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多職種が連携して認知症の人の在宅復帰を目指す
<茨城県土浦市 医療法人財団 県南病院>

脳神経外科 成島毅先生 脳神経外科 成島毅先生

県南病院は、茨城県南部に位置する土浦市にある脳神経外科をメインとした病院で、急性期病棟と回復期病棟を有し、急性期から回復期まで一貫した医療を提供しています。回復期病棟では、多職種のスタッフが一丸となって認知症の方を支援するとともに、退院後は地域のサポートが重要であることから行政や地域の医療機関との連携にも取り組んでいます。

急性期から回復期まで担う脳神経外科病院

県南病院は、外来のほか、急性期一般病床32床、回復期リハビリテーション(以下、リハビリ)病床51床を有し、急性期の緊急手術からリハビリまでを担っています。回復期リハビリ病棟では、医師や薬剤師、看護師、リハビリスタッフなど、多職種のスタッフが入院患者さんを包括的に支援しています。

脳神経外科医の成島毅先生は、回復期リハビリ病棟を中心に急性期一般と外来を担当しています。成島先生は、「回復期リハビリ病棟には、急性期治療を終えて急性期一般病床から転棟してくる方や、他の急性期病院から転院してくる方がおり、在宅復帰に向けたサポートをする当院は総合病院とクリニックの中間地点にあるといえます」と語ります。

ご家族の負担に配慮して治療方法を選択

外来には、物忘れを心配したご家族に連れられて来る方や、認知機能の低下があってかかりつけ医から紹介された方が訪れます。同院では、長谷川式簡易評価スケール、MMSE(認知機能検査)などの神経心理検査を行い、ご家族から話を聞いて、症状に応じてMRIを撮影し、VSRAD(早期アルツハイマー型認知症診断支援システム)注1)で海馬の萎縮を確認します。早ければ、受診したその日のうちに認知症であるかどうかが、ある程度わかります。

「慢性硬膜下血腫や脳腫瘍などの脳外科疾患が見つかることもありますが、やはりアルツハイマー型認知症であることが多いですね。治療にあたっては、介護者の負担が増えないよう配慮し、ご家族の意見も聞きながらお薬を選んでいきます」(成島先生)

また、ご家族に配慮すると同時に、ご本人にも気を配ります。

「認知症の方は、うそをつきたくてついているわけではありません。物忘れでわからなくなって取り繕ってしまうのです。そういうときは否定せずに受け止めるようにしています。ご本人の話を傾聴することも大切にしています」(成島先生)

退院時の薬剤変更については、かかりつけ薬局にも情報を共有

薬剤科主任 中村涼子先生 薬剤科主任 中村涼子先生

薬剤科主任の中村涼子先生は、病棟薬剤師として、医師や看護師、リハビリスタッフなどといっしょに申し送りに参加し、入院中の認知症の方の様子や、服薬後の症状の変化や副作用を確認しています。入院時には、それまで処方されていた薬剤をかかりつけ医に確認し、退院された後も、服薬が続けられるよう気を配っています。

中村先生は、「地域柄、独居の方が多く、退院後に自宅に復帰されるか施設に入所されるかでも適切な薬剤は変わりますし、どうすれば服薬を続けられるか気をつけています」と言います。

退院した独居の方が、不眠などを電話で訴えてきたときは、かかりつけ薬剤師に連絡を取って状況を確認し、処方箋を取りに来てもらうなど、地域の調剤薬局と連携して支援する場合もあります。

「当院のすぐ前にある調剤薬局は、当院の患者さんのかかりつけ薬局であることが多いので、退院時には薬剤の変更などの情報を共有しています。その際に、薬局側から薬剤の一包化の提案や、疑問点の問い合わせがあるため、退院後の安全で効果的な薬物療法につながっています」(中村先生)

中村先生は、このような地域の薬局との連携を市内全域に広げていきたいと考えています。

多職種のスタッフが情報共有し、専門性を発揮して支援

回復期リハビリ病棟では、急性期の治療後、病状が安定し始めてから、在宅復帰に向けて集中的にリハビリを行います。同院はデイケアや訪問リハビリも行っていますが、回復期リハビリ病棟には病棟専門のリハビリスタッフが在籍しており、休日も含めてADL(日常生活動作)訓練などを実施しています。さらに医師や看護師などがチームとなって認知症の人を支えています。

