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精神科の専門性を生かし、認知症医療の新たな地域拠点に
<栃木県矢板市 医療法人社団緑会 佐藤病院>

院長 佐藤勇人先生 院長 佐藤勇人先生

栃木県北東部に位置する矢板市の緑豊かで閑静な場所に建つ佐藤病院は、開設から56年の歴史を持つ精神科病院です。高齢者医療にも早くから取り組んでおり、2001年には認知症専門の治療病棟を新設しました。さらに2017年12月には認知症疾患医療センターの新規指定を受け、県北部の認知症医療の要として大きな期待が寄せられています。

認知症疾患医療センターを開設し、新たな一歩を踏み出す

「緑」を基調にした開放感のある待合室「緑」を基調にした開放感のある待合室

精神科・内科・皮膚科を標榜する佐藤病院は、1962年の開設以来、半世紀以上にわたり栃木県北部エリアの精神科医療を支えてきました。2001年には認知症治療病棟をオープンするなど認知症医療にも力を注いでいます。2017年12月には県の指定を受け、新たに認知症疾患医療センターを開設。院長の佐藤勇人先生のもと、医師、看護師、作業療法士、精神福祉士など多職種のスタッフがチームとなって認知症医療に取り組んでいます。

「団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて、認知症医療に対するニーズが高まっていることから、医療者としてそのニーズに応えたいという思いで県の指定を受け、認知症疾患医療センターを開設しました」(佐藤先生)。

開設から2ヵ月半の間に、センターには92件の相談が寄せられ、そのうち42件が受診につながりました。精神科病院に開設されたことから、BPSD(周辺症状)が強くてご自宅や施設での生活が困難になった人の受診が多く、ご家族の中には肉体的にも精神的にも追い詰められた方もおられます。この現状を踏まえ、佐藤先生は「待たせないセンター」を目指して、最初の相談から1~2週間以内で受診できる体制づくりを進めています。

ご本人の症状とご家族の状況を踏まえて治療方針を決定

認知症の診断の際、佐藤先生はご本人、ご家族への問診のほか、血液検査や心電図検査、MMSE(認知機能検査)、CT検査などを実施します。うつ病など他の疾患との鑑別も慎重に行いますが、ほとんどの場合は受診当日に診断をつけ、ご家族と相談しながら治療方針を決めていきます。日常生活に支障がある人でも、ご家族が入院を希望しない場合は外来での治療となりますが、ご家族の様子次第では佐藤先生のほうから入院を勧めることもあるといいます。

「中には、介護疲れから無理心中を考えたと話すご家族もおられます。他の医療機関での治療や、ご自宅や施設での生活が難しい方を受け入れることも、当院の役割だと考えています」(佐藤先生)。

認知症の人の増加に伴い、地域には介護に苦労しているご家族や介護施設が増えています。佐藤先生は「症状が落ち着いた方がスムーズに退院できれば、その分、新たに入院を必要とする人を受け入れることができます」と話し、入院しても3ヵ月ほどで退院できるよう治療を進めています。

一人ひとりの状況に応じて、適切に次のステップにつなげる

認知症疾患医療センター 看護師 青木光代さん認知症疾患医療センター
看護師 青木光代さん

認知症疾患医療センターの窓口として、認知症に関するさまざまな相談に対応しているのは、センター専従看護師の青木光代さんです。相談を受けて外来の予約や病棟の空き状況の確認などの院内調整を行うほか、医師と相談のうえ、身体疾患の治療を優先したほうがよいと判断したときには他の医療機関に紹介するなど、一人ひとりの状況に即した適切なケアにつないでいます。

「ご本人もご家族も、話したいことをたくさん抱えておられるので、相談の際には時間制限は設けず、じっくりとお話をお聞きするようにしています。相談後には『話せてよかった』といって、受診や治療に前向きになっていただけることが多いので、できる限りお話はすべて聞くようにしています」(青木さん)。

相談はご本人やご家族、近隣の医療機関や介護施設のほか、行政からも寄せられます。市役所や地域包括支援センターの職員から「認知症が疑われる独居の高齢者がいるが、どうすればいいか」という問い合わせがあれば、職員からご本人の生活ぶりを聞き取り、必要があれば親族を探してもらうなど、受診につなげるための助言や依頼をしています。また、先に成年後見人をつけたほうがいいと判断したときには制度の案内をしたり、今は何とか一人で生活できていても、いずれは医療や介護サービスにつなぐ必要があると考え、細かく情報収集をしたりしています。

「独居の方はどうしても、重症になってから受診されることが多くなります。成年後見制度を利用しようとしても手続きには時間がかかるので、行政と連携して、通院や入院、施設への入所といった場面に備えておくことが大切だと思います」(青木さん)。

回想法を取り入れ、精神的安定や意欲の向上を図る

3ヵ月での退院を可能にするため、同院では薬剤をうまく使いながら非薬物療法も取り入れており、認知症治療病棟では、多職種のスタッフが連携しながら、それぞれの専門性を生かしたアプローチを行っています。

認知症治療病棟 作業療法士 神原律子さん認知症治療病棟
作業療法士 神原律子さん

認知症治療病棟専従の作業療法士、神原律子さんは、立位・歩行などの機能回復訓練のほか、手工芸やレクリエーションなどを通して「楽しむ」リハビリテ―ションも担当しています。身体リハビリでは、両足でペダルをこいで自由に動くことができる足こぎ車いすを使った下肢訓練を取り入れています。4年ほど前からは佐藤先生の提案で、回想法も取り入れました。

