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確かな認知症医療で高齢化が進む地域に貢献
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脳神経内科 科長・教授 富岳亮先生 脳神経内科 科長・教授 富岳亮先生

富山県氷見市の金沢医科大学氷見市民病院は、1948年の開院以来70年の歴史があり、2008年からは金沢医科大学が管理運営する公設民営の病院として市民の健康を守ってきました。高齢化率が高い氷見市のニーズに対応し、脳神経内科を中心に認知症医療にも積極的に取り組んでいます。

市民の信頼を集め、多くの人に認知症医療を提供

富山県と石川県の県境に位置し、漁業と農業が盛んな氷見市の金沢医科大学氷見市民病院。循環器内科、消化器内科など26科を標榜し、約47,000人弱(2019年12月現在)の氷見市民のうち約3分の1が同院を受診されています。

神経内科医の富岳(トミオカ)亮先生が同院に着任したのは2016年のことです。富岳先生は着任後に認知症医療に注力するようになった背景について、「氷見市は高齢者が多く、60歳以上の市民の約6~7割が当院を受診しており、認知症を合併している方が非常に多いです。脳神経内科を受診する認知症の人は年間約120人で、ほかの疾患と合併していて高齢医学科を受診している人は約230人、総合診療科を受診する人は約300人にのぼります」と説明します。

認知症のタイプを検査で慎重に診断

富岳先生は、初診ではまずご本人とご家族から話を聞き、その症状に合わせてMRIやSPECT検査を行うほか、長谷川式簡易評価スケールやMMSE(認知機能検査)、さらにリハビリテーション部スタッフによる神経心理検査(注意力の検査、前頭葉の検査、記憶力の検査など)を行います。

「物忘れの特徴に加え、MRIやSPECT検査で、アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型のどのタイプかわかります。タイプがわかることで、レビー小体型であれば幻覚が出たり、身体機能の低下から転倒しやすくなることが考えられるなど、今後あらわれる症状の予測ができるので、詳細な検査を行っています」(富岳先生)。

認知機能の低下により、運転免許証更新の際に診断書が必要となり受診する人も増えてきました。「単に認知症という診断書を提出するのでは、ご本人にとっての利点は多くありません」と富岳先生は指摘します。富岳先生は、認知症の疑いがあり免許証の更新が難しければご本人やご家族に説明し、公共交通機関や自治体の優遇措置が受けられる運転免許証の自主返納をお勧めしています。そのうえで、ご本人やご家族が希望すれば詳しい検査や治療に入ります。

「自主返納をお勧めしても受け入れられない方はいますが、最近は高齢者の交通事故が話題になることもあり、ご家族が根気よく説得されることが多くなっています」(富岳先生)。

病棟では認知症の人が安心して過ごせる環境づくり

病棟看護師 笹島尚子さん病棟看護師 笹島尚子さん

身体疾患や骨折などで入院する患者さんにも、認知症の人は少なくありません。病棟を担当する看護師の笹島尚子さんは、「ご家族の意向を踏まえながら、認知症の方が急性期医療をスムーズに受けつつ、生活リズムを整え、安心して入院していただけるようサポートしています」と言います。

可能であれば入院中も日中はベッドで過ごすのではなく、座って過ごしたり、リハビリスタッフの協力を得て散歩などをし、その分夜間はしっかり眠れる環境にして、生活リズムをつくります。認知症の人は環境の変化により症状が進行することもありますが、笹島さんは、「スタッフに研修を行い、認知症の方に目線の高さを合わせ、体に触れてからお名前を呼びかけるなど、適切な接し方を学んでスタッフ全員で取り組んでいます」と言います。

認知症の人のケアには多職種の連携が欠かせません。病棟では、週2回カンファレンスを行い、看護師、リハビリスタッフ、社会福祉士、栄養士、薬剤師などが情報を共有します。

「定期的なカンファレンスだけでなく、必要であれば随時、意見を出し合う機会を設けています。退院が近づいたら、地域のケアマネジャーや介護サービス事業所など外部の機関との合同カンファレンスを行って、スムーズな在宅復帰も支援します」(笹島さん)。

入院直後からリハビリテーションを開始、退院後を見据えて家屋調査も

同院のリハビリテーション部には、29名の理学療法士、17名の作業療法士、2名の言語聴覚士が所属(取材時)し、入院患者さんの退院後の生活を見据えたリハビリテーションや訪問リハビリ、通所リハビリと、急性期から在宅まで幅広いリハビリテーションを提供しています。

作業療法士 山川雄亮さん作業療法士 山川雄亮さん

山川雄亮さんは、作業療法士として急性期病棟でのリハビリテーションと外来リハビリを担当しており、ADL(日常生活動作)の訓練などを支援します。山川さんは、入院している認知症の人がどのような職歴や生活歴であるかなど、一人ひとりの情報を大切にしています。

「どのような方であるかによって接し方も変わってきますし、仕事の話などご本人が興味を持つ内容の話題を取り上げて、意欲的にリハビリテーションに取り組めるように働きかけています」(山川さん)。

