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専門的な診断・治療の提供にとどまらず、
地域の認知症診療ネットワーク構築にも力を注ぐ
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三重大学医学部附属病院 脳神経内科 科長・教授 冨本秀和先生 三重大学医学部附属病院
脳神経内科 科長・教授
冨本秀和先生

三重大学医学部附属病院は、県内で唯一の特定機能病院として先進医療・高度医療を行う、地域医療・教育・研究の拠点病院です。認知症に関しても、東海北陸地区初の基幹型認知症疾患医療センターとして、専門的な鑑別診断や、BPSD(周辺症状)の改善を目指した音楽療法など、さまざまな角度から認知症の診断・治療を行っています。同時に、県下の医療機関や介護・福祉施設、行政機関とのネットワーク構築にも力を注ぐなど、地域の認知症医療をけん引しています。

多職種連携の会を立ち上げ、ネットワークづくりに着手

2012年に県の委託を受け、院内に東海北陸地区初となる基幹型認知症疾患医療センターを設置した三重大学医学部附属病院。その翌年には認知症センターを開設し、地域の認知症医療の拠点として認知症の早期発見・治療に力を注いでいます。

同院脳神経内科の冨本秀和先生は2008年に同院に着任。脳神経内科の科長・教授として認知症の診療にあたるとともに、2009年には多職種連携の会を立ち上げるなど、地域の認知症診療ネットワーク構築にも積極的に取り組んできました。

冨本先生は「認知症の人やそのご家族は、医師なら何でも知っていると思っておられることも多いのですが、医療以外の介護や福祉のことは知らないこともあります。だから、多職種連携の会を持つことで自分も勉強したいという気持ちもありました」と語る一方、「このままでは急性期医療が成り立たなくなる」という危機感も会を立ち上げる強い動機になったといいます。

2008年は脳卒中地域連携パスを用いた診療が保険加算され、急性期を脱した患者さんが回復期病院を経て早期に自宅に帰れるよう、医療体制が整備され始めた時期です。その一方で、脳卒中を契機に認知症を発症した人は、急性期治療を終了しても受け入れ先の病院が見つからず、転院できないという事態も起きていました。

「急性期から回復期、維持期へとスムーズに移行できなければ、救急ベッドが確保できず、新たな患者さんを受け入れることができません。急性期病院の使命を果たすためにも、脳卒中だけでなく認知症の地域連携を確立し、患者さんを地域で支える体制を整える必要があると思いました」。

 

事例相談会を10年間毎月継続、多職種間で“顔の見える関係”を構築

2009年に多職種連携の会を立ち上げた当初は講師を招いて講演会を行っていましたが、冨本先生は「勉強にはなっても、座学だけでは地域の問題解決にはつながらない」と感じていたといいます。認知症を取り巻く状況を変えていくには、実際の事例に介入していく必要があるという思いから、冨本先生は多職種のスタッフに集まってもらい認知症の具体事例を検討することにしました。それが現在まで約10年続いている“津地域事例相談会”です。地域の医師会や基幹病院の認知症担当医師、保健師、包括支援センターや福祉施設の職員、調剤薬局の薬剤師、行政担当者など、認知症の医療や介護に携わるさまざまなスタッフが毎月顔を合わせ、グループに分かれて実際の困難事例について対策をディスカッションしています。

「制度上、医療の中心は医師ですが、困った状況を解決するには職種の垣根を越えて知恵やスキルを出し合うことが大切です」と話す冨本先生。当初は医師に対して敷居の高さを感じていた介護職側も、毎月直接顔を合わせることで“顔の見える関係”ができ上がり、多職種連携が密になっていったといいます。

 

専門的かつ高度な検査を実施し、慎重に鑑別診断

同院では脳神経内科でもの忘れ外来を週3回、予約制で行っています。受診する人の約半数は地域のかかりつけ医など院外からの紹介で、院内他科からの紹介と直接外来を受診する人が4分の1ずつを占めています。

診断にあたっては問診のほか、長谷川式簡易評価スケールやMMSE(ミニメンタルテスト)などの神経心理検査、血液検査に加え、CTやMRIなどの画像検査を、レビー小体型認知症が疑われるときはDATスキャン、MIBG心筋シンチグラフィーなどを行います。

「診察をして病歴をお聞きすれば認知症かどうか判断はできますが、いわゆる“治る認知症”を見落とさないためにも、血液検査や画像検査の結果を確認した上で診断しています」と冨本先生は話します。地域の認知症診療の中核を担う同院には、アルツハイマー型認知症に血管性認知症やレビー小体型認知症を合併した混合型など、診断や治療が難しい患者さんが紹介されてくることも多く、常に慎重に鑑別診断を行って治療方針を決定しています。

「認知症でもっとも多いのはアルツハイマー型ですが、80歳以上の方では嗜銀顆粒性認知症(AGD)や神経原線維変化型老年期認知症(SDNFT)など、比較的聞きなれないタイプの認知症も増えています。大学病院は研究機関でもありますからより専門的かつ高度な診断が使命だと考えており、必要に応じて詳細な検査を行っています」。

 

診断後もかかりつけ医と役割分担して経過を見守る

同院では直接外来を受診した人も含め、基本的には診断後はかかりつけ医に逆紹介します。専門医の診察を希望するご本人やご家族も少なくありませんが、冨本先生は「私は専門医が継続して診療するのは決していいことではないと考えています」と話し、その理由として、専門医の数が少なく増加する認知症の人に対応できないことのほか、ポリファーマシー(多剤服用)の問題を挙げます。

