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一般外来での認知症診療をスタッフとの連携で
<山口県防府市 ながみつクリニック>

院長 長光勉先生 院長 長光勉先生

2002年に山口県防府市で開業して、脳卒中の予防をめざす脳神経外科のクリニックが、地域で認知症の治療とケアに携わるすべての人を巻き込んで学びながら、独自の取り組みを進めています。

脳卒中の予防を目的に開業

「脳外科の勤務医をしているときには、世の中にこんなに認知症で困っている方が多いとは思いませんでした。」と語るながみつクリニックの院長。長光勉先生の専門は脳神経外科。大学病院などの総合病院で15年間、脳外科医として勤務し、脳卒中などで救急搬送されてきた患者さんを死の淵から救い出す仕事に大きなやり甲斐を感じていました。そもそも、そんな長光先生が開業を決意したのは、脳卒中の予防医療を充実させたいという想いからでした。検診で高血圧を指摘されていても、放置した結果、脳卒中になって搬送されたり、手術で助かった患者さんでもいつの間にか外来を受診されなくなり、そのうち数年後に再発して運び込まれるのを何度も目にし、きめ細やかなフォローができる脳神経外科の開業医が街には必要だと考えたのです。ところが開業してみると、物忘れを訴える患者さんが予想以上に多く来院されることに驚いたと。

 

迅速で正確な診断をするために必要なこと

診療放射線技師、臨床検査技師の皆さん 診療放射線技師、臨床検査技師の皆さん

「物忘れをご心配になられて受診される患者さんの診察において一番大切なことは、その物忘れが病的なものか、それとも加齢に伴う正常な老化現象であるかを区別して、病的なものであればそれがどんな疾患で起こっているかの正確な診断を、できるだけ早くつけることです」、と長光先生。

そのためには、患者さんの感じておられる困りごとを、本人からお伺いするだけでなく、ご家族の方から見た患者さんの変化についても細かく情報収集することが大切と考えているそうです。こうして得られた情報と、脳の詳しいMRI検査(ながみつクリニックでは、県内でも数ヵ所の基幹的総合病院にしかない高性能の3.0TのMRIを装備しているとのこと)と、色々な種類の心理検査や血液検査を組み合わせて診断をしているそうです。

 

受付事務の段階で患者さんの違和感・異変を感じとる

医療事務員の皆さん 医療事務員の皆さん

物忘れを主訴として来院される患者さんだけでなく、ほかの疾患で通院中の患者さんも経過中に認知症を発症されることもあります。その場合には受付段階で医療事務員が認知症に特徴的な症状をチェックして、医療スタッフに情報提供して疾患の早期発見に努めます。

 

看護師が患者さんと家族から情報を引き出す

同クリニックの「もの忘れ外来」は、特定の曜日や時間帯を設けず、一般の外来のなかで随時、受け付けています。気軽に受診しやすいため、毎日のように「もの忘れ」の患者さんが訪れられ、国内でも有数の物忘れ外来として知られ、県外からの受診患者さんも多数おられます。

通常、認知症患者さんの診察には1時間近くの時間がかかりますが、混み合った外来診療で、それほどの時間をかけることはできません。そこで活躍するのが7名の看護師です。初診の患者さんは診察の前に看護師がまず患者さんと家族の方からお話を伺います。

看護師の陣川博子さんは、「家族の説得で渋々来院され、物忘れを否定する患者さんの場合は、あまり追及せず軽い雰囲気で話をするようにしています」と、初診の際の配慮を語ります。

「加えて、『治る認知症』を見逃さないために物忘れが出現しはじめた頃の状況から詳しくお伺いします。認知症を起こす病気の中には命に関わるものがあるため、アルツハイマーなどと誤診すると危険ですから」と、看護師の芳野萌さん。

同じく看護師の林三枝子さんは、「問診の時には、ご本人のプライドを傷付けないように最大限配慮してゆっくりお話を伺います」と言います。

長光先生が患者さんを診察する時には、看護師たちが患者さんとご家族の方から聞き取ったデータが手元にあります。「『どこも悪くない』と言う患者さんであっても、看護師たちが雑談的な会話の中から引き出してくれたキーワードをもとに、患者さんと向き合うことで、認知症の診断に必要な諸検査がスムーズに行えるようになります」と長光先生は看護師との連携プレイの効果を語ります。

 

ご本人・ご家族のための「サポート外来」を設置

看護師の皆さん 看護師の皆さん

認知症と診断された後の治療では、ご本人・ご家族の方へのアドバイスも重要になりますが、ここでも看護師が大きな役割を果たしています。医師の診察とは別に、看護師がご本人・ご家族の悩みを聞き、アドバイスする「サポート外来」を設けているのです。

