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広域の認知症医療を担い、ご家族の支援にも力を注ぐ
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心療内科・精神科 診療部長 野口剛志先生
心療内科・精神科 診療部長 野口剛志先生

名寄市立総合病院は、道北三次医療圏の地方センター病院として、幅広い地域をカバーし、高度かつ専門性の高い医療を提供しています。周辺の市町村に精神科のある病院が少ないこともあり、認知症の診断や治療だけでなく、介護・福祉と連携した支援まで、多くの役割を担ってきました。訪問看護を行って在宅の認知症の人の生活を支え、認知症ケアチームが入院している認知症の人に多職種で関わるなど、さまざまな取り組みを行っています。

医療資源が少ない地域で、精神科としての役割を果たす

北海道の北部に位置する名寄市は、壮大な自然を観光資源とする人口約2万7千人の街です。名寄市立総合病院は、80年以上にわたって地域の健康を支えてきました。

心療内科・精神科の診療部長である野口剛志先生は、「名寄市を中心とした、面積で言えば東京都の約3倍にもあたる非常に広い地域のなかで、精神科がある病院は当院だけです」と語り、同院には認知症の診断、治療を求めて、遠方の市町村からも多くの人が受診します。物忘れを気にして受診する人がいる一方で、幻覚や妄想、徘徊などのBPSD(周辺症状)があらわれたことでかかりつけ医から紹介されて同院を受診する人も少なくありません。

野口先生は、初診日にはご本人とご家族からしっかり話を聞き、自ら長谷川式簡易評価スケールなどの神経心理検査を行います。

「私が自分で検査を行うことで、単に結果の点数を見るのではなく、回答時の話し方や話す意欲など、点数にあらわれないご本人の特徴を診断や治療に活かせると思っています」(野口先生)。

ご家族の思いに寄り添い、心の回復を支援

野口先生は、認知症の人やご家族の生活に支障があれば、その解決を図ります。ご家族が適切な対応をすることや、福祉サービスを活用し地域の福祉従事者が介護を担ってご家族の負担を減らすことが薬物療法以上に重要だというのが野口先生の考えです。

野口先生は、ご家族へアドバイスをするとき、まずご家族の気持ちを聞き、共感するようにしています。

「自分の思いを理解してくれた人からのアドバイスでなければ、聞き入れられないでしょう。気持ちを汲んだうえで、認知症の方への適切な対応を話すようにしています」(野口先生)。

同院では、55床の精神科病棟があり、近年は認知症のBPSDで自宅での生活が難しくなった人の入院が増えています。被害妄想や暴力行為などがご家族に向けられたために、入院時にはご家族が疲弊していることもあります。野口先生は、「ご家族はご本人をサポートする立場ではありますが、認知症の方に対し拒否反応であったり複雑な感情を抱いていることが多いのです」と語り、やはりご家族の思いに寄り添います。入院治療で症状が落ち着いてきても、面会に来ることができないご家族もいますが、野口先生がご家族と面談の機会を持ち、外泊から試すことなどで、かたくなであった気持ちが和らぎ、退院後の在宅復帰を受け入れることもあります。

「認知症の治療はご本人に行うものですが、私はご家族に重点を置いています。ご本人は入院すれば適切な治療やケアが受けられますが、ご家族の気持ちをケアする人がいません。面談を繰り返すことで、ご家族が再び認知症の方を介護できるような心理状態に回復するサポートができればと思っています」(野口先生)。

病棟では環境の変化による混乱や不安に気を配る

看護師 鈴木敦子さん看護師 鈴木敦子さん

精神科認定看護師である鈴木敦子さんは、精神科病棟に入院している認知症の人の看護にあたっています。鈴木さんは、「入院した認知症の方は突然環境が変わったことで混乱したり、戸惑ったりする方や、感情をあらわすのがうまくできない方も多いです」と指摘します。認知症の人の感情を予測し、安心して過ごすことができるような対応を心がけています。

