施しています。「この検査体制なら、MCI(軽度認知障害)の方でも異常を見逃すことはありません。長谷川式では正常と判定されてしまうレベルの方でも、早期から治療開始することができます」と呉島先生は説明します。

作業療法士 竹内宏幸さん 作業療法士 竹内宏幸さん

これらの詳細な検査を実施するのは、作業療法士の竹内宏幸さんです。

「当院では、もともと脳の高次機能は作業療法士が検査する体制でしたので、認知症が疑われる方の検査も私たち作業療法士が行うことになりました。どの検査を実施するかについては、呉島先生と打ち合わせて決定しました。現在は、長谷川式簡易評価スケール以外の検査はすべて作業療法士が実施しています」(竹内さん)。

基本的には、これらの検査に加えてMRIなどの画像検査を行い、さらに必要と判断した場合は、脳血流シンチグラフィー(SPECT)も実施するのが同院の診断の流れです。
「もの忘れを診る外来は市内に多数ありますが、院内で検査が完結する病院や、作業療法士が詳細な検査を実施する病院は多くはありません。当院の特徴といえると思います」と呉島先生は話します。

詳細な検査の結果、特発性正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など、認知症様症状をきたす疾患が原因でもの忘れが引き起こされていると判明した場合は、野上先生が対応を引き継ぎます。

「私は外科的に改善できる認知症を治療するという立場でチームに参加しています。治せない方も多い中、原因を改善することで良くなっていく方を見ることができるのはうれしいものです」と、野上先生は認知症治療へのやりがいを語ります。

認知症の予防講習で社会に貢献

早期発見と治療に力を入れている同院で、現在走り始めている新たな取り組みが“認知症予防講習”の実施です。認知症の発症や進行の予防にスポットを当てた講習で、適切な食事内容や薬、サプリメントなどのアドバイスから、運動療法の実施まで、一般の方を対象として知識と実践方法をわかりやすく伝えています。主なスタッフは呉島先生に加え、脳神経外科担当の作業療法士と理学療法士で、講習には両職種合わせて毎回3名ほどが参加し、運動療法のサポートなどにあたっています。

「初開催のときにはMCI、もしくは認知症の初期段階の方、計20名ほどにお声掛けして、ご家族と一緒に来ていただきました。今はようやく軌道に乗り始めたところで、開催頻度も増えてきました。今のところは院内パンフレットでのみ告知していますが、いずれは外部にもPRして、多くの方に来ていただきたいですね」(呉島先生)。

 認知症予防講習は無料開催なので、経営的には同院にプラスになるわけではありません。しかし作業療法士の立場で講習をサポートする竹内さんは、「予防講習は認知症の早期発見や進行防止の取り組みであり、社会貢献活動です」とその意義を強調します。

「すぐにではなくても、例えば地域の認知症の発症率が下がるといった形で、いずれ成果が出るのではないかと思っています。こうした活動に関わっていけることに、誇りとやりがいを感じています」(竹内さん)。

講習の発案者でもある呉島先生は、「運動療法を受ける参加者を見ていると、その方の認知機能がなんとなく分かるので、声を掛けて検査を受けてもらうなど、初期の段階から関わっていけるようになれば」と今後の展望を語ります。

認知症の治療は“楽しくて、面白い”

つい5年ほど前までは認知症医療に縁のなかった呉島先生ですが、現在では同院のもの忘れ外来をここまで盛り上げ、チームの中心としてスタッフを牽引し続けています。その理由について呉島先生は、「認知症は治療することで、ご本人や周囲の方々を笑顔にできます。だから面白く、楽しいのです」と語ります。

呉島先生が認知症診療に積極的になったのは、幻覚や歩行障害を伴うレビー小体型認知症の方への治療が奏効し、非常に元気になられたという経験があったからだといいます。「どうしても出たい」と希望されていたお孫さんの結婚式にも発症前のような姿で出席できたことから、ご家族にとても感謝されたそうです。

「そのとき、ご本人やご家族がどれだけ喜んでくださるかが大事なのだということ、また私自身が認知症の治療からも喜びが得られることに気づいたのです。今は、認知症の方はもちろん、他の病気で手術を担当した患者さんに対しても、その方の人生や喜びは何か、治療後はどうされるかなど、深く考えるようになりました」(呉島先生)。

呉島先生のこうした姿勢は、手術を担当する野上先生からも支持されています。

「私も最初は、認知症は治らない疾患だからとネガティブな考えを抱いていた面がありました。しかし今は、認知症治療の根幹はADL(日常生活動作)を保ち、少しでも生活を改善させることが大切なのだと考えるに至り、認知症そのものにも強く興味を持っています。手術以外でも、認知症の診断・治療に協力できるようになれば、当外来の未来がもっと開けるような気がしますね」(野上先生)。

早期発見と予防を社会貢献と捉える視点、治療そのものに喜びと楽しみを見いだすスタンス。同院のチームスタッフに共通しているモチベーションの高さは、呉島先生、野上先生の熱意に起因しているといえそうです。

 

 

取材日:2016年10月27日

北九州総合病院の外観

社会医療法人 北九州病院
北九州総合病院

〒802-8517
北九州市小倉北区東城野町1-1
TEL:093-921-0560

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