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認知症初期集中支援チームにも参加
行政と連携し、専門医として認知症の人を支える
< 静岡県沼津市 医療法人社団恒健会 沼津大山クリニック >


院長 大山一孝先生
院長 大山一孝先生

沼津駅南口に隣接するビル内にある沼津大山クリニックは、頭痛外来と物忘れ外来を2本の柱として診療を行っています。長年にわたり脳神経外科の専門医として大学病院で診療してきた大山一孝先生が2009年に開業しました。沼津市からの依頼を受け、2018年から認知症初期集中支援チーム事業に参加。地域包括支援センターとタッグを組み、認知症の人とご家族が安心して暮らせる町作りにも力を入れています。

専門医・サポート医として認知症医療のハブ的役割を担う

大学病院に勤務していた頃は、脳梗塞や脳出血などを原因とする脳血管性認知症を診療する機会が多かったという大山先生。開業後はもの忘れを主訴とする高齢者の受診が予想以上に多く、アルツハイマー型認知症を中心に認知症の診断と治療に本格的に取り組むようになりました。現在は同クリニックの全患者のうち約3割を認知症の人が占めています。

日本認知症学会認定専門医であり、認知症サポート医でもある大山先生は、近隣のクリニックから認知症かどうかの精査を依頼されることも多く、「かかりつけの先生の相談窓口であり、認知症のご本人・ご家族と医療機関の間をつなぐハブ的な役割も担っています」と語ります。認知症の診断後はそのまま同クリニックで治療を始めることもあれば、治療方針を決めて紹介元に戻し、かかりつけ医の下で治療を行う場合もあります。また、生活習慣病など他の疾患はかかりつけ医で、認知症に関しては同クリニックで治療と役割分担することもあり、ご本人・ご家族と相談しながら柔軟に対応しています。

もの忘れ以外の日常生活での変化にも注目

認知症の診断に際しては、問診および院内に設置されているマルチスライスCTによる画像検査、長谷川式簡易評価スケールやMMSE(認知機能検査)などの検査のほか、時計描画テスト(CDT)や山口式キツネ・ハト模倣テスト(YFPIT)なども行います。若年性のアルツハイマー型認知症が疑われるときには、MRIやPETなどより詳細な検査ができる専門施設に紹介しています。

認知症の早期発見のため、大山先生は「日常生活での変化を丁寧に聞く」ことを重視していると言います。

「認知症の症状はもの忘れだけではありません。以前より怒りっぽくなった、よく外出していたのに出かけなくなった、女性ならお化粧をしなくなったなど、細かいところをよく聞いて、もの忘れ以外の変化はないか、ご家族など介護者からみて違和感がないかを確認するようにしています」(大山先生)。

診断後はご家族に認知症という病気について説明し、ご本人への対応についてアドバイスを行います。「新聞やテレビなどの報道を通して認知症への理解が深まったのか、最近はアルツハイマー型認知症の診断がついてホッとされるご家族が多くなってきたように感じます」と話す大山先生。その一方で、認知症であることをなかなか受け入れられないご家族には、「同じ質問を何度も繰り返す、物をなくす、片付けができないといったことは病気の症状だから、怒ったり、間違いを指摘したりせず、受け入れてあげてください」と説明し、上手に介護してもらえるよう配慮します。

また、独居の人は服薬管理や生活管理が難しいため、第三者の手を借りられるよう介護サービスの利用を勧めています。

認知症初期集中支援チーム事業で、地域包括支援センターと連携

沼津市では、高齢者が住み慣れた地域で生活が維持できるよう、地域の総合的な相談窓口として地域包括支援センターを11ヵ所設置しています。各センターには保健師や看護師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が在籍し、地域住民から寄せられた相談を解決するために適切なサービスや制度の利用につなげていくほか、要介護認定の代行申請や介護予防・認知症予防のための啓発活動、高齢者の権利擁護支援など、さまざまな支援や情報提供を行っています。

2018年からは認知症初期集中支援事業がスタートし、各地域包括支援センターに配置された認知症初期集中支援チーム(以下、初期集中支援チーム)が、認知症の早期診断・早期対応に向けた支援を行っています。大山先生も市の依頼を受けて、千本地域包括支援センター、第五地域包括支援センター、きせがわ地域包括支援センター、かどいけ地域包括支援センターの4つの初期集中支援チームの活動に参加。同クリニックを会場として月に1回開かれているチーム員会議では、各チームからの事例報告を受け、どのような病気が考えられるのか、医療介入が必要かなど、専門医の立場から助言を行っています。

きせがわ地域包括支援センター 看護師 槇かおるさんきせがわ地域包括支援センター
看護師 槇かおるさん

きせがわ地域包括支援センターの看護師、槇かおるさんは、「当センターの担当エリアは市内では最も高齢化率が低く、ご家族と同居されている方も多いのですが、同居はしていても生活は別なのでご家族でも認知症の実態をよく把握されていない、あるいはご家族が仕事で忙しくて病院に連れていけないなど、最初に医療機関を受診するまでに時間がかかっているのが実情です」と語ります。