「認知症の方がどのような方なのかということにも関心を持っています。ご家族から職歴や趣味などをお伺いし、対応に反映しています」(鈴木さん)。

精神科病棟では、入院患者さんを対象にリハレクと名付けられた作業療法を週に1回実施しています。1回につき10人ほどでホールに集まり、ぬり絵や作品づくり、レクリエーションなどを行います。入院により単調な生活になりがちですが、リハレクの活動によって気分転換をしたり、生活のリズムを整えることを目指しています。

「認知症ケアのアウトカムのひとつは笑顔だという考え方があります。入院当初は不安そうな顔だった方が、治療と看護によって安心が得られるようになり、笑顔を見せてくれると嬉しいですね」(鈴木さん)。

また、鈴木さんは認定看護師として認知症の看護の底上げも目指しており、同院だけでなく近隣病院の看護師も対象とした研修会を開催し、認知症のケアに必要な知識を習得してもらえるよう指導を行っています。

訪問看護で生活を支援、地域のサポート力で在宅継続も

同院では精神科の患者さんを対象に、訪問看護を行っています。保健師と看護師、精神保健福祉士が訪問し、健康状態を確認し、日常生活で困っていることの相談に乗るなどのサポートをします。約160人前後の患者さんのうち、1割程度が認知症の人です。

保健師 吉本尚美さん保健師 吉本尚美さん

訪問看護を担当する保健師の吉本尚美さんは、精神科認定看護師でもあります。同院が広い範囲をカバーしているため、吉本さんも数十キロ離れた町まで訪問する機会もあります。吉本さんは、「病気に関してだけでなく、生活の支援をすることを大切にしています」と言います。

「福祉関係の方たちとは密に連絡を取り、一緒にご自宅を訪問したり、地域包括支援センターが開催する多職種による地域ケア会議に出席するなどして、福祉関係の方たちと連携して認知症の方を支えるチームの一員として支援しています」(吉本さん)。

認知症の人に必要なサービスを考えたり、在宅の生活が継続できるか見極めるうえで、吉本さんは5つのことを重視しています。まず、BPSDがあれば適切な精神科医療を提供すること、次に、身体疾患が潜んでいないか探り、必要に応じて一般科の診療につなぐこと、3つめは日常生活にどの程度の支障が出ているか、4つめはご家族の負担の度合い、そして5つめは地域が認知症の方や認知症をどの程度受け入れているかです。

地域の理解があることは、住み慣れた街で暮らし続けるために重要です。「幻覚や妄想があり、いないはずの家族を探して近所を訪ね歩く認知症の方がいて、ご近所からも心配や困惑の声が寄せられたことがありました」と吉本さんは振り返ります。

「独居のため、地域での生活は難しいと思われましたが、地域包括支援センター、保健所、警察、民生委員、近隣住民が集まり、認知症に対する理解を深め、それぞれができることを話し合って見守り体制を構築しました。その結果、BPSDが落ち着き、生活を続けることができました」(吉本さん)。

認知症ケアチームを結成し、ケアの向上を図る

野口先生と皆さん野口先生と皆さん

同院では、身体疾患の治療のために、認知症の方が一般病棟に入院することもあります。そこで、野口先生を中心に、認知症ケアチームが結成されました。野口先生のほか、精神科認定看護師、一般病棟の看護師、作業療法士、理学療法士、栄養士、社会福祉士で構成され、週1回一般病棟で回診を行って、寄せられる相談に乗って、助言しています。

野口先生は、「認知症の方のことで相談したくても誰にすればいいのかわからなかったり、原因が認知症ではなくご本人の性格の問題だと誤解されたりしていましたが、相談できるので解決するようになりました」と語り、チームの活動が病棟でのケアの向上につながっています。

医療資源が少ない地域で、適切な認知症医療が提供できている理由について、野口先生は「医師以外の多職種が力を発揮し、がんばってくれていることで、医師が医師でなければできない仕事に専念できています」とスタッフの働きを評価しています。認知症の人とご家族の生活に着目して、安心して地域で暮らすための支援を実践する野口先生たちの奮闘は続きます。

 

取材日:2019年9月10日

名寄市立総合病院の外観

名寄市立総合病院

〒096-8511
北海道名寄市西7条南8丁目1
TEL:01654-3-3101

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