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認知症初期集中支援チームも稼働、
初期支援からBPSDまで幅広く対応する精神科病院
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医療法人山容会 理事長<br />
山容病院 院長 小林和人先生
医療法人山容会 理事長
山容病院 院長 小林和人先生

日本海沿いの自然豊かな庄内平野に位置する山形県酒田市。この地に1955年に設立された山容病院は、60年以上にわたって精神科医療を提供しています。2015年には新病院をオープンし、高齢化が進む地域のニーズに即して小規模多機能病院への転換を図ってきました。2017年度からは市の委託を受け、認知症初期集中支援事業を開始。院長の小林和人先生を中心に、看護師、精神保健福祉士、作業療法士など多職種のスタッフが一丸となり、認知症の早期発見・早期治療にも力を注いでいます。

認知症医療へのニーズに対応するため、新病院をオープン

山形県北西部に位置する庄内地域。鶴岡・酒田を核とした2市3町で構成されるこのエリアで、山容病院はうつ病や統合失調症、アルコール依存症など精神疾患全般を幅広く診療しています。現在、院長を務める小林和人先生は2008年に同院に入職。「地域の高齢化の進展とともに認知症も増え、精神科病院である当院にはBPSD(周辺症状)が強い方の入院依頼が多く寄せられていました」と、当時を振り返ります。

「精神科の入院病棟は基本的にADL(日常生活動作)が自立している患者さんの受け入れを前提としているため、当院の設備も当時はバリアフリー化されていませんでした。また、認知症の診断に必要なCTがない、身体合併症がある方に対応できない、理学療法士が不在で身体リハビリができないなど、認知症の方を受け入れるには課題が山積みでした」(小林先生)。

そのような状況の中、小林先生は自身が院長に就任した2011年から病院の改革に着手。2015年には旧病院から徒歩5分の場所に新病院をオープンし、老朽化した建物の建て替えとともに、それまでの300床超の病床を220床に縮小。急性期、社会復帰、身体合併症、認知症の4つの病棟を備えた病院として新たなスタートを切りました。病棟機能の再編により、例えばBPSDが強いときにはまず急性期病棟に入院してもらい、安全に鎮静したあとで認知症治療病棟に移ってもらう、認知症治療病棟入院中に肺炎など他の病気を併発したときには身体合併症病棟で治療を受けてもらうなど、病状に応じて転院することなく必要な医療を受けられるようになりました。

「さまざまな機能を持つ病院が林立する都市部であれば、“認知症を診ない精神科病院”という診療方針も許されるでしょうが、地方ではそうはいきません。1ヵ所で多様な医療ニーズに対応できるワンストップ型の病院でなければ、地域に貢献することはできないと考えています」(小林先生)。

軽いもの忘れからBPSDの対応まで幅広く診療

庄内地域では、厚生労働省が推進する地域医療連携推進法人制度を活用した“日本海ヘルスケアネット”が2018年に発足しました。日本海ヘルスケアネットは、庄内二次医療圏の医療・介護関係者が連携し、医療・介護・福祉サービスを切れ目なく提供できる体制づくりを目指すもので、山容病院も参加しています。このシステムの中で、高度急性期と救急医療を担う日本海総合病院の後方支援病院として同院は位置付けられており、身体疾患の要素が強い患者さんは内科・外科・整形外科を有する総合病院が、精神症状がメインの人は山容病院が受け入れるという役割分担ができつつあります。

認知症の人もこの流れに沿って、認知症疾患医療センターの指定を受けている日本海総合病院から紹介されてくることが多いのですが、近年は「もの忘れが気になるから診てほしい」と、早期診断を求めて同院を直接受診する人も増えており、軽症から重症まで幅広く診療しています。

診断にあたっては、問診、長谷川式簡易評価スケールなどの神経心理検査、血液検査、頭部CT検査を実施します。検査の結果、慢性硬膜下血腫や甲状腺機能低下症などを除外して、さらに認知症のタイプを鑑別して治療を開始します。小林先生は診察時、ご本人の症状だけでなくご家族の様子にも目を配り、生活支援が必要だと判断した場合は介護サービスの利用を勧めています。

