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行政との強力なタッグで地域のメンタルヘルスを支える
<青森県十和田市 十和田市立中央病院>

十和田市の中心部にある十和田市立中央病院のメンタルヘルス科は公立病院という利点をフルに生かして行政との密接な連携体制を築いています。認知症については「もの忘れ外来」での診察にとどまらず、訪問診療や市の数々の相談事業、講演などを通じ、病院を訪れない患者さんへのアウトリーチに努め、先生方と保健師さんが強力なタッグを組み、早期受診の推進へ日々まい進しています。

十和田市のメンタルヘルスの司令塔的存在として

奥入瀬渓流など豊かな自然に恵まれた十和田市の公立病院である十和田市立中央病院は、市役所の隣という至便な位置にあります。3人の先生が勤務するメンタルヘルス科は、急性期の患者さんに対応する市内唯一の精神科です。

「もの忘れ外来」は2009年に設置され、診療部長である竹内淳子先生が担当し、診察と結果説明で午後の週2回を充てていましたが、受診希望の患者さんが急増したため、現在は午前中の一般の外来で診察しています。

竹内先生は「もの忘れ相談」など市の相談事業にも出向き、病院を訪れない患者さんへのアウトリーチに熱心に取り組み、講演活動もしています。

じゅんちゃん一座 じゅんちゃん一座

市民ひとり一人が楽しみながら認知症に対する正しい知識を持っていただけるようにと、地域の介護事業に携わる方々の協力のもと、「じゅんちゃん一座」を旗揚げしました。

精神科医による認知症の講演を合わせ、寸劇を用いた笑いあり、涙ありの公演です。小学校や町内会等からの依頼をうけ、令和2年3月1日現在199講演を数えます。ひとりでも多くの方に認知症を理解していただき、誰もが穏やかな暮らしが送れる地域づくりを目指しています。

同科の谷地森康二先生も市の医療相談に協力していて、3人の先生方がフル稼働で病院の内外を問わず十和田市のメンタルヘルスを支えています。

 

きめ細かい対応で患者さんとご家族を援助する

診察については、「認知症の診断は症状が重要です。画像診断は補助診断にすぎません。ご本人とご家族から時間をかけて今の状態と変化を聞きます」と竹内先生は言います。

そこでBPSD(周辺症状)が深刻であったり、すぐに介護保険を利用したいなど緊急性を要する患者さんや、困っている認知症の患者さんのご家族を待たせないよう、密に介護とも連携して対応しています。

「また、診察を受けた患者さんには、認知症の兆候の有無にかかわらず、必ず1年後に、フォローアップの検査をしませんか、とお手紙を出しています。そこで認知症が進んでいるということがわかれば治療を始められます」(竹内先生)。

医師 谷地森康二先生 医師 谷地森康二先生

治療については、3人の先生それぞれが患者さんに情報をきちんと提供しながら、病気と向き合っている患者さんとご家族の意向を尊重する形を考えています。

「BPSD(周辺症状)についてもご家族の見守りが可能であれば薬は使いません。ご家族が疲弊している場合は使用を検討します。同時に見守り方の教育を重ねています。正常な人が暴れていると思うとご家族も混乱しますが、認知症という病気を理解できるようになれば、ご家族も少し冷静に見守りができるようになります」(谷地森先生)。

 

存続の危機を乗り越え、訪問診療など新たな取り組みに挑戦

メンタルヘルス科は一時期、外部の経営評価委員会で不採算と見なされ、存続の危機が取りざたされた時期もありました。谷地森先生が経緯を説明します。

「医師が1人だった時期の赤字であり、精神科の諸事情を誤解された面がありました。自殺率の高い地域でもあり、市民にメンタルヘルスの重要性を訴えたところ、もちろん急性期の治療病棟は必要だという理解の声が上がりました。最終的には市のトップにも理解してもらい問題は収束しました。現在は医師も3名になり、少しでも敷居が低くなるように名称も精神神経科からメンタルヘルス科と改めました。市民に必要性が浸透して来院も増え、危機は乗り越えられたと思います。さらに、院内での当科の必要性の理解も高まりました。相談事業、アウトリーチ、訪問診療は、メンタルヘルス科病棟スタッフ、事務をはじめとした病院全体の理解と協力なバックアップがあって、実現が可能になりました」(谷地森先生)。

