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認知症の人の意見を尊重し、“本人目線”の治療を
<新潟県新潟市 社会医療法人 新潟臨港保健会 新潟臨港病院 >

脳神経外科部長 鷲山和雄先生脳神経外科部長 鷲山和雄先生

新潟市東区にある新潟臨港病院は、1951年の法人設立から60年以上の長きにわたり地域の医療に貢献してきました。10を超える診療科を標榜し、地域の総合病院的な役割を担っています。2017年4月には脳神経外科を新たに開設するとともに、認知症外来もスタートしました。同科の鷲山和雄先生により充実した診療やサポートの体制づくりが始まっています。

市民後見人育成に関わったことで“本人目線”の大切さを学ぶ

鷲山和雄先生は、2017年3月まで、新潟大学脳研究所で30年余にわたり、主に脳腫瘍の臨床と神経病理学的研究に携わりました。診断方法や治療法が十分に確立していないがために、治療したにもかかわらずさまざまな障害を残さざるを得なくなった患者さんやその家族に接する機会もありました。鷲山先生が、治療困難な変性疾患が多くを占める認知症医療に強い関心を抱くきっかけとなったのは、新潟市医師会の代表として、2013年に新潟市社会福祉協議会が運営を開始した法人後見運営審査会の一員となったことでした。

市民後見人の育成事業は、認知症患者の増加を背景として、国の主導のもと、全国の自治体で始まっています。法人後見運営審査会は、医師会以外にも弁護士会、司法書士会、社会福祉士会などからの代表と、市の高齢福祉課や障害福祉課の職員などで構成され、認知症、知的障害、精神疾患などのために、後見を必要とするに至った症例に関して、一例ごとに、市民後見人活用の後見事業の在り方を助言する機関です。

「神経疾患の臨床に詳しいという理由で、医師会から推薦されて委員になったのですが、実際に参加してみて、ほかの委員の方々が、認知症などの障害がある方に対して、ご本人の立場に立って考えておられる姿勢に衝撃を受けました。昔から医療従事者は患者さんのために良かれという医療者目線で考えがちですが、この審査会で本人の権利を重視する“本人目線”を学び、大きな影響を受けました」(鷲山先生)。

鷲山先生はこれを機に、認知症をはじめとする脳疾患の患者さんの診療に“本人目線”で取り組みたいと考えるようになり、新潟大学を定年退職することを機に、それまでの経験を活かすべく、新潟臨港病院で認知症外来を開設することとなりました。

さまざまな検査を行って慎重に診断し、経過観察も重視

認知症外来は週3回開設され、鷲山先生の時間をかけた(本人からの)問診や神経学的診察が行われるとともに、医療ソーシャルワーカー、言語聴覚士、看護師などの多職種が検査や生活調査に関わっています。受診のきっかけは、患者さんの家族が主治医に相談してのことが多いのですが、院内紹介、次いで、かかりつけ医からの紹介が多く、治療方針を決めたのちには、紹介元に情報提供し、総合的な治療を委ねるとともに、同科でも定期的に診察を行っています。毎週院内で症例検討会を開催し、毎月新潟大学脳研究所の専門家が参加する合同症例検討会も開催し、多様な立場の意見を取り入れることで、質の高い医療を目指しています。

同院では、適切な治療やケアを行ううえで大切なのは診断や病状把握の精度をできるだけ高めることだと考え、そのためにさまざまな検査を行っています。生活状況調査や神経心理検査のほか、MRI画像検査、SPECTでの脳血流検査、DATスキャンなどの画像検査、脳波検査、睡眠ポリグラフ検査、髄液バイオマーカー検査も活用します。鷲山先生は、「それでも認知症を確実に診断できるものではありません。正確な最終診断は解剖させていただいて初めて知ることができる疾患であり、複数の原因病理が合併していることが少なくないので、常にその可能性を考えておく必要があります」と強調します。

「アルツハイマー型認知症ではバイオマーカー検査が診断の確実度を高めます。陽性であれば診断できますが、レビー小体型や前頭側頭型には臨床の現場で使えるバイオマーカーが未だありません。バイオマーカーの評価はなお発展途上であり、新潟大学脳研究所との共同研究を通じて、医学研究にも貢献したいと考えています。一度診断をつけても、それ以外の可能性を念頭に、半年、1年と継続してしっかり診ていくことが重要です」(鷲山先生)。

鷲山先生は、最初の診断を慎重に行うとともに、場合によっては最初につけた診断名を後日変更せざるを得ないこともあることを常に意識し、経過観察を重視するという姿勢を貫いています。

地域連携の拠点として、顔の見える関係づくりを目指す

地域連携センター 広報担当 清治智樹さん地域連携センター 広報担当
清治智樹さん

同院には、地域の医療機関との連携に加え、医療福祉相談や退院支援、広報活動などを通じて地域とつながる役割を担う地域連携センターが設置されています。同センターには、新潟市東区内で在宅医療や介護に関わる多職種・多機関のネットワーク「山の下地域包括ケアネット(山の下ねっと)」の事務局も置かれています。山の下ねっとには、病院や診療所、訪問看護ステーション、薬局、介護事業所など、100以上もの機関が参画しています。

医療ソーシャルワーカーで、現在は地域連携センターで広報活動を担当する清治智樹さんは、「山の下ねっとでは、研修事業を中心に年に複数回の会合を開いて、いわゆる“顔の見える関係づくり”を目指して活動してきました」と話します。

