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地域の一翼を担う認知症診療を目指して
<東京都品川区 NTT東日本関東病院>

神経内科部長 吉澤利弘先生 神経内科部長 吉澤利弘先生

品川区の中核病院のひとつとして住民からの信頼が厚いNTT東日本関東病院。地域の開業の先生方から多くの認知症が疑われる患者さんの紹介を受け、診断・治療方針の決定から介護保険や在宅療養への環境調整、さらには治療中の患者さんの継続的評価など、幅広い認知症診療を地域のネットワークを活用しながら実践しています。

品川区の認知症医療・介護体制の中での役割

NTT東日本関東病院は、その名のとおりNTT東日本が設立運営する企業立病院ですが、同社の社会貢献のひとつとして一般にも広く門戸を開いています。594床(一般病棟554床、精神病棟50床)という規模に加えて、日本を代表する情報通信企業が運営する病院として、IT技術を積極的に活用するなど先端技術を取り入れた医療に取り組むことを理念としており、地域にお住まいの方々にとって非常に頼れる総合病院として機能しています。

認知症診療に関しては、品川区医師会、荏原医師会、昭和大学病院とともに、品川地区の認知症ネットワークを立ち上げ、その中核病院として重要な役割を担っています。

「品川区では行政が先頭にたって認知症に対する様々な施策が進められています。2021年度から開始が予定されている認知症の住民検診もそのひとつですが、当院はその一翼を担うべく、地域医師会と協力して、施策の立案段階からスムーズな実施のための計画づくりに参画してきました。このような活動が実践可能となっている背景には、当院が地区医師会の先生方と共に10年近くにわたって認知症に対する勉強会を定期的に企画し、地域の認知症診療の向上に努めてきたことや、多職種の方々との定期的な認知症勉強会を通じて相互の密なコミュニケーションが可能となったことが大きく役立っているものと思います。このような多職種にわたる関係があるからこそ、当院は認知症の患者さんを地域のクリニックや介護の現場に安心してご紹介することが可能となっていると言っても過言ではありません」と、脳神経内科部長の吉澤利弘先生は語ります。

正しい認知症診断を可能とする検査手段の充実

「認知症の正しい診断のためには、本人にお話を伺うとともに、本人を介護されているご家族などからもお話を伺うことが大切です。その上で種々の認知機能の検査を行いますが、当院にはこれらの検査のエキスパートである言語聴覚士や臨床心理士もおり、医師の診療をサポートしてくれています。さらに、認知症の鑑別を行うための画像診断(脳CTやMRI、脳血流シンチグラフィー、DATスキャン、MIBGシンチグラフィーなど)も放射線科とタイアップしながら常時行っています」(吉澤先生)

認知機能の低下はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といったよく知られた病気で起こるだけではなく、様々な内科疾患や外科疾患でも見られることがあるとのこと。「NTT東日本関東病院は総合病院として多くの科とそれぞれの科に関わる最先端の検査機器を兼ね備えているので、複数の科が共同して認知機能の低下の原因を突き止め治療にあたる場合もあります。それが当院の強みの一つでもあります」と吉澤先生は語ります。

認知症患者さんを支える院内・院外の多職種ネットワーク

医療連携室のスタッフの皆さん 医療連携室のスタッフの皆さん

同院では地域の開業の先生からの紹介を受けて確定診断や初期治療を行ったあとは、その後の治療方針を含めて紹介元の先生に逆紹介を行い、治療の継続をお願いしています。近年は、独居や老々介護の認知症患者さんも増えているので、単に認知症の診断を行ったのみではその後の治療に結びつきません。認知症の在宅療養を支えるためには、介護保険の申請や介護を支える家族間の調整、利用できる社会資源の紹介など多くの要素があり、それらを強力にサポートしているのが院内の総合相談室とのこと。診断と治療方針が決まった患者さんの相談に対応しています。また、同院内の医療連携室は地域の開業の先生方との強力なパイプ役をつとめています。

