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病院をあげてよりよい認知症治療をめざす
<東京都江東区 順天堂東京江東高齢者医療センター>

メンタルクリニック科長 一宮洋介先生 メンタルクリニック科長 一宮洋介先生

順天堂大学は先端医療を切り開く使命を負った6つの特徴的な附属病院を運営しています。そのひとつ、順天堂東京江東高齢者医療センターでは、認知症のBPSD(認知症の行動・心理症状)や合併症の治療、地域との連携、家族のケアなどあらゆる側面で新しい取り組みを進めています。2012年には東京都から認知症疾患医療センターの指定を受け、地域連携などを推進するとともに、近年は、特に認知症の人のご家族や介護者のサポートに力を注いでいます。

129床の認知症病棟で身体合併症の治療も

順天堂東京江東高齢者医療センターは、東京都が設置し順天堂大学が運営する「公設民営」の病院です。同一敷地内に「民設民営」の介護老人保健施設(医療法人社団和風会)と特別養護老人ホーム(社会福祉法人三井記念病院)があり、3施設の連携によって「重度の認知症や一般医療などを必要とする高齢者のニーズに応える『高齢者福祉・医療の複合施設』」という東京都の構想を実現しているのです。

同センターには小児科と産科以外の診療科がすべて揃い、高齢者のあらゆる医療ニーズに応える体制が整っていますが、なんと言っても最大の特徴は404の病床のうち129床を精神科(認知症)病床にあてていることでしょう。

「開院当初はBPSD(認知症の行動・心理症状)治療を目的とした入院が多かったのですが、最近は、肺炎や骨折、低栄養状態など認知症の身体合併症の治療が増えています。できるだけADL(日常生活動作)を落とさないよう、治療と並行して生活機能回復訓練や回想法などにも取り組むのが認知症病棟の特徴です。身体合併症の治療は一般診療科の協力を得て行い、ベッド数は少ないですが透析も可能です。また、一般病棟の入院患者さんの中にも認知症を抱える方がいらっしゃるので、精神科医も普段から他診療科の病棟にサポートに行っています」とメンタルクリニック科長の一宮洋介先生は語ります。

 

細分化された医療を再統合する必要性

同センターの医師は、「当センターのメンタルクリニックは、ほぼ認知症に特化していて、老年性うつ病などの患者さんはごくわずかです。身体合併症の治療にも関わるので、着任当初は戸惑いを感じることもありました。しかし、認知症の進行を抑えるためにも、患者さんの心と体をトータルに診る必要があるのです。現代の医療は細分化され、体の病気を治療している間に認知症が進んでしまったというケースも少なくありません。患者さんの体と精神の両方を改善できた時は、本当に嬉しいです」と語ります。

病棟は一般と精神(認知症)に大きく二分されていますが、医局は一つ。全診療科の医師が机を並べて、日常的に情報交換を行っています。さらに医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど関係者全員が集まる病院全体のカンファレンスが週に1回のペースで開催されています。この病院では、すべての患者さんに対して、すべての医療スタッフが連携・協力してあたるのが当たり前となっているのです。

 

認知症の人からご本人重視のケアを学ぶ

超高齢社会の今、認知症は多くの人にとって身近なものとなり、だれもが認知症になる可能性があります。2019年、“認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望をもって日常生活を送ることができる”を目指すべき社会として、認知症の人や家族の視点を重視しながら“共生”と“予防”を両輪とした認知症施策推進大綱が厚生労働省から発表されました。さらに、一度きりしかない自分の人生をあきらめないで、希望を持ち自分らしく暮らし続けたいと、“認知症とともに生きる希望宣言”が日本認知症本人ワーキンググループからすべての人々へ向けて発信されました。

老人看護専門看護師/認知症看護認定看護師 佐藤典子さん 老人看護専門看護師/
認知症看護認定看護師
佐藤典子さん

認知症看護認定看護師である佐藤典子さんは、「認知症の人は社会の偏った見方や先入観から、当たり前に暮らしていく権利や生きる力が損なわれていく数多くの体験をしています」と語ります。その理由として、佐藤さんは、周囲の人が認知症の人を“わからない人”とひとくくりし、持っている力を過小に評価しているからではないかと考えています。

「認知症の方は私たちにしっかり伝えているのに、受け取る側の私たちが関わりを難しくしているのではないかと思います。認知症バリアフリー社会の実現がいわれている今こそ、認知症は誰もがなりうるという認識を持ち、ご本人重視の医療・ケアについて認知症の方々から学び、皆さんとともに考え発信していきたいと思います」(佐藤さん)。

 

ご本人とご家族の暮らし方の分岐点を支える

認知症身体合併症病棟 師長 河又恵子さん 認知症身体合併症病棟
師長 河又恵子さん

認知症の人は、自分が思い描いていた生活が送れなくなり困りごとを抱えています。認知症身体合併症病棟師長の河又恵子さんは、「誰もが老化とともに、少なからず判断力が低下し、もの忘れや、今までできていたことができない状況になりますが、認知症は進行性の病気で、一般の老化とは違います」と語ります。認知症による症状だと気づかずに、ご家族とご本人が努力を重ねて“今まで通りの生活”を目指した結果、認知症の行動心理症状である“物とられ妄想”“怒りっぽくなる”“出かけて戻れなくなる”“介護拒否”などが起こり、双方が辛い思いをすることがあります。ご家族は“愛する家族である”とわかっていても、“何とかしなければならない生活上の困難”としてご本人のことを考えざるを得ない場合もあります。

地域包括ケアシステムの構築により、地域の理解は深まり、支援体制も整ってきました。それでも、家族が生活を立て直すには、入院という機会が必要になるときがあります。認知症の人が入院したときに、河又さんをはじめとする看護スタッフは、ご本人の理解者となり、過ごしやすい環境を創造して看護をします。