リハビリテーションは早期から介入することが有効であることから、入院の場合、早ければ初日から開始することもあります。リハビリスタッフがリハビリテーションでADLを把握し、看護スタッフには口頭で伝えるだけでなく実際に動作を見てもらって適切な介助や見守りを促し、連携して早期回復を目指します。

リハビリテーションの目的は、各々の患者さんに合わせて退院後に自宅で望む生活を送れるようにすることであり、そのための環境整備も重視しています。下肢の骨折で入院したある認知症の人は、退院後も入院前と変わらない生活を希望されておりました。山川さんは退院前の家屋調査で室内を確認し、どうすれば希望を叶えられるか考えました。

「毎日仏壇に手を合わせることが日課でしたが、氷見では広い家が多く、トイレや仏間に行くにも歩く距離が長いです。入院中は歩行器を利用していた方でしたが、室内の動線に棚や机などを置くことで、歩行器がなくても仏壇の前まで家具を伝って歩いて行き、手を合わせることができるようになりました」(山川さん)。

地域連携室が窓口となり、地域や行政ともスムーズに連携

事務 雨池ゆかりさん事務 雨池ゆかりさん

地域医療連携室は、地域の医療機関や介護福祉施設、住民などからの相談窓口であり、入院患者の入退院支援なども行い、地域と同院との懸け橋を担っています。地域連携室に所属する雨池ゆかりさんは、「氷見市の高齢者を支える地域包括支援センターと、ふくし相談サポートセンターの窓口は、どちらも当院から徒歩圏内の市役所内にあり、1ヵ所に連絡すれば関係する部署に連絡が行き、速やかに行政の支援が受けられます」と言い、行政とも良好な関係を保っています。

反対に、同院に問い合わせや相談が寄せられたときも、すみやかな対応を目指しています。2019年度から入退院支援看護師、社会福祉士などで構成される地域連携室のスタッフを12人(取材時)に増やすとともに、昨年度まで複数あった相談窓口を同室に一本化し、相談があれば雨池さんらが適切な部署に振り分けて、なるべく早く回答できる体制としました。

「“地域にやさしい地連”という目標を掲げ、かかりつけ医の先生やケアマネジャーなど地域の方々が相談しやすい病院であることを目指しています。私たちが迅速に対応したことで、問題が解決したり、地域の方の速やかな支援につながって喜んでいただけていると嬉しいですね」(雨池さん)。

入退院支援は、病棟スタッフやリハビリスタッフと連携し、入院患者さんの状況を把握して行います。雨池さんは、退院を前に不安を抱くご家族にも寄り添って支えます。

「自宅での暮らしに戻れず施設に入る場合もありますが、ご家族は施設には入所が難しいとか何ヵ月も待機するという情報を入手して心配されています。当室では、適切な施設を探し紹介したりアドバイスをして、不安の解消を図っています」(雨池さん)。

人材を育て、地域全体で支える体制構築へ

地域医療連携室では、今後スタッフを対象に認知症サポーター講座を開催し、院内だけでなく、地域で貢献できる人材を育成していく予定です。また、地域貢献の取組みとして、月に1回看護師やリハビリスタッフ、栄養士、薬剤師など多職種が認知症の人やご家族の悩みを聞いたり、相談を受ける「ほっと♥カフェ」を開催していましたが、2020年4月から患者さんやご家族が家で安心して暮らせるよう、今後起こりうるであろう症状や予後など、また在宅で生活するうえでの注意点など多職種が指導や説明を行う「ミニレクチャー会」に変更し、より充実した内容で開催する予定です。

氷見市医師会では、よりよい認知症医療を提供するために氷見認知症研究会を発足し、富岳先生も理事として名を連ねています。同研究会では、医師と多職種の医療従事者を対象とした合同研究会を年1回開催し、認知症医療とケアの質向上に努めています。医師会では、学術集会や合同研究会に参加経験があり認知症医療に意欲的な医師を“認知症相談医”と名付け、認知症相談医のいる医療機関を行政のホームページで公開するなど、住民が相談しやすい環境を整えています。

栂(とが)院長(前方左)とスタッフの皆さん栂(とが)院長(前方左)とスタッフの皆さん

富岳先生は、同市に多い独居高齢者や高齢者のみの世帯の支援が課題だと指摘します。ご家族が隣接する高岡市や県庁所在地である富山市などに離れて住んでいる場合は、月2回の診察なら必ず1回はご家族の同席を求めています。

「ご本人の訴えを聞くことも大切ですが、ご家族から状況を確認することも非常に重要です。離れて住むご家族にもサポートに関わっていただきたいですし、地域全体で認知症の方を支援できれば理想的です。そういう環境づくりにも貢献し、認知症の方が最後まで安心して生活できるようお手伝いしたいですね」(富岳先生)。

 

取材日:2019年11月29日

金沢医科大学氷見市民病院の外観

金沢医科大学氷見市民病院

〒935-8531 富山県氷見市鞍川1130
TEL:0766-74-1900

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