「高齢の方は、認知症以外にも病気を抱えている人がほとんどです。複数の診療科を受診して、たくさんの薬を処方されていることも多く、あまり数が多いと管理が難しく相互作用の心配もあります。一人の患者さんを複数人の医師が診るよりも、かかりつけ医がなるべくトータルに診療して薬剤を一元化することが望ましいと考えています」。

逆紹介した後はかかりつけ医に任せきりにするのでなく、年に2回程度はもの忘れ外来の受診を促します。「定期的に専門医の診察を受けることでご本人、ご家族の安心感につながりますし、症状の進行にいち早く気づいて対応することも可能です」という冨本先生は、「認知症の人とご家族を中心に、専門医とかかりつけ医、さらには両者をつなぐ認知症サポート医が連携し、それぞれの役割を果たしていくことが、これからの認知症医療では必須です」と力を込めて語ります。

 

音楽を活用した地域介入研究を実施

早期診断のメリットの一つに、早期介入による進行抑制があります。特にBPSDが悪化すると有効な薬剤が少なく、場合によっては非定型抗精神病薬を使用せざるを得なくなってしまうことから、冨本先生は「BPSDの兆候を早い段階で見出して対応することが大切です」と指摘します。

「今のところ認知症の進行を完全に止める方法はありませんが、経験的には薬物療法、非薬物療法をうまく組み合わせることで、予後は明らかによくなると考えています。早期診断・早期介入はBPSDの悪化防止など、広い意味での進行予防につながると考えます」。

非薬物療法にも力を入れている同院ではBPSDの発症抑制とコミュニケーション能力の改善を目的に、2012年から週1回、認知症の人を対象とした音楽療法を取り入れています。日本音楽療法学会認定の音楽療法士の指導のもと、往年の流行歌や季節の唱歌を歌ったり、リズムに合わせて手を叩いたり、楽器を演奏したりといったグループ・セッションを1時間行います。

また同院では2011年から1年間、認知症に対する音楽療法のエビデンス確立を目的にした共同研究“御浜・紀宝プロジェクト”を実施しました。研究では、三重県南部の御浜町・紀宝町に在住の健常高齢者を、①運動と音楽を組み合わせたエクササイズを行うグループ、②運動のみを行うグループ、③特別な活動を行わないグループの3つのグループに分け、認知機能を比較したところ、MMSEのスコアや視空間認知、精神運動速度(RCPM)など複数の項目で、①のグループの方が他の2グループよりも優れており、音楽療法が認知機能の維持・改善に有効であることが明らかになりました。

音楽療法の効果について冨本先生は、「認知症に対する科学的根拠はまだ確立はしておらず、支持的なもの」と位置づけていますが、「音楽療法を治療ではなくレクリエーションとして取り入れている介護・福祉施設も多いようですが、当院では非薬物療法として音楽療法を明確に位置づけています」と話し、今後も認知療法に対する音楽療法のエビデンスを蓄積していく考えです。

 

認知症の人を地域で支えるため、連携パスの運用を開始

数ある脳神経内科の病気の中でも、血管性認知症を専門に長年にわたって研究と臨床での診療を続けてきた冨本先生が医師になった頃は、「認知症は珍しい病気ではありませんでしたが、当時は抗認知症薬がなかったので、あまり積極的には診断されていなかったか、診断しても、言ってみれば“診断しただけ”というような時代だったかもしれませんね」と、当時を振り返ります。

1999年に国内で初めての抗認知症薬が発売されてから約20年が経過し、治療薬が増えたため、患者さんに合った薬物療法を選択できるようになりました。しかし、進行を本質的に抑制する薬剤は今も出ていないことから、冨本先生は根本治療薬の開発が今後の課題だと語ります。

根本治療薬の登場に期待する一方で、今できる対策を講じることも大切です。冨本先生は、散歩や老人会など外出の機会を増やして規則正しくアクティブな生活を送るようアドバイスし、介護保険を使える人にはデイサービスの利用を勧めています。高齢男性にはデイサービスの利用を嫌がる人も少なくありませんが、それは利用者の状態に合った、適切な施設を紹介できていないことに原因があると冨本先生は指摘します。

「一口にデイサービスといっても、いろいろな施設があります。もの忘れがあって仕事はできないものの日常生活は何とかやっているという程度の方が、中等度以上の人が通う施設に行っても楽しくないですよね。利用者が希望に沿ったサービスを受けられるよう、施設を紹介する際にはきめ細やかな配慮が必要だと思います」。

また、2014年には県の医師会や行政と協力して三重県認知症連携パス“脳の健康 みえる手帳”を作成しました。2015年から運用が始まり、初期診断からフォロー、療養・介護までの経過を記載でき、認知症の人とそのご家族、医療・福祉・介護・行政など関係者が連携するための情報共通ツールとして利用されています。

認知症の早期診断・治療はもちろん、医療と介護の垣根を取り払い、多職種連携にも力を入れてきた同院では、「認知症は避けては通れない問題です。ご本人とご家族が地域で安心して生活できるための仕組みづくりを、より積極的に進めていきたいですね」と語る冨本先生を中心に、これからも三重県の認知症医療の最前線に立ち、地域医療のさらなる底上げに貢献していきます。

 

 

取材日:2018年8月27日

三重大学医学部附属病院の外観

三重大学医学部附属病院

〒514-8507
三重県津市江戸橋2丁目174
TEL:059-232-1111

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