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“顔の見える関係”を生かした地域連携で、認知症の早期診断・早期治療に
力を注ぐ
< 福井県福井市 福井赤十字病院 >


副院長・神経内科 髙野誠一郎先生先生
副院長・神経内科 髙野誠一郎先生

“人道・博愛の精神のもと優れた医療を行うこと”を理念に、1925年に設立された福井赤十字病院は、93年の長きにわたって地域住民の命と健康を守り続けてきました。現在は24の診療科と600の病床を有する総合病院として地域医療の中核を担っています。2015年に認知症看護認定看護師によるもの忘れサポート外来を開設、2016年には認知症ケアチームを発足するなど、認知症医療にも積極的に取り組んでいます。

かかりつけ医との連携のもと、認知症専門医が診断・治療を

海と山に囲まれた福井市にある福井赤十字病院は、2018年に創立93年目を迎えた歴史ある病院です。地域の基幹病院として急性期医療を提供するとともに、2007年からは地域医療支援病院としてかかりつけ医との連携を強化し、地域の医療の中核を担ってきました。

認知症に関しては神経内科医で日本認知症学会専門医、認知症サポート医の髙野誠一郎先生を中心に、主に神経内科で診療を行っています。現在、神経内科外来には新規の認知症の方が月20~30人ほど訪れており、その多くは軽度の方だといいます。

「私が当院に入職した2004年以前から『地域連携交流会』を年3回開催するなど、病院として積極的に病診連携を進めてきました。かかりつけの先生方との“顔の見える関係”が出来上がっていますから、紹介・逆紹介がしやすい環境が整っており、それが認知症の早期診断・早期治療につながっているのではないかと思います」(髙野先生)。

初診まで3ヵ月ほどの予約待ちという病院も珍しくはありませんが、同院では1週間以内に予約が取れることがほとんどで、「早期受診が可能なことも当院の特徴のひとつですね」と髙野先生は話します。

認知機能だけでなく、生活機能も詳しく評価

診断に際しては、問診や血液検査、CT検査、MMSE(認知機能検査)のほか、診察前の待ち時間を活用して、買い物や食事の準備、服薬管理、金銭管理などを評価するIADL(手段的ADL)や、BPSD(周辺症状)を評価するNPI-Q、家族など介護者の介護負担を評価するJ-ZBI(Zarit介護負担尺度日本語版)なども行います。

認知機能検査の結果が高得点でも日常生活には支障が出ているなど、認知症かどうかの判断に迷う場合には、臨床心理士がADAS(アルツハイマー病評価尺度)などのより詳細な神経心理検査を実施して、早期診断・早期治療につなげています。

診断後は薬物治療を開始するとともに、介護サービスの利用を勧めるなど介護体制をつくって、ご家族の指導を行い、ある程度環境が整ったところでかかりつけ医に逆紹介します。しかし、BPSDが強くかかりつけ医で診るのは難しいと判断したときは引き続き髙野先生が診療し、神経内科での治療が困難な方は精神科に紹介するなど、地域の医療機関と連携しながら治療を行っています。

診察外の電話相談にも対応し、ご本人・ご家族をサポート

看護師 駒香代子さん看護師 駒香代子さん

看護師の駒香代子さんは、神経内科の外来で認知症の方の診療介助を行うほか、ご本人・ご家族からの相談にも対応しています。診察時には「特にご本人の表情に注目しています」という駒さん。髙野先生とご家族がご本人の症状について話し合っているときに、ご本人が納得していないような表情を見せたり、逆に無関心だったりしたときには診察後にご本人に声をかけ、気持ちに寄り添うよう心がけています。

また、ご家族には日頃から「困ったことがあればいつでも電話してください」と伝えており、診察外の電話相談にも対応しています。必要があればご家族の要望をケアマネジャーや訪問看護師に伝え、サービスの見直しを提案することもあるそうです。

「病院の外来は医療を提供するだけではなく、困っている方を医療や介護につなげるための窓口だと思っています。院内・院外を問わずさまざまな部署と連絡を取り、認知症の方とご家族が孤立することのないよう支援していきたいと思います」(駒さん)。

電話相談の内容はカルテに記載して、髙野先生や看護師、社会福祉士ら多職種で情報を共有しています。

認知症看護認定看護師によるもの忘れサポート外来で、きめ細やかなフォローを

認知症看護認定看護師 山本隆さん認知症看護認定看護師 山本隆さん

同院では、専門的な知識や技術を持つ認定看護師が患者さんとご家族の健康や生活面のサポートを行う“看護外来”を多数設置しています。認知症に関しても2015年から“もの忘れサポート外来”を週1回開設しており、認知症看護認定看護師の山本隆さんが一家族につき1~2時間ほどの時間をかけて、介護や生活面での指導やアドバイスを行っています。

もの忘れサポート外来では、認知症の方が発症しているBPSDでご家族が疲弊していることがあるため、ご本人とご家族で一緒に受診してもらい、「一度の面談で終了する場合もあれば、何度も面談を重ねるご家族もおられます」と話す山本さんは、「ご家族の対応の仕方で良くも悪くもなります。ご本人の人生に寄り添いながら、どう対処するのが良いのか一緒に考えていくことを大切にしています」と続けます。

「これまでの生き方や生活環境などを網羅しながらお話をお伺いしていきますので、どうしても時間がかかってしまいますが、ご本人やご家族の困りごと、心配事に一つずつ対処していくうちに、BPSDが改善することもあります」(山本さん)。

