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認知症医療はもちろんのこと、MCIからの回復、進行予防にも注力
<北海道札幌市 医療法人重仁会 大谷地病院>

医療法人重仁会 理事長 大谷地病院 院長 田尾大樹先生 医療法人重仁会 理事長
大谷地病院 院長 田尾大樹先生

札幌市東部の厚別区にある大谷地病院は1971年の開院以来、精神科救急から在宅支援まで、包括的な精神科医療を提供してきました。認知症医療においても、認知症専門外来や認知症疾患サポートセンターを開設し、専門的な医療を提供するとともに、近年は地域住民の認知症予防やMCI(軽度認知障害)の進行抑制を目指したリハビリテーションにも力を入れています。

認知症治療病棟を有し、複数の介護施設も設置

大谷地病院は、精神科医療の専門病院として半世紀にわたって地域に貢献してきました。認知症専門外来で診断・治療を行うほか、「認知症疾患サポートセンター」を2016年に開設し、医療相談や鑑別診断、専門職を対象とした研修会などを行ってきました。認知症治療病棟を設けてBPSD(周辺症状)のある人を受け入れ、退院後の受け皿として同院を運営する医療法人が有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、グループホームなど複数の施設を設置してさまざまなニーズにも対応しています。

認知症治療病棟では、2名の認知症看護認定看護師が在籍し、専門性の高い看護を行うほか、多職種が連携してリハビリテーションを実施して、退院までの期間を短縮化しています。

理事長であり院長の田尾大樹先生は、「今後はさらに専門性を高め、入院している方に1日でも早く退院できる状態に回復していただくことを目指しています」と力強く語ります。

「退院となると、ご家族は不安に思うようですが、精神科救急をやっていますから『また具合が悪くなれば24時間対応しますし、入院することもできますよ』とご説明すると、安心していただけるようです」(田尾先生)

専門医が診察し、ご本人・ご家族の生活の改善を図る

洗練された待合スペース 洗練された待合スペース
認知症医療を支えるMRI 認知症医療を支えるMRI

2015年に開設した認知症専門外来は、田尾先生のほか2名の精神科医が担当、それぞれ認知症専門医、認知症診療医、認知症サポート医の資格を有し、専門的な診療を行っています。院内にはMRI装置を備えており、さらに詳しい検査が必要なときには連携している医療機関にSPECT検査を依頼し、診断をつけていきます。

ただし、田尾先生は、「認知症の鑑別診断は難しいと考えています」と言います。認知症にはアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、血管性認知症など、いくつもの種類があり、一つのタイプの認知症ではなく、複数のタイプを合併している人も少なくないためです。

「典型的なアルツハイマー型などではなく、混合型の場合、経過を診ていくことが必要になります。ですから、診断そのものより、私たちが関わることでご本人やご家族の生活がどう改善するかということに重きを置いています」(田尾先生)

治療方針は薬物療法だけで症状を改善するのではなく、ご本人の状態や環境によって柔軟に治療方針を決めていきます。高齢者はさまざまな疾患を抱え、他の診療科で多くの薬を処方されている人も多く、服薬管理ができなかったり、ポリファーマシーの懸念があったりする場合は、薬の恩恵を受けられないため、環境調整などほかの支援を考えていきます。介護をするご家族の負担を軽減するため、介護保険を申請してサービスを利用することも勧めています。

MCIからの回復を目指すリハビリテーションをスタート

作業療法士・認知症予防専門士 藤澤多喜子さん 作業療法士・認知症予防専門士
藤澤多喜子さん

MCIの段階であれば、何らかの介入をすることで、改善される場合もあると報告されています。しかし、要介護度が低い人は介護保険のサービスがあまり受けられず、十分なリハビリテーションができないのが実情です。そのため、同院では、認知症疾患サポートセンターの認知症予防事業として、2019年にMCIや初期の認知症の人を対象としたショート・ケア「軽度認知機能障害回復プログラム」を始めました。

軽度認知機能障害回復プログラムの運営を担当する作業療法士の藤澤多喜子さんは、日本認知症予防学会の認知症予防専門士の資格を持っています。藤澤さんは、以前から、地域に出向いて近隣住民を対象とした認知症予防教室を定期的に行っており、誰もが認知症になり得るものという前提で備えておくことや発症を遅らせる重要性を感じてきました。それが、軽度認知機能障害回復プログラムの開設につながったと言います。

精神科デイケア部長・作業療法士 前田健太郎さん 精神科デイケア部長・作業療法士
前田健太郎さん

軽度認知機能障害回復プログラムは、週1回開催し、運動療法と栄養改善、認知機能トレーニングを軸にしたプログラムを提供しています。精神科デイケア部長の前田健太郎さんは、「認知機能トレーニングでは、認知症予防にエビデンスが認められたプログラムを中心に取り入れました」と言います。