現在では、十和田市のメンタルヘルスを支える、なくてはならない存在と市民に広く再認識されています。

また、竹内先生が高齢の認知症患者さんや緩和医療の対象の患者さんなど、来院が難しい患者さんの自宅を定期的に訪ねて診療する訪問診療をスタートさせました。

そして、一度病院で診察を受けた患者さんだけでなく、来院に抵抗感のある認知症をはじめとしたメンタルヘルスに問題を抱える患者さんへのアウトリーチにも、訪問診療を通じて力を入れていこうとしています。

 

市と病院が総力で早期受診へ取り組む地域連携の理想へ

地域と病院をつなげるのには、行政の力も必要です。市の保健師の方々と、先生方とあらゆる事業で協力体制を組み、認知症の早期受診につなげています。

市の高齢介護課では月1回の「もの忘れ相談」、市の保健センターでは月1回の「こころの相談」を実施しており、中央病院の先生方は各相談の相談日に直接患者さんやご家族と話をされています。そして、相談に来る方を医療機関の予約につなげています。

また、医師と保健師、及び精神保健福祉士が連携してアウトリーチ事業を行っています。

「実は2~3年前から心配をしていたのだけど、病院に行った方がよいかどうか迷っているうちに最後は困り切って受診する、といった場合が多いのです。もっと早く受診していたら、とたびたび思うので、早期受診のために頑張っています」(市保健センター担当保健師)。

こうしたアウトリーチに力を注ぐのには、十和田市の地域事情もあります。

「十和田市は高齢者の単身世帯が県内でも上位なんです」と谷地森先生。

市高齢介護課担当保健師も「ひとり暮らしで周囲が行動を心配していても、病識がなくて病院に行くことに抵抗がある方を地域のなかで孤立させず病院につなげるにはどうしたらよいか」という点に日々知恵を絞っていると言います。

 

地域での生活を支えられる環境づくりを

竹内先生は、安全、安心なまちづくりを目指す十和田市の「セーフコミュニティ」にも高齢世帯の安全確保の面で取り組んでいます。

「認知症のひとり暮らし、ふたり世帯での老老介護が多く、お薬の管理もままならず、生活の上でも危険があります。そういった世帯の見守りの問題を市と一緒に病院も動いて取り組んでいきたいと市のトップと話しています」(竹内先生)。

市高齢介護課担当保健師も「相談に来られて医療につながったあとも地域の受け皿は必要です。ひとり暮らしの方たちが集まれるサロンのような場所があればと思います。介護保険だとすぐデイサービス、デイケアとなりますが、少しだけ見守りをしてあげれば、まだまだ社会に参加して生活できる軽度の認知症の患者さんたちが多くいます。地域のつながりも希薄になってきているなか、そうした受け皿が今の制度では不足しています」と、認知症の患者さんが地域で頑張れるよう支えていくにはまだまだ不十分な現状を指摘します。

市保健センター担当保健師も「在宅で病院の受診を拒否されている方に直接関わっていただいている民生委員さんたちが大変苦労されている現状があります。地域で実際に支えている方々のフォローを今後大切にしなければいけないと思っています」と課題を語ります。

そうした行政の様々な取り組みに対し、日々フル回転で全面的にバックアップをし、ときには牽引もしている先生方ですが、谷地森先生は「長年付き合ってきた患者さんに対して、何か役に立てたと自分で感じられたときはうれしいですね」とやすらぎを覚える瞬間を語ります。

竹内先生も「患者さんが少しでも楽になったという印象になったり、力を発揮できるようになるなど、外来に来るたびに変化が見えるとうれしいです。そういうのがないとやっていけませんね」と笑います。

診察中患者さんを1回は笑わせたい、病院に来ると楽しいと思ってもらえるといいと両先生は笑顔で語りました。

 

 

取材日:2011年8月19日
更新日:2020年4月6日
十和田市立中央病院の外観

十和田市立中央病院


〒034-0093
青森県十和田市西十二番町14-8
TEL:0176-23-5121

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