「当院は精神科の病院として、介護うつの患者さんも大勢診察してきました。その経験を生かして、ご家族が悩んでいるようなら声をかけ、必要であれば受診を促して、うつの治療を開始することもあります。ご本人、ご家族のどちらかではなく、両方がハッピーになれるようサポートしていくことが大切だと思っています」(小林先生)。

カンフォータブル・ケアを実践し、ご本人の笑顔を引き出す

身体合併症病棟 看護師長 本間紀さん身体合併症病棟 看護師長 本間紀さん

看護師の本間紀さんは新病院オープンから2年半の間、認知症治療病棟で看護師長を務め、2018年度からは身体合併症病棟に勤務しています。現在、身体合併症病棟に入院している約60人の患者さんのうち、約3分の1が認知症を合併している人です。本間さんは「身体合併症病棟には認知症ケアに不慣れなスタッフもいます。認知症治療病棟での経験を生かして、認知症の方との適切な接し方、ケアの行い方などを浸透させていきたいと思っています」と、意気込みを語ります。

本間さんは認知症治療病棟に勤務していた頃から、認知症の人が心地良いと感じる快刺激を提供しBPSDを改善するケア技術“カンフォータブル・ケア”を実践してきました。カンフォータブルは英語で「心地よいこと、快刺激」と訳され、常に笑顔で対応する、常に敬語を使う、相手をほめるなど、10項目の基本技術から構成されています。本間さんは「どの項目もごく当たり前のことなのですが、初めてこのケアを知ったときは目からうろこが落ちる思いでした。これまできちんと実践できていただろうかと、自分自身が行ってきたケアを改めて振り返るきっかけになりました」と語ります。

「認知症の方は、相手の顔の表情を読み取る能力が優れているといわれています。実際に私たちが笑顔で接していると、最初は怒った顔をしていた方にもだんだん笑顔が見られるようになり、カンフォータブル・ケアの効果を実感しています」(本間さん)。

できなくなったことより、今できることを大切に

認知症治療病棟 作業療法士 神野瞳さん認知症治療病棟 作業療法士 神野瞳さん

作業療法士の神野瞳さんは、認知症治療病棟開設当初から認知症の人への生活機能回復訓練や、精神科作業療法を担当。運動レクリエーションやカラオケに加え、塗り絵や編み物といった手工芸などさまざまなメニューを用意し、認知症の程度やご本人の個性に合った活動プログラムを提供しています。

認知症の人の中には、以前できていたことができなくなってショックを受ける人もいますが、神野さんは「できなくなってしまった」という、つらい気持ちを受け止めつつ、今できることを見つけて「一緒にやってみましょう」と励ましているといいます。

「例えば編み物なら、複雑な模様の編み方は忘れてしまってもシンプルな長編みならできることもあります。長編みだけでマフラーを編み上げた方は、出来上がった作品を誉められてとても喜ばれていましたし、ご本人の自信にもつながったようでした」(神野さん)。

さらに神野さんは「認知症の方は笑顔がとても素敵なので、その笑顔に私の方が癒やされています」と続けます。入院当初は環境の変化に戸惑い、自宅に帰りたがったり病室に引きこもったりしていた人が、作業療法を通して少しずつ明るさを取り戻し、活動を楽しめるようになるなど、日々変わっていく様子を目にすると、「認知症の方とかかわってよかったな」とやりがいを感じるそうです。

ご本人、ご家族の双方が納得できる退院支援

認知症治療病棟 精神保健福祉士<br />菅原知子さん認知症治療病棟 精神保健福祉士
菅原知子さん

精神保健福祉士の菅原知子さんは、認知症治療病棟の専従スタッフとして主に退院支援を担当しています。「ご本人はご自宅に戻りたいと思っていても、介護でつらい経験をされたご家族は、『帰ってきてもらっては困る』とおっしゃることもあります。その折り合いをどうつけるのか、いつも四苦八苦しています」と、退院支援の難しさを語る菅原さん。ご本人とご家族の希望に隔たりがあるときは、主治医をはじめ、病棟看護師や作業療法士など院内スタッフのほか、地域包括支援センターの職員の力も借りながら着地点を探っていくといいます。

