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専門的な診断・治療の提供にとどまらず、 地域の認知症診療ネットワーク構築にも力を注ぐ
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デイケアセンター デイケアセンター

吉田病院は、宮崎県と鹿児島県に接する熊本県最南部の人吉市で、60年以上の歴史を持つ精神科専門病院です。県から認知症疾患医療センターの指定を受け、専門的な医療を提供するほか、地域からの相談を受け付け、連携を推進し、教育活動を行うなど、人吉・球磨地域の認知症医療の拠点となっています。

精神科病院として専門性の高い治療を

吉田病院が人吉・球磨地域で初めての精神科専門病院として開院したのは、1954年のことです。地域のニーズに合わせ、病床を198床まで増やし、精神科デイケアや精神科ショートケアなども実施して、人吉・球磨地域の精神科医療の中核をなしています。

同院は2011年に、県から認知症疾患医療センターの指定を受けました。センター長であり精神科医の中村博喜先生は、「熊本県は“熊本モデル”が構築されていますので、それに沿ってセンターに相談窓口を設け、精神科が認知症の鑑別診断や治療を行っています」と話します。

“熊本モデル”とは、地域拠点型の認知症疾患医療センターが各地域で認知症医療を提供し、基幹型の認知症疾患医療センターが地域のセンターを統括するという体制です。厚生労働省が認知症疾患医療センターの整備を進めた2008年当時、熊本県の人口規模ではセンター設置は2ヵ所と想定されていました。しかし、それでは地域に密着した医療が提供できないことなどから、熊本県は熊本大学病院に置いた基幹型センターのほか、地域拠点型のセンターを二次医療圏ごとに設置しました。現在、地域拠点型センターとして、精神科病院の11施設が指定されています。

基幹型センターと地域拠点型センターの二層構造の体制であることが熊本モデルの特徴ですが、さらにかかりつけ医との連携を進めることで三層構造とし、住み慣れた地域で治療が受けられる環境を目指しています。同院は、地域拠点型の認知症疾患医療センターとして、各認知症疾患医療センターや行政の地域包括支援センター、かかりつけ医と連携し、人口約8.9万人(2015年時点)の人吉・球磨地域の認知症医療を担っています。

薬の処方だけでなく、ご家族のサポートが大切

中村先生は、「熊本は高齢化が進み、独居の方が多いという特徴があります」と指摘します。子どもが県外など遠方に住んでいるため、認知症の人を支えるのはご兄弟などの高齢者が多く、サポートしにくいといいます。

週3日開く専門外来では、ご本人やご家族からもの忘れの相談があった場合でも、初診は基本的にかかりつけ医からの紹介状を持参してもらうことになっています。しかし、初期の段階で受診する人がいる一方で、BPSD(周辺症状)があらわれたことで紹介される人も少なくありません。紹介のときは原則としてかかりつけ医にお戻ししますが、BPSDがあることで引き続き同院で治療を受ける認知症の人もいます。

「BPSDがあると、ご家族が不安になり、対応策を求めます。しかし、かかりつけの先生のなかには対応方法のアドバイスに困り、当院の治療継続を希望される方もいるんですよ」(中村先生)。

「“診る”とは単に薬を処方すればいいのではありません」と中村先生は言います。同院では、薬の処方に加え、ご家族の話を聞き、気持ちに寄り添ってサポートすることを大切にしています。BPSDで被害妄想があると、もの盗られ妄想の矛先がご家族に向かうこともあり、盗んだと疑われて自信をなくすご家族もいます。

「まず認知症の特性についてお話をし、ものを盗られたという疑いは、いちばん一生懸命お世話をしている方にかけられることを説明します。そして『だから自信を持って接してくださいね』と言葉をかけています」(中村先生)。

ご本人とご家族ができる限りリラックスして話ができるように、中村先生は常に穏やかな笑みを浮かべて接しています。

認知症疾患医療センターとして教育活動や啓発活動も

連携担当看護師 松田康子さん連携担当看護師 松田康子さん

同センターの連携担当看護師である松田康子さんは、相談窓口として受診を希望するご本人やご家族からの相談に乗り、必要に応じて受診の予約を取り、センターの業務の1つである鑑別診断やBPSDへの対応につなげます。

