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音楽療法を取り入れた認知症カフェが好評
自治体と連携し、認知症の早期受診を支援
<神奈川県小田原市 お堀端クリニック>

院長 髙橋三津雄先生 院長 髙橋三津雄先生

小田原駅から徒歩3分の場所にあるお堀端クリニックは、認知症などの神経内科疾患を診察する内科・神経内科クリニックです。院長の髙橋三津雄先生は、1985年に神経内科医としてのキャリアをスタートさせ、大学病院や認知症専門病院などで認知症の診療と研究に取り組んできました。クリニック開業後は専門性の高い医療を提供するとともに、自治体と連携して認知症カフェの運営に携わるなど、認知症の早期発見に力を注いでいます。

臨床と研究の両面から認知症医療に取り組む

日本認知症学会専門医・指導医など数々の資格を持つ髙橋先生が認知症診療に携わるようになったのは、30年ほど前。在籍していた千葉大学から関連病院である松戸市立病院(現・松戸市立総合医療センター)に出向した際に、松戸市の認知症有病率を調査したのがきっかけだったといいます。その後、日本でいち早く認知症の治療とリハビリテーションに着手した愛知県の福祉村病院や福岡大学病院、埼玉県にある認知症専門の蓮田よつば病院に勤務。臨床だけでなく研究にも従事し、剖検脳を用いた病理学的研究や、アルツハイマー型認知症の新たな治療法の基礎研究などに取り組み、その成果を発表してきました。

一方、臨床では早期診断・早期治療を重視し、1997年から勤務していた福岡大学病院では、当時大学病院では珍しかったもの忘れ外来を立ち上げました。しかし、大学病院では他の医療機関で診断・治療を受けてから来院する方が多かったため、「もっと初期の認知症を見つけたい」との思いから、外部の医療法人と協力して認知症専門クリニックの開設に参加しました。

福岡大学病院で教授を務めるかたわら、福岡大学薬学部の教授も併任し、臨床・教育・研究と充実した毎日だったそうですが、多忙から体調を崩したことを機に大学を退職。2012年、高校時代までを過ごした小田原市に、お堀端クリニックを開業しました。同クリニックでは認知症をはじめとする神経内科疾患に対する専門的な診療だけでなく、風邪や肺炎などの呼吸器感染症をはじめ、腹痛・嘔吐・下痢などの消化器疾患、高血圧や糖尿病などの生活習慣病といった一般内科診療も行い、プライマリケア医として地域医療に貢献しています。

問診では病歴や服用薬を詳細に聴き取り

お堀端クリニックの待合室 ゆったりとした待合室

地域の認知症医療での役割について、「当院は、いわゆる“町のお医者さん”ですから、受診されるのは認知症として医療機関にかかったことがない方がほとんどだと思います」と語る髙橋先生。受診のきっかけは、地域の一般内科クリニックや介護施設、地域包括支援センターからの紹介が多いものの、認知症の程度は軽度から重度まで幅広く、「高齢者の一人暮らしも多いですから、かなり重症化してから受診する方もおられます」と地域の事情を話します。

一方、新型コロナウイルス感染症の流行後は、認知症の初診の人が増加。髙橋先生は「新型コロナウイルス感染症の感染拡大でテレワークが普及し、ご家族の在宅時間が長くなったことで、物忘れなどの症状に気づきやすくなったのではないでしょうか」と分析しています。

診断にあたっては問診を丁寧に行い、特にご本人とご家族など介護者からできるだけ詳しく病歴を聴き取り、併存疾患がないか確認します。

「貧血や腎機能障害、肝機能障害、糖尿病などの生活習慣病は認知機能に影響するといわれていますし、弁膜症や不整脈などの心疾患も認知症との関連が指摘されています。これらの病気で治療した経験があるかどうかを知っておくことは重要だと考えています」

また、パーキンソニズムや小脳性の運動失調など、アルツハイマー型認知症としては非典型的な神経症状の確認も重視しています。特にパーキンソニズムが併存している場合は、ご本人がこれまでどんな薬剤をどんな時期に服用していたのか、今はどんな薬剤を服用しているのかを聴取して、薬剤性パーキンソニズムの要素がないかチェックしています。

画像検査はCTとMRIを基本とし、若年性の認知症が疑われるときには近隣の病院に依頼して、SPECTやPIB-PETを追加で行います。基本的には、受診した当日に認知症かどうかを判断していますが、SPECTなどの特別な画像検査を行う場合は2~3回の受診をお願いして慎重に診断しています。

