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認知症を病気と捉えず、残された能力を引き出す診療を実践
< 東京都足立区 ヒガノクリニック >


ヒガノクリニック 院長 日向野春總先生
ヒガノクリニック 院長 日向野春總先生

東京23区の北東部に位置し、水と緑にあふれた自然環境を持つ東京都足立区。この地に2008年に開業したヒガノクリニックは、内科・心療内科・精神科のクリニックとして地域に根差した医療を提供してきました。認知症に関しても医師・看護師・薬剤師など多職種によるチーム医療で認知症の人とご家族の生活をサポートするとともに、残されている能力を引き出す個別のケアに重点を置いた診療を実践しています。

精神科の枠を超え、内科・整形外科領域まで幅広く診療

JR線、東京メトロ千代田線の綾瀬駅から徒歩6分の場所にあるヒガノクリニックは、内科・心療内科・精神科を標榜するクリニックです。院長で精神科医の日向野春總先生は東京医科歯科大学で精神科・神経科文部教官を務めた後、1979年より1年余り、米国テネシー州ナッシュビルにあるヴァンダービルト大学精神科にWHO(世界保健機関)の研究者フェローとして遊学しました。帰国後は、足立区内の病院や診療所で副院長、院長を歴任。2008年に同クリニックを開業しました。以来、精神疾患を中心に生活習慣病など内科疾患にも幅広く対応し、患者さんの体と心の悩みに向き合っています。

精神科医として50年近いキャリアを持つ日向野先生は、「内科疾患が原因で精神的な問題が生じることもあります。脳だけでなく、全身を診ることができなければ精神科医は務まりません」と語り、循環器や内分泌などの内科領域や泌尿器科、整形外科など、幅広い領域で知識とスキルの習得を心がけてきました。特に高齢者はいくつもの病気を抱えており、薬の副作用も現れやすいため、精神疾患を正しく診るうえでも内科の知識は重要だと話します。

また、認知症が痴呆症と呼ばれ、薬もなかった時代から認知症の治療に携わってきた経験に基づいて、「認知症治療は、尊敬すべき高齢者をいかに大往生させるかというプロセス」とのポリシーを持っています。

「支離滅裂な話をしていても、記憶力や理解力が低下しても、趣味などの楽しみを見つけて穏やかに暮らしている認知症の方がいらっしゃいます。その姿を見るうちに、認知症を病気と捉えるのでなく、ご本人の残された能力を引き出して充実した人生を全うしていただくことが、認知症治療の本質ではないかと思うようになりました」。

運転免許証の更新を機に受診する人が増加

同クリニックにはうつ病などの精神疾患のほか、糖尿病など生活習慣病の患者さんも多く来院され、認知症の人の割合は1割程度だといいます。受診のきっかけは、一般内科など他の診療所からの紹介や、もの忘れの症状に気づいたご家族に連れられて来院される方などさまざまですが、最近増えているのが運転免許証更新時の認知機能検査の結果、診断書が必要となった方です。現在日本では、認知症だと診断された人には免許の取り消しか停止の措置が取られていますが、日向野先生は「認知症イコール運転不可としているのは、おそらく世界で日本だけではないでしょうか」と話します。

日向野先生によると、アメリカでは公立の教習所で、加齢とともに運転能力の低下した高齢者を対象とした安全運転教習が行われているそうです。運転できなくなった高齢者が自分らしい生活を続けられなくなる可能性もあることから、「日本でも同様の教習を実施し、その結果“運転は控えるべき”と判断されたときに免許証の自主返納を求めるなど、細やかな対策を検討してもよいかもしれません」と持論を述べます。

関連病院と連携し、画像検査などで慎重な鑑別診断を

同クリニックでは認知症の診断にあたって、問診のほか長谷川式簡易評価スケールやMMSE(認知機能検査)を行っています。「これから検査します」というと身構えてしまう人もいるため、会話の中にさりげなく検査の項目を紛れ込ませていくのが日向野先生のスタイルです。さらに、脳腫瘍やうつ病など他の疾患との鑑別が必要であれば、近隣の関連病院に依頼してCTやMRIなどの画像検査を実施します。

「他院で認知症だと診断されて当院を受診された方が、画像検査の結果、良性の脳腫瘍だとわかったこともあります。また当院の患者さんの約6割がうつ病の方ですが、アルツハイマー型認知症の初期症状としてうつ状態が見られることもあり、特に55歳以上の方は、うつ病と認知症との鑑別を慎重に行っています」。

また、小児の疾患と思われがちなてんかんは、実は高齢者にも多い病気です。日向野先生は「高齢者のてんかんはけいれんを伴わず、しばらくの間、動作が止まってその間の記憶が欠如していることからもの忘れと間違われやすいです」と話します。ただし、アルツハイマー型認知症にてんかんを合併していることもあり、高齢者を診察する医師はてんかんについても意識しておく必要があると注意を促します。