「ご本人だけでなく、ご家族にも認知症だと認めたくない、周囲に知られたくないという思いが強いようで、相談に来られるまでに非常に苦労されています。チーム員会議で皆さんからいただいた意見を参考に、ご本人・ご家族の苦労をねぎらい、共感しながら、少しずつ信頼関係を築いて受診につなげていきたいと考えています」(槇さん)。

チーム員会議で地域の事例を共有し、ノウハウを蓄積

かどいけ地域包括支援センター 看護師 田村幸江さんかどいけ地域包括支援センター
看護師 田村幸江さん

看護師の田村幸江さんが勤務するかどいけ地域包括支援センターは、医療機関が少なく在宅医療も手薄なエリアにあります。田村さんは「認知症について相談できる専門医がいらっしゃらないので対応に困ることもありましたが、チーム員会議の場で意見交換できるようになり、適切な支援につなげられることが増えてきました」と語り、活動に手ごたえを感じています。

「認知症による周辺症状が出現し、ご家族もどのように対応してよいかわからない状況のなかでご相談いただきました。そこで、本事例についてチーム員会議で検討したところ、さまざまなアドバイスをいいただき、それをもとに環境を整えることでご本人も症状が落ち着き、ご家族も余裕をもってご本人への対応ができるようになりました」(田村さん)。

千本地域包括支援センター 看護師 勝呂京子さん千本地域包括支援センター
看護師 勝呂京子さん

一方、看護師の勝呂京子さんが勤務する千本地域包括支援センターは、担当エリアの高齢化率は高いものの医療機関が多く、入院できる病院もあるので、他のエリアよりも受診に結びつきやすいのが特徴です。チーム員会議にかける事例は少ないのですが、勝呂さんは「チーム員会議を通して実際の困難事例を共有することで、こういう場合にはこの方法で対応すればいいんだというノウハウを蓄積でき、非常に勉強になっています」と、初期集中支援チーム事業のメリットを語ります。

「担当エリアに医療機関が多いとはいえ、先生方はお忙しいので『診療の邪魔をしてまで』と思い、相談をためらうこともあります。チーム員会議は、大山先生のような認知症の専門医から助言を得られる、とても重要な場になっていると思います」(勝呂さん)。

初期集中支援チームとして関わることで地域連携がスムーズに

月に1回開催される認知症初期集中支援チームのチーム員会議月に1回開催される認知症初期集中支援チームのチーム員会議

2018年度にチーム員会議に上がった事例は19件で、その多くが医療や介護サービスにつながるなど、医療との連携がスムーズになりました。

その一方で課題もあります。チーム員会議に上げるためには個人情報使用同意書を取る必要がありますが、同意書への署名を拒否するご本人・ご家族もおられます。勝呂さんは「19件は会議で検討した数であり、実際に困っている方はもっと多いと思います」と指摘します。

「ご本人・ご家族の理解を得るには、私たちは決して敵ではなく、味方なんだと認識していただくことが大切です。そのためにも、ご本人・ご家族のお話を丁寧に聞き、『一緒に考えていきましょう』という姿勢で対応するよう心がけています」(勝呂さん)。

地域全体がチームとなり認知症の人を支える町作りを

沼津市では認知症初期集中支援事業のほか、認知症地域支援推進員の配置や認知症サポーターの養成、認知症カフェの設置、RUN伴(ランとも)への参加など、認知症への理解を深めるための普及・啓発活動に力を入れています。また、槇さん、田村さん、勝呂さんら各地域包括支援センターの職員は、「認知症の方が在宅生活をできるだけ長く続けるには、周囲を巻き込むことが必要」と、地域のサービス事業所のほか民生委員や自治会にも働きかけ、認知症の人を見守る体制作りを進めています。

大山先生と地域包括支援センターの皆さん大山先生と地域包括支援センターの皆さん

このような行政の取り組みに対して、「認知症で困っている方々が気軽に相談できる場所が地域に広がってほしいと思います」と期待を寄せる大山先生。同クリニックでの診療についても、「これからも今までどおり、認知症の方やご家族の話を丁寧に聞き、どんなことに困っていて、どうすれば解決できるのかを一緒に考えていきたいですね」と語ります。

「私一人で全ての問題を解決できるわけではありませんが、地域包括支援センターをはじめさまざまな関係機関と連携しながら、地域全体でチームになって、認知症の方とご家族をサポートしていきたいと思います」(大山先生)。

 

取材日:2019年9月26日

医療法人社団恒健会 沼津大山クリニックの外観

医療法人社団恒健会 沼津大山クリニック

〒410-0801
静岡県沼津市大手町1-1-6 イーラdeビル2F
TEL:055-954-2274

施設のホームページへ

きせがわ地域包括支援センター

〒410-0022
沼津市大岡1155(きせがわ病院前)
TEL:055-954-0755

施設のホームページへ

かどいけ地域包括支援センター

〒410-0011
沼津市岡宮1147-8
TEL:055-939-6700

施設のホームページへ

千本地域包括支援センター

〒410-0867
沼津市本字千本1910-206(千本プラザ内)
TEL:055-962-5932

施設のホームページへ

 

 

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