看護師の光井真由美さんは、「日々の生活のなかで患者さんがどのように思っておられるのか、具体的にどのような暮らしにくさを感じておられるのか、なにを必要としておられるのかなど、時間をかけてくみ上げるようにしています」。

同じく看護師の渡辺マリナさんは、「当事者の思いを中心に医療、介護、福祉が一丸となり地域で支え、困りごとを解決へ導くための橋渡しをクリニックの看護師が担っていく必要があると感じます」「決して1人ではないと伝えたい」。

「他人に『迷惑』をかけたくないので家族でなんとかしたいという思いが強く、抱え込み介護になって燃え尽きてしまいそうになられるご家族の方もおられます。上手に社会資源を利用することは、患者さんにとってもとても良い結果になることを話し合いの中でご理解いただけ解決に繋がることも多いです」(看護師、渡部祥子さん)。

「誰も好き好んで認知症になったわけではない。心と耳を傾けて患者さんとご家族の負担が少しでも軽減出来るように寄り添う気持ちをもってお話を伺います」(看護師、松下早希さん)。

 

地域の関係機関を巻き込んでご本人とご家族をサポートする

「独居や身寄りのない人や老老介護の方も増えている状況なので、スタッフには疾患としての認知症の勉強会だけでなく、地域ケア会議・事例検討会などにも積極的に参加してもらい、最新の社会資源の情報を仕入れてもらい、他職種専門家の視点を持てるように琢磨してもらっています。また、研修会に参加するだけでなく、国内で優れた診療をしている施設があれば、スタッフに見学にいってもらい、良いところを取り入れるように努力しています」と長光先生。

3ヵ月に1度、当院の患者さんに限らず、近隣エリアでサポートに困っている患者さんの対応策の構築のための事例検討会をながみつクリニックで開催しているそうです。院内スタッフだけでなく、院外のケアマネジャー、訪問看護師、通所サービススタッフ、社会福祉士、包括支援センター職員、弁護士、司法書士、銀行員など多職種・他業種の専門職が当院に集結して、専門職の視点で一人の患者さんのサポートについて時間をかけて検討して解決策をひねり出しているとのこと。多職種の視点は医師にとっても、看護師にとっても、とても参考になるとのこと。

2019年には同様の検討会を全国フォーラムとして、長光先生が大会長として山口市で企画開催され300名程度の多職種の参加があり、盛会であったようです。

 

現状の治療では対応できない患者さんに治験薬を提供できるように

治験コーディネーター 治験コーディネーター

「現在、保険診療で提供できる医療は、認知症の進行を遅らせるお薬しかありません。しかし、世界中の製薬メーカーが認知症を根本的に治すような薬を精力的に開発しています。このような薬は通常診療では使用できませんが、臨床治験にご参加いただくことで使用可能となります。このため当院では新薬の臨床治験を積極的に取り入れて患者さんに最先端の医療をご提供できるように努めています。」と治療の面でも、長光先生は努力しているようです。

 

安心して年を取れる街をつくりたい

長光先生とスタッフの皆さん 長光先生とスタッフの皆さん

長光先生の目標は防府市を「認知症になっても幸せに暮らせる街」にすることです。「デイケアの利用を勧めると、『老稚園には行かせたくない』と言うご家族がおられます。デイのプログラムは、そんな風に見えるのかもしれません。しかし、患者さんの生活史や趣味を丁寧に聞き出してプログラムに生かしている施設もあり、実際、書道や油絵、写真に打ち込んで、見事な作品を作っている患者さんもいらっしゃいます。そんな風に患者さんを幸せにできるケアスタッフを、私は『イケてるケアスタッフ』と呼んでいるのですが、イケてるスタッフがたくさん育って、『どこのサービスを利用しても大丈夫だよ』と言える街にしたいのです」(長光先生)。

一般外来のなかで「もの忘れ」の患者さんを診るには診察時間を始めとして様々な制約がありますが、看護師や地域の専門職種スタッフとの連携によって、気軽に受診し相談できる環境を築いている、ながみつクリニック。

「医療機関として病気を見逃さない、患者さんの症状の変化を掴むことはもちろんですが、ご家族が発するSOSのサインも見逃さないようにしたいですね。今は、看護師がサポート外来を担当する時間を捻出するのにも苦労していますが、みんなで勉強して、イケてるドクター、イケてるナース、イケてるスタッフの揃ったクリニックをめざしたいと思います」(長光先生)。

 

 

更新日:2020年8月20日
ながみつクリニックの外観

ながみつクリニック

〒747-0802
山口県防府市中央町9番41号


TEL:0835-20-1230
FAX:0835-23-2300

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