認知症医療で大切なのは、ご本人に残された能力を引き出すこと

同クリニックでは診断後の告知は十分に配慮して行います。特に軽度の方は理解力があるため、自分が認知症だと知らされてショックを受けることも少なくありません。過去に、大学病院で認知症だと告知され、絶望感から自殺未遂を起こした方が同クリニックに紹介されてきたこともあるそうです。そのため、認知症だとはっきりしている方にもあえて「本物の認知症になる、一歩手前の段階」だと伝え、「本当の認知症になってしまう前に、お薬を飲んだり、運動を行ったりして今の状態を維持しましょう」と前向きな言葉をかけるようにしています。

認知症の方の作品認知症の方の作品

診察では、散歩などの適度な運動や栄養バランスの取れた食生活など、生活習慣の改善を指導するとともに、ご本人の来歴や生活背景など時間をかけて聞き取り、その方が興味を持てる活動や、夢中になれる趣味を見つけられるよう声をかけます。診察室に飾られている水彩画や貼り絵、プラモデルなどの作品は、認知症の人が製作したものです。

日向野先生が壁にかけてある絵を指さして、「あなたもこういう絵を描いて持ってきてよ」、「折り紙できる? 一緒に鶴を折ろうよ」などと声をかけても、最初は嫌がる方がほとんどだといいます。しかし、「先生にいわれたから」と渋々やり始めた方も、日向野先生やご家族から「すごいね」「うまく描けているじゃない」と褒められるうちに夢中になっていきます。いつも不機嫌で黙り込んでいた認知症の方が、ある日突然、色鮮やかな水彩画を描いてきたことがあり、その絵を見たご家族が“まだこんな能力が残されていたんだ”と感激されたこともあったそうです。

仕事一筋で趣味のない方には町内会の役員を引き受けるように勧めたり、区の担当者に声をかけ、足立区庁舎のロビーで認知症の人が描いた絵画の展覧会を開いたり、一人ひとりの個性や症状を考慮して、張り合いや生きがいを見つけられるよう工夫しています。

「認知症になったからといって、何もできなくなるわけではありません。ご本人がその人らしく、いきいきと過ごす姿を見ることは、ご家族の介護に対するモチベーション向上にもつながります。夜寝てくれない、徘徊するといったご家族を困らせる行動には対処が必要ですが、ご本人に残された能力を見出して引き出すことが、認知症医療に携わる医師の大事な役割だと思います」。

多職種の医療従事者や行政と連携し、認知症の人を支える

同クリニックでは通院が困難な方には訪問診療を行っており、看護師や薬剤師など多職種で連携しながら認知症の人とご家族をサポートしています。「認知症医療は医師の力だけでは成り立ちません」という日向野先生は、中でも薬剤師の役割が重要だと考えて、地域の薬剤師と月1回勉強会を開いています。

「レビー小体型認知症の方は薬への反応が強く出る傾向にあるため、少量からはじめて徐々に投与量を上げていくなど、時間をかけて薬の内容を検討する必要があります。薬剤師さんの力を借りなければコントロールは難しいですね」。

また、足立区内の地域包括支援センターで年4回開催される“もの忘れ相談”の相談医として、もの忘れや認知症について不安を持つご高齢の方やその家族、介護保険事業者などからの相談に対応し、認知症が疑われるときには医療機関の受診を勧めています。

高齢者が残された能力を最大限に発揮できる場をつくりたい

日向野先生は地域の課題として、高齢者が気軽に集える場所がないことを挙げます。特に心配なのは高齢の男性で、勤めていた会社を定年退職して地域に戻ったときに居場所がなく、家にこもりがちになると認知症の症状も出やすいといいます。デイサービスを勧めても、軽度の認知症の人は行きたがらないことが多く、「皆で一緒に歌ったりゲームをしたり、その後は食事をしてお風呂に入ってという画一的なサービスでは、面白さを感じられないのではないでしょうか」と話します。

とはいえ、一つの施設で多彩なレクリエーションを用意するのは難しいのが実情です。日向野先生は「例えば運動するならこちら、絵を描くならあちらという具合に、複数の施設を自由に利用できるようなシステムがあるといいかもしれませんね」と意見を述べ、今後の展望を語ります。

「趣味やレクリエーションだけでなく、温水プールでの水中ウォーキングなど運動療法を実施できる施設も不足しています。行政だけに任せるのでなく、医療や介護、民間企業などが立場を超えて協力し、認知症の方が残された能力を最大限に発揮できる場を、この地域につくれたらいいですね」。

 

取材日: 2018年12月5日

ヒガノクリニックの外観

ヒガノクリニック

〒120-0005
東京都足立区綾瀬3-21-15
キャッスルアヤセ1階
TEL:03-5682-7100

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