松田さんは、「受診が必要な状態であっても、当院は精神科病院なので、ご本人やご家族にとって受診のハードルは高いようです」と指摘します。

「受診時の不安や緊張を和らげるため、相談を受けた方の初診時には必ず私も同席しますし、『来てくださってありがとう』という気持ちで接しています」(松田さん)。

松田さんは認知症の人やご家族を直接支援するだけでなく、同院の看護師に対する教育活動や、一般住民への啓発活動も行っています。同院には高齢者専門の病棟もあり、どの病棟にも多かれ少なかれ認知症の人が入院しています。病棟担当看護師が認知症について理解し、看護やケアの底上げが図れるよう、勉強会を開催して疾患の特性や社会資源の活用方法などをレクチャーします。時には日頃認知症の人に関わっているスタッフが考えや悩みを語る場を設けて、病棟の看護師に共有していきます。

「一般の方を対象として、小学生向けに認知症サポーター養成講座を開いて講義することや、模擬徘徊訓練として、地域で徘徊している認知症の方がいたらどのように声をかければよいのかなどをお話しすることもあります」(松田さん)。

センターから出向き、地域で連携して支える基盤づくり

精神保健福祉士 宮原淳さん精神保健福祉士 宮原淳さん

精神保健福祉士の宮原淳さんも、松田さんと同じく同センターの窓口として認知症の人やご家族の相談に乗るとともに、認知症の人を地域で支えるために活動しています。宮原さんは、「入院した認知症の方が退院後に地域に戻って生活するということを考えれば、情報を地域で共有することがスムーズな支援につながります」と言います。

同センターが担当するエリアは1市9町村と広く、それぞれの地域包括支援センターと連携する必要があります。宮原さんはそれぞれの地域包括支援センターに出向き、認知症の人の情報を伝え、社会資源に関する情報を入手します。

「地域包括支援センターには認知症初期集中支援チームが結成されているので、アドバイザーとして初期集中支援会議に出席したり、多職種が認知症の方の問題を解決するために話し合う地域ケア会議に参加して、地域で支える方法を探っています」(宮原さん)。

同センターでは認知症医療や介護に携わる専門職向けに事例検討会を開催しており、その企画立案も松田さんや宮原さんが担当し、医療・介護従事者の関係づくりも進めています。

早期発見には地域で見守る体制も重要

同センターでは、若年性認知症のご本人とご家族の交流会を月に1回開催しており、スタートから6年目を迎えました。若年性認知症の人は、高齢で発症した人とは違う問題を抱えているだけでなく、介護サービスの受け皿があまり整っていないのが現状です。交流会では、介護するご家族同士が悩みや体験を話し合うことで、精神的な負担の軽減を図っています。交流会では季節行事も取り入れており、入院している認知症の人がご家族と穏やかな時間を過ごすこともあります。

中村先生は、認知症の早期発見にはご家族などへの啓発活動と、地域のネットワークが重要だと指摘します。

中村先生とスタッフの皆さん中村先生とスタッフの皆さん

「認知症とはどのような病気であるかご家族に知っていただき、変化に気づいていただくことが大切です。独居の方だと、たまに電話で話すだけではご家族が症状に気がつきませんので、近所の方が民生委員などと連携して生活の状況を確認してもらうようなつながりが必要です」(中村先生)。

専門性の高い認知症医療の提供をはじめ、行政や医療・介護従事者との連携、住民への啓発などさまざまな活動で認知症疾患医療センターの役割を果たしている同院。今後も認知症医療の底上げに貢献し、熊本モデルを支えていきます。

 

取材日:2019年10月4日

吉田病院の外観

医療法人精翠会 吉田病院

〒868-0015 熊本県人吉市下城本町1501
TEL:0966-22-4051

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