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専門性の高い診療と支援のマネジメントに力を尽くす
<大阪府大阪市 氷室クリニック>

院長 氷室公秀先生 院長 氷室公秀先生

氷室クリニックは、認知症や神経難病の方に質の高い医療を提供し、地域での療養を支えるという目的のもと、大阪市の北東部・都島区に開院した神経内科専門クリニックです。専門外来として総合病院に引けを取らない診療を行うほか、医療、看護、介護、福祉の各事業所と積極的に連携し、認知症の方の暮らしを地域で支えることに注力しています。

地域でこそ専門性の高い医療を

認知症や神経難病の方々に、質の高い医療を地域で継続して提供する――これを「神経内科医の使命」とし、2013年に開院された氷室クリニック。受診しやすいクリニックという形を取りながらも、3人の神経内科専門医により専門性の高い診療を行い、さらに患者さんを多方面から支援するべく、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所などとの連携に注力し、在宅医療を支援しています。

初期から進行期まで多くの認知症の人が来院される同クリニックですが、院長の氷室公秀先生は「私が認知症診療に深く携わるようになったのは、まさに開業してからのこと」と話します。

「かつての神経内科は認知症診療とは距離があり、少なくとも私が研修医だった時代には、認知症を診る機会はほとんどありませんでした。『物忘れ外来』などが定着して状況が変わってきましたが、それでも総合病院や大学病院の神経内科の場合では、認知症の人と関わっても初期診断で終わることが多かったと思います。町中で診療を行うようになってから、高齢の方が多いこと、そして、その中には一定の割合で必ず認知症の方がいらっしゃることを、肌で感じました」(氷室先生)

開院した地域は、都会らしさと下町の空気感が混在する大阪市都島区。都市部ゆえにもともと家族単位が小さく、高齢世帯は独居か、配偶者と二人暮らしなど、いわゆる老老介護、認認介護になりやすい地域特性があると言います。

認知症の人とご家族の日々を支えていくには、「正確な診断に基づく適切な治療と介護が求められる」と氷室先生は指摘します。その双方を医師の立場でマネジメントすることを責務として、日々の診療に取り組んでいます。

初回ないし2度目の受診時に診断し、早期に治療につなげる

副院長 林紀子先生 副院長 林紀子先生

神経内科専門医で副院長である林紀子先生は、初診から診断までに何度も来院してもらわなくて済むよう配慮していると話します。

「初診時はまず問診のうえ、長谷川式簡易評価スケール、MMSE(認知機能検査)などを実施します。その後、MRIを撮り、採血を受けていただくのが一連の流れです。MRIは提携クリニックに依頼して行いますが、ほとんどは当日中か数日以内の撮影が可能です。基本的には、初回ないし2度目の受診で診断に必要な検査が終了する形となっています」(林先生)

林先生は、本人の認知症への抵抗感がどれくらいかを見極め、心情に寄り添った説明を行うことを心がけていると言います。

「問診時に、ご本人の抵抗が強いことを感じたときには、まず内科的な話からさせていただき、『脳のチェックもしておきましょう』とお話しします。また、診断後の説明も、ご家族には結果をありのままお話ししますが、ご本人への説明はやはり人によって言葉を選びます」(林先生)

ただし、言葉を濁しすぎると「正常と言われた」と誤解される場合もあるとのこと。「必要なのは、早く正しい治療につなげること。そのために、言葉を選びながらも、ある程度は正確に理解していただけるよう説明するようにしています」と林先生は話します。

生活を支えるための連携とマネジメント

認知症の人が可能なかぎり長く地域で暮らせるようにするためには、医療だけでなく看護、介護に関するさまざまな事業所や専門家の手を借りることが必要です。そのために、同クリニックは病院、他診療所、そして地域の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などとの密な連携をはかり、専門医の立場から在宅療養を支援することに尽力しています。

連携の中での専門医の役割は、「一つは、ご本人の支援体制を診療の立場からマネジメントすること。もう一つは、症状に対して医学的なマネジメントを行うこと」と氷室先生は考えており、そのためにもっとも重要視しているのが、「可能な限り正確に診断を行うこと」だと言います。