「さらに、ご家族に対しても、ご家族が疾患について理解を深め、ご本人の症状を受け入れられるように、ご家族の心情に耳を傾け支援します。そして、多職種、地域と協力して、ご本人とご家族の双方が笑顔で生活できる退院後の生活を提案しています」(河又さん)。

 

認知症当事者(ご本人とご家族)とともに歩み、地域の医療・ケア・連携の未来にチャレンジ

ソーシャルワーカーの矢村圭介さん、同 飯塚美乃さん、同 西野早也香さん (写真左から)ソーシャルワーカーの
矢村圭介さん、同 飯塚美乃さん、
同 西野早也香さん

認知症疾患医療センター事業は2008年から開始され、同センターでは2012年に東京都の指定を受託し、二次保健医療圏域の東京都区東部(江東区・江戸川区・墨田区)を対象に、①認知症専門医療・相談の提供②地域連携の推進③人材育成を中心とした活動に取り組んでいます。

まず、認知症専門医療・相談の提供では、地域のかかりつけ医や地域包括支援センターなど関係者専用の相談窓口を設け、外来から入院までさまざまなニーズに応え、適時・適切な医療受診につなげられるよう精神科医師や看護師(認知症看護認定看護師、老人看護専門看護師)、臨床心理士、社会福祉士・精神保健福祉士などによるチーム医療に努めています。

同センターの精神保健福祉士である矢村圭介さんは、「病院と地域の垣根を越えた環境づくりも重視しています」と語り、家族介護者向けの認知症家族教室や家族会、認知症をもつ本人や家族・地域住民が相互交流を図り、専門職への相談もできる認知症カフェを開催しています。

次に、地域連携の推進では、医師会・行政・地域包括支援センター、各認知症疾患医療センターなどの委員から構成される“認知症疾患医療センター連携協議会”を適宜開催し、認知症に係る取り組みの情報共有・意見交換を積極的に実施しています。

「2018年4月に全国の区市町村で必置事業となった認知症初期集中支援チーム事業に関しても、区東部認知症初期集中支援チーム情報交換会・行政担当者会議を設け、各チームの活動が充実するよう連携を図っています」(矢村さん)。

 

若年性認知症への対応などさまざまな課題に取り組む

さらに、人材育成では、かかりつけ医や一般病棟に勤務する看護師、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの福祉・介護従事者を対象にした認知症研修を開催し、認知症をもつ本人が望む生活を続けられるように地域の対応力の向上を図っています。

2019年6月に国が示した認知症施策推進大綱を受け、各地で当事者主体のさまざまな取り組みが推進されています。特に、若年性認知症については、病気だと気がつかずに受診が遅れ、高齢者に比べ、ご本人が不安を感じてから診断がつくまで時間がかかるため、必要な対応が遅れがちになるという現状があります。また就労・経済的問題、育児に関わることなどの多様な支援が必要となります。

矢村さんは、「支援が必要な状態であるのに、診断後に適切な支援機関につながっていないことや、そもそも診断後に必要な地域資源の乏しさ、情報の少なさが以前から大きな課題となっており、支援者側も対応に困ってしまうという状況があります」と指摘します。

このような課題を地域の関係機関と連携を図りながら必要に応じた取り組みを実施していくことも、認知症疾患医療センターの重要な役割です。

「認知症をもつ本人やその家族、地域に住む一人ひとりが豊かな生活を送るために、認知症当事者や地域住民とともに考え、人としての尊厳や権利を守り、安全で安心する医療・ケアを提供できるように今後も努めて参ります」(矢村さん)。

 

家族のケアのため介護者の会を開催

一宮先生は、「認知症は、徐々に進行していく病気であり、根本的な治療法がなく、現状では症状とつきあっていかなければならないので、ご家族や介護者のサポートを十分行うことが課題となります」と語ります。

そこで、同センターでは、ご家族・介護者のストレスや不安の解消のため、集団でディスカッションなどを行うグループ療法を実施してきました。さらにご家族や介護者のサポートを充実させるため、2020年4月からは、このグループ療法を終了し、順天堂高齢者認知症介護者の会を定期的に開催しています。認知症の人の介護者が語り合い、認知症について学ぶ場です。このほか、認知症疾患医療センターでは認知症カフェを月に1回開催しています。

また、認知症疾患医療センターと協働して、年4回、認知症家族教室を開き、医師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士がそれぞれ1回ずつ講師を務めて、認知症の診断・治療や福祉サービスなどについて講義を行っています。

認知症の人やご家族、医療従事者などがタスキをつなぎ
日本縦断をするイベント「RUN伴(ランとも)」に
認知症疾患医療センターを中心としたスタッフが参加

認知症の人の入院治療やご家族へのサポートなど、認知症専門病院でもあまり行われていない取り組みを進めている順天堂東京江東高齢者医療センターのメンタルクリニック。今後も、新しい治療法や新薬の治験に協力するなど、認知症治療の高度化に貢献していきたいと一宮先生は語ります。

「たとえば、終末期になると、誤嚥性肺炎を防ぐために胃ろうを作りますが、欧米ではほとんど行われません。本当に誤嚥を防げているのか疑問もあります。重度の認知症における栄養補給のガイドラインはまだないのが現状なのです。高齢者を専門に診る病院として、従来の方法を見直すことも含め、体も精神もバランスよく治療する方法を開発して、発信していくのが私たちの使命だと思っています」(一宮先生)。

 

取材日:2011年8月9日
再取材日:2020年2月20日
順天堂東京江東高齢者医療センターの外観

順天堂東京江東高齢者医療センター


〒136-0075
東京都江東区新砂3丁目3番20号
TEL:03-5632-3111

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