「女性ばかりのグループで、ひな祭りをテーマに思い出を話し合ったときは『どんな菱餅を作ったか』という話題で盛り上がりました。花笠踊りの話になったときには歌や踊りが始まったこともあり、女子会のような雰囲気ですね」と笑う神原さん。普段はうまくコミュニケーションがとれない認知症の方々が、一つの話題で盛り上がって楽しんでいる様子を見ることが、神原さんたちスタッフの喜びにもなっているそうです。

回想法は毎週1回実施しているため、「顔なじみの関係」が生まれることもあり、神原さんは「顔なじみの仲間と過ごすことが安心感につながって、症状が落ち着くこともあります。また、認知機能の低下が進んでいても、活気が出てくる方もおられます」と、回想法の効果を実感しています。

「最終的な目標は、ご自宅や施設など、元の生活の場に戻っていただくこと。身体機能訓練と、ご本人が楽しめるレクリエーションをうまく組み合わせて、病院から生活の場への橋渡しができればと思っています」(神原さん)。

適切なケアでBPSDを緩和し、早期退院に導く

認知症治療病棟 看護師長 藤田君子さん認知症治療病棟
看護師長 藤田君子さん

認知症治療病棟では、フランスで始まった認知症ケアの技法であり、“見る・話しかける・触れる・立つ”を基本としたユマニチュードの考え方を取り入れ、実践しています。病棟で看護師長を務める藤田君子さんは、「この技法を取り入れたことでご本人の状態が落ち着いて、早期退院に結び付いている印象があります」と話します。

「暴言や暴力行為のために入院された90代の男性に、視線をしっかり合わせる、体に触れる際には広い範囲で優しく触れるなど、ユマニチュードをベースにしたケアを行ったところ、少しずつ症状が落ち着いて早期退院につながりました。ご自宅に戻れてよかったという思いと同時に、看護師としてのやりがいを感じることができました」(藤田さん)。

その一方で、藤田さんは「ご高齢の方には合併症があることが多く、在院期間が延びてしまうこともあります」と、早期退院の難しさを指摘します。

「『早く退院できてよかった』という思いと、『長く病院で診てほしい』という両方の思いを持つご家族もいらっしゃると思います。入院したことでご本人とご家族との距離が広がってしまわないように、ご家族に定期的に面会に来てくださるよう声をかけ、早期退院につなげたいと考えています。また、退院後は看護師やケースワーカーがご自宅を訪問して生活をフォローしています」(藤田さん)。

介護従事者との“顔の見える関係”づくりにも注力

認知症治療病棟 精神保健福祉士 坂本知恵さん認知症治療病棟
精神保健福祉士 坂本知恵さん

認知症治療病棟専従の精神保健福祉士として、入院調整や退院支援を行う坂本知恵さんは、「介護でご苦労されたご家族の中には、入院が決まると『やっと入院できて安心しました』とおっしゃる方も多く、入院という病院機能の大切さを感じます」と話します。

一方で、病院は暮らしの場ではないことを踏まえ、退院後の生活に向けて、治療の経過や入院前との症状の違いを、医師や看護師、作業療法士などがこまめにご家族に伝え、安心して在宅復帰ができるように配慮しています。

在宅復帰が難しいときは、介護施設などを紹介しますが、坂本さんは「紹介するにあたって、施設の特徴を知っておくことが大事だと思います。この方にはこういう環境がよいと思い浮かべられるように、地域の施設に見学に行ったり、介護従事者の集まりに顔を出したりしています」と話し、顔の見える関係を築いて情報収集に役立てています。

行政も巻き込み、地域ぐるみで認知症に取り組む体制づくりを

認知症疾患医療センターの開設から3ヵ月が過ぎ、佐藤先生が今後の課題の一つとしているのは、運転免許証の返納の問題です。2017年3月の改正道路交通法施行により、免許更新時の認知機能検査で診断書が必要になって受診する人が増えたことから、佐藤先生は同じ矢板市にある国際医療福祉大学塩谷病院の脳神経外科と連携し、高齢者の運転免許対応のマニュアル化を進めています。

「免許の返納は非常にデリケートな問題です。当院だけでなく、大学病院でも検査を行い、その結果を踏まえて返納を勧めるかどうかを決めています。検査の結果に納得せず、返納を拒む方がいたときには、地域包括支援センターの職員に連絡を取ってご本人に直接話してもらうなど、行政を巻き込んで対応しています」(佐藤先生)。

<p>デイケアの活動の一環として利用者によるコーヒー販売を実施。デイケアを利用する認知症の人も、統合失調症や気分障害の人と一緒に参加している。</p>デイケアの活動の一環として利用者による
コーヒー販売を実施。デイケアを利用する
認知症の人も、統合失調症や気分障害の
人と一緒に参加している。

認知症の市民講座や介護従事者向けの講演会を主催するなど、啓発活動にも積極的に取り組み、地域の認知症診療で大きな役割を担ってきた佐藤病院。新たに認知症疾患医療センターとしての役割も加わった今、医療・介護・行政との連携を深め、地域ぐるみで認知症に取り組む体制づくりに、より一層まい進しています。

 

 

 

取材日:2018年2月27日

佐藤病院の外観

医療法人社団緑会 佐藤病院

〒329-2131
栃木県矢板市土屋18
TEL:0287-43-0758

施設のホームページへ

 

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