研修や会合では在宅医療や介護に関するさまざまな課題を取り上げますが、認知症についても、地域連携の課題や周辺症状(BPSD)についての講演、グループディスカッションなどを行ってきました。

「活動の成果があらわれるのはこれからですが、多職種が一堂に会することで、医療と介護の間にあった垣根が確実に低くなりました。介護従事者は医師に対し、顔を合わせる機会のない遠い存在というイメージを抱いていたようで、会って話す場ができたことには大きな意味があると話しています」(清治さん)。

医療従事者にとっても介護の現場について知る貴重な機会となっており、同ネットワークが目指す、顔が見える関係が生み出す、より良い連携とサービスの実現に着実に近づいています。

症例検討会で多職種が議論し今後の方針を決定

地域連携センター 医療ソーシャルワーカー 小山世那さん地域連携センター 医療ソーシャルワーカー
小山世那さん

同院の認知症外来には、3人の医療ソーシャルワーカーが関わっており、小山世那さんもその一人です。医療ソーシャルワーカーは、認知症外来の初診から同席し、ご本人やご家族の様子、医師とご本人のやり取りを観察し、診察後にご家族からの日常生活に関する聞き取りを行います。

「ご本人やご家族が認知症とうまく付き合っていけるよう援助するのも私たちの大事な役割です。何か対応が必要であれば少しでも早く介入できるように初診から同席しています」(小山さん)。

検査結果などのご本人の情報は電子カルテに保管され、カルテ上でスタッフが共有できますが、さらに週1回の症例検討会を設けています。取り上げる症例は医療ソーシャルワーカーが決定し、医師、看護師、言語聴覚士など多職種が出席、小山さんが進行役を務めて、検査結果や今後の検査・治療・介護の方針などについて議論します。

小山さんは「早急に対応が必要な方や、方向性の確認が必要な方の症例を取り上げるようにしています」といい、多職種で意見を出し合うことで、より良い治療・ケアにつなげられると話します。また、この会は参加者が認知症についての学びを深める場ともなっています。症例検討会には月に一度、新潟大学脳研究所の先生方も加わっており、いずれは院外の医療・介護従事者にも間口を広げていく予定です。

コミュニケーションの妨げとなっている背景を探ってアドバイス

言語聴覚士 鈴木朋美さん言語聴覚士 鈴木朋美さん

言語聴覚士の鈴木朋美さんは、認知症外来を訪れた人の神経心理検査を担当しています。言語聴覚士が認知症外来に関わることのメリットについて鈴木さんは、「神経心理学的評価の専門職として、また、言語聴覚療法の専門職としての両面から認知症の方にアプローチできる」ことだといいます。

鈴木さんは言語聴覚療法の専門職として、常にコミュニケーション障害のある人々に関わっている経験から、言語障害が重くなりコミュニケーションが取りにくくなっている認知症の人に関しても、コミュニケーション手段を提案しており、「認知症だから何を言ってもわからない、といった言葉を耳にすることもありますが、決してそうではありません」と強調します。

「ただ聴力が低下しているだけ、長い文章になると理解しにくいだけなど、コミュニケーションの障害となっている背景は認知症の方それぞれ異なります。専門職としてそこを把握することで、ご家族に対してどうすれば円滑にコミュニケーションが取れるのかを具体的にご提案しています」(鈴木さん)。

神経心理検査の際は、緊張していることが多いご本人をリラックスさせるために雑談から始めるなどの配慮を行いながら、雑談の中からも言語機能を確認し、必要な検査を行っています。

医療同意のあり方も考えるとともに、ご本人の意思を尊重した医療を

認知症の進行に伴い、悪徳商法の被害に遭うなど、財産管理面のトラブルが起きる場合もあります。鷲山先生は将来的にどのような事態が予想され、どのような対策が必要かということも情報提供する必要があると考えており、「成年後見制度はそのためのものであり、家族が認知症を理解する格好のテーマでもあるので、さらに周知していかなければと思っています」と語ります。

「障害者権利条約では、障害者にも障害を持たない人と同様の権利が担保されなければならないと謳われています。障害者には認知症の人も含まれるという考え方が世界の潮流であることに留意すべきです。一般的には理解が進んでいませんが、医療行為に同意する“医療同意権”は本人にしかありません。複数の家族が別々の考え方を持つことが少なくありませんし、厳密には本人と家族は利益相反の立場にあることにも留意する必要があります。本人の認知症が進行し、自身に対して提供される医療についての判断ができなくなると、誰も同意ができなくなってしまう事態に陥るので、世界各国では、さまざまな対策をたてていますが、日本ではその議論は放置されたままです」(鷲山先生)。

その解決策として鷲山先生は「海外で行われているように、認知症が重症化する前にご本人の意思を聞き、記録に残しておく仕組みを考えています。病状の進行に合わせ、その都度、繰り返し記録しておけば、何時でもご家族や医療従事者がご本人の意思を尊重した医療を提供することができます」と話します。

地域連携を推進し、多職種で力を合わせながら、どこまでも“本人目線”の認知症医療を目指す鷲山先生の取り組みは始まったばかりです。

 

取材日:2017年11月15日
新潟臨港病院の外観

社会医療法人新潟臨港保健会
新潟臨港病院

〒950-8725
新潟県新潟市東区桃山町1丁目114番地3
TEL:025-274-5331

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