総合相談室のスタッフの皆さん 総合相談室のスタッフの皆さん

総合相談室は地域の地域包括支援センター(在宅介護支援センター)や訪問看護ステーションなどとも強いネットワークを持っており、地域から報告される認知症患者さんの様々な問題にも対応しています。

認知症診療は地域を越えて

NTT東日本関東病院は品川区東五反田に立地する品川区の中核病院ですが、その患者さんは品川区在住の方のみではありません。脳神経内科を受診される認知症患者さんも、品川区に限ることなく、広く大田区、目黒区、世田谷区、港区、さらには近隣県からも来られています。「認知症診療は診断と投薬治療のみで完結するものではありません。家庭での生活環境の調整やデイサービス利用など、地域包括支援センター(在宅介護支援センター)との関わりが重要です。認知症への対応は地域によって特色があり、お住まいの地域で利用可能な施設や資源の情報はその地域の地域包括支援センターに集約されていると思いますので、なるべく早い段階でご相談された方がよいと思います。」と吉澤先生。

独自の「関東病院しあわせプログラム」

同院では、脳神経内科と精神神経科、リハビリテーション科、総合相談室で協力して作り上げた、独自の認知症早期のための「関東病院しあわせプログラム」を10年にわたり実践してきました。これは、比較的物忘れが軽い段階で、患者さんに回想法という手法と運動を組み合わせたプログラムを週1回、2ヵ月間行ってもらうものです。1回の定員は5名で、計8回、同じメンバーでプログラムに参加します。回想法とは、患者さん自身が昔使っていた道具などから自らのエピソードを思い出してグループの他のメンバーに語り、皆で会話をすることで、意欲や自尊心の改善を図るものです。このプログラムには、患者さんの介護をしておられるご家族にも参加してきただき、同様の手法を家庭でも実践していただくことで、自宅でのケアに生かすことが可能です。

これらのプログラムと並行して、心理面や認知機能の詳しい検査を専門の臨床心理士が担当して行うとともに、ご家族が抱える不安や心配について総合相談室のメンバーが相談にのる時間を設けています。

「現在(2021年1月)は、コロナ禍でプログラムを実施できない状況が続いていますが、このような状況が改善され次第、また再開したいと思います」(吉澤先生)

認知症診療のハブとなる病院を目指して

ひかりワンチームSPイメージ図 ひかりワンチームSPイメージ図

脳神経内科では、認知症の在宅医療・介護を支えるために多職種が連携するためのICTツールの開発に加わり、その成果は“ひかりワンチームSP”(https://hikari.oneteamsp.com/)となって2016年にNTTテクノクロス株式会社からリリースされました(開発にはNTT東日本関東病院のアドバイスの元、NTT東日本とNTTテクノクロス株式会社との共同開発)。これは在宅療養をされている認知症患者さんの状況や、医療・介護上の問題点をひかりワンチームSPを実装したiPadからクラウド上にあげて、その情報を患者さんに関わる医師・看護師・ケアマネジャー・介護担当者などが共有して、各職種が対応にあたるものです。NTT東日本関東病院内にいる専門医が、かかりつけ医を含む多職種からの相談に適宜応じることで、認知症に限らず、神経難病などかかりつけ医のみでは判断が難しい患者さんの在宅療養を支えることが可能となります。

「日本有数の情報通信会社であるNTT東日本が運営する病院だからこそ、その特色を生かした“ひかりワンチームSP”の開発が可能となり、当院をハブとした地域医療への支援ができるようになりました。今後もNTT東日本の社会貢献の証として社会のデジタル化促進への試みに協力したいと思います。一方で、認知症患者さんへの対応には、その気持ちに寄り添うアナログ的感覚も極めて重要です。その姿勢を忘れずに、多職種の皆さんとともにチームでの医療・介護を展開していきます」と吉澤先生は目標を語ります。

 

 

取材日:2021年1月25日
NTT東日本関東病院の外観

NTT東日本関東病院

〒141-8625
東京都品川区東五反田5-9-22
TEL:03-3448-6111(代表)

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