6ヵ月を1クールとして、6ヵ月おきにスクリーニングを行って効果を評価しています。藤澤さんは、「皆さん、認知機能が維持できていたり、人によっては認知機能が少しよくなったりしており、始めてよかったとやりがいを感じています」と笑顔になります。

前田さんは、「MCIや初期認知症の方はまだある程度ADL(日常生活動作)が自立していて、今は困っていなくても、先々を見据える必要があります」と言います。

「ご本人が先々どのように生活するのがいいかを考えると、訪問看護師、ケアマネジャーなど医療・介護・福祉が連携し、トータルサポートすることが重要になってきます」(前田さん)

栄養摂取の重要性を伝え認知症予防につなげる

管理栄養士 谷文乃さん 管理栄養士 谷文乃さん

低栄養状態は認知症のリスクを高めるため、軽度認知機能障害回復プログラムでは栄養改善に関するプログラムも取り入れています。栄養に関するプログラムを担当する管理栄養士の谷文乃さんは、栄養に関する講話を行うほか、「10食品群チェックシート」を使ってプログラム参加者に食事の記録をつけてもらい、日ごろ過不足なく栄養が摂れているかを確認しています。

谷さんは、「“日本人の食事摂取基準”では65歳以上の人では目標とするBMIを21.5~24.9としていますが、メタボリックシンドロームという概念が定着した結果、それより低いBMIであるにもかかわらず、体重が増えることを気にしている高齢者がたくさんいます」と指摘します。

栄養をしっかり摂ることはフレイル予防にもつながります。谷さんは、何をどれくらい食べたらいいのか、四季折々にどのような食材を選べばいいかなどを伝えています。調理は、切る、量る、炒める、盛り付けるなどさまざまな工程があり、脳をたくさん使うため、認知症予防の一つになると捉えて調理実習も行っています。

「参加者さんは半年に1回検査していますが、プログラムのスタート当初に比べ食事量が増え、体重や筋肉量が増えた87歳の参加者さんもいらっしゃいます。高齢でも効果があらわれるのだということがうれしかったですね」(谷さん)

2020年3月には、軽度認知機能障害回復プログラムより対象者を広げ、MCIや初期の認知症の人のほか、高齢期のうつの人を対象とするデイケア「高齢者地域生活支援プログラム」も始めました。このプログラムは運動と知的活動を軸とし、週1回、午前は“アヘアホ体操”という運動療法、午後は音楽療法や臨床美術療法、調理実習を行っています。

看護師 村田さち子さん 看護師 村田さち子さん

看護師の村田さち子さんは、精神科デイケアのほか、高齢者地域生活支援プログラムも担当しています。村田さんは看護師として、健康に関する相談にのったりアドバイスをするほか、参加者が和やかに笑顔で過ごせる雰囲気づくりを大切にしています。

村田さんは、「プログラムのスタート当初は皆さん緊張されて表情も硬かったですが、回を重ねるごとに話が盛り上がるようになり、笑顔が増えてきました」と言います。

「プログラム中にどんなことをやったのかを忘れてもいいと思います。『楽しかった』『おいしかった』と笑顔で終わることができればそれでいいのです。『ここに来るのが本当に楽しい』と言っていただけることもあり、励みになります」(村田さん)

さらに啓発活動を重ね、多くの認知症の人・ご家族の支援目指す

これまで同院では認知症医療に積極的に取り組んできましたが、田尾先生は地域の人たちに認知症のことを知ってもらうための啓発活動はまだ十分ではないと感じています。

「当院(精神科)で認知症治療を行っていることはまだ一般的に知られていないようです。当院の患者さんがご家族のもの忘れで困っているため、『当院でも認知症を診ますよ』とご説明すると、驚かれることもあるんです」(田尾先生)

少しでも多くの認知症の人・ご家族をサポートするために、地域住民を対象とした活動にさらに注力し、啓発していく予定です。

また、田尾先生は、適切な医療や介護につながっていない人へのアプローチも考えています。

「国の認知症初期集中支援事業がありますが、ひとつの事例に対応する時間が非常に長いと感じています。省ける手順は省いて、簡略化できることもあるのではないでしょうか。スピーディーな支援につながるような仕組みをつくっていきたいと思っています」(田尾先生)

地域での認知症予防から、専門的医療、退院後の在宅生活の支援まで行う同院。在宅医療の重要性が高まる将来を見据えて、法人全体でさらに充実した体制を目指していきます。

 

 

取材日:2020年12月18日
医療法人重仁会 大谷地病院の外観

医療法人重仁会 大谷地病院

〒004-0041
北海道札幌市厚別区大谷地東5-7-10
TEL:011-891-3737

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