「現在、中心症状に対して使用可能な治療薬は4種類ありますが、認知症のタイプによって適用性が異なります。症状のあらわれ方や進行の速度もタイプによってそれぞれです。例えば、アルツハイマー型認知症ならBPSD(周辺症状)と考えられる症状でも、前頭側頭型認知症でみられた場合は、中心症状と考えなければなりません。つまり、診断によって治療のアプローチが異なります」(氷室先生)

科学的で正確な診断があってこそ、適切な治療方針の決定と進行予測、予後判断が可能になります。「診断によって、その人にはいつごろからどのくらい、どのようなケアが必要になるかが推測できるので、それに基づいて、他職種の皆さんやご本人、ご家族と話し合い、将来の支援体制をデザインすることが、一連のメソッドとして確立しています」と氷室先生は語ります。

重要なのは、その人ごとの生活状況と認知機能の進行状況によって、今必要な体制を考えること。例えば、独居の人の日常生活で困りごとが増えてきたなら訪問介護の利用を勧め、家族がいるなら通所型のサービスを検討するというように、具体的にプランニングします。処方薬の定期内服がむずかしくなったら、1日1回の服用への調整をかかりつけ医に依頼するといった、細かなやりとりが行われることもあります。

このように、支援体制を考えていく中で、医師の診断はいわば“核”。「認知症の診断はなかなかむずかしく、間違えることも決してゼロではありません。したがって、一度診断したあともさまざまな状況で、診断を考え直してみることが必要です。初期に行った診断に固執しない姿勢を持つようにしています」と氷室先生は話します。

求めるのは、よりよい「居場所」作り

同クリニックでは、認知症、神経難病の新薬の治験が可能な体制を整え、これまでに何例かの治験に参加しています。背景には、「どんな疾病でも治療薬が開発されることは重要。治験は、普段の日常診療とは別に臨床医が手がけるべき大事な仕事である」という氷室先生のスタンスがあります。

今後の認知症医療に課せられた課題としても、氷室先生は「薬剤の開発」を挙げます。

「中心症状およびBPSD(周辺症状)に対する医学的なマネジメントは、基本的には投薬治療です。とはいえ、認知機能低下は老化に伴う変性疾患なので、治すことは困難です。だからこそ、その人に関わるすべての人が人間らしく生活していける空間を提供し、“人間らしい老い”を支えるのが大事だと考えています」(氷室先生)

氷室先生は「そのためにも、こちらが必要と考える支援をご本人も受容できるような形を作る必要があります」と続けます。

「認知症の人の生活背景や生育環境は千差万別で、中には高いプライドをお持ちの方もいます。いくら支援が必要でも、心を無視するようなやり方をして、ご本人が惨めな気持ちになっては本末転倒です。尊重する姿勢を持つことが大切でしょう。また、進行した認知症の人に対する支援のさらなる充実が求められると同時に、早期の認知症の人が、現行の介護保険制度の中では介護サービスにアクセスしにくい状況にあります。このような方々をどのように介護サービスや支援につなげ、どうマネジメントしていくかも課題だと思います」(氷室先生)

林先生もまた、認知機能が低下しつつある方の「居場所」を作る重要性を感じているといいます。

「私はかつて和歌山県で診療に従事していましたが、農家の方が多かったため、かなり認知症が進行しても今までどおり作業に出るなど、生き生きと生活される方が多い印象がありました。しかし都市部では、リタイア後の自分の役割がないという状況がよくあります。そのような方に、何か適切な居場所にあたるものを作り出すことができればという思いがあります」(林先生)

認知症になったとしても、その方々にはそれぞれ違う生活と人生がある。それを理解し、それぞれがその人らしく歩めるように治療と介護をマネジメントしていく――そうした姿勢を一貫する、同クリニック。これからも、地域に根ざした専門クリニックとして、地域とともに歩み続けます。

 

 

取材日:2020年7月21日
氷室クリニックの外観

氷室クリニック

〒534-0021
大阪市都島区都島本通1丁目4番22号
TEL:06-6167-5081

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