認知症の受け入れが難しい方には、あえて病名を伝えないことも

認知症の方が描かれた絵画 認知症の方が描かれた絵画

診断後に病名を伝えるとき、髙橋先生は皆に同じ説明をするのでなく、ご本人やご家族の反応や、理解度に合った説明を心がけています。例えば、認知症と受け入れることが難しいと思われる方には病名は言わず、「脳に萎縮があって、そのために物忘れの症状が出ているようです」など、あえてぼかして説明することもあるそうです。

「ご本人、ご家族ともに、すぐに認知症だと認めたくない方が多いです。そのような方に、『認知症ですよ』とはっきり言ってしまうと、その後の治療を拒絶されるかもしれません。医療とのつながりが断たれてしまわないように、様子を見ながら少しずつ説明を重ね、理解を深めてもらうようにしています」

ご家族の中には「本人には認知症や、物忘れとは言わないでほしい」とおっしゃる方もいるそうですが、髙橋先生は「認知症を特別なものだと捉えているからこそ、隠しておきたいと感じてしまうのではないでしょうか」と指摘します。周囲が隠そうとすると、ご本人の行動を制限したり、叱りつけたりしてしまい、それがきっかけでトラブルが生じる恐れもあります。そのため日々の診察では、「このくらいのお年になれば、物忘れがある方は大勢おられますよ」などと伝えて、認知症は特別な病気ではないことを印象づけるよう意識しています。

音楽療法を取り入れた認知症カフェを月に1回開催

長年の経験から、「できるだけ初期段階で医療や介護につなげることが大切」と考える髙橋先生は、小田原市に隣接する松田町の町役場や県立病院、地域のボランティアの方々と連携し、2016年に認知症初期集中支援チームを設置しました。さらに髙橋先生の発案で、2017年からは松田町の喫茶店で月に1回、認知症カフェ「MATSUDAおれんぢかふぇ」を開催しています。カフェでは認知症についてのミニレクチャーや認知症の人とご家族との交流会、医師による相談会のほか、音楽療法も取り入れています。

アルツハイマー型認知症では、記憶に関わる海馬から萎縮が始まり、徐々に脳全体に広がっていきますが、左右に2つある海馬のうち、計算や言語、論理的思考をつかさどる左脳の海馬は萎縮が強く、右脳が担っている空間認識や音楽など非言語的な情報処理能力は保たれていることが多いため、髙橋先生は「すでに失われてしまった能力を取り戻そうと訓練するのは、ご本人にとってつらいことかもしれませんが、比較的機能が残っている可能性のある右の大脳半球に働きかける音楽療法は有効なのではないかと考えています」と語ります。

音楽療法では、ボランティアの協力のもと、参加者がサクソフォンや三味線、尺八などの楽器を演奏していて、認知症の方々がリズムに乗って楽しむ様子が見られるそうです。ご家族からは「自宅で本人が好きだった音楽を流したら、表情が変わって反応がよくなりました」という声が聞かれることもあり、髙橋先生は「その音楽にまつわるエピソードを思い出し、回想法と同じように脳が活性化されたり、情緒的な安定が得られたりといった効果が出ているのかもしれません」と、手ごたえを感じています。

自治体やボランティアと連携し、認知症の予防と啓発に奔走

認知症の人とそのご家族に対するケアのみならず、認知症予防教室や小中学生向けの認知症教室を開催するなど、認知症の予防と啓発にも力を入れている髙橋先生。今後はクリニックとリハビリテーション施設との連携の強化を目的に、医師や看護師、リハビリテーションスタッフら多職種間でSNSを使って患者情報を共有するシステムの導入を進めていきたい考えです。

また、地域の課題として「認知症診療を行うクリニックが少ないので、もっと増えてくれれば」と話す髙橋先生は、「認知症を診るクリニックが増えないのは、診療報酬上の問題も大きいのではないか」と指摘します。

「認知症診療では、ご本人やご家族からじっくりお話を聴取する必要があり、診察に時間がかかります。しかし、高血圧など加算がつく疾患と比べて診療報酬が低いため、善意のもとに成り立っている部分もあるのではないでしょうか。加算をつけるなど、何らかのメリットが今後考慮されることを願います」

高齢化が進み、認知症の人の数は専門医だけでは対応できないほど増加してきており、喫緊の対応が求められています。クリニックを飛び出し、自治体やボランティアとの連携のもと、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指す髙橋先生の活動は、今後も続いていきます。

 

 

取材日:2020年8月7日
お堀端クリニックの外観

お堀端クリニック

〒250-0011
神奈川県小田原市栄町1-14-48ジャンボーナックビル2F
TEL:0465-21-5700

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