リハビリに関する会議を週に1回開催し、成島先生や看護師、相談員、理学療法士などリハビリスタッフの間で情報共有が図られます。職種を問わずすべてのスタッフが同じ情報を手にすることは、リハビリをスムーズに進めることにつながります。

回復期リハビリ病棟で、ある認知症の人が、食事を拒んだことがありました。原因は入れ歯の不具合であることが判明し、入れ歯を修理に出すとともに、看護師が医師や薬剤師、言語聴覚士、管理栄養士に相談しました。食べやすい食事内容への変更、状況に合った薬剤の処方など、専門職がそれぞれの専門性を生かして対処すると、その方の状態は落ち着き、食事を取ることもできるようになりました。多職種のスタッフの協働が、認知症の人の機能回復を後押ししています。

看護師同士で事例検討を行い、その後の支援に役立てる

回復期リハビリ病棟 看護師 久野澄江さん 回復期リハビリ病棟 看護師 久野澄江さん

入院し環境が変わることで認知症の症状が悪化することも少なくありません。回復期リハビリ病棟を担当する看護師の久野澄江さんは、一人ひとりに合わせた対応と安心できる環境づくりを心がけています。例えば、以前就いていた職業や趣味などについてご家族から聞き取り、会話のなかに盛り込んでコミュニケーションを図っています。

「日時がわからなくなる方が多いので、カレンダーや愛用されている時計を持ってきていただいたり、お気に入りの写真を飾っていただいたりして、少しでも安心して過ごせるような環境に整えています」(久野さん)

回復期病棟 師長 小玉智香子さん 回復期病棟 師長 小玉智香子さん

看護部回復期病棟 師長の小玉智香子さんは、「認知症を理解し、経験の差にかかわらず認知症の方に適切な対応をするには、勉強が欠かせません」と言います。茨城県看護協会の認知症対応力向上研修を受けた看護師が中心となって講習を実施し、認知症の人に対する看護の関わり方を伝授しています。

「認知症対応力向上研修を受けた看護師が集まり、認知症に関する委員会も月に1回開催しています。そのなかで事例検討も行っており、それぞれの事例でのよかった点や反省点を挙げ、意見を交換してその後の支援に役立てています」(小玉さん)

行政や認知症サポート医同士の連携も視野に

成島先生は、「当院のある地域は、認知症についての正しい理解があまり進んでおらず、後ろめたいイメージがあるのか、なかなか早期の段階で受診していただけません」と指摘します。早期発見、早期治療につなげるため、成島先生は認知症の啓発活動も行っていきたいと考えています。

また、「認知症医療は当院だけで完結するわけではありません」と地域連携の重要性を語ります。地域の認知症の人を支えるには、行政やかかりつけ医の協力が必要となり、同院だけでは対応が難しいときには、ほかの医療機関と連携して治療にあたることが必要だからです。

「今後は、認知症が疑われる人や認知症の人であっても医療や介護のサービスを受けていない住民を支援する“認知症初期集中支援チーム”への参加や、認知症サポート医の情報交換会などを利用して、スムーズに協力し合える関係をつくっていきたいですね」(成島先生)

専門的な検査や治療と、住み慣れた家に帰るためのリハビリを提供する同院。多職種のスタッフがチームとなり、これからもそれぞれの専門性を発揮しながら認知症の人を支援していきます。

 

 

取材日:2020年7月31日

注1)VSRAD(Voxel-based Specific Regional analysis system for Alzheimer's Disease)は、海馬傍回(かいばぼうかい:海馬の周囲に存在する灰白質の大脳皮質領域)の萎縮の程度を、MRIで撮影した画像から読み取る画像解析ソフトウェアです。海馬傍回の体積は小さいため、脳ドックなどで使われるMRIで得られた画像だけでは病変を見逃してしまうことも少なくありません。そこで、MRIと組み合わせて使うことで、アルツハイマー型認知症診断の正確性を補います。

県南病院の外観

医療法人財団 県南病院

〒300-0841
茨城県土浦市中1087
TEL:029-841-1148

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