「退院後、ご自宅に戻られるにしても施設に入所されるにしても、ご本人が納得しないまま送り出してしまうと、病院に逆戻りすることになりかねません。面談では聞き役に徹し、ご本人の思いを全てぶつけていただけるよう心がけています」(菅原さん)。

最初は「施設には絶対に行きたくない」と言っていた人も、菅原さんにご自分の思いを聞いてもらううちに、気持ちが変わっていくこともあるそうです。菅原さんは、「医師や看護師はやるべき仕事が多く、認知症の方とゆっくりお話しする時間を確保するのが難しいと思います。そこを私たちがうまくカバーして、認知症の人とご家族の支えになれればうれしいですね」と、精神保健福祉士としてのやりがいを語ります。

支援が必要な人を医療につなげる、認知症初期集中支援チーム

山容病院では市の業務委託を受け、2017年度から認知症初期集中支援事業をスタートしました。認知症サポート医である小林先生と、本間さん、神野さん、菅原さんを含めた7人の多職種がチームを組み、地域包括支援センターからの支援依頼に対応、認知症が疑われる人のご自宅を訪問しています。初年度は10人、2年目となる2018年は5人(10月11日現在)が対象となり、その多くが医療や介護サービスにつながりました。

本間さんと菅原さんが担当したある女性は、「私は大丈夫ですから、帰ってください」と受診を拒否していましたが、訪問するたびに家の中の環境やご本人の身なりの乱れが目立つようになり、体もかなり痩せてきていました。何とか早く医療につなげなければと、他のチーム員や行政の職員と受診を促す方法を探っていたところ、たまたま親戚の方が訪ねてきたことで同院への受診が実現。重度の認知症と診断され、認知症治療病棟に入院することになりました。本間さんと菅原さんは、「大事に至る前に医療につなげることができて、本当によかったです」と、胸をなで下ろしています。

小林先生も、「始まったばかりの事業ですが、地域の方から感謝の声も届いていますし、スタッフも病院の外に出ていくことで非常によい経験をしていると思います」と手ごたえを感じています。その一方で、「初期集中支援チームがサポートした方が、一人暮らしばかりかというとそうでもなく、かかりつけ医がいないわけでもありません」と、認知症の早期発見、早期受診の難しさを指摘します。

「レビー小体型認知症の方は、幻覚や歩行障害を伴うため医療につながりやすいのですが、アルツハイマー型認知症は年相応の老化と間違われることもあります。長年かかっているかかりつけ医が認知症に気づかないことも意外と多く、結果的に私たち初期集中支援チームがファーストタッチしているのかもしれません」(小林先生)。

また、何度も支援を依頼してくる地域包括支援センターがある一方で、「どんな人を紹介すればいいかわからないから」と利用に消極的なところもあり、小林先生は「事例を共有するなど地域全体で経験を積むことで、事業の底上げにつなげていければ」と、今後の課題を指摘します。

BPSDのある人も暮らせる地域づくりに貢献したい

地域の認知症医療の中で担う役割が大きくなり、より一層の活躍が期待されている山容病院。小林先生は、「精神科医療を担う病院として、今後はBPSDのある方も地域で暮らしていけるようサポートしていきたいですね」と抱負を語ります。その一環として、専門的な精神科医療が必要で、かつ認知症のある人を支援できる施設の開設のほか、在宅医療や訪問看護の充実なども視野に入れており、小林先生は「BPSDがある方を支えるには、支える側に高いスキルが必要です。当院の専門性を、病棟という閉じた空間の中だけでなく広く地域でも発揮して、地域の認知症医療にもっと貢献していきたいと思っています」と意欲を見せています。

小林先生とスタッフの皆さん小林先生とスタッフの皆さん

「かつて日本中の精神科病院で、統合失調症などの精神疾患で入院していた人が、病状が改善したにもかかわらず行く先が見つからないために退院できない、という事態が起こっていました。認知症で同じことを繰り返さないために、私たちができることを考え、実行していきたいと思います」(小林先生)。

 

取材日:2018年10月11日

医療法人山容会 山容病院の外観

医療法人山容会 山容病院

〒998-0074
山形県酒田市浜松町1-7
TEL:0234(33)3355

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