髙野先生も、「外来でもご家族への介護指導を行っていますが、十分な時間をとることは難しいのが実情です。じっくり時間をかけて指導する必要があると判断した場合は、もの忘れサポート外来の受診をお勧めしています」と、山本さんに大きな信頼を置いています。

認知症の人の世界観を尊重しながらリハビリを提供

作業療法士 仲辻良仁さん作業療法士 仲辻良仁さん

作業療法士の仲辻良仁さんは、脳血管障害や整形外科疾患、呼吸器疾患など、さまざまな疾患の患者さんに対して生活訓練などのリハビリを行い、日常生活に戻れるよう支援しています。仲辻さんは「ご高齢の方の場合、他の病気で入院されていても認知症を合併されていることが多く、入院による生活環境の変化から認知機能が低下したりせん妄が出たりすることもあります」と話し、高齢者には原疾患に対するリハビリテーションだけでなく、間違い探しや計算問題など、認知機能の改善を意識したプログラムも提供しています。

認知症の人にリハビリを行う際、仲辻さんは「こちらに来て靴を脱いで横になってください」と一度にたくさんの動作を指示するのではなく、「こちらに来てください」「靴を脱いでください」「横になってください」と動作を一つずつ伝える、口頭で指示するだけでは理解が難しいときは紙に書いて貼り出すといった工夫をして、ご本人のペースに合わせて接するよう心がけています。

また、仲辻さんは髙野先生ら医師からのオーダーを受け、耳が遠くて質問を聞き取れないなど、一般的な認知機能検査では評価が難しい方に対して、RCPM(Raven色彩マトリックス検査)、Kohs(Kohs立方体組み合わせテスト)、ROCFT(Ray複雑図形検査)といった動作性知能検査を行うほか、MCI(軽度認知機能障害)の方の自動車運転能力評価のため、遂行機能や注意機能を評価するTMT(トレイルメーキングテスト)を実施しています。

「特に自動車運転に関しては、検査の結果を踏まえて最終的な運転可否が判断されます。先生には単に検査の結果を共有するだけでなく、基準値は上回っているけれど病識に欠けているところがある、ご家族は運転に反対しているといった情報も併せてお伝えしています」(仲辻さん)。

「認知症の人の終末期をどう支えるか」が今後の課題

社会福祉士 横山友美さん社会福祉士 横山友美さん

社会福祉士の横山友美さんは、さまざまな病気で通院治療中の患者さんやご家族からの医療福祉相談を担当しています。認知症に関しては、「受診させたいけれど、本人が行きたがらない」というご家族からの相談が多いそうですが、中には神経内科に通院中の方を担当しているケアマネジャーから、「最近ご本人の様子が変わってきたので、先生に対応をお願いしたい」という連絡が入ることもあり、横山さんがそのような状況を聞き取って、髙野先生に伝えています。

同院の地域医療連携課では、地域連携に関わる多職種を招いた研修会を年1回開催しており、「院内外の多職種の方と顔を合わせる機会が多いので、地域のケアマネジャーさんや地域包括支援センターの方と気軽に連絡し合える関係が出来上がっていると思います」と話す横山さん。今後は、この“顔の見える関係”を生かして、認知症の疑いがあっても医療や介護につながっていない人を、地域の方たちと協力しながらキャッチしていきたいと考えています。

「独居高齢者の増加が進む中、身寄りのない方の金銭管理をどうするか、療養先をどう決めるかなど、医療や介護につなげたあとのことも考えていく必要があると思います」という横山さんの言葉に大きくうなずく髙野先生も、「寝たきりになって食べられなくなったら無条件に経管栄養や胃ろうといった処置を行うのではなく、認知症の方が元気なうちに、終末期をどう過ごしたいのかを確認しておくべきだと思います」と話します。

「当院のように認知症の初期段階から関わっている医療機関がご本人の意思を聞き取ってかかりつけ医に引き継ぎ、かかりつけ医から終末期のケアを担当する施設にご本人の希望を伝える体制づくりが、今後の課題だと思います」(髙野先生)。

病院全体で認知症ケアの質向上を目指す

同院では2016年に多職種で構成された認知症ケアチームの活動がスタートしました。髙野先生を筆頭に、認知症看護認定看護師の山本さん、作業療法士の仲辻さん、社会福祉士の横山さんもチームのメンバーとして病棟スタッフに認知症の人への対応についてアドバイスを行っています。

「認知症の治療は神経内科で行っていますが、他の病気で入院中の高齢者で認知症を合併している方も多くおられます。認知症の方の対応に慣れていない病棟の看護師もいますから、BPSDへの適切な対処法を指導するなど、病院全体の認知症ケア向上にも力を入れています」(髙野先生)。

また、同院ではがんや救急医療など、各分野で院内認定看護師を育成しており、今年度からは病棟スタッフを対象に認知症の院内認定をスタートさせました。研修を担当する山本さんは、「認知症の方は年々増えてきています。診療科に関わらず、多くのスタッフが認知症に対する知識を身につけることで、BPSDの発症予防につなげていきたいですね」と抱負を語ります。

髙野先生とスタッフの皆さん髙野先生とスタッフの皆さん

忙しい診療の合間を縫って、医療従事者に限らず、市民公開講座など地域住民への啓発活動にも積極的に取り組む髙野先生を中心に、同院ではこれまで築いてきた“顔の見える関係”を生かし、かかりつけ医との連携をより深めながら、これからも地域の認知症医療に貢献していきます。

 

取材日:2018年10月25日

福井赤十字病院の外観

福井赤十字病院

〒918-8501
福井県福井市月見2丁目4番1号